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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第8章 ~日台vs中最終決戦! 敵本拠地高雄市陸海空軍総力戦!~
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〔F:Mission 28〕高雄沖海戦『海上の大乱闘』 ① “殴り合い”勃発

―TST:PM13:33 増速開始地点より南西20海里地点 日台連合艦隊DCGやまと艦橋―









「……ほう、なにやら、上では面白いことになってますね」


「ん?」


 隣にいた通信担当乗員がそうつぶやいた。

 その言葉に俺はすぐに反応してしまい、さらに質問をする。


「面白いって、何がですか?」


「いや……、今さっきアマテラスから報告が来た。“上空に敵機いるけどそっちはきにするな”ってさ」


「……はい?」


 いや、落とせよ。敵がいるなら落としてくれよ。

 ……というか、敵といえばさっきから敵対艦攻撃部隊の動き全然報告来ないんだけど、あれどうなったんで?


「どういうことだ? 撃墜しないのか?」


 副長もそう聞いたが、彼は軽く鼻で息を吐くとなにやら「ヤレヤレ」とでもいわんばかりに少し抜けたような声で言った。


「いや……、なんか寝返ったっぽいです。さっきの対艦攻撃部隊も、あいつらが落としたみたいで」


「はぁ? ……寝返ったって、それ絶対後々裏切るフラグだろ。大丈夫なのか?」


「まあ、そこは味方が厳重に監視してるみたいで……」「


「まあ、対艦兵装は積んでないみたいですし、一応はこっちに攻撃はこないでしょう。空の事情は空軍連中にまかせましょうや」


 航海長も少しこれに関しては向こうに丸投げとでも言わんばかりに軽く投げやりに言った。

 ……まあ、こっちからなんかできるわけでないし、そこは向こうに任せるしかないけども……。


「……信頼に値するのかほんとに……。てか、CIC状況把握してなかったのか?」


「してたけど、艦長向こうにいるし、こっちに伝える必要なかったとか?」


副長おれのいる艦橋に対する伝達義務は……」


「ま、まあまあ、そういわずに」


「ぐぬぬ……」


 ま、まあおそらく艦長のほうで把握したからおkということなんでしょう。うん。

 ……と、思いたい。まさか忘れてましたテヘペロなんてことはあるまいて。


 ……と、そのときだった。


「……ッ! 副長! 敵艦隊視界に捉えました! 右舷10度方向。距離19,000!」


 右舷露天艦橋に出ていた見張り員が報告した。

 すぐに双眼鏡を使って確認する。


 右舷に10度ほど向き、そしてその先にいる敵艦隊を視認した。

 雲が立ち込めているが、それでも霧が出てるわけでもないし、普通に目視はできる。


 艦隊隊列が未だに完全に整っていない。ある程度は整いつつあるとはいえるけど。

 しかし、こっちの動きに全然就いていけてないようだ。未だにこっちに向けて突撃しかけてるのみだ。

 ……いや、ここまで速度速いと、もう意図的かな?これは。


「きたな……。艦橋に伝えろ。敵艦視認。準備に入れ」


「了解。……CIC艦橋、敵艦隊を視認。例の攻撃準備を」


 その命令伝達を横目に、俺はやまとにも確認を取った。念のため。


「そろそろだぜやまと。準備はオーケー?」


“バッチリオーケーです。……ここからは、”


“私たちの本業ね! いやー75年以来だわ!”


 その会話にこんごうさんが入ってきた。

 ……最初は引き気味だった彼女も、今ではすっかりノリノリか。やっぱり戦艦時代の血が騒いだんだろうかね。血、あるかわかんないけど。あ、いや、あるの? どうなの?


 ……と、考えたらきりないわな。


“さて姉さん。ここはあのソロモン以来ですから暴れさせてもらいますよ! 止めても無駄ですからね!”


