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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第8章 ~日台vs中最終決戦! 敵本拠地高雄市陸海空軍総力戦!~
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つないだ希望

―TST:PM14:24 DCGやまと右舷見張り台―







『や……、やったぜぇ!!!』


『うおぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!』


 一瞬の沈黙の間をおいてカズが無線で思いっきり叫んだとともに、周りの乗員の歓声が大爆発した。


 俺はその場で呆然としながらその無線からガンガンと響く歓声を耳にしていた。


 ……一瞬どういうことかが理解できなかった。なぜか。


 ……え、待ってくれ。


 ……俺……、


「……やった……、のか……?」


 その疑問は、俺の右耳にかけている無線機ヘッドセットのスピーカーが持ってくる、ガンガンと響いている歓声が答えを示してくれた。









『っしゃぁぁぁああああああああやったぜえええええええええ!!!!』


『やったぞ! まだ無事だ! 俺たちはまだ戦えるんだ!』


『やりやがったよあいつら!! 新澤とこのやまとがやりやがった!!』


『まだだ! 俺たちはまだ希望は残ってるぞお!!』


『おい! ほかのやつらにもつなげ! 報告しろ!』








 すっかり歓喜の声に包まれている。自らの喜びをとにかく爆発させていた。

 こいつらだけじゃない。

 ほかの艦でもそのようで、まだ俺の目が覚醒してない関係でかすかにだけど俺の視線の先にいた敵味方の艦船から人が見える。艦橋脇の見張り台か。

 何やらこっちに手を振っているのが見えた。というか、今気づいたが手すりが全部爆風が強すぎたみたいで内側に反ってるじゃないか。しかも一部だけ溶けてるし。今はもう冷えて固まってるが。

 ……これがとけてなんで俺は無事なんだよ。鉄すら軽く溶けるレベルの熱風を受けてなんで俺は溶けないでほぼ無傷?

 疑問が疑問を呼ぶとはこのこと……、ではないな。


 また、ここにいるやつらだけじゃなかった。


 ほかの艦と、そして、空の奴らもだった。

 乗員が無線回線を全部につなげたらしい。そっち方面からの歓声も聞こえてきた。











『こ、こちら丹陽! それは本当か!』


『本当です! まだ俺たちは迎撃が可能です!』


『や、やったぞぉ! やまとは無事だ!』


『うぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!』


『やってくれたぞ! やまとがやってくれた!!』


『日本の巡洋艦がやりやがった! ほんとにやってしまったぞ!』


『奇跡だ! しんじらんねぇ!!』








『お、落とした!? マジでか!?』


『おいおい新澤の兄貴チートだろ!?』


『っしゃあああああ俺の兄貴がやりやがったぁぁぁあああああ!!!!』


『き、君の兄貴が……、なんてこった……』









 さりげなく友樹の声まで聞こえてやがるし……。あいつも来ていやがったのか。

 まさか、最後の最後中国のSu-35フランカーとペア組んでたのってあいつか? ……って、まさかな。俺としたことがいきなり何考えてるんだか。そう都合よく来るわけないっての。


 そして、その歓声は人間だけじゃなかった。


 俺だけが聞こえる、彼女らの声も聞こえてきた。ガンガンに。








“お……、おとしたぁ!!??”


“きたぁぁぁああああああおちてたあああああああ!!!”


“どこもほとんど傷がない! やまとは無事よ!!”


“おっしゃあああああああああ生きてたぁぁぁああああああああああ!!!”


“やったぜ! あの二人ほんとにやりやがった!!!”


“やってくれました! やってくれましたぜあのコンビが!”


“ヒャッホォォオオオオオウ!! 奇跡が起きたぁぁぁああああ!!”


“サンキューヤッマ! あとアッサ! これでまだ私たちは希望が持てる!!”








 誰が誰だかすっかり聞き分けついたが、どこもかしこもすっかり歓声の渦だった。ていうか、サンキューヤッマとかアッサとか。それって野球のやつだろ? 誰か打ったりしたらいうサンキューなんとかってやつ。野球大好きかよあきづきさん。ほんとテンション高いな。


 ……ははは、ここまでいくってことはあれか?


