〔F&E:Mission 29〕日台中総力戦『最後の反撃』 ③ 陸のラストスパート
―同時刻 台湾高雄市高雄国際空港ターミナル施設突入
日本国防陸軍第1空挺団第1普通科大隊第1中隊第1小隊―
「で、核はいつ撃たれるって?」
空港ターミナル突入直前にそう隊長が聞いた。
それに答えたのは隣にいた羽鳥さんだった。
「今からあと数分もありませんよ。もう時間がありません」
「ギリギリだな。……とにかく、もう待ってられんから俺たちだけでもいくぞ。お前ら覚悟を決めろ」
「了解」
「了解です」
私とともに返事した。
あの後、何とか空港敷地内に突入は成功したものの、そこから先のターミナル施設に入るのに少し手間取ってしまった。
いや、敵の妨害にあったというか、敵がまだ警備していてそれに気づかれずにターミナル前まで行くのに手間取ったってだけだけどね。
ターミナルといっても西側にある国際線ターミナルのほうで、その出入り口にも数人だけど警備の兵士がいた。
でも、数は思ったより少ない。たぶん敵本隊がエプロン側から来た関係でそっちに兵力を移しまくってこっちは最小限しか置いてないのかな?
だとしたら何という幸運かね。今確認できるだけでたったの4、5人。ここは1階だから確か国際線の到着ロビーにつながるはず。
上には出発ロビーにつながる空港付属の橋が架かっている。それはターミナルにつながってるんだけど、それがそのまま雨よけ日よけにもなっているわね。
そこにいるのが4、5人って……、警備手薄ね。あ、ここも前線に大量に兵力送りまくったのかしら?
とにかく、ここから突入するには少し厳しいわね。ここ、高雄国際空港の駐車場だし。ここにくるまでも結構遠回りしたりしたし。今更何もせずにでるのは……。
「で、どうします隊長? あれ邪魔ですよ?」
「ぬぅ……、どうしたものか。ここまできたというのに」
隊長も迷っていた。
しかし、とにかくここからしか入れそうにない。このターミナル3階につながっている橋の下を通ったところにあるもう一つの駐車場からどうにかして入ることもできるけど、絶対ここから移る過程で見つかるからねぇ……。
一番は敵が何かにひきつられてどこかに移動するのが一番なんだけど、そう都合よくいってくれるはずが……。
「……手榴弾ここで爆発させます? さっき新澤がやったみたいに」
「おいおい……」
羽鳥さんが少し冗談交じりに言ったのに隊長が軽く苦笑いしながら返した。
はは……、ここでやったら確実にまたさっきみたいな大爆発が起きるわね。でもここでやったら一目はつくだろうけど全然敵にダメージ与えれないどころか回避間に合わなかったらこっちが死ぬわけで。
というかこっちとて手榴弾の手数それほどあるわけではないからあんまりこんなのに使えないんだけどな……。
「無茶いうな。もっとほかので行け」
「そうはいってもこれ以外には……」
「安心しろ。もうすぐ来るはずだ」
「はい?」
と、隊長が意味深なことを行った時だった。
すぐさま無線が声を発する。
……あ、ここに来る過程で隊長が突貫でだけど無線直しました。ありがたやありがたや。
『隊長、配置につきました。指示を』
と、ほかの隊員からのだった。
これは私たちと同じ部隊の人。さっき墜落時に散り散りになったけど何とか一部は合流したみたいね。
すぐに隊長は答えた。
「よくきた。準備はいいな?」
『オーケーです。いつでもどうぞ』
「よし、でははじめろ」
『……よろしいのですか? 隊長たちだけで』
「かまわん。もとよりそっちも少ないだろう。俺たちだけでも十分やれる。いいからやれ」
『了解……。では、総員、はじめろ』
その号令とともに、
「……ッ!」
遠くから発砲音が聞こえた。
これは……、味方のハチキューね。
大体ここから東の国際空港正門のあたり。それも複数。
……すると、
「……ッ! みろ、敵が動きだした」
「ッ!」
