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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第8章 ~日台vs中最終決戦! 敵本拠地高雄市陸海空軍総力戦!~
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〔F:Mission 30〕LAST INTERCSPT ~核攻撃阻止へ、思いを託して~

―TST:PM14:25 DCGやまとCIC―






「沖瀬、目標情報の詳細を。同時にモニターにも出せ」


 俺は艦長からの指示にすぐに従った。


「はい。目標情報、広東省梅州基地より2発のDF-21……。どちらも、弾頭からプルトニウム物質反応が検出されています。1発は台湾本土高雄市、もう1発はこの海域です。以後、それぞれ目標Aアルファ、目標Bブラボーと呼称します」


 同時に、目の前のディスプレイ上にその情報を出す。

 中国本土から飛んできたらしいその2発の弾道ミサイルは、それぞれ違う機動と飛翔コースを飛びつつそれぞれの目標に向かっていた。

 そして、どちらも核物質反応が検出されている……。やっぱり、最初の主席の言った通りか。

 となれば、もう向こうに核のストックはない。そして、こうやって欺瞞用のほかの通常弾頭のやつも紛れさせなかったということは、もう弾道ミサイル自体のストックも切れたということだ。


 ……つまり、これを落とせればその瞬間俺たちの価値は決定的になる。アメリカからもまもなく準備が完了し、降伏勧告に入るとの報告が来ているから、それがされればもうこっちのものだ。


 向こうは、状況的にどうしても降伏せざるを得なくなるはずだ。


「了解……。乗員の艦内退避は完了したな?」


「はい。今艦橋から退避完了の報告が来ました」


「よし。では、始めるとしよう。各部最終チェックは済ませたか?」


「前部、後部右舷VLS動作確認完了しました」


「FCSレーダー各部点検完了しました。照射チェックをする時間はありませんが……」


「かまわん。1発勝負だ。衛星通信もいいな?」


「大丈夫です。問題ありません」


「よし……、いけるな」


 艦長は確信を持ち、砲雷長に命じた。


「砲雷長、SM-3の残弾は?」


「ご存じのとおり……、2発のみです」


「……チャンスは、1回のみか」


「はい……、1回だけです」


 そう……。今、この艦に残っているSM-3はたったの2発だけ。

 そして、今きているのは2発。それぞれに与えれるのは1発ずつ。


 ……で、これを外せばもう後がない。






 俺たちに与えられたチャンスは……、たったの“1回”。


 修理後十分満足な動作試験ができたわけでもないぶっつけ本番。







 ……だが、


「……ですが、信じましょう。彼女を。彼女ならやってくれるはずです」


 砲雷長の言葉に艦長もうなづいた。


「ああ……。なに、今までだってそうだったしな」


「ええ……。システムはほぼ万全です。これくらいの誤差なら彼女とて許容範囲内ですし……、だ丈夫です。落とせます」


「うむ……。そうだな」


 そのまま二人とも弾道ミサイルの情報が表示されているディスプレイのほうを真剣な目つきで凝視した。

 ……さっきまで、大樹と艦魂さんが死ぬ気で守ったんだ。まあ、半分以上は大樹だが、その立役者は艦魂さんだな。

 しかし、まさかほんとに落とすとは……。あいつらはもう人間卒業でいいだろう。どっかの旧ナチスドイツの撃墜王やら破壊神やらと名前連なれろよもう。あ、もう片方はすでに人間ではなくて艦か。もう片方がいろいろとおかしいのか。

 150km/hがまっすぐ向かってきたってのにそれを落とすってどれだけ難しいか知らないはずないだろうが、野球経験者からすればあれってもういろいろと早くて嫌になるからな。

 横からバットで振るならまだいいが、真正面から弾ぶち当てるとか、まあ奇跡以外の何物でもないんだが、そう考えたら今までの旧ナチスドイツあたりにいたあの超人たちの説明がつかないわけで。