 未だに実感がわかないんだが……、これ、俺ほんとに……。


「……落とした……、のか?」


 まるでなんかの大会で優勝したのに全然喜び云々がすぐに来ないで少し呆然としているあれとにている。

 だが、それが俺の今の本音だった。

 未だに実感がわかない。さっきまでのどんどんと流れていく緊迫した状況が、まるでうそのようだった。

 あの時のスピード感というか、とにかくいろいろと動いていたのがまだ体と頭に残っている。あれだけ騒がしかったのに、今はまた違う方面で騒がしい。


 ……俺はそれらの声を同時に聞きながら、徐々に現実を理解し始めた。


 ……ああ、俺ほんとに落としたのか。

 いやー、本音言えば半ば無理ゲーかなとか思ってたあれが、実際に落ちちゃったか……。まあ、今更こんなこといっても胡散臭いことこの上ないがな。

 ……だが、実際に俺の目の前、細目で見えているのは、紛れもない空だ。

 もしあれが失敗してたらたぶんどこもかしこも真っ黒の地獄だろうな。まあ、地獄が真っ黒な保証はないが。

 でも、それでも、この俺が見ている景色が俺の命はまだ落ちてないことを何より示していた。そして、このヘッドセットや直で耳に届いてくる各人各様の大歓声。


 ……俺は、やっと、俺が成し遂げたそのことを十分に理解した。


 ……そして、


「……し……ッ!」



 その瞬間、俺の体とかを襲ってた痛みとかその他諸々が気力によってどこかに吹っ飛び、各部の神経や意識が回復した。気力のすごさである。

 そして、俺は思うがままに叫んだ。













「ッしゃああああああやったぜヒャッハぁぁぁぁああああああ!!!!」













 思いのままに叫んだのがこれだった。

 何とも歓喜の叫びとしていろいろ交じりすぎだというご指摘は甘んじて受ける。


 だが、俺はにわかに信じがたいのとともに、とてつもない達成感に満たされた。


 やったんだよな……、俺。マジで、無理だとと言われていたのを落としたんだよな。

 俺の目の前に広がる景色は間違いでも夢でもない……、現実の、俺が生きている現実世界の空だ。これが青空だったらどれだけいい気分だったかね。

 しかし、灰色でも別にいいさ。それでも、この空をまた見れたことに大きな喜びを感じていた。

 まだ生きてる……。俺は、その喜びを全身を使って感じていた。


「よっしゃあ!! やったぜやま……」


 と、俺はどこかにいるであろうやまとを探そうとした時だった。


「てうわぁあ!? こ、こんなとこにぃ!!??」


 なんでか知らんが、“俺の目の前で必死になって抱きしめてた”。


 うん、ごめん。なんかいろいろと勘違いを起こされる説明だとは思ってる。だけど一言で説明するとなるとマジでこうなるんだよ。なんでか知らないけど。俺だってどういうことなのかほんと意味が分からないよ。わけがわからないよ。

 やまとは、俺が後ろの壁に背を持たれて足を延ばして床にぐたれてる俺の前から、膝立ちで俺の伸ばしている両足の向かって左側から、左肩あたりを俺の顔の少し左横にずらして手を俺の背中の後ろに回している。やまとの顔は俺の左肩の少し上の前あたりにあった。

 ……あー、最初の背中の感覚とか、腹の上あたりの重量感とか、全部こいつのか。どうりでや若いと思った。というか、なぜ気づかないんだよ俺。気づけよ。いくら艦魂とはいえ触った時の質感とか完全に人間なのになんで気づかないんだよ。さっきまでの俺どんだけ神経と意識が体にいき届いてなかったんだよ。


 ……と、少しツッコミたいが……、


「お、お前なんでこんな……」


 と、いきなり抱きしめられる理由が見当たらず少しあたりを見渡した時だった。


「……ッ! あ、あれって……」


 俺の視線の先には、さっきまで俺が手にしていた12,7mm重機関銃M2が横たわっていた。

 俺の少し膝を境に軽く折り曲げている右足の右先すぐそこにあった。それは、さっきの爆発時の爆風とか熱風とかにあおられたようで、砲身がぐにゃりと折れ曲がっている。いや、それ以外にさっきの固定台から脱落したときに砲身から落ちたのか? でも不自然だな。


「(……なんであそこから落下してこんな落ち方するんだ?)」


 砲身は降り曲がっている。ただ単に風やら熱風やらで折り曲がったにしてはいくらなんでも降り曲がりすぎだ。

 明らかにこの見張り台の床に砲身から落下してそれがとどめになったようにしか見えないが、しかし砲身は海を向いていたのにどうやったらこんな状態に折れるんだろうか? というかそもそも、あの爆風ならこれ飛んできてもおかしくはな……、







 ……あッ!






「……まさか、お前……」


 この、こいつが俺の目の前で抱きしめてる状況。

 ……いや、“盾”と表現すればいいのだろうか。


 まさか……、こいつ、この重機関銃が飛んでくるのをいち早くしって……?


 ……はぁ~、


「……俺何回こいつに助けられれば気が済むんだよ」


 もはや何度こいつに命を救われたのか数えるのがめんどくさいな。どれくらいだろうかこれ?