隊長に言われて国際ターミナル玄関を見ると、確かにそこに警備についていた兵士たちがこぞって正門方面に向かったほか、中からも大量の兵士たちが出てきて同じく正門方向に向かっていった。
……あー、なるほど。おとりね。おとり。
いつの間にか隊長の指示でスタンバってたのね。いつのまに仕込んでたのやら。
少しすると、中から出尽くしたみたいで、兵士たちの流出が止まった。
……これで中はスッカラカン? いや、まだいるだろうけど、それでもやっぱり玄関に置いていた兵士の規模のこともあるしたぶんそれほどおいてないわね。
「よし、今がチャンスだ。いくぞ」
「了解。……でもいいんですか向こうは? おとりに使うほど大量には……」
そう。現実ここに墜落時に生き残ったのは結構少ない。
やはり墜落の時の衝撃が大きかったり堕ちた場所が悪かったりなどで、生き残ったのは私たちも含めて総勢1/3くらいしかない。とんでもない少数規模。
向こうもそれほどあるようには……。
「大丈夫だ。あくまで時間を稼げればいい。何ならそのまま後退してくれてもいい。……いや、むしろ後退してくれたほうがありがたいか」
「まあ……、そりゃそうですけど」
そのほうが敵がどんどんとひきつられて空港から離れていくし。
「とにかくいくぞ。時間はない。核発射時間も迫ってることだしな」
「了解」
そしてそのまま3人でターミナル内に突入。
玄関の破られている、というか壊されてるガラス窓の自動ドアから入ると、中は思ったより破壊されていない内部が目に入る。
到着ロビーだからそれほどいろんなものは置かれていない。チェックインカウンターもないし。
しかし、周りはいろいろと地味に破壊されたものもある。銃撃戦でもあったんでしょうね。せっかくきれいに内装されていたはずなのにひどいことを。
……軽々しくいえることじゃないけど。
「よし、とりあえず最深部に急ごう。まずはこの先の到着口だ」
「その先って単に税関とかのイミグレーションとかがある手荷物受取所ですけど……」
「わかってる。だからとりあえず近くのところからしらみつぶしだ。まだ司令施設がどこにあるのかわからんからな」
「はぁ……、了解」
というわけで、とりあえずまずは正面の到着ロビー奥にある到着口から内部に侵入。
ここも自動ドアの窓ガラスがあるけど、それもやっぱり割られてる。ほんとに最初ここで何があったのよ。
そのまま突入すると、そこにはやっぱり少しばかり破壊部分がある税関の門とその奥にはイミグレーションのテーブルがあった。
さらにその間には荷物受取のためのターンテーブルがある。その中心にはそこから荷物が出てくるらしい黒い幕が下りた荷物口もある。
そこで隊長が指示を出す。
「えっと……、この先って確か2階につながる階段しかないよな?」
「ええ、まあ」
「よし、ではそこから階段を上がっていこう。2階に敵がいる可能性があるからとりあえず警戒を……」
と、そこまで行った時だった。
「ッ! いたぞ! あそこだ!」
「ッ! なッ!? やっべ敵だ!」
その前方の2階につながる階段からだった。
そこから何人かの兵士が下りてきたと思ったら、いきなり銃をぶっ放し始めた。
チッ、こんなときに敵? いったいどこから私たちの侵入を聞いたってのよ。
まったく、暇さえ与えないんだからもう!
「クソッ! 前進させるな! 応戦しろ!」
すぐにとっさに二手に分かれて近くにあったターンテーブルの陰に隠れてハチキューを敵に向けて撃ち始めた。その結果、私が異鳥になったんですがね。
幸い敵は思った通り少ない。あんまりむやみやたらな突撃をかけてこず、その階段の手すりの陰に隠れて少数規模での応戦だった。
ここに、台湾『高雄国際空港“手荷物受取所”』における銃撃戦が勃発した。
敵は見た限りで5、6人。対してこっちは3人。
しかし、時間をかけると向こうは絶対戦力が増す。できればさっさと仕留めていきたいけど、かといってここからどう動けと?
