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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第8章 ~日台vs中最終決戦! 敵本拠地高雄市陸海空軍総力戦!~
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〔F&E:Mission 29〕日台中総力戦『最後の反撃』 ② 水中と空から

―TST:同時刻 同海域深度30m SSそうりゅう司令室―







「……やまとは本気か?」


 私は思わず届いた無線内容に驚きを隠せなかった。


 護衛の潜水艦の交代が来たのでそちらが配置につくまで待機しつつ通信ブイを出してそこから敵味方の状況を確認しようとしたのだが、そこで入ってきた通信はとんでもない内容だった。


 どうやら味方艦と旗艦との通信のようだったが、そこではやまとの状況を報告したりしていたようだった。

 しかし、そのやまとの状況がとんでもなく、旗艦を守ろうとしてよけまくって実質迎撃不可能なミサイルから身を盾にして守ったと思ったら今度は核ミサイルが撃たれるのにそれの迎撃に必要なSM-3をやまとしか持っていない上そんな状況でミサイルはさっきの被弾で撃てないしさらに追加の例のミサイルが来るしと、もういろいろと絶体絶命な状況だということは理解した。


 ここで核を迎撃できなければ、確実にこっちにも落ちてくる。向こうが撃つのは2発らしいからな。

 そうなったら私たちもただでは済むまい。水中にもその核の影響は及び、即行で海面に出れなくなるだろう。

 台湾にも潜水艦救難艦はあるが、核の撃たれたあとの海域にくるなんていやだろうしきても相当時間がかかる。というか、それ以前に私たちが持たない。


 つまり、もし核が弾着すれば私たちの命がない。


 それを阻止しようとやまとが動き出したが、無線を聞く限りではどうやら手動で落とすらしい。

 で、なんかその手動で落とす機銃のところにいるのが艦橋から出てきた若い乗員だとかって……、いや、まさかな。うん。


 しかし……、ミサイルを手動でか。


 簡単にはいくまい。もとよりミサイルがどういうのか知らんが、そんな簡単に迎撃できるほど甘いものではないはずだ。

 だが、それでもやろうとしている。しかも迎撃に当たるのが若い乗員って……。


 ……大丈夫なのか?


「(……もしこれで迎撃できなかったら……)」


 その可能性は否めない。

 わざわざこの方法を採ったということは、それしか状況的に方法がなかったということなのだろうが、それでも十分無茶なやり方だ。

 後どれくらいの時間が残されているかわからないが……、ふむ……。


「……こっちから何かできないか?」


 今必死になって、核をおとさせまいとしているのに、こっちからはなにもできないのか?

 やはり潜水艦らしく水中に潜んでしまいにしているか? だが、それではもし核が落ちたとき……。


 ……というか何より、


「(……大樹が乗ってるというのに何もできないでいるのは……)」


 個人的に、親として何もしてやれないというのはなんとも歯がゆいものだった。

 何かできないだろうか。何でもいい。せめてもの援護を……。


「艦長、このままではやまとが……」


 副長がそういってきたが、私は何も返すことができないでいた。

 いや、彼だけではない。

 ここにいた全員が、このまま見物客でいていいのかわからないでいた。

 ……いや、普通に考えればむしろそうしないといけないのだろう。

 だが、それでも、この味方の危機に何もできないというのはどうにももどかしかった。


 ……何かできないのか?


「(クッ……、そうはいっても、やはり我々の持っているのは魚雷ぐらいしかないしな……)」


 魚雷で何かできるといっても……。まさかミサイルにぶち当てるわけにはいかんし、そのほかでは……。





 ……ッ! そうだ!