 ……もうめんどくさいからあれと同じ類ってことでいいや。それなら簡単に納得できるから。


 ……と、そのうちに、


「……ッ! 目標A、Bともに中間段階ミッドコース・フェイズに突入。艦長、そろそろ」


 敵弾道ミサイルがこっちの迎撃する範囲である段階に突入を開始した。

 同じ中間段階ミッドコース・フェイズとはいっても、両者で微妙に弾道が異なる。こっちを狙っている目標Bは弾道飛行の機動だ。

 でもまあ、大まかなのはほとんど同じだからいつも通り迎撃には影響は全然なし。

 ……チャンスが1回だけなのを除けば。


 だが、信じるしかないか。とにかく、今はやまとがしっかりを落としてくれることを祈るばかりだ。


 俺の報告に艦長もすぐに動く。


「うむ……。では、システムをBMDモードに変更。CIC指示の目標、SM-3撃ち方はじめ」


 艦長からのゴーサインに砲雷長が反応した。


「VLS、前部64番、後部右舷32番開放。SM-3諸元入力」


「了解。VLS、前部64番、後部右舷32番開放。SM-3諸元入力開始します」


 いつも通りの手順だった。

 しかし、このときはいつになく緊張している。やっぱりシステムが復旧したとはいえ、しっかり作動してくれるかどうか……。


 ……だが、その心配はどうやら杞憂だったようだ。


「(……お、ちゃんと正常に動いた)」


 VLSの表示がすぐに緑に変わってくれた。

 発射可能。何にも異常がないことを示している。どうやらオーケーっぽいな。

 あとはFCSレーダーの誘導だけど……、


「(……まあ、こうやって弾道ミサイル情報が出てるってことはちゃんと見張ってるな)」


 細かい情報がCICに来てるんだ。こりゃFCSレーダーもしっかり動作してくれているのだろう。

 ……迎撃のためのシステムはしっかり機能している。大丈夫だ。こうなればあとはいつも通りやれば勝てる。


 ……それを見つつ、艦長と砲雷長が少しばかり話していた。


「……これの迎撃が終われば、アメリカもギリギリ動き出すのが間に合うかな?」


「ええ……。アメリカ側からの報告通りにいけば、今のこの時間帯ではすでにオハイオ級SSBNの1隻が行っている中国本土に対する核ミサイルの発射準備が完了し、もうまもなく降伏勧告が始まることになってますし、それが行われれば、中国とてとてもじゃありませんが降伏しか手がなくなるでしょう」


「だな……」


 ここでいうオハイオ級SSBNは、まだ巡航ミサイル原潜になってない数少ないものの1隻のこと。詳しい艦名までは報告されていない。まあ機密関連ですね、どう考えても。

 そこから核ミサイルをいつでも撃てるような状態を作って、さっきも言ったようにこれを突き出して降伏勧告だ。向こうとてこればっかりはもう無理だって悟るだろう。


 すると、艦長が「しかし」と前置きしつつ言った。


「いざ万が一降伏をけるなんて話になったらほんとに撃つのだろうかね……? アメリカとて、いくら大義名分があるとて貴重な核を使いたくはないだろうし、やっぱりやめようなんてことには……」


「それはないでしょう。核1発でも撃てばもうこっちが勝ったも同然なんです。1発だけどこかの過疎都市に撃ち込めばあとは国民が蜂起します。そのあとはもう流れに任せたら勝手に降伏せざるを得ない状況になるかと」


「そうか……。まあ、核は撃たないに越したことはないが」


「大丈夫です。向こうは手を挙げますよ。核の矛先が自分たち共産党のほうにいったらたまりませんしね」


「ふむ……、それもそうか。まあ、流れに任せるしかないか……」


 とりあえず二人で自己完結しちゃいました。


 しかし、そこは結局は自分たちの判断だな。


 俺たちが判断できる問題点としては、さっき二人がやったののほかにもいくつかある。


 まず、ここで出てくる問題として、軍部に支配された共産党と脱出し日本のスパイに救出された国家主席のどちらに対して行うかだが、まあ、最終的にはどっちにもやることになるだろう。また、それは同時にマスコミなどを通じて中国国民にもしらされる手はずとなっている。こうなれば現実を知らされた国民とて黙ってはいない。自分たちの貧困の原因を作らされ、そしてさらに自分たちで始めた戦争にも巻き込まれ、国民の怒りは一気に大爆発するはずだ。ついでに主席閣下も共産党を脱出し軍部に乗っ取られているということも知らせれば、「主席いちばんのきょういがない」と判断した国民は余計一斉に共産党に押し掛け暴動騒ぎになるはずだ。

 こうなれば軍部とてただでは済まない。いくら乗っ取ったとて、主席といったちゃんとしたリーダーは確立されてはいてもそれをまとめ仕切ることは主席ほどの能力がないと無理。たかが軍部の長がやったとて簡単にまとまるはずがない。絶対に崩壊に向かう。