前進は無理。だけどこの後方に逃げるにしてももう敵に知られてるでしょ? 絶対後ろからも攻撃されて終わり。
となると向こうがおとりのほうからこないうちにいきたいから余計短期決戦にしたい。だけど相手が相手。絶対それは許してくれなさそう。こっちとて向こうの前進を止めるのに精いっぱいだってのに。
ここから手榴弾一斉に投げて向こうがひるんだすきに退避、なんてこともできない。遠すぎる。遠投するには身を乗り出さないといけないけどそんなことしたら絶対ハチの巣にされて即落ち不可避。
で、この周りにも近くに出れそうな場所がない。
……あ、マズイ、本格的に詰んだ。
「隊長どうするんですか! これ敵が全然減りませんけど!」
「今援軍呼んだ! それまで持ちこたえろ!」
「いつくるんですかその援軍って!」
「もう少しだ! それまでもて!」
「もう少しって大雑把な!?」
ああもう! 第一なんてここ選んだんでしょうね!? なんでここなんでしょうね!?
しかもタイミングも悪いのなんの! やっぱり今日の私は運が悪いわ!
「とにかく時間を稼げ! 援軍までの辛抱だ!」
「むしろ時間かけたら不利な気がしますがね!」
しかし、命令がそれな以上やるしかなかった。
とにかく持てるものをすべてつかって時間稼ぎ。
数個しかない手榴弾も何回か投げて敵をひるませようとするも、案の定敵はびくともせず。結果残り2個しかない状態に。
その間も銃撃戦は続くが、敵が一向に減る気配を見せないどころか、むしろ少しづつ増えてる気がしないまでもない状況に。
……まずいわね。こっちは今までの戦闘の関係で弾薬もそれほど余裕がないってのに、向こうはバカスカ撃ってくる。
これじゃ圧倒的不利不可避。
早く。援軍さん早く到着を……。
「……ん?」
すると、その到着ロビー側からだった。
何やら銃撃音がする。今のこの銃撃戦の音に被ってよくは聞こえない。しかし、確かに聞こえはした。
まさか、例の援軍? しかし、でもこの銃撃音はなに? まさか、その後ろからまた敵のほうが撃ってきてそっちにも応戦中? いや、だとしたら余計まずい状況に……。それともその逆かな?
……しかし、すぐに答えは判明する。
……どうやら、“後者”のほうだったみたいね。
『隊長! お待たせしやした! 援軍つきましたぜ!』
その瞬間だった。
私たちの後方から多数の大きな銃撃音と銃弾が飛んでいった。
見ると、税関の門のほうに確かに日本国防陸軍の戦闘服に身を纏った兵士が複数人。
間違いない。さっきおとりに出ていたはずの味方だった。
「来たか! 待っていたぜ!」
『新澤のピンチと聞いたら即行で出てくるのが俺たちですぜ隊長! 舐めないで下さいよ!』
「えちょあんたらなの!?」
ちょ、あの変態共かいな。
まさか、隊長最初からこれも読んで仕組んでた? 残っているののなかに例の変態が大量にいるからいざとなったら私の名を出せば即行で来てくれるとか思っちゃったの? まあ澎湖諸島のときに実績あるけどね。私が1発かすっただけで即行でブチ切れて突入してきたのがあいつらだし。
……しかし、また同じことになろうとは。何気にあいつらに助けられまくってるわね。リアルでこの戦争終わったら感謝でもしてやるしかないじゃないの。ツンデレじゃないわよ? 割と本気でよ?
