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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第8章 ~日台vs中最終決戦! 敵本拠地高雄市陸海空軍総力戦!~
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見えてきた終わり

 ―TST:PM14:28 DCGやまと艦橋―







「お……、落としたぁ!!!」


「ヒャッホォォーーーーーゥ!!!!」


 その瞬間、艦橋内は歓声の大爆発が起こった。

 俺も思わず、そのまま「ッしゃあ!」の叫びとともに痛みを忘れてガッツポーズだった。


 そしてそのままモニターを見る。


 今もなお、そこには弾道ミサイル情報が表示されていたが、そこに表示されている核弾頭ミサイルは撃墜位置に×印がつけられ、同時に、こう表示されている。







 “Intercepted”


 撃墜確認……、と。







 核の脅威は落ちた。

 今頃、この南シナ海のどこかの海に落下しているころだろう。ここからその破片を拝むことはできないだろうが。

 しかし、まあ大気圏再突入時にでも消滅かね。核弾頭は……、まあ、海に落ちるか。


 とにもかくにも……、大きな山場は完全に通り過ぎた。

 何とか、大きな壁を乗り越えることはできた。ここまでくれば、あとはこっちのものだ。

 核のない中国は、急速に力を衰えさせていくだろう……。その効果は、今すぐにでも表れるはずだった。

 国民も動き出すに違いない。これは、アメリカからも情報が流れるはずだ。


 以前までの中国の脅威は、もう過去のものとなり始めている。


 それを知っているからこそ、こうやって歓声をぶちまけることができるんだ。


「終わるぞ! もうすぐ戦争が終わるかもしれない!」


「ああ……ッ! 終わりが見えてきたぞ!」


 そのような声が各所から飛び交っていた。そして、それはここだけでないのは想像に難しくない。


 空からも、周りの日台中艦船からも、その歓声が届き始めている。


 ……まあ、いちいち記すまでもあるまい。


「……峠は越えたな……」


 ここまでくれば、後は流れに任せるだけだ。

 一番の危機は去ったし、あとはこっちの有利にことが進むはずだ。

 問題は中国がどう動くかだけど……、まあ、そのときになったらになるしかあるまい。

 いずれにしろ、中国はもう持たない。アメリカの勧告通りに降伏するのも時間の問題だ。


 ……その前に、共産党自体が持つかどうかも疑問だけど。


「(……いずれにしろ、これで、もう戦いは終わる)」


 長くはないのは間違いないんだ。楽観はもちろんまずいが、それでも、それほど深刻な事態になることはないだろう。


 趨勢は決した。あとは、向こうが折れるのを待つのみだ。


「……終わったぜ……。この戦争ももうすぐ終わる」


 と、そう確信をもってつぶやいた時だった。


“やまとお疲れー!”


「うん?」


 と、この声はこんごうさんか。

 よく聞けばほかの艦魂の声も聞こえる。その相手は、全員やまとに向いていた。


“お疲れ様でーす……。はぁ~疲れたぁ~”


“お疲れー。死にそうだったけど大丈夫だった?”


“一応は……。は~でももう休ませてください。違う方面で死にそうなんで”


“デスヨネー”


“日本の最新鋭に助けられたな……、あちがとな”


“お構いなく……。私とて死にたくないので……”


 その声はすっかりぐったりしていた。少し息切れしているというか、呼吸も少しだけ激しくなっている。

 本人も相当疲れてしまったな。ほんと、お疲れさまだよ。


 俺は今回の文句なしのMVPであるやまとに対するねぎらいの意味も込めていった。


「やまと、お疲れさん。……よく頑張ったな」


 といっても、こんなことしか言えんがな。

 ……結局のとこ、今回はあいつにはずっと助けられっぱなしだったな。俺がなんかしたかっていえばさっきのミサイル迎撃くらいだけども、そのほかのバックアップはすべてこいつに任せっきり。


 ……文句なしのMVP。誰かシャンパンでも上げてやれよ。シャンパン飲むかわからんけども。


 すると、やまともすっかり疲れ切ったようで「ふぃ~」と息を吐きつつ言った。


“……お~つかれさまで~す……”