「……あったぞ。これなら」


 手段としては、これがまだ使えるかもしれない。

 少々を無理をすることになるが……、だが、これしかないだろう。


 時間はない。残りの魚雷もまだいくらかあったはずだし、それを全部使ってでもやる。


「残りの魚雷はどれくらいだ?」


「えっと、さっきの敵潜撃沈の時にいくつか使いましたので、残っているのはあと10発です」


「10発か……」


 ふむ。十分いけるな。

 10発全部使ってやろう。


「よし、全発射管に残りのまず6発を装填しろ。急げ!」


「えッ!? ここでですか!?」


「そうだ。ここでだ」


「し、しかしここに目標は……」


「あるじゃないか」


「え?」


「……海面上の、」











「例の、超鈍足ミサイルがな」












「ッ!? あ、あれを魚雷で落とす気ですか!?」


「いや、落としはしない」


「で、ではいったい何を?」


「ふむ……」


 本当は説明している時間も惜しいのだが、まあ簡単に言っとこう。


「簡単だ。“敵ミサイルの真ん前で魚雷を自爆させる”。これなら敵ミサイルの速度を落として時間を稼ぐことが可能だ。やれなくはないだろ」


「ッ! た、確かに……」


 一部の乗員はそれで納得したが、しかし副長が異を唱えた。


「し、しかし待ってください! それには問題があります!」


「なんだ?」


「そもそも、今ここからではその対艦ミサイルが……」








「どこを、どう飛翔しているのかわからないんですけど……」








「……あ、しまった……」


 ……そうだった。私としたことがすっかりうかつだった。

 そのとおりだ。敵の対艦ミサイルの場所がわからない今、どこをどう撃ったらいいかわからない。

 まず海面上に出ないといけないが……。しかし、そうなると今度は敵潜からの攻撃に対して無防備になる。はっきり言えばいい的だった。


 ……しまった……、すっかり忘れていた……。


「……だが、何とかして援護をしなければ……」


「ですが、ここで無理に出たら……」


「くっ……」


 ……やはり、だめなのか。

 ここで無理にいったら敵潜からのいい的だ。無理に行くことはできない。


 ……だが、かといってここでじっとしているわけにも……。


「……どうにかして上に出れないか? 周りに敵潜は?」


「今のところ確認できていませんが……、しかし、周りの雑音がひどくてよく聞こえず……」


「艦長、いくらなんでもここで浮上するのは危険です」


「……」


 確かにそれはそうであった。

 何度でもいう。こんな状況で浮上をするのは自殺行為に等しい。

 ましてや上は敵味方入り乱れる大混戦だ。そんなところで浮上したら下手すれば流れ弾とかを喰らう可能性もある。

 そんなんで被害を拡大させたくない。


 ……だが、


「(……大樹……ッ!)」


 私は息子の乗っている艦を援護できないのが何とももどかしかった。

 なんでもいいのだ。何かできないのか。というか、ぶっちゃけさっき言った案くらいしかこっちからできそうなのないのだが、それもダメととなるともうないぞ……?


「……なにか、ほかにないのか……」


「ありませんよ……。ここから、我々がやれることなんて……」


「クソッ……!」


 息子が必死になって頑張ってるのに何もできないとは、親の影がないじゃないか!


 ……クソッ……!


「(……何もできずに、このまま見たままで終わるのか……?)」


 と、そうあきらめかけていたときだった。









“……上げて”









「……え?」


 また耳に、あの時の声が聞こえた。

 いや、今回はあの時みたいに薄くではない。はっきりとだ。この耳にしっかりと届いた。


 ……あの声だ。


「……また、“彼女”か」


 私は、ここまで来るとすでに疑問のもう少し先を行っていた。

 この声の主。そして、少し前に原潜からの弾道ミサイル発射阻止のときの、あの声と発言内容。


 ……なんとなく、大体察していた。しかし、中々確信は持てなかったのだ。


 ……だが、今度こそ突き止めてやる。


 この機会だ。どうせなら……、


「? 艦長、なにが彼女なんです?」


「シッ。少し静かにしてくれ」


「?」


 私は周りに静粛を促した。

 どうやら周りには聞こえていないようだな。ここでも聞こえるのは私だけか。


 ……ふむ、


「(……どうやら、それっぽいな)」


 なんとなく確信に近いものを得た私は、勇気を出して彼女に声をかけた。


「……おい、今の、お前か?」















「……“そうりゅう”」
















“……え?”