 はは……、俺からお前を助けるってドヤ顔してたらこのざまかい。結局、最後の最後に助けられたのは俺だったか。

 ……俺が助けるとかどうとかドヤ顔で言っていたらこのざまだよ。結局俺が助けられてばっかじゃん。


 俺はそんなことを考えると、またすぐ左目の前にいるやまとの顔を横目で見た。

 未だにこわばっている顔があった。目を閉じて何かを願うかのようだった。


 ……はぁ、ったく、


「(……無茶しやがってこのやろう)」


 俺はそう思うと、空いていた右手をやまとの背中に回して、


「ふっ」


「ひゃぁ!」


 すぐ目の前にあった左耳に向けて軽く息を吹きかけてこわばっていた体をほぐさせると、そのまま左手を押した。そのままやまとの体が俺の胸元と接し、軽く右手で抱きしめた。

 やまとの顔が俺の左肩のすぐ上に移動する。


 ……いたずらにしては少し度が過ぎたか? まあいいか。


「……もう終わったぜ?」


 俺はそう大和に向けて一言かけると、やっとこわばった顔を取っ払ったやまとがいったん俺のもとから離れて俺と同じ目の高さで視線を合わせると、少し呆然としていった。


「……え、ミサイルは?」


「……は?」


 で、いったのがこれである。

 ただ単に即行で答えいっちゃうのもつまんないので、少し遠まわしに言った。


「……自分の目で確かめな」


「え?」


 するとやまとは後ろのほうを見た。

 そこには相変わらず灰色の空に、藍色の海。そしてそこにたたずむ日台中の艦船。

 ……さっきと変わらない景色。紛れもない、現実世界の景色だった。


 やまとはそれを確認すると、相変わらず呆然とした顔でまた言った。


「……え、あれ、ミサイルは?」


「いや、みりゃわかるじゃん。落としたよ」


「え?」


「え?」


「……」


「……」


 ……いや、そんな沈黙されても困るんですがそれは。

 何か言ってくれよ。そんな沈黙されたらこっちとてどんな反応したらいいか困るんですが。お前は最初の俺かっての。


「……いや、だから、落としましたって」


「え、お、落ちたんですか?」


「ああ、落とした」


「え、じ、じゃあ……」


「ご安心を。ダメコン曰くFCSレーダーとかVLSとかの被害は軽微で済んで修理も即行で終わるってさ。核攻撃阻止は、十分可能だよ」


「ッ……!」


 すると、やっと状況を理解したようだった。

 一瞬目を見開いて驚いたと思ったらすぐに涙目になって……、え? 涙目?


「え、ちょ、え?」


「……う……、」


「え?」


 そのまま目をつむって涙目状態になったまま、











「うわぁぁぁぁぁあああ大樹さぁぁぁぁあああああん!!!」











「え、ちょ、グハァッ!?」


 そのまま思いっきり両腕を俺の背中に回して抱きしめた。自らの顔も俺の胸元に預け、そのまま泣き叫んだ。思う存分に。


 ……え、てかちょっと待って。いや、マジでちょっと待って!


「お、落としたんですよね!? 落としたんですよね私たちぃぃぃいいいいいい!!!!」


「うん落とした! 落ちました! 落ちましたからそれ以上締め付けるのやめろぉぉぉおおおお!!!」


 こいつの抱きしめる、いや、もはや締め付けるといってもいいほどのこれの腕力がひどく強かった。

 そうだよ。すっかり忘れてたよ。こいつの腕力がいろいろとひどいってのをすっかり忘れてたよ。前に一度やられて以来少しばかりやられてなかったからすっかり忘れてたよ。

 いや、ていうかこいつの腕のどこにここまでの腕力あんの!? 見た限りそれほど腕太くねぇよ!? むしろ中の下くらいで若干細い部類に値するんだけど!?

 なに!? 兵器だから艦魂単体の力も人間とは比べ物にならないの!? それって視力だけの話じゃなかったの!? こんな物理的な面でもやばいの!?

 あ、てかまって! マジでまって! 痛いってマジ痛いっていやウソとかでない死ぬ死ぬ死ぬ死ぬせっかくここで命拾いしたのに変なとこで死にかけてるっていやマジで助けて!


「うわぁぁぁぁあああああよかったぁぁぁぁあああああ!!」


「こっちは全然よくねぇぇぇぇえええええ!!!!」


 そしてこんだけ叫んでも全然反応がない外周。

 おかしい。これだけ叫んだら何かしらの周りの反応が来るだろ!? 艦橋の人! 誰かこれ聞こえてるだろ!? 助けてくれよ! いやウソとかでなくマジで死にそうなんだって!

 いい感じに締め付けられるあたりがものの見事に胸元回りで肺と心臓が圧迫されてるです! 軽く呼吸困難になりかけてます! 死にます! このままだとそのまま点に召されます!


「待って! わかった! うれしいのはわかった! わかったからそれいったんほどけぇぇぇぇええええええ!!!」


 と、最後の力を振り絞ってそう叫ぶと、


「え……? あ、ああッ! す、すいません!!」


 やっとほどいてくれた。即行で俺はそのままグテーと背中を後ろの壁にもたれて瀕死直行です。

 まあ、ギリギリ死にはしないからいいが、これ、しばらく動けそうになくね……? あれ? これむしろこっちでの被害が大きくね? さっきの爆発で俺が受けた被害よりひどくね? 気のせいかな?