 すっかり緊張の糸がほぐれている。でもまあ、今回はそれくらい許してやろう。

 今この周りに敵はいない。自分に向かう牙もないしな。

 それに、本人とて疲れ切っただろうし、ちっとは休ませてやろうか。


「……お前、最後の最後まで動きっぱなしだったな」


“ほんとですよ……。あーもう機関エンジンも限界。そろそろ休ませてもらってもいいですか? 微妙に痛いんで”


「エンジンか……。もう使いっぱなしだったか」


 さっきからずっと回しっぱなしだったしな……。

 今は前進微速で抑えているが、ぶっちゃけそれですらやばい状況だ。

 やっぱり途中の負担覚悟の機関一杯の無理が祟ったようだな。そろそろ休ませたいけど……。


「すまん。止めの指示出てないからもう少し頑張って」


“はーい……、でもこれいつまでやれば……”


「俺に聞くな」


“げ~……。もういいや、少し休みます”


「おう」


 そのまま向こうは何も言ってこなくなった。

 ま、どうせそこらへんに寝っ転がって休んだりでもしてんだろうな。しっかり体を休めてくれたまえ。


 俺もそろそろゆっくり休みたいところだが……。まあ、まだ正確には戦争は続いているんだ。そんな勝手に気を休めることは……、







「戦争終了のカウントダウンだ! もう終わるぞ!」


「長くてもあと1時間だ! 中国とて状況的に見てもどう考えても降伏するはずだ!」


「ヒャッハーッ! 戦争終結の時間だァー!」







 ……うん。まあ、こうなるよね。


 一番の峠は越えたしね。少しは……、


 ……すると、


「……そういえば、最前線の司令部制圧はどうなった? 報告がまだ来ておらんのだが」


 副長がその歓声の中、あんまりに騒ぎすぎている艦橋内を静めつつそうつぶやいた。


 今頃、日本の空挺部隊が高雄市の総司令部に突入しただろうけど、そっちの戦況は一向に来ないな。

 まさか……、押し返されたとか? でも、最後に受けた報告だと確か総司令部付近の戦力はそれほどでないとかって話だったんだが、やっぱりそれでも向こうも意地見せたりでもしたのか?

 あと、途中オスプレイが1機落とされたって話もあったし……、それによる戦力低下がやばい方向に行ったか?


 ……しかし、いずれにしろ向こうから何らかの報告がこないことには……。


「通信、向こうから報告来ないか? 総司令部が陥落したらそこから全軍に情報が伝わる手はずになっていたはずだが……」


 通信員に聞くが、彼は首を横に振った。


「いえ、向こうの周波数に合わせていますが、向こうからは何にも……。まだ作戦中ではないかと」


「ふむ……。しかし、いくら事前作戦の通りにいかないとはいっても、そろそろ何らかの報告が来てもいい頃のはずだが……。何かトラブルか?」


「さぁ……」


 結局、まだ向こうからは何にも言ってこないからわからん、か。

 でも、全体の戦局自体はこっちにも傾かず向こうにも傾かずの均衡状態だったって話だったし、最前線が時間を稼いでくれれば総司令部の制圧も難しいことではないはず。

 日本の精鋭が集まった空挺部隊だ。簡単とはいかないまでも、しっかり結果は残してくれるはず……。


「(……そういや、真美は無事かな……)」


 ふと、その空挺部隊に所属している妹を思い出した。

 あの激しい戦場だ。最悪もう戦死、なんてこともあるかもしれない。

 まあ、軍人になった時点で互いにそのようなリスクは承知の上だ。でも、もちろん本音を言えばそんなことにはなってほしくないが……。


 ……まあ、あいつはああ見えて結構しぶといというか、粘り強いところがあるからな。生きることにも結構しがみついた結果、ちゃっかり生き残っちゃってるなんて言うことも穴あながちありえないから侮れん。

 あれのせいで一時期あいつの足の速さ負けた経験があるからな。飛んでもなく粘った結果あいつのほうが足速いなんて言う男としてそれどうなんだよって事態が発生したことがある。

 ……まあ、今この場ではどうでもいい話だったな。すまんかった。


「ふむ……。まあ、とりあえず向こうの通信がいつ来てもいいようにしておけ」


「了解。とりあえず無線回線を開けておいて、向こうからの通信を随時傍受できるよう……」


 と、通信員が最後までいう前にそれは起こった。


 その、例の無線が突然声を発したのだった。


『……だ……ザザッ……、きこ……え……』


 ノイズが大きく混じっている。無線機の調子が悪いのか?