「さっき銃撃してたみたいだが、あれはなんだ?」
羽鳥さんがそう聞くと、すぐに向こうの変態が答えた。
『んなの敵さんが追っかけてきたので即行で始末しましたよ! 新澤のために!』
「ええッ!? うそぉ!?」
「新澤の名前一言でここまで変わるんならなんで普段からそうしないんだよ……」
と、隊長が少しあきれ口調でため息交じりに言った。
あいつら、よく訓練中に隊長にきれられてるしね。私の横目で。
そして私の憐みの目を「ご褒美です!」って言ってくるあたりいらないところが訓練されすぎて困るわもう。
隊長、こうなったら私が許可しますから私の名前使ってあいつら叩きのめしてください。それくらいでしたら私の名前いくらでも使っても構いませんので。
『とにかく、ここはこちらが援護します! 隊長たちも早く!』
「あいよ! よし、お前ら……」
と、隊長が指示を出しつつたちあがろうとしたときだった。
『ッ! 前方の敵、突っ込んできやがった! 隊長! 急いでください!』
「なッ!?」
ふと後方を見ると、確かに2、3人の兵士が突撃してきていた。
いや、後ろからも次々と来ている。なお、そのあとは銃撃されて倒れていくからほとんと意味ないようにも見えた。
しかしまずいわね。ついに意を決して突撃するとか、あいつらもうやけの域じゃないの!
……いや、これから核ぶっ放すってこと言ってる時点ですでにやけの域なんだけどね。
「クソッ! お前ら全力で走れ! おい! 援護頼む!」
『合点承知! お前ら! 新澤達が来るぞ! 大量にばらまけ!』
「こんな時にまで私なのね……」
もはやここまで行くと敬意を示すレベル。違う意味で。
しかし、ツッコミを入れてる暇はない。とにかく、今はここを離れてまず味方がいる税関の門のところまでいかないと……。
「(……よし、銃撃が緩くなった)」
と、敵の攻撃がいったん緩くなった隙に、隊長たちと同タイミングで腰を低くして立ち上がるとすぐに税関の門のところに走る。
すぐ近く。だから今のこの隙だけでも十分……。
……と、そう思った時だった。
……カンッ
「……え?」
私の目に前に放たれた一つの黒い塊。いや、球体。
そして、そこには何やらピンが抜かれた後の形でよくにたものが……。
……げぇ! まずッ!
「(し、手榴弾!?)」
さっき2、3人突撃してきているって言ってたし、まさかそこから?
でもあそこから投げてここってなんて遠投力よ! というかここにピンポイントってあり!?
私は本能的に足で急ブレーキをかけて本来向かう方向から180度逆を向いて元いたところに向かう針路で全力疾走し、手榴弾から即行で離れようとした。
……が、しかし、時すでに遅かった。
「うッ!!」
私が後ろを向く前にすぐ近くで爆発が起こる。その拍子に私は少し突き飛ばされ、そのままバランスを崩した。
幸い体の感覚はあるから一応足とかは無事っぽい。しかし、そのバランスを崩したせいで前のめりに倒れこんだ。
……で、その倒れこんだ先にあったのが、
「ッ!? え、ちょ!?」
その、例の私がさっきまで隠れるのに使ってたターンテーブルの、その手荷物が出てくる荷物口の黒幕。というか、つまりいうところその荷物口。
「わ、ちょ、ちょ、え!?」
私はそのままそのターンテーブルのベルトコンベアのふちですら足に突っかかって、そのとき後ろ、というか上を見らさる体制になり、むしろ余計前に倒れるのを助長させる結果となり……、
その荷物口に“頭から突っ込んでしまった”。
「え、ちょ、ええ!?」
私は何が何やらわからないままその荷物口に突っ込んでいったん倒れ視界が一気に暗くなったと思ったら、そのまま体が重力に任せて下にどんどんと滑り落ちていった。目の前の視線にはさっき私が入ってきたらしい荷物口があったが、そこから入るわずかな光はどんどんと遠のいていった。
……というかちょっとまって。え、なに? なにこの状況!?