 ……んで、さっき艦長も言ったけど、万が一この降伏勧告をけったとして、まあこっちに対する攻撃能力はないとしても本気で撃ってくれるのかって話だけど、でもまあ撃たなかったら撃たなかったで「アメリカヘタレだなおい」っていう風潮が国際社会に流れちゃうから、それはそれでアメリカもまずいだろうしまず撃つことは確定だと俺は思ってる。

 また、その場合核を撃つ場所も少し問題なんだけど、まあ一番無難なのは中国近海に落とすかめっちゃ疎開の都市にぶち込むか。

 そのほうが人的被害も比較的低くて済む。尤も、その弾着下場所はしばらく死のエリアになりますがね。

 でも、中国も中国で自分たちの核はもうないんだし、完全に主導権奪われたうえでこの勧告だから絶対受けてくるでしょ。そうでないともうこっちとしても勘弁してくれって話になるし、そうなったらここにいる中国海軍と空にいる空軍の皆さんどうしろと。ここまできてまた戦わねばならんのかと。こっちはすっかり共闘ムード一色になっちゃったのに。


 ……ある意味、これの意味も含めて向こうは降伏に向かうだろうな。核の押し付けは軍部としては失敗だったということか。


 結局、あれはただの抑止力でしか使えないんだってこったな。


「(さて……、そろそろかな?)」


 と、そろそろ準備が完了するだろうことを見越してディスプレイを見た時だった。


 ナイスなタイミングで報告が来た。


「SM-3諸元入力完了。本艦目標、A、及びB」


 よし……、何とかスタンバイ完了だな。

 ディスプレイ上でも、残りのSM-3が搭載されているVLSセルの表示は緑のままで固定だし、あとはここから撃つだけだ。

 さっきから目標である弾道ミサイルの情報更新もバッチリだ。どうやらしっかり目標をとらえ続けていてくれてるようで、何とか発射と誘導はできそうだ。

 衛星通信も完璧。


 ……よっし、いけるぜ。


 砲雷長もすぐに反応し指示を出した。


「発射シーケンス開始。沖瀬」


「了解。SM-3発射、35秒前」


 すぐに発射カウントダウン開始。

 今回ばかりはいつも以上に緊張の時間となる。今までのと違って後がないんだ。ほかのSM-3の予備はどの艦にもない。このやまとの2発のみ。

 ここをとらえないと後がない。……チャンスはこの1回のみなだけに、誰もがいつも以上に集中した。

 時間がいつもより長く感じるのはより集中している証拠だ。本音言えばさっさと時間流れろってところなのだが。


 ……静かな沈黙の時間がゆっくり流れる中、カウントは10秒を切った。


「発射10秒前」


 弾道ミサイルはいつも通りの、こっちの想定内の機動をしていた。

 ……まあ、ほかに機動のしようがないから当たり前なんだけどね。

 このタイミングになると、少しそれぞれの弾道ミサイルが少し離れ始め、こっちを狙っている目標Bはすでに上昇を止め若干の降下に入りかけていた。弾道飛行だから当たり前だが。


 ……まあ、それらも含めての諸元入力。最初っから想定の範囲内よ。


「発射5秒……、4……、3……」


 そこからカウントをやめ、少しの沈黙。ディスプレイ上のカウントは止まらず、そのままゼロに達した。


 そして、その瞬間に、


「リコメンドファイヤー、てぇ!」


 そのコールとともに、残りのSM-3が2発、連続で放たれた。


 艦橋前と後部格納庫のほうにつけられた艦外カメラを見ると、SM-3の発射音とともに煙と火炎が吹き出し、そのままSM-3は灰色の空に向けて一直線に飛んでいった。

 雲はさっきより晴れてきていたが、それでもまだ空を支配して元の青空を俺たちの視界からシャットアウトです。

 すぐにSM-3はその灰色の雲にボフッと突っ込んでいってそのまま空を駆け巡っていることだろう。


 ……そしてその誘導は、


「SM-3、順調に飛翔中。……大丈夫です。誘導はしっかりされています」


 システムがしっかり直ってくれたこともあって、SM-3は一直線に弾道ミサイルに一直線に向かっていった。

 そう時間はかからないだろう。迎撃まで、しっかり湯どうして行ってくれることを祈るまでだ。


 艦長も安堵したように言った。


「よし……。あとは、しっかりSM-3が当たってくれることを……」


 と、そこまで行った時だった。


『……ッ! CIC艦橋、報告です』


「? なんだ?」


 艦橋からか。今頃、負傷者の手当てとかでてんやわんやのはずだが、いったい何があったんだ?