 だが、どうやらそれは女性の声だった。それも若い。しかも日本語が流暢なところからして明らかに日本人だ。


「? なんだ? どこから来ている?」


「ノイズを回復させます」


「同時に向こうに呼びかけろ。急げ」


「了解」


 すぐに副長の指示のもとそれは行われた。

 こっちから無線周波数を合わせて、そのノイズが入らないレベルで無線を開放させる。

 同時に、こっちから何度か呼びかけ応答を要請すると、向こうもこっちの声に反応して応答してくれた。


 ……が、


『あー……、やっと無線の応答があった。全回線に回せとは聞いてたけど、まさか最初の応答が海軍さんからくるとはねぇ……』


「……ん?」


 俺はその声に違和感を覚えた。

 ……いや、その違和感は即行で消え、そのあとある確信に至った。


「……え!?」


「ッ!? な、なんだ?」


 思わず近くにいた副長がビクッとしつつもそう聞いてきたが、俺はそれには答えなかった。いや、答えれなかった。


「(こ、この声……、まさか……ッ!?)」


 そんな俺にかまわず、無線はそのまま続けられた。


「こちら日本国防海軍巡洋艦やまとである。そちらはどなたか?」


『おーう……、しかも最新鋭の。こりゃ参ったわ……』


 と、そんな感じのいかにもマイペースというか、こんなときでも自分なりの言葉を交わす。

 ……間違いなかった。今まで聞いてきたその声に、聞き間違いなんてありえなかった。


 ……で、なぜかそれに反応するのは、


「ッ! このいかにも幼さ全開の声は!」


「なんだ!? どこから来ているんだ!」


「思いっきり若いぞ! 明らかにべっぴんさんの声だ!」


「うるせえぞお前ら少し黙れ」


「ショボーン……」


 この、例の変態共である。なお、すぐに副長が制した。


 まあ、無線はそんなこっちの事情なんて知ったこっちゃないわけで、そのまま続けた。


『えー……、こちら、ただいま敵高雄市総司令部にいます……、』













『日本国防陸軍第1空挺団所属、“新澤真美”伍長です』













「“……ファッ!?」”


 その場にいた俺も含めた全員がそんな声を発した。なお、人間に限らない模様。


 ……は? ちょっと待て?


「(……え? なんであいつ出てんの?)」


 あ、もしかして通信担当なの? あいつあの部隊の中で通信関係担当なの? というかよりにもよってあいつかよ。なんていう偶然なんだろうね。あ、それいったら無線相手が俺たちってところでも人のこと言えんか。