“うん。もう諦めた。好きにして”


「諦めたのか……」


 ぶっ飛んだ妹持ちも大変だな。まあ、俺も妹持ってるが。


“もうすぐ射撃ですね。あとはこちらにお任せください。射撃は得意中の得意ですので”


「あいよ。ある意味本業だからな。後は……」


 と、そういおうとしたときだった。


“ねぇふぶき姉さん。向こうより取り見取りだけどどれ狙えばいいの?♪”


“え、いや、それはデータリンクで……”


“与えられたの小さい駆逐艦しかいないんだけど?♪ もっと大きいのない?♪”


“え、いや、えっと……、その……”


“ゆうだちぃ、わかってると思うけど私の分とっといてよね! 私の分!”


“わかってるって! でもそっちより多く沈めてもいいんだよね?”


“速射砲で沈めれるんなら沈めてみろっての!”


“ふ、二人ともちょっとは落ち着いて……、今は戦闘中……”


““いなづまは黙ってて!””


“それケンカ止めるときのあのアイドルの言葉でしょ……”


“ソロモンの鬱憤晴らし足るわわれぇぇぇぇぇえええええ!!!”


“いやきりしまうるさぁぁぁぁあああああい!!”


「いやまずお前らがだまれぇぇぇぇええええいい!!!」


 この戦闘狂どもめ……。そんなに楽しみにしてたのか……。

 というか、もはやきりしまさんにいたってはもうなんというか戦闘狂というか戦闘マシーン……、あ、元々ミサイル駆逐艦という名の戦闘マシーンか。


「……なんだ。元軍艦の奴らが発狂中か?」


 航海長が少し苦笑いしながら言った。


「……止めてくれませんかね? これ」


「悪いがそれは無理な相談」


「デスヨネー」


 まあ、できるわけないけど。知ってたけど。

 ……はぁ、


「やまと、お前一応ここの日本艦のリーダーだろ。とりあえず止めてこいよ」


“いや、あの、それ成層圏飛んでる弾道ミサイルを速射砲で落とせっていうくらい無理では?”


「それ実質不可能じゃん」


 速射砲数十kmしか届かないというのにそんなところに届くかっつの。

 ……てか、それすらたとえに出してくるってことはもう無理じゃん。あのときの戦争の鬱憤相当たまってるのか元旧日本軍組は。


 ……でもなぁ、


「……にしてはお前はあれみたいに発狂しないんだな」


“しませんよそんなの”


「はは、まあそうだよな」


 まあ、仮にも元世界最強の戦艦がそう簡単に情緒不安定になって発狂したりするわけ……。


“……まあ、その代わり、”


「ん?」








“撃ち始めたら……、わかってますよね?”


「あれ、おかしい、無性に帰りたくなってきた」









 そうか、これが防衛本能か。またの名、現実逃避だな。


 ……戦闘に入ったらある意味あいつら以上になるのか?

 まいったね。こりゃいろんな意味でこの艦が発狂する。性能的な意味で。


 まあ、ある意味ありがたいことではあるが、俺の耳にあいつらの発狂が大量に飛び込んでくるのか……。なぜ俺の耳にはロボットみたいなミュート機能がないのか。とりあえず訴訟。


『艦橋CIC、こちらは準備完了だ。目視での情報はそちらに一任する。頼むぞ』


 と、そのうちに艦内無線が入る。

 CICからだった。どうやら、向こうでも準備が完了したらしい。


 副長が答えた。


「艦橋了解。……この状況、まるで旧大戦の海戦だ。ソロモン海あたりかな? こりゃ、ドンパチしまくるぞ」


 それに航海長も割り込んだ。


「それに、ここに赴いているうちらの艦、その当時のあの海戦に参加した名前の艦がいくつか……、あ」


 すると、艦長が何かを察したようにそうつぶやいた。

 ……はぁ、航海長、やっと理解してくれましたかね?