 報告って言ってたから、もしかして……、


『報告します。たった今、アメリカ政府から正式な宣言がありました。中国共産党政府に対して、核ミサイルを突き付けた……』










『降伏勧告が、おこなわれた模様です』










 その瞬間、このCICにいる俺たちは少しばかりの安堵感が漂った……。























―DCGやまと艦橋―









『ほう、それは本当か?』


 無線のほうに艦長の声が届いた。

 左側のこめかみあたりを抑えるようにに白い包帯を巻かれ、あと左腕のほうにあった傷を隔壁のほうに上半身を寄りかかってその場に座りつつ治療してもらいながら、その無線でのやり取りを聞いていた。


「はい。この勧告は中国共産党政府向けではありますが、同時に全世界のマスコミやネットにも流しており、事実上全世界の国民がこれを見ることになりました。ネットもありますし、さすがに中国国民も知ることになるかと思われます」


『わかった……。これで、中国は動くか……』


 艦長が少し呟くように言った。


 このアメリカ政府からの降伏勧告は、ホワイトハウスから通じて、サンチェス大統領が直々に全世界に向けて発信したもので、俺たちも周波数を合わせて聞いていた。

 向こうの宣言によれば、どうやら複数の核ミサイルの発射準備がすでに完了したようで、すぐに我が国アメリカをはじめとするアジア各国に対して無条件降伏をする旨の宣言を行わなければ、この核を中国本土のどこかに発射するというものだった。


 まあ、ある意味降伏勧告ではお約束だけど、いわゆる一種の“脅迫”ってやつだな。


 アメリカが受け入れる条件は無条件降伏の一点張り。なお、これの期限は今から1時間だけっていう、何とも厳しい条件を突き付けてきた。

 もう少し待ってやってもよい気がするが、まあアメリカとしてもこれ以上は長引かせたくないだろうし、さっさと回答を出すよう迫るつもりなんだろうな。


 これは中国国民にも知らされる形となった。向こうも焦って、今頃暴動が起こり始めているかもしれない。

 共産党政府がおかれている中南海は地獄だろうな。天安門の前とか大量の民衆が集まり始めているころだと思う。


 これに対して中国政府はどうとるか……。もっとも、主席さんはすでに脱出して今あそこにいるのは軍部だけなんだけどな。アメリカはどっちの宣言を優先するかで少し悩みそうだが、最終的には主席さんの宣言を通すだろう。

 ただの軍部の声なんて聞いてる暇はないだろうしな。その声の力の大きさで言えば主席さんのほうがでかいだろうし、国民もそれを知ればその事実を口実に余計暴動を起こすかもしれない。

 そうなったら軍部とて手に負えなくなり、さすがに降伏の道を選んでこれを抑えることに必死になるに違いないだろう。


 中国が降伏するのは確実だ。問題は、それがいつ行われるかだが……。


『よし、ではそちらはそのまま艦橋で待機。何かあったらまた報告してくれ』


「了解」


 艦内無線はそのまま閉じられた。

 その無線を相手にしていた通信員も、すぐにその場を離れてほかの負傷者の手当てに移った。


 この艦橋内も、最初より負傷者がひどくてどこもかしこも倒れてるやつが運ばれたり治療がされているやつがいたりと、悲惨とはいかないまでもそれにそこそこ近い状況だった。

 さっきの爆発の影響で、艦橋の窓ガラスは全部パリーンと割れてしまい、ふちのほうに少し残っている程度でしかなかった。

 また、それのおかげで爆風自体が艦橋内にも入ってきたようで、艦橋内部の前上方に設置されているモニターのいくつかが使えなくなった。設置部がひしゃげて中のコードとかが垂れてしまったり、ひどいのではそのモニター自体が落ちて画面が割れてしまったりしている。

 それでも残ったものに関しても、少し画面のほうで砂嵐がかかりかけていて、もとから移っている映像が少しだけ見えにくくなっていたり、音声にノイズがかかっていたりと影響は少なからず残った。