「ちょっと待て! 新澤って、お前確か妹いたって言ってたけどこれ……」


 と、案の定変態共から質問が投げられるが、それに少し呆然としつつ答えた。


「ああ……、俺の妹」


「ファッ!?」


「マジかよ……。お前の妹声からしてめっちゃかわいいやん」


「おいこら」


「新澤の妹ってどんくらいかわいいんだろうな? 結婚できる?」


「おいこら」


「ていうか年2つ下だろ? ある意味ちょうどよくね?」


「うるさいわこら」


 こいつら……、こればっかりは妹を守るという名目であとで即刻処刑だな。うん。


 しかし、われの妹はそんなこっちの事情には一切かまわず続けた。


『現在総司令部にいます。ここから報告することが』


「了解。あとでこちらのほうで無線は中継して全部隊につなげます。では、どうぞ」


『了解』


 すると、少し咳払いを軽くしつつ、一瞬の間をおいていった。


『……えー、現在、午後の14時30分35秒。現時刻をもって、この中国軍台湾方面総司令部は……、』














『無事、我が国防陸軍の手によって“陥落”しましたことを、ここに報告します』













「ッ!? か、陥落ですと!?」


 一瞬この場がざわついたが、それを掻き消すかのように妹の無線の声が響いた。


『はい。現時刻をもって、敵司令部要人は全員戦死、ないし拘束されました。今現在は私のほうで監視しています。……台湾での戦闘は、無事、終結を迎えました』


「よっしゃあ! 向こうも終わったぁ!」


 その時、また軽くではあるが歓声が上がった。

 さすがに歓声を上げすぎて疲れたせいか、少しこちらはテンションは低かったが、それでも喜びを少なからず顔に出していた。


 やまとも、思わず疲れが吹っ飛んだらしい。


“む、向こうも終わったんですか!?”


「みたいだな……。台湾の戦いも終結だ」


“やったぁ~……。これでもう戦争は終わりに一直線ですね……”


「ああ……。そうだな」


 やまともすっかり安心したようだった。


 台湾が無事奪還された。

 司令部さえ押さえれば後はこっちのもの。指揮系統が完全に途切れた烏合の衆の状態では、あの大規模ば部隊は動けない。それぞれで各個撃破されるだけだ。

 敵軍とてそれを知ってるはずだし、あとはこっちから投降勧告したらすぐにでも敵に対して投降しだすかもしれない。

 向こうとてこれ以上の激しい戦闘は簡便なはずだ。もう、これで大丈夫だろう。


 ……ん?


「……あれ? でもなぁ……」


 俺は、一つだけふと疑問に思ったことがあった。


 それが……、







「……今現在は“私のほうで”監視しています?」







 ……ちょっと待ってくれ。たぶん言葉の綾ならぬ日本語の綾的なあれなんだろうけど、普通は“我が軍で”ないし“我が部隊のほうで”っていうはずだよな?

 でも、あいつはあくまで“私のほうで”って言ってたし……。あれ? なんかおかしいな?


 ……まさかあいつが単独で司令部要人全員を制圧したわけじゃないだろうし、一応は部隊単位でやったはずなのだが……。


 でも、なんか引っかかるな……、あいつ、何か隠してんのか?


 そんな俺の思惑にはかまわず、無線交信は続けられた。


「やまと了解しました。それでは、この後は総司令部の指示に従ってください」


『了解。この後は台湾軍の総司令部の指示に従い……』


「……あー、それと、」


『?』


 と、その通信員がふと俺のほうを横目で見て少しニヤッとしたと思うと、そのまま無線に向けていった。


「……ご安心ください。あなたのお兄さんは無事ですよ。重機関銃使って手動でミサイル落とすとかいう人間卒業もいいところなことしましたけど、何とか生きてますよ。ていうか、あんたのお兄さんとんでもないチート性能ですね。昔からですかあれは?」


「おーい」


 こらこら、無線使ってなんつーこと言ってんだい。関係ないことに使うなっての。

 すると、向こうも思わず驚いて、


『ええ!? 大樹兄さんなにしてんのそれ!?』


 と、そんなことを叫んだあとハッとなってコホンッと咳払いするが、まあ後の祭りなのは誰もが悟ってます。


「……お前の妹かわいいな」


「うるせえ」


 そんなことを一人の乗員から言われたが簡単に流す。

 ……まあ、かわいいのは否定しない。事実昔これでもかってほど告白されてるほど容姿と性格はいいし、それに関連して俺のほうに告白相談が大量に着たりとした経験があるからな。

 ……まあ、それなのにあいつときたら全部けったんだけどね。なんとまあもったいないことをしたもんだ。俺なんて告白なんて今までこれっぽっちも……、


 ……あ、ついさっきそれ以上のことを誰でもない艦の化身からされたんですがね。


「何なら聞きます? そのお兄さんの声」


「だから……」


 そんなのに無線使うなっての。今それどころじゃねえだろあいつは。


 まあ、向こうもそれに対しては思わず、


『あ、いえ、それは帰ったらってことで』


「ありゃ、そうっすか」


 当たり前だっての。こんな時に俺が出れるか。


「……あ、じゃあ一言あります? それならいいでしょ?」


『え?』


 と、今度はほかの提案をしてくるが、思わず副長も苦言を言う。


「おいおい、あんまりほかのことには……」


「大丈夫ですって。すぐ終わりますから」


「はぁ……、そうかい」


 いや、止めろよ。そこは止めてくれよ。

 でもまあ、一言ねぇ……。向こうが俺に言うことなんてなんかあるか……?