 返事が聞こえた。

 私は耳を澄まして聞いたが、しっかりこの耳に届いた。


 私はさらに続ける。


「君の声が聞こえてきた。詳しくはあとで説明する。とにかく、答えてくれ。……この声の主は、君なのか? ……そうりゅう」


 そう。私はこの声の主がこの艦自身だと感じていたのだ。

 今までの言動の内容を考えても、おそらくこれしか考えられなかった。姿は見えない。だが、声は聞こえる。


 ……ほぼ、確実にこれだとふんだ。


 彼女は少し黙っていたが、それでも私の問いに答えてくれた。


“……そう、私の声が聞こえるのね”


「……どうやらな」


 すると、彼女は軽くふっと笑うと、私はすぐに本題に入った。


「それで……、そっちは今何と言ったのだ? 答えてくれ、時間がないのだ」


“……そうみたいね。“お互いに”ね”


「なに?」


 私がそう疑問を呈すると、向こうはそれにこたえるまでもなく少し声を張っていった。まさに説得する口調で。


“お願い。私を今すぐ……”







“……上にあげて。“浮上”させて!”







「ッ! ……本気か?」


 彼女から発せられた言葉はとんでもないものだった。

 本気なのか? この状況で海面上に上げるなど、それはどれほど危険な行為か。艦自身である彼女が知らないはずがないだろう。


 ……それでも、やるというのか?


「……だが、危険な行為になる。君がわかっていないはずはないだろう?」


“わかってるわよ! でも、やまとさんがピンチなの! 今、若い乗員と一緒に手動でミサイルを迎撃しようしているのよ!”


「それはわかっている。だが……、おそらく、君は私がさっき言ったことをやりたいのだろう?」


“ええ、そうよ”


「うむ。だが……、その場合、海面に出なくてはならなくなる。それは、水中からの攻撃をまにうけることにつながるのだぞ。……それでも、いいのか? いくら私とはいえ、ここからは安全は保障できん」


“……”


 彼女は沈黙してしまった。

 そりゃそうだ。簡単に決断できるものではない。

 そう簡単に浮上をするような軽率な行動はできないのだ。判断を誤れば自分の命を失うことになる。


 ……しかし、


“……それでも、”


 彼女は、意を決して決断した。


“それでも、私はやまとさんを助けたいの! 今必死に戦ってるのに何もできないで終わるのなんてもう前世で十分なのよ! お願い! 浮上させて!”


「……だが……」


“あなたの息子さんも乗ってるんでしょ!? 助けたいんでしょ!? 私がそれを手伝うわ! だから、お願い! もとよりリスクは承知の上よ!”


「……」


 ……向こうは、覚悟を完了させているということか。

 確かに、大樹は助けたいし、ここで見たままでいるのはしゃくだしな。


 ……どうやら、時間はないようだしな。




 ……よし、




「……ソナー、近くに敵潜は?」


「えっと……、いえ、ありません。ノイズは相変わらずひどいですが……」


「確認はできないのだな?」


「はい」


「よし……、じゃあかまわない。……覚悟を決めよう、」


「ッ! か、艦長まさか!」


「ああ……。総員に告ぐ。これより本艦は……、」













「すぐさま浮上を行う。機関最大、上げ舵上げれるだけ上げろ!」













“ッ! か、艦長さん!”


「なッ!? か、艦長本気ですか!?」


 副長がそういうと同時に周りの乗員もいきなりの予想外の指示に思わずこっちを振り返った。

 あまりにも復唱しかねるものだったのだろう。


 だが、私はもう決めた。


「本気だ。今すぐに浮上しろ。急げ!」


「で、ですがここでの浮上は危険です! 敵の攻撃によっては艦自身が持ちません!」


「安心しろ。その艦本人には許可は取ってある!」


「はぁ!?」


 いきなり意味不明な発言をした私に副長は怪訝な顔をしたが、私はそれにはかまわなかった。

 時間がなかった。とにかくやるまでだ。


「とにかく、機関最大急げ。通信ブイしまえ。上げ舵、とにかく今から上げれるだけ上げろ! 何なら90度でいってもいいぞ!」


「いやいや無茶ですから! ここからいったらせいぜい40度です!」


「ならその40度だ! 急げ!」


「り、了解!」


 すぐに操舵行動が行われると同時に、私は彼女に向けていった。


「急いでくれ。時間がない」


“了解! お願い聞いてくれてありがとね! 必ずご期待に添えるわ!”