「だ、大丈夫ですか!?」


 自分でしてしまったことを察して思わず慌てたように俺に声をかけるが、俺はそれに対して少しかすれ声で言った。


「て、天に召されるところだったわ……」


「す、すいません……、つい……」


「ていうか……、一ついいか?」


「え?」


「お前……、腕力強いのな……」


「……」


「……」


 ……と、また沈黙の時間ですよ。

 おいおい、これ何回やればいいんだい。


「……ま、俺は無事だよ。何とかな」


「はぁ~……、よかったぁ……」


「ったく、お前いくらなんでも心配しすぎだろ……、あんな絶叫で泣き叫ばれてもこっちの耳がキンキンと……」


「いや、だって……、だって……ッ!」


 あーわかったわかった。だからそんな涙目になるなって。もういいって。

 そのまままたあれやられたらたまらんからもういいって。


 俺は少し「はぁ~」と軽くため息をつくと、右ポケットから白い布を取り出す。

 ……まあ、布ってか、ただのハンカチですが。


「ほれ」


 俺はそのままやまとの顔の前に差し出した。


「?」


「……お前の顔に涙は似合いませんってね。とりあえず涙拭いとけ」


 と、全然持てない俺がラブコメに憧れてこんな決め台詞をいってみたりするが、俺みたいなのが言ってもただ単に気持ち悪いだけか。

 こーいうのはイケメンだけの特権ですかそうですか……。あー、俺それほど顔よいわけでも悪いわけでもないから微妙だわな。


 そのままやまとは泣きそうなのを耐えるように思いっきり目を閉じると差し出されたハンカチを奪い取るように受け取るとそのまま両目の涙を拭き始めた。


 ……それを見つつ、俺は一言言った。


「……ありがとな。守ってくれて」


「え?」


「いや……、ん」


 そういって俺は右手で俺の右足のほうに未だに転がっているM2重機関銃を指さした。

 それを見ると、やまとは「あー」と思い出したように言って涙を軽くふき終えると、俺のほうをかるくにこっと笑っていった。

 それをみて大体の言いたいことを察しつつ、俺はさらに言った。


「……どうせ、そのほかの熱風とか爆風とか、それも防ぐつもりでやったんだろ? どうりでM2が飛んできたりそこの鉄製手すりが軽く溶けるほどなのに全然俺には被害ないし」


 こいつが俺の目の前に出てきて盾になったってことは、まさにこれのほうも説明がつくはずだ。

 よく見れば、床に散らばってるM2の砲弾の薬莢も、なんかやまとがいるところを境にY字に分かれてるしな。


 すると、どうやら俺の推測が正しかったらしく、「ぇへへ……」とつぶやきつつ右の頬をポリポリ右手の人差し指でかきつつ言った。


「まあ……、気が付いたら、ね」


「……気が付いたら、ねぇ」


 何ともこいつらしい理由だな。気が付いたら体が勝手に動いてたっていうよくあるパターンですねわかります。

 ……しかし、これのおかげで俺は大けがしないですんだってことだよな……。まったく、何度も思うが、俺はいったい何度こいつに助けられたら気が済むんだと。


「……守ってくれたんだよな。これから。飛んできたのか?」


「爆風にあおられたようで。いち早く大樹さんの顔に向かいそうになるのを見つけたので思わず」


「ほ~……」


 しかも顔か。こんな約40Kgの重量物が俺の顔に直撃したら即行で押しつぶされて絶賛天国行きだな。しかも爆風にあおられたおかげで威力はでかいはず……、て、え? ちょっとまって? じゃあつまり……、


「……ちょっと待て」


「?」


「お前……。あれ受け止めたってこと?」


「ええ……、まあ」


「……なんでそれでけろっとしていられるんだよ……」


 さっきも言ったけど、あれの重量は約40Kgのそこそこな重量物。そして爆風という名の追い風もあってその速度と威力は大きなものがあるはずだ。

 それを背中に受けたらただで済むはずがないのに……、


「あれ? 言ってませんでした? 私、痛いのには慣れてるんですよ?」


「いや、でも……」


「それに……、」


「え?」


 すると、やまとは軽く細目になって一息つくと、静かな声で言った。


「……私を撃ち落した人が死ぬのを見たくないので……」


「ん?」


 私の……、何をで?


「お前のなんだよ」


「いや……、そこは察してくださいよ」


「は?」


 やまとは右手を胸に当てて目をそらした。

 ……いや、そらされても困ります。あと、なんで軽く赤面してるんですか? 頬が赤いですけど?