『……あ、じゃあ、』


「?」












『とりあえず帰ったら生還記念にヘアアクセサリーおごってって言っといてください』


「お前それ前に十分買っただろ!」














 思わず通信員から無線機ぶんどってそう叫んだ。

 あのな、お前前々からそれなにかと記念記念って言っては買ってたろ。どんだけ俺おごったんだって話だよ。最低でも自分で買うにして俺つき合わされるだろ。もうかんべんしてくれよ。


『あ、大樹兄さんおひさ~』


「おひさ~じゃなくって、それもういいだろ」


『え~、ダメ?』


「ダメです。てか、もうそろそろ自分で買いなよ。今まで十分買ってやったじゃん」


『えー? ……じゃあ、』














『友樹兄さんにもおごってもらおうかな』


『こらぁぁぁああああああ!!!』


「あ、思わず入ってきた」














 おい、無線を通じて兄弟妹全員そろうってどういうことだよ。無線こうやって割って入れはするけどなんであいつまで入ってきた。


『一応言っとくけど、僕払う金ないから! それだけ! じゃ!』


 そういうとブツッと無線が切れる。

 ……普段規律に厳しくてこういうわざと私物に使ってるのには絶対首突っ込まないけど、思わず入ってきたか。


 ……と、そうだよ、無線こうやって個人的に支配するのはまずいんだって。さっさと返そう。


「と、とにかく、それに関してはあとで帰ったらな!」


『はいは~い』


 そう返事を返すと、俺は無線を通信員に返した。


 ……ったく、こんなことで無線を使うなって話であって……。まあ、いろいろとマイペースなところもあるのがあいつらしいっちゃらしいが。


「……お前も買ってやりゃよかったのに。なんだ、そんなに出費かさんでるのか?」


 ふと、副長がそんなことを言ったが、俺はそれに苦笑いで返した。


「……あいつ、気に入ったやつあったら即行買うんで……。あー見えてファッションにうるさいんですよ。まあ、最近はこれでも抑えたほうですよ」


「はは……。兄貴も大変だな」


「まったくですよ……」


 長男ってこういうときに大変だからなぁ……。はぁ……。


 そのうち、無線のほうではとりあえず全回線使ってこのことをこっちが中継して伝えておくことになって、ひとまず無線を切ろうというところだった。


 ……が、そこまで言った時だった。


「……ん?」


 その無線の背後の雑音が突然ひどくなった。

 何やらいきなり扉がバンッと開く音があったと思うと、そのままガタガタと物音と人の声が響いた。


「なんだ? そちらのほうでなにか?」


 と、すぐに通信員が聞いたが、それに対して妹はやんわりと答えた。


『あー、大丈夫です。味方が入ってきただけです。……ふ~やっと孤独から解放されたわ~』


「ああ、そうでしたか。……ん、孤独?」


「……え? 孤独?」


 ……ちょっと待て。その場にほかの味方はいないの? いるだろ? 部隊仲間いるだろ?

 え? それはどこいった? 今は言ったのって増援とかそういう系だろ? どういこったこれ?


「あの……、味方って、ほかの味方はその場には?」


『あー、えっとですね……』


 その次の瞬間だった。




 思わず耳を疑うような驚愕な発言をすることになる。




『……そのー……、偶然ではありますが……、』

















『私が、単独で“制圧”しちゃいまして……』
















「…………はぁぁぁああ!!??」



 その瞬間、思わずここにいた俺を含む全員がそんな叫び声をあげてしまった…………

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