「ああ、頼む。お前に託すからな」


“りょーかい! さぁ、忙しくなるぞぉ!”


 彼女の思惑通り、すぐに艦は動き出した。

 機関の唸りは聞こえないが、しかし体感的に速度が上がっているのはわかった。そして、体が後ろにのけ反り、艦首が上を向き始めているのもわかった。


 それを感じつつ、私はさらに指示を出した。


「浮上したらすぐにレーダーを起動して敵ミサイルの情報を確認しろ。やまとは本艦の後方から突っ走ってきてるから、本艦の前方でとらえるのは確実のはずだ。そのあと、そのミサイル情報をもとに魚雷航走コースを選定。でき次第順次発射だ。いいな?」


「了解」


「全魚雷発射管に18式装填。まず6発だ。使えるなら今持ってる10発全部使うぞ」


「了解。魚雷発射管、1番~6番準備。18式装填」


 順次指示通りに動いて行った。

 まず浮上したらレーダー起動だ。まずそこからでないと始まらない。

 元々対水上レーダーだったZPS-6Fも改良し、万が一の対空用にも対応された“ZPS-6FII”に換装されており、そこそこ精度のいい目標探知能力を得た。……尤も、絶対使うことはないと思っていたがな。

 しかし、それでもこんなときに使えるからまああるにこしたことはないとはよく言ったもので、とにかくそれで目標を探知した後はそれによって得たデータを基に、魚雷の航走コースを選定してそれに沿って魚雷を放ち、そして敵ミサイルの針路上で爆発させる。


 ……これだ。これなら援護になる!


「深度20……、15……、10……、5、浮上します」


 その瞬間だった。

 ほんの少しザバァッという波を思いっきり切る音とともに、その艦首が今度は思いっきり海面上にたたきつけられ、その振動がここにも伝わってきた。

 海面に出た。


 ここからは、スピードが勝負だ。


 ……と、するとさっそく、


「……ッ! レーダーに捕捉。小型目標です。やまとに向かっています」


 よし、さっそく来たか。


「場所はどこだ? モニターに出せ」


「了解」


 するろ、すぐに司令室に設けられたモニターに敵ミサイルの場所が表示された。

 敵ミサイルは本艦の前方に位置。右舷側から突っ込んでくるが、ものすごく遅い。

 やはり、無線の通りか。


「よし、では私は艦橋から見える範囲での敵ミサイルの情報を送る。副長、ここは任せた」


「ハッ。了解しました」


 すぐにここを副長に預け、私は艦橋に急いだ。

 少数の部下を連れ、ハッチを開けて艦橋に出ると、空は曇り。灰色の空が出迎えてくれた。

 さらに敵ミサイルがある方向に飛んでいく無数の白い線。……いや、味方の対空ミサイルか。

 しかし、あれは効かないのではなかったか? ……いや、わざわざやるということは何か策があるのだろう。

 そのまま艦橋の上に立つと、すぐに敵ミサイルがいるはずの方向を確認。まだここからは見えないが、かすかに多数の水柱が立っているのが確認できる。

 ……なるほど。さっきのミサイルはあれか。あれを狙っているのか。というか、その前にこの周りにいる敵味方の艦船見たら、味方はいいとして敵の艦船が全然こっちに見向きもしないどころか味方と一緒に行動してるじゃないか。どういうことだ? なんかいろいろとツッコミたいところが満載なのだが?


 ……が、現実は私にそんなことを考えている時間を与えてくれなかった。


「ッ! 艦長、後方を。やまとが急速航行中です」


「ッ!」


 私はすぐに後ろを見た。

 そこには急速航行……、というか、明らかに機関一杯航行をしているだろうやまとの姿があった。

 本物を見るのは初めてだが、やはりでかい。ここからでもその巨体がよく見える。

 しかし、ところどころ被弾しているのだろうか。少し傷跡がある。手負いということか。


 無茶をする……、しかし、それでもここから援護を……、











 ……ん?











「……ッ!? ちょっとまて!」


「?」


 私は隣にいた部下の双眼鏡をぶんどると、そのやまとのほうを見た。

 正確には右舷の見張り台。確か手動で落とすとかどうとか言ってたし、ミサイルの位置も考えてもおそらくそこから撃ち落そうとするだろうが……、


 ……あれって……、まさかッ!?