「は?って……、さっきの会話、まさか忘れてませんよね?」


「え? ……あー」


 と、俺はその言葉でやっと何が言いたのかを思い出した。


 ……あー、うん。わかった。そういうことね。


「……はは」


 俺はそう軽く笑うと、空いていた左手でやまとの額を軽くついた。


「あいたっ!」


 そう一言言って両手で額を抑えるのを見つつ俺はさらに言った。


「え? なに? 俺一度に二つ落としちゃったの?」


「前代未聞ですよ? 手動で二つも落としたのって」


「はは……、こりゃあ俺も予想外だわ。まさか本気で落ちるとは思わなんだ」


 少し遊び半分でした。まことに申し訳ない。


「はぁ……。まあ、落ちたといっても、半ば周りの無線の流れにのった状態ですがね……」


「あれに流されたのは俺もだよ。……まあ、」


「?」











「俺自身も、あながち間違っちゃいないからいいだろ?」











「……お互いに、でしょ?」


「……まあな」


 ま、あの変態共の追いやりがなかったらこうやった会話もできないわけで。

 ……まあ、互いの気持ちが同じだってことがわかったしいいか。なんとなく途中から予想はできてたけど。


 ……で、


「……そういえば、今何時だ? 俺途中から気絶して時間間隔わからんのだが……」


「えっと……、あ、今PM14:24回りました」


「ふ~ん……、もうそんな時間か」


 というか、艦魂って時間把握正確なのな。初めて知った。

 迎撃から1分経過したところか。

 向こうの宣言が正しければ、あと1分で核攻撃が始まるな。ダメコンも間に合うって言ってたし、あとはどうにかな……、




 ……あ。




「……そういえばさ、」


「?」


 この時間で思い出した。

 ……この時間帯って確かあれだったよな……?


「……なあ、確か、この1分前のPM14:23ってさ、“沈んだ時間”だったよな?」


「……あー、そういえば」


 本人も思わず忘れてたっぽいな。まあ、あんま覚えてないだろうしそもそもいちいち気にしてないか。


「……今回は、死ななかったみたいだな」


「……ですね」


 危うくあの時間と同じ時間にやられるところだったってことか……。まったく、こんな都合よく時間あうかね普通?


「……まさか、神様もこれを狙ってたのかな?」


「え~? いや……、まさかぁ」


「でもさぁ、俺たちをわざわざ出会わせたようないたずら好きの神様だぜ? ……そこらへん、細工しててもあながち納得できそうでね?」


「もし本当にそうだとしたらいったい私たちは何度神様にもてあそばれれば……」


 まあ、それもあるからこういう偶然って面白いんだがね。または、ただの神の導きによるものか。

 ……歴史は繰り返す。いや、まさかここまではいかないか。なんかどこにでもこれが当てはまりそうだなおい。


「……まあとにかく、まだ俺たちは生き残ってるし、希望はつないだか……。まだ、俺たちにはチャンスありだぜ」


「はい……。あ、そういえば大樹さん傷とかは……?」


「あー……、まあ、お前のおかげで別にそれほど大きなのは……、ッ! イテッ!」


「ッ! ひ、大樹さん?」


 少し起き上がろうとした時にふと頭に痛みを覚え、左手を当てた。

 左側のこめかみあたり。そこはさっき何かがしたたるような感覚もあったところだが……、


 ……あー、やっぱり、


「あちゃ~……、やっぱ皮膚切ってたか」


 案の定、何らかの破片が皮膚を切ってたようだ。

 俺の手には血がついていた。少し生ぬるい。

 やっぱり出血か。どうりで痛いわけだわ。


 すると、それを見たやまとは慌てていった。


「ひ、大樹さん血が……ッ!」


「いや、別に心配には値しねえよ。これくらいの傷ならすぐに……、あっいてッ!」


 しかし、少しでも動こうとするとその出血部あたりが少し傷んだ。

 ぐぬぬ……、破片は破片でも、相当大きめの破片が当たったみたいだな。

 皮膚切った程度で済んだのは幸運だったかもな……。中身の頭蓋骨あたりもいたんだかこれ?

 あんまり無理に動かすわけにはいかないなこれは……。こりゃ航海長と同じく安静を強要されるパターンだな。とりあえずすぐに袖で手についた血をふき取った。それほど多くはつかなかったら即行でとれる。


 すると、それを見ていたやまとは相変わらず慌てつつ何か身の回りを探していると、ふと右手に持っていた俺がさっき渡したハンカチをみて、ハッと思いついたように言った。


「あ、ま、待っててください! 今拭きますから」


「え? いや……、これくらい何とも……」


「いえせめてここで軽めでも傷口抑えとかないとまた黴菌が入って……」


「そんな大げさに気にせんでもいいと思うが……」


「ダ メ で す 安 静 に し て く だ さ い」


「アッハイ」


 まったく、お前は俺の親かっての。

 艦魂とはいえ結局は女性か。母性本能かなんかですか? それって艦魂にも適用されるんですか? あ、いや、こいつの性格上の問題か。


 ……てか、ちょっと待ってくれるか?