いきなりすぎて意味が分からない! あれなんで都合よくあんなところにあったの!? え!? ていうかこれエスカレーター式にしたから持ってくるの!? なんだってこんなご時世エレベーター式じゃないのよ! スペース食うじゃないの! というかなんで滑るの!? 荷物滑り落ちて上に上がらないじゃないの! 使われてないのこれ!?
「ひぃぃぃぃぃいいいいやあああああああああああ!!!!!?????」
本能的にそう叫んでしまう私。
もういろいろとツッコミたくなるのをお構いなしに私はどんどんと下に滑り落ちていった。“頭から”。
……まって、こんなの遊園地やテーマパークにあるような人々を恐怖に陥れる絶叫マシーンでもやらないわよ!? どっかの京都にある地球儀が回ってるでっかい遊園地なら後ろから落ちていくジェットコースターあるし私高校時代の修学旅行で体験したけど、あれは後ろからよ!? 頭からじゃないのよこれ!? わかる!?
というか、これいつまでやるのよ! なんだってこんな目に合わなきゃならないのよ私ィ!
「ちょ、止まって! 何でもいいからまずとまってぇぇぇぇええええ!!!」
私は頭をうずくめてそう必死に願うように叫んだ。
……と、そう思った時だった。
「グゥッ! ヌハァッ!」
いきなり視界が少し明るくなったと思ったら、私の背中に大きな衝撃を与えつつそのまま今度こそそれらしい体勢で倒れこんだ。
そこはその上のターンテーブルにつながるベルトコンベア、とつながっているように横に流れているベルトコンベアの上だった。どうやらここから上に流すように仕向けるらしいが、全然ここは動いていない。
……というかまって、めっちゃ痛い。最初墜落時にコンテナの上に落ちた時も痛い思いしたのに、なんでまたこんなときに……。
……あーもう、
「……誰よ私の運をここまで下げた人はぁ……」
もう愚痴りたい。もうどこぞの幾度もの危機を乗り越えたチートな警官がキレた時みたいに愚痴りたい。というか、もうしていい?
……と、そんな感じのことを思ってたら何とか痛みは回復した。
そして周りを確認する。
……どうやらエプロンとつながってる、手荷物をベルトコンベアに移すエリアみたいね。所々に貨物コンテナもある。LEDライトなのか、照明も明るい。
えっと……、そんで、
「……ここはそのどこよ?」
大まかなエリアはわかっても全然細かい場所がわからないんですがそれは。
しかし、見た感じ敵兵はいないし、大体エプロンがあるらしい日の明りの漏れているところから少し調べばすぐ上に……。
……って、
「……げぇ、またぁ?」
そのとき奥のエプロンのほうから敵兵らしい影を確認。中国語の指示も飛び交っていた。
「おい、この方向からなにか声が聞こえたのは確かなんだろうな?」
「はい。間違いありません。この耳で確認しました」
「よし、上の連中から敵が侵入した報告もあるからおそらくそれの一味だ。必ず見つけて殺せ。いいな!」
「了解!」
はい。殺す気満々。ヤッヴァイ。
「クッ、とりあえずここから離れないと……」
さっさと敵の目を逃れないと。とりあえずエプロン側から反対方向に走る。
幸いハチキューはまだ持ってたし、護身のために撃つこともできなくはないけど、もちろん今はそんなことはしません。
……それよりまずいことがあってですね。
「……あー、これもう本格的にだめだわ」
また無線が壊れました。それも、今回はもう修復できないほどひどく。
さっき荷物口に突っ込んだ拍子にとうとう本格的にぶっ壊れたらしい。せっかく隊長が直したのにこれじゃ意味がないじゃないの。
……おかげで状況報告も何もできないという。……はぁ~、