「……なあ新澤、一部の艦が発狂してたって、それもしかして……」


「……お察しのとおりであります。その発狂メンバーと見事に合致しております」


「……アウチ」


 そういって軽く右手を額においてため息をついた。

 ……だからいったんだよ。止めてくれって。あと欲を言うなら代わってくれない? あいつらの発狂受けるの?


 ……と、そのときだった。


「……ッ! 敵艦隊に動き! 速度を速めました。艦隊修正を諦め、そのまま突っ込んできます!」


「ッ! ……やる気だな。面白い」


「旗艦から通信です。ASEコマンド。同時に、近距離戦闘準備通達」


 報告が立て続けに来る。

 どうやら敵艦隊でも覚悟を決めたようで、むしろそのまま突貫できている。

 さらに、旗艦の丹陽からもゴーサインがきたみたいだ。


 ……さて、では、やろうか。


『総員、対水上戦闘用意!』


 そして、すぐにCICからも戦闘配置命令。

 対水上戦闘。目標はもちろん、前方から突っ込んでくる敵艦隊だ。


「……さて、やるぞ……」


 俺はそのまま敵艦隊に視線を見据える……。











―CIC―





「主砲目標よし、射撃用意よし、方向監視方向よし!」


「主砲1番、右10度、主砲2番、12度に修正。砲弾装填急げ」


 すぐに指示が飛び交う。

 俺はそれを横耳に聞きつつ、さらに状況を報告する。


「敵艦隊、そのままの針路で突っ込んできます。距離、16,000に接近」


 敵艦隊の情報はCICのディスプレイに逐次表示されていた。

 敵艦隊の様子は結構落ち着いていないよう感じだ。艦隊陣形は整ってないし、それを諦めたのかそのままこっちに速度を上げて突っ込んでくる。

 それに対して、こっちは少し間隔をあけているとはいえ、陣形自体はしっかり整えている。向こうに対して逆の弧を描くように横に並び、敵艦隊を覆うように進んでいる。


 ……もうすでに射程内ではあるし、本当はもっと早く撃ってもいいんだけど、視界が少し悪いからもう少し接近してってことらしい。

 その間敵から先制されないか心配だったけど……、運よく向こうからは来なかった。こっちの意図をまだ完全に読み取ってなかったのかな?