「お前……、何やってんの?」


「え? 何って……、」











「唾つけてますけど?」


「なぜに!?」












 何やら手に唾をつけてハンカチに映していたが……、てかちょっと待って。治療したのはわかるけどいろいろとツッコませて。

 まずさ……、


「……なんで唾いったん手に付けたのにわざわざハンカチに移すわけ?」


「いや、手でやったら手の黴菌ついちゃいますよね?」


「ハンカチも大概だよ。それ使用済みだから」


 俺そのハンカチ何回か使ったから結局黴菌ついて意味ないぞ? むしろ悪化の可能性があるんで勘弁願いたいんですが。


「あー……、じゃあ無理ですね」


「だろ? そもそも手に移す時点でもうギリギリアウトだから」


「ふむ……、確かに」


 よしよし、納得してもらえたようで何よりだ。

 まあ、拭いてくれるのはありがたいけども、そもそもの問題唾液使えば消毒になるって医学的にはあんまり好ましくないから。殺菌能力はあるにはあるけど唾液自体にもうすでに黴菌入ってる可能性が大だから。


 すると、また新たな方法を思いついたようで、またハッとした様子で言った。


「……あ、じゃあ、」


「?」
















「余計なもの使わないで直に舌使って舐めればいいのでは?」


「はぁあいい!!??」

















 おいちょっと待ていろいろと待てマジでちょっとまてやおいこら。


「なぜそうなる!? だからってなぜ舌でなめるという発想に至るんですかあんた!?」


「いや、これだったら余計な黴菌入らないですよね?」


「いやいやいやいやいやそもそもこの治療法自体あんま好ましくないって話であって!」


「ご安心を。応急処置には使えますしそもそも艦魂の唾液が黴菌含まれてるわけないじゃないですか大樹さんたち人間の皆さんの食事食べてるわけじゃないですし」


「いやそういう問題じゃなぁぁぁああああああい!」


 待ってくれ! マジで待ってくれ! そのようなラブコメ要素は俺全然耐性ない! 今までそんなことされたことないから無理! 妹にすらされたことないのにお前からやられても困る! 違う意味で困る! ていうか艦魂の唾液って人肌につけれるのかよ!?

 てかちょっと待って! 何準備してんの!? 顔近い! 近いっていったん離れろォ!


「なに!? お前羞恥心ないの!? 躊躇ないなお前!?」


「そ、そんなこと言ってる場合じゃないじゃないですか……」


「いやそんなひどいもんじゃねえよ! 応急的な措置別にいらないよこれ! あと顔赤くするな! そして右手を口の前に持っていってもじもじするなあ!!」


 ツッコミ疲れた。だがこれいろいろと俺的には無理なんです!

 いや、嫌悪とかじゃない! でも俺耐性ないんだって! 俺それ系の耐性全然ないんだって!

 待って! 左の髪めくり始めてるめどマジで待って! 顔近い! マジで近い!


「すいませんちょっと失礼しますね」


「いや失礼されても困るって!」


「なんですか? 嫌なんですか?」


「いやそうでなくて!!」


「じゃあいいですよね」


「いやいやだから! 俺そういうのの耐性がだな!」


「あ、すいません動くと余計なとこにいっちゃいますので“固まってください”」


「固まるの!? 動くなじゃなくて!?」


「あ、じゃあ石になってください」


「意味変わってねえよ! それほど変わってねえよ!」


「あれ? 石をいし(私=医師)がみる……、ブフッ!」


「うるせぇぇぇえええええええ全然うまくねぇぇぇええええええ!!!」


「あの、あんまり叫ばれるとこっちの耳が持たないんですが」


「誰がさせてるんじゃ誰がぁぁあああああああああ!!!!」


 しかし、こっちの怒涛のツッコミにも向こうは容赦なかった。

 さっき笑ってしまい口元に持って行っていた左手を俺“なぜか”の右の頬に添え、右手で傷口あたりにある髪をどけると、顔をそのまま近づけた。

 やまとの吐息も顔に当たるほどに近づく。ええこっちも思わず赤面ものですよ。

 いや……、こいつ本気ですかね? 逃げようにもこいつの左手腕力強すぎて顔が全然動かないんですが。チクショウめ! ここでもこいつのハイパワーが出てくるのか! やっぱり結局は兵器かお前は!