 しかし、それ以外の操作基盤とかには影響はほとんどなく、生き残ったモニター自体も使えなくはないのでまだマシってところか。


 ……で、俺なのだが、


 SM-3が発射される少し前から艦橋内部に退避して“無理やり”隔壁を占めたのちに、その隔壁に座って背中から寄りかかりつつ傷ついた部分の理療を受けていた。

 ……無理やりっていうのも、さっきの爆発の影響で隔壁自体が少しひしゃげたらしくて、中々うまく艦橋のところとかみ合って閉まってくれなかった。

 で、どうにかして閉めようにも中々閉まらないからどうすればと思ったが……、









「あ、実は俺さっきキスされてさぁ……」


「んだとゴラァァァァアアアアアアア!!!!!」









 その瞬間隔壁を閉めるべく必死に内側に引っ張っていた変態共×3はその怒りに任せて思いっきり引っ張ったらしっかりガシャンッとしまったっていうね。周りは違う意味で引きました。違う意味で。

 そこら辺はやはり変態共か。そのあと周りのいろいろと微妙な視線を受けてもそれらは全部受け流し、即行でそいつらからの質問攻めにあったが、まあ普通に「こうしたほうがお前らさっさと閉めれるだろ?」っていうことの一点張りで言ったら向こうも諦めた。

 ……いや、そりゃそうでしょ。さすがにこれを事実ですって言えるわけないじゃんか。

 そうなったらこればっかりは確実に俺は殺される。いろんな意味で。今現在そうでなくてもそこそこ負傷してるってのにこれ以上やられたらもう医務室行きだって確実に。


 ……まあ、そのおかげなのだろうかね。あいつはもうね。うん。


 ……どういうことかはすぐに判明する。


「……よし、オーケーです。立てますか?」


「いや、大丈夫です。ありがとうございます」


 俺はその場で未だに少し痛む包帯にまかれた左こめかみの傷を抑えながらゆっくり立つと、ガラスが消えた艦橋窓から少しばかり勢いよく入ってきている風を受けつつ外の景色を見る。

 本当は今さっきSM-3撃った時にも発射煙が入ってきたり轟音がとどろいたりといろいろとうるさかったりなんだったりしたが、今は静かだ。

 そして、その艦の周りには……、


「(……お~どこもかしこも日台中3ヶ国の艦船でいっぱいだわな)」


 日台中、この3ヶ国の艦船が外周をかこっていた。

 すぐ両サイドに同じくイージス艦。といっても、イージス艦といえるのは左舷にいる丹陽さんだけで、右舷にいるのは中華版イージスの最新型である昆明級の成都さんです。

 その周りをさらに日台が囲んで、そしてその周り少し離れたところに中国艦。

 ……輪形人にしては思いっきり間隔が狭いな。うん。


「……もう少しで弾着だ。頼むぜ」


 あと弾着まで1分もないはずだ。

 生き残っているモニターには、例のアメリカの記者会見映像と、あともう一つのほうに例の弾道ミサイル関連の情報が映っていた。

 前者のほうでは未だにアメリカ大統領のサンチェス大統領が記者からの質問の返答に躍起になっていたが、俺が注目したのは後者だった。

 そこに砂嵐交じりで移っている情報では、その放たれた2発のもとには“Nuclear Warhead”の英文字。

 ……訳は前にも言ったと思うけど、念のため言っておくと“核弾頭”です。

 2発だけできたのがマジでありがたかった。こっちもギリギリ2発だったし。


 ……さて、


「(……あとはこいつがしっかり誘導してくれるのを祈るまでだけど……)」


 ……けども、うん、














“♪~♪~~”


「……ご機嫌ですねおい」

















 さっきからこんな感じで上機嫌に鼻歌歌ってるほど余裕だった。

 いや、ある意味いつも通りだが。


 それは周りにも聞こえてるようで……、


“……ねえこんごう”


“? なによ?”


“さっきからあの親友やけに機嫌いいけど……、なんかあったの?”


“さあ……? キスでもされたんじゃないの?”


“いやいやなんでやねんと。もしかして逆だったりとか?”


“いやいやそれこそまさかでしょ。自分からしてなんで上機嫌になるのよ”


“ありえなくはない”


“え~?”


「ところがどっこいそれがあり得るんだよなぁ……」


 あいつの上機嫌の原因は間違いなくそれであります。ハイ。


 ……しかもそのせいか、


“今回のやまとさんの誘導すごい正確ですね……、いくらシステム復旧したとはいえ少しばかり手負いのはずなのに”


“ほんとねぇ……。むしろ最初より性能が上がってる気がするのは気のせいかな?”