「……ひ、大樹!? あ、あいつが落とす気か!?」




 私の目が間違えるはずがなかった。

 今まで何度となく見てきた息子の顔だ。見間違えるはずがない。いくらしばらく会ってないとはいえな。


 ……あそこにいるのは、間違いなくあいつだ。重機関銃のところに張り付いて、どうやらこっちを見ているようだ。私たちが浮上してきたのに気付いたのだろう。


 ……あいつ……、


「……なるほど。この迎撃も、あいつが考えたな?」


 こんな無茶なこと考えるのはあいつくらいだろう。いつも昔からそんな柔軟な発想をしてきたあいつのことだ。おそらくそうだ。

 そして、あいつのことだから自分が犠牲になってやるとかどうとかいって、さらに「俺が死んでもほかの人間が生きれればいいや」とかおいう自己犠牲精神が働いたに違いない。まったく、こんな時にまでこんな無茶をするように育てた覚えはないんだがな。


「(……だとしたら、なおさら今は援護に全力を尽くさないといかんな!)」


 息子がああやって命張ってんだ。ここで親が肩を貸さないでいったいどうするんだって話だ。


 さて、そろそろ航走コースの選定が終わるはずだが……、


『艦長! こちら準備完了しました。いつでも行けます』


 と、ちょうどよく副長からの報告が来た。


 よし、終わったか。では、さっさとやるか。


「よし、全門連続でぶっ放せ。そのあと1番~4番に装填急げ」


『了解。魚雷発射開始します』


 すぐにその指示通りに動いた。

 魚雷の発射と思しき重い音が聞こえた。連続で6発だった。


 なお、このとき私は知らなかったが私と同じことを考えていたらしい艦が2隻、同じく浮上してこっちと同じく魚雷を放っていたのだが、この時の私は知る由もなかった。


「よし、そのままだ。魚雷の自爆タイミングはさっき言ったとおりだ。そのタイミングで……」


 と、しかしそのときだった。


『ッ! ソナーに反応あり! キャブノイズ3! 魚雷です! 本艦に接近中!』


「なにッ!?」


 クソッ! やはりばれていたか!

 マズイ、いくらか覚悟していたとはいえ今ここで即行で見つかるとは、もう少し持ってほしかったというのに!


『今からデコイの装填間に合いません! あと30秒!』


「クッ!」


 さすがに無理か? ではせめてバブルだけでも放出して……、と、





 そう思った時だった。





“お待たせそうりゅう! 今助けるよ!”


「……え?」


 すると、ほかの声が聞こえた。

 女の声。しかし、これはさっきの彼女のではない。というか、向こうからそうりゅうの名を呼んでいたあたり絶対違うな。


 ……では誰だ? しかし、それは次の報告が行われたことによって意識が移ることになる。


『ッ! 本艦後方から魚雷を確認! キャブノイズ3。本艦には向かっていません。敵魚雷に対してのATTです!』


「なに?」


 ATTだと? 敵魚雷に対する魚雷のことだが、これが後方から?

 ……今このタイミングでくる味方? ということはまさか……、


『後方より推進音探知。これは……』


“……ま、まさか、”







“ひ、ひりゅう!?”


『ひりゅうです! ひりゅう型のひりゅうが来ました!』








「ッ! ひりゅうか! そうか、間に合ったか!」


 ひりゅう型潜水艦『ひりゅう』。

 そうりゅう型の後継で、まあ半ば改そうりゅう型のようなもので、日本が持っている最新鋭の潜水艦だ。

 同じく台湾に派遣された日本潜水艦の1隻で、今ここで本艦との交代で来る予定だったが……、どうやら、事態を察してくれたようだ。感謝するぞ。


 少しして、そのATTが敵魚雷にぶち当たったことが確認された旨報告された。


 同時に、そのひりゅうからさらにその発射源である敵潜に向けて攻撃を開始した報告がなされると、それに合わせたようにまた声が聞こえてきた。


“ごめんね! 待たせたっぽいかな?”


“大丈夫大丈夫! 助かったよひりゅう!”