「(え、ちょ、ま……ッ!)」


 そして、そのままやまとの舌が俺の左こめかみに触れる……、






 まさにそのときである。














「ひゃあ我慢できねぇ! お前ら突撃だァ!!」


「ウォォォォオオオオオオオオオ!!!!」

















「なッ!? お、お前らいつのまに……、てギャァ!?」


 俺はなぜか右舷見張り台と艦橋をつなぐ隔壁から押し寄せてきた大量の乗員に押しつぶされた。

 今まさに傷口をなめようとしていたやまともそれをよけるために顔から一瞬にして遠ざける。

 ……思わずほホッとした俺がいるが、その代わり今度は下敷きにされてるよ。あーもうなんなんだよいったい。


「迎撃すげぇぜ! よくやった! あと貴様だけラブコメなんてずるいぞ! 俺にもやらせろぉぉぉおお!!」


「マジで落とすとか最高だなお前! あとお前だけ傷口舐めてもらうとかずるいぞ俺もなめられてぇぇぇぇえええ!!!」


「サンキューアッサ! でもお前だけカップル体験なんてずるいぞ俺にもやらせやがれぇぇぇぇぇえええええ!!!」


「いやその前にまずどけよこの変態共ぉぉぉぉおおおおおお!!!」


 やはり例の変態共だったか……。案の定ではある。

 と、どうにかして頭の頭痛を抑えつつ強引にそいつらをどけると、左手で左側の傷口付近を抑えつつどうにかして立ち上がって不満を漏らす。


「お、お前らいつの間にいやがった……。てか、いつからだ?」


「大体お前が締め付けられてるあたりから」


「助 け て く れ よ お い ! !」


 手動でミサイル迎撃を成し遂げたこのおそらく人類史上そうそうない偉業を成し遂げた俺に対する救いの手というものはないのかこいつらは。


「いや、お前らがイチャイチャしてたからおもしろそうだと思って」


「お前らあとでで殺したろか?」


 リアルの物理的にマジでやってやりたい気分ですよハイ。


「まあまあそういわずに。さっきはお楽しみでしたしねぇ……」


「お楽しみって……」


「ま、異形ののカップル成立ってことだから後でパーティーでもする?」


「いらんわ。……てか、お前らもう少し俺に対するねぎらいの言葉をだな……」


「さっき言ったじゃないか。よくやったぞって」


「思いっきり本音でなくて建前だろあれ」


「まあまあ、でもよくやったってのは確かだぞ。後半言ったこともほんとだけど」


「順序逆な気がするんだがなぁ……」


 はぁ……。まったく、こいつらにこういう系の話題だしたらすぐこれだからな……。どうにかならんものか。


「しかしすまんな。艦魂さんにとっては千載一遇のチャンスだっただろうがな。耐えれなかったわ」


「は? なんだよ千載一遇って?」


「は?」


「は?」


「……」


「……」


 ……と、また沈黙の時間ですか。そうですか。

 てか、なんだよ千載一遇のチャンスって。さっきの傷口の件についてだったらわかるが、どうやらそれっぽいのでもないしな……。


「……はぁ、ま、こいつクソ鈍感だからな」


「だな」


「なんであきれられなきゃいけねんだよ」


 ……なんで呆れられてんの俺? なんか両手を軽く広げて手のひら上にしてはぁ~ってされてるけどなんで? ますます意味がわからないよ。


 ……てかちょっと待って。


「(……なんでこいつ不機嫌なの?)」


 さっきから右頬ぷくーっとさせて不機嫌になってます。

 ……なに、そんなに舐めたかったの俺の傷口。違う意味で引かれるぞおい。俺が相手だからまだいいけども。


「ま、あとでもチャンスはあらぁ」


「だからなんのだよ……」


 と、そんな疑問を呟いた時だった。


『こちらダメコン! 全艦へ! 各部修理完了! いつでも行けます!』


「お?」


 と……、どうやら修理が完了したみたいだな。

 ふぅ……、何とか間に合ったようだな。


「(よ~し……、これでいつでも対処できるぜ)」


 さあ中国……、の、軍部さんよ。いつでも撃ってきていいぜ?

 こっちは準備万端だ。いつでも撃ち落せるぜ?