「…………」


 この成都さんと丹陽さんの会話にいったいどういう反応をしてやればいいのか誰か教えてください。

 ……上機嫌になると性能まで上がるのか。じゃあいつでもあいつの機嫌上げてやればいいのか?って考えたがその場合いろいろと被害が周流するのが俺だから少し自重しておこう。


 ……まあ、とにかくそんなので性能が上がるんなら儲けもんだけれども。


「……やまと、誘導うまくいってる?」


“完璧です♪”


「……そ、そうか」


 この上機嫌はしばらく続きそうだな。どこぞの軍艦擬人化ゲームで言ったらキラキラ状態のあれか。いや、もしかしたらあれ以上かな。


 ……と、そんなことを考えていたら、


“……あ、大樹さん”


「あん?」














“ついでですのであとでもう一回やってもいいですか不意打ちで”


「おう調子乗ってねえでさっさと落とさんかい」















 これ以上は勘弁してくださいお願いします。いや、冗談抜きで。

 せめてギャルゲーとかラブコメ映画とかでそういう系の耐性ついてからでいいだろ?


「せめてそれに耐性ついてからな?」


“あ、つまり耐性ついたらやっていいってことですか?”


「この野郎……」


 こいつ、誘導中だってのによくそんな余裕だな。ある意味ですげえわ。ある意味で。


 ……ていうか、


「……つか思ったんだけどさ」


“はい?”


「いや……、さっき左の頬にしてきたろ?」


“はい”


「でもさぁ……、あれ、やろうと思えば口にでもできたよね?」


“…………え?”


「だからさぁ……、本音やりたかったけど、」













「やる勇気なかったってことだろ?」


“あ、すいませんちょっと誘導に集中させてくださいね~”


「あ、逃げたなこの野郎」
















 くそう、こういう時に限って都合よく。

 ……仕方ない。あとで問い詰めようか。それに関しては。


 ……てか、俺もよく考えたら、


「(……案外嫌な気分しなかったな……)」


 いざ突然やられたらあんまりそういやな気分にはならなかったな。当たり前だけど。

 ……はぁ、耐性ついてないはずなのに。おかしいものである。


 ……すると、


“……お、見えた。大樹さんあと10秒です”


「ッ!」


 さっきとは打って変わって真剣な声。

 どうやら弾道ミサイルを確認したようだな……。あと10秒か。


 すぐにCICからも報告が来た。


弾着インターセプトまで10秒。……9、……8、』


 カウントダウンが始まった。この声はカズのものだろう。

 ……緊張の瞬間。ここにいたものだけでなく、さっきまで少し余裕こいていたやまともこればっかりはしっかり真剣になる。最後のシメだからな。

 周りが一斉に静かになる。響くのと言ったら波の音と風の音。そして無線から響くカズのカウントだった。

 それ以外はみんな口を閉じて沈黙を保っている。そしてその視線は、俺のものも含めて全員例の弾道ミサイル情報が出ているモニターに向かっていた。

 そして、少し長く感じた10秒がどんどんと消費され……、


『5……、4……、スタンバイ……、マークインターセプト!』


 カズの弾着宣言とともに、SM-3が核弾頭ミサイルと重なった。

 すぐにSM-3の反応が消え、代わりの弾道ミサイルを示すアイコンが点滅を始めた。

 弾着判定。さて、落とせたかどうか……。


 判定自体は短いはずなのだが、これがまた長く感じられるのがまた人間なんだなって思う。


「(ど……、どうなった……?)」


 俺がそう思いつつモニターを凝視し続けていると、


“……大樹さん”


「ん?」


 やまとから声をかけられる。少し真剣な声質。

 なに? 何の報告? と思ったが……、


“……ふふっ”


「え?」


 少し鼻で笑った後、やさしい声で俺に言った。


“……別にそうこわばらなくていいですよ”


「……え?」


 その答えの意味を示すこと。

 それは、すぐに判明した。


 CICかただった。


『……ッ! こ、こちらCIC! か、核ミサイルが……』


 その瞬間、モニターの弾道ミサイルのアイコンが……、
















 “2発全部”、消えた。

















「ッ! き、消えた!」


「と、ということは……ッ!」


 そして、それに興奮したようにカズが答えた。


『はい! ……な、何とか、核ミサイル2発全弾……ッ!』


















『無事、迎撃に成功しました!!』




















 その瞬間、ここにいた全員の歓声が爆発し、あたり周辺に響いた…………

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