“なんのなんの! 今からそっちの護衛につくから! 事態はあらかた察したからこっちは任せて!”


“了解! お願いね!”


 ひりゅうが護衛についてくれるか。ありがたい。

 これで水中警戒は任せることができるというものだ。もうすぐ魚雷第1弾が自爆タイミングになる。


 こっちに集中できる。ここは下はひりゅうに任せよう。


 ……と、すると、


「……ん?」


 ものすごい轟音が鳴ったと思ったら、その上を複数の戦闘機が超音速で通っていった。

 F-15と……、ん? あれはSu-35か?

 あれは敵機ではないのか? なんだ? 共同戦線でも張ってるのか? 今のこの海上みたいに。


 ……なんか、私の知らない間にいろいろと状況が大きく、かつ激しく動いているようだが……、


「……ここは、余計なことは考えている暇はないな」


 今は敵ミサイルを妨害しまくってやるのに集中しなければ。


 ……さて、


「……そろそろ、自爆指示を出すか……」


 私はそう思って無線に手をかけた……。
















―同海域上空域 高度2,000ft 『閃龍隊』&『IJYA隊』―






《敵ミサイルを確認したらすぐに所定の行動に入れ。シャンローン・リーダー、そっちもいいな?》


《承知した。各機、誰とでもいいからペアを組んでそれぞれの行動にかかれ。失敗は許されない》


 隊長の指示に閃龍隊の隊長さんも同意し指示を中継した。


 今、敵ミサイルを迎撃するためにやまとや敵味方艦隊が大規模な援護作戦を開始している。状況のほとんどは空中管制機の『アマテラス』より受け取っていたが、とにかくやばい状況だ。

 敵さんとて、なんだってこんなめんどくさいミサイル作ったのやら。しかし、愚痴ってても仕方がない。


 とにかく、今は隊長と閃龍隊の隊長さんが発案した作戦を発揮するとき。


 さて、これが最後の作戦行動だ。絶対成功させなければ。


 ここで失敗したら悪堕ちならぬ核堕ちは避けられないからね。


「(……と、ペアペア……)」


 と、思って適当な誰かとペアを組んだ結果……、


「……あれ、なんでみんな相手の隊と組んでるんだい」


 なんでかしらんがとにかく時間がないから近くにいたのをペア組んだ結果、一部は相手の隊とペアを組まざるを得なくなったようです。

 確かに誰かとでもいいとは言ったけど、部隊越えちゃっていいの? まあ、時間ないし今からやる作戦上別にそれでもいいんだけど。

 ……で、僕も偶然相手の隊とペア組むことになったんだけどその結果……、


「……ありゃ、あなたは確か」


 と、機体番号を見てすぐに誰かが見当ついた。


 例の閃龍隊の隊長さん。前、僕と一騎打ちをした相手の人だ。


 何の縁だろうか。またここでお会いできるとはね。


 向こうからの無線が聞こえてきた。


《……ほう、誰かと思えば君か。いつどきかの一騎打ち以来だな》


 やっぱり。あの時の人か。


「お久しぶりです。……あの時はこぶしを交えあいましたけど、今は手を取り合うことになるとはね」


《はは、まあ、それもいいだろう。もとより、君とは戦いたくない》


「まったくです。僕もですよ」


《だろうな。ハハハッ》


「ですよね。ハハハッ」


 ハハハッ。

 ……はは、でも笑えないわな。


《我々は順番は最後だ。頼むぞ、蒼侍の若僧》


「お任せを。赤龍の隊長さん」


 何という異色の組み合わせだね。これはこれでいい気がしてきた。


 ……と、そのときだだった。


《よし、時間だ! 各機、行動開始! 失敗するなよ!》


 隊長からのゴーサインだ。周りの機体が一気に動き出す。

 すぐに左旋回で降下開始。一直線に敵ミサイルのほうに向かっていく。


 ……よし、では、


「……ではシャンローン・リーダーさん。始めますか」


《うむ。行くぞホープス。……時間はない》













《一発で決めるぞ》


「了解」















 赤龍の隊長さんの合図と同時に、


 すぐに横に並びつつそのまま左旋回で降下を開始した…………

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