 撃てるもんなら撃ってきな。“即行で撃墜してやるぜ”。


 確定させてやる。もう確定として扱うぜ。システムさえ戻ったらこっちのもんだからな。


 ……と、さらにそれとほぼ同タイミングだった。


『……ッ! 衛星データリンクより目標情報入りました! プルトニウム物質反応検出! 核ミサイルです! 核ミサイルが発射された模様!』


「ッ! 来たか……」


 どうやら、陸でもおっぱじめたようだな。

 核ミサイル……。今現在の時刻はさっきのやまとがいったのよりそれほど立ってないから、おそらく主席さんの言った通りPM14:25か。


 ……ギリギリセーフってやつだな。よしよし、これで何とか迎撃ができる。


「よし……、これで迎撃には入れるな」


「ああ。あとは、やまとさんに任せるとしよう」


 目の前の例の変態共がそんな会話をしていると、


『対弾道ミサイル戦用意。艦外にいるものは即時退避をお願いします』


 同じくCICからだ。FCSレーダーを照射するからさっさと中入れってこったな。

 よし、じゃああとはこいつに任せて俺は少し休むとしよう……。


「新澤、肩かすか?」


「いや、いい。それより傷のほうを……」


「ああ、それなら問題ない。今衛生科がきてる。……おーい、ミサイル撃墜の英雄を治療してやってくれーぃ!」


 そういつつ変態共はそのまま艦橋の中に入って行った。……てか、英雄っておい。


「はぁ……、じゃあやまと」


「はい」


 横でこっちの会話を聞いていたやまとに対して一言残す。


「……俺の仕事はここまでだ。希望のバトンはお前につないだからな? だから……、」











「最後のシメ、ちゃんと決めてくれ。ゴールまでそのバトン、持って行ってくれよ」











「……了解。任されました!」


「おう……。頼むぜ」


「はい! お任せを!」


 元気がいい。これなら何とかなりそうだな。

 俺が精いっぱい頑張って守り切った希望バトンだ……。こいつなら、ちゃんとゴールまでもっていってくれるだろう。

 ……ただのゴールじゃない。終わりに向けてのゴールだ。


 この戦いを終わらせる、そういう意味もある。


「じゃ、俺は先に休んでるわ……」


 そう言い残しつつ右手を軽く上げていったん別れる意思を告げて艦橋に入ろうとしたとき、また何かを思いついたらしい。「あっ!」と一言上げつつ俺を呼んだ。


「大樹さん! こっちこっち!」


「あん?」


 と、後ろを振り向くが……、


「……あれ? いない?」


 後ろにはやまとの姿がない。はて? いったいどこに行きやがった?

 それともなんだ? 呼ばれて後ろ振り向いたら頬に人差し指さすっていう昔流行ってたいたずらの一種か? 頬に指さされる代わりに消えるんですか?


 はぁ……、まったく、これから核ミサイル落とすってのに、のんきなもんだ。まあ、それがあいつらしいところでもあるんだがな。


「(……ま、あいつがそれだけ元気なら迎撃の任務もしっかりこなせるだろう)」


 俺は一種の安堵感を覚えつつ、一言「はぁ」とため息をつきながらまた前を振り向きなおしてそのまま艦橋に入ろうとした時だった。


「……ッ!?」


 すると、俺の顔の目の前には“なぜか”……、


 ……しかし、


「隙ありッ!」


「んなッ!?」


 俺がどういうことか考えるまでもなくあいつは顔を即行で近づけ……、















 そのまま、少し背伸びをして俺の左の頬に自分の口を重ねてきた。

















「(……はぁ!?)」


 俺はいきなりのことで何が何やら全然さっぱりだった。

 ……は? 俺何された? え? なに? 何事?

 まだ俺の目の前にいるやまとの顔を驚愕の顔で見つつそんなことを考えると、やまとは一瞬つけただけですぐに顔を離し、「ふふっ」と上機嫌に軽く笑うと右手で自分の口の前に右手の人差し指を立てて俺に言い放った。


「……油断は禁物ですよ。たとえ“こういう場面”でも♪」


 その顔はしてやったりっていわんばかりの満面の笑顔だった。かわいいことはまず間違いない。

 そして俺は思わずその口が当たった左頬の部分を左手で軽く押さえて呆然していたが、それを見つつさらに「にひひっ」と笑うとそのまま上機嫌で艦橋の壁に向かってスキップして飛んで行って壁に手を当て青白い光とともに消えていった。

 核ミサイル迎撃に備え、集中するために艦に戻ったんだろう。


 ……はは、あいつめ。まんまと仕留めやがったか。


「……へっ、ちゃっかりしやがってあの野郎」


 俺は思わずそうつぶやいた。

 ……ったく、こんな経験始めてたぞ? 俺の人生で。

 しかも初の相手が人間じゃなくて艦かよ。艦の化身かよ。


 ……はは、いろんな意味でやられたわ。


 ……まったく、あいつもあいつで、


「……俺のまで“撃墜”してどないすんねんと」


 ま、あいつは撃墜率100%の最強の巡洋艦だからな。まあ、これのおかげで対空目標だけでなく“他人の心まで”撃墜できることを証明してしまったわけだが。


 ……はぁ、


「……俺もまだまだだな」


 あれを見抜けぬとは。俺もまだあいつの考えてることを完全には把握し切れていないということか。

 まだまだ修行が必要だな。次こそは見抜いてやる。


 ……すると、


「おーい、さっさと入れー。チェック終わったらしいからそろそろ照射始まるぞー」


 と、隔壁から顔をひょっこり出した乗員が俺を呼んだ。

 最終確認が終わったか。迎撃の時間が迫ってるだろうし、俺もそろそろ入らないとな。


「……で、なんでお前左の頬押さえてんの?」


「ん、いや、なんでもない」


「なんだ、虫歯か?」


「俺は子供か」


 そんなツッコミをしつつ俺は左手を離す。

 乗員は少し不審に思いつつもそのまま艦橋の中にはいっていった。


 ……そんじゃま、


「……あとは、」













「……あいつに任せるとしようか……」













 俺は希望をあいつに託し、そのまま艦橋に入って行った…………

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