「……もーこれひどいってもんじゃないわよもう」
もうやだ。不満ぶちかます。というか愚痴る。そしてボヤく。
「はあ~さっきからいらなく墜落させられ、そしてやっと合流できたと思ったら今度は敵に追われまくって? そんでもって今は荷物口に突撃? はぁ~笑えるわねぇ。コントに出したら絶対受け狙えるわ帰ったらあの変態共で試してやろうかしらぁ?」
そんなことをうんざりしながら言っていると、
「ッ! いたぞ! あそこだ!」
「撃て! 撃ち殺せ!」
なぜか敵に配慮して騒音低くして愚痴ったのにばれるっていうね。あーもういやだ。
「はあ~もう敵がお出迎え? 歓迎準備が早くていいわねぇ~しかも5人もいるわはぁ~そういう歓迎をなんでほかでやんないんだろうね全然喜ばれないわよこんな歓迎ェ」
そう愚痴りつつ近くのコンテナに隠れながらハチキューをぶっ放す。
なぜかこういうときに当たりまくる。なんでって? そんなの私が知りたいわよはぁ~。
「あ~しかも後ろにもいるし、さっさと行きたいってのになんだってここで足止め喰らわないといけないのよもぉ」
その間に敵を3人撃破。向こうの精度はお粗末だからいける。
途中途中あたりを見渡してどこかに抜け道はないか探す。
なんでもいいわよこの際。何でもいいからどこかに抜け道……。
……あ、
「……あの通気口……」
ふと視界に入ったのは、コンテナの影で隠れて通気口の入り口。ちょうど床に近い高さにある。
……幸い、さびてて開けようと思えばあけれそうね。
「さぁ~てさっさと逃げましょうかねこんなところさっさとおさらばよおさらば!」
そう愚痴りつつ手榴弾を1個取り出しすぐにピンを外す。もちろん、こういう時はほんとは静かにじないといけません。いくら声をいくらか小さくして言っているとはいえ。
しかし、その時の私はそんなことよりもうストレスがマッハでいろいろといかれていた。今回ばかりは見逃してください。
そしてすぐに、
「みなさん歓迎ご苦労様ですお返しさし上げますよほぉ~いッ!」
そのまま手榴弾を敵に投げ、すぐに今度は例の通気口にある柵を撃ってさびれたねじをぶっ壊してその柵を落とす。
そのまま私はその通気口に向かって走った。もう今日は突撃してばっかねはぁ~ほんと今日は突撃バカをしてます新澤真美ですどうもぉ~。
「いいー? みんなはマネしないでねぇー?」
と、誰かに語るわけでもなくそんな独り言を言いつつ私は通気口をふさぐために、あと通気口に入るために体周りにつけていた弾帯のうちもう使わなくなったのを脱いでそれ以外水筒や双眼鏡ケース、救急品袋などなどいらないものをさっさと取っ払って私が通気口に入るとともに手を必死に伸ばしたりして通気口の出口の部分に置いた。
中は真っ暗。その先は何も見えない。
すぐにヘルメットに付属されている小型のヘッドライトをつけて先を見る。どうやら続いてるみたいね。
そのとき、後ろで爆発が起こった。時限信管結構遅く設定したから今更のタイミングでの爆発ね。
……さ~て、
「……なんか知らないけどさっさと行きましょうかねぇ~もうこの暗闇の先に希望はあるのかねぇ~ほんと」
暗闇の中にある一筋の光。それしか私の頼みの綱はありませんよはぁ~。
まったく、こんなとこさっさと抜け出したいわね。敵さんがまさかここを通るとは思わないけど。
後ろの防壁代わりの捨て同装備ははたから見えないようにある程度奥に置いたし、まあ何とかなるだろうけど……。
……はぁ~、
「……もうさっさとこんな必要性皆無な戦争終わらせたいけど、」
「い~つおらわせるんでしょうねぇーこれ……」
そして、私のこの愚痴もいつまで続くのか…………