 ……まあいいさ。どっちにしろ、もう遅いのでね。


「全主砲、発射準備完了」


「艦隊各艦も準備完了。……艦長、いけます」


 報告を受けた艦長が「うむ」と軽くうなずいて答えると、静かに隣にいた砲雷長に言った。


「……旧大戦以来だ。スラバヤ沖海戦の再来といこう」


「はは、ここにいるメンバー的には第3次ソロモン海戦あたりともいえますかね」


「だな。……向こうからもくる。砲雷長、やろう」


「はい。……目標、敵艦隊前衛、駆逐艦『武漢ぶかん』」









「主砲、撃ち方はじめ! 75年以来から蘇った、現代の砲撃戦開始だ!」









 その言葉とともに、やまとの前甲板に供えられた主砲2門が火を噴いた……。




















―艦橋―





「主砲発砲開始確認! 他艦からも発砲が確認されました!」


 前甲板に供えられた5インチ主砲2門が一斉に火を噴いた。


 その主砲は毎分20発の速さで砲弾を敵にぶち込み始め、その砲弾は少なくとも敵艦の至近距離に弾着していった。

 他の艦も同様。

 右舷側隣に、少しだけやまとより前に出ているこんごうさんからも主砲弾を放つときの発射煙が見える。

 その先にはきりしまさんとながとさん。

 反対側左舷側のほうには、こっちの直接的な護衛についていたあきづきさんとふぶきさんにしらゆきさん、そしてその先には台湾艦船の丹陽さんがいた。

 そっちから発射煙が見え、どんどんと主砲弾が飛んでいった。


「主砲弾、第1弾弾着! 敵艦に至近弾!」


 こっちが撃った主砲弾の最初の分が敵艦に至近弾を与えた。

 結構近いところに弾着したか。最初はこんなもんか。


 しかし、そのときだった。


「ッ! 敵艦隊発砲! 全艦からです!」


「ッ! 向こうも撃ってきたか……」


 向こうもすでに射程内だったか。撃ち返して来た。

 すぐにこっちにも弾着する。やまとの攻撃を受け、少し離れているとはいえ、そこそこ至近弾となった。


 ……奴らも、覚悟完了ということか。


「敵艦からの砲撃、至近弾! 最短距離約20m!」


「まだまだだな……。そんなので当てれると思うなよ中国!」


 副長が思わず叫んだ。それに思わず俺たちもニヤリと顔に笑みをこぼす。

 すると、さらに航海レーダーを見ていた乗員と見張り員から報告が来た。


「……ッ! 敵艦隊増速! それぞれで最大戦速で突っ込んできます!」


「こちらでも確認しました! 全艦、そのままの針路で突入中! 距離すでに13,000!」


 向こうが意を決して突っ込んできた。増速しつつ。

 もう、腹は決まってるのか。度胸あるな。こっちだって少しためらいはあるってのに。


 ……まあ、どっちにしろ今さらどうこう逃げようったって無理なわけだし、もうやけになってるんかね。


 ……だが、


「面白い……、そうくるか!」


 向こうからきてくれたのならむしろありがたい。

 副長は歓喜交じりに言った。


「上等だ! 貴様らがそう来るならこっちだっていかせてもらう! 航海長! こっちも答えようぜ!」


「マジっすか!? ここで!?」


 といいつつあんた、顔が笑ってますが?

 本音は待ってたんでしょ? その指示。


「向こうがそう来るんだ! こっちだって答えねばな! ……それに、遅かれ早かれいずれはああなる」


「ヘッ……、了解!」


 そう力強く「待ってました!」といわんばかりに返事すると、さらにノリノリで指示を出した。


「機関最大戦速! こっちが落とせというまでぶん回せ! 針路はそのまま!」







「こっちからも敵に突っ込むぞ!」







「了解! 機関最大!」


「針路そのまま。よーそろー!」


 すぐにやまとは反応した。

 ジェット機のエンジン音に似た甲高い音を上げるとともに、即行で波をかき分けつつ速度をどんどんと上げていった。

 両サイドを見ると、どうやら他も同じことを考えていたらしい。

 こっちから確認できただけで、こんごう、きりしま、ながと、あきづき、ふぶき、しらゆき、丹陽が速度を同じく上げまくっていた。明らかに最大戦速。


 これで、互いに最大戦速ないしそれに近い速度で突っ込むこととなった。

 距離も急速に近づく。もはや両艦隊が思いっきり肉眼でもはっきり見えるまでになるにはそれほど時間はかからないと見られる。いずれ、もう今すぐにでも敵味方が入り乱れる大混戦となるだろう。


 ……よし、これでいい。



 これで、俺たちの“罠”にはめ込んだ。



 副長と航海長が少し顔を互いににやつかせながら言った。


「……よ~し、これで、奴らは“撃てない”な?」


「ええ。……これで、奴らは撃てなくなりましたね」














「……陸からの核弾道ミサイルを」

















 そう。これで、奴らは俺たちに対する“核弾道ミサイルによる核攻撃”はできなくなった。

 もうここから敵艦隊が大分肉眼でも確認できるようになった。もうへたすれば一部肉眼で敵艦の詳細がわかるくらいにだ。

 ……つまり、敵艦隊との距離が近い。距離が近いということは、核のような広範囲に無制限に被害を出す攻撃方法は使えなくなるということだ。


 ……まあ、つまり端的にいうとだ。






 “核撃ったら味方まで被害出るから撃とうにも撃てない”ってことだ。






 これなら核攻撃を受ける心配はない。万が一撃たれても、それは陸に向かうだろう。もちろん、向かったら向かったで落とすけど。

 さらに、こうやって敵艦隊を混乱状態の中で砲撃戦に巻き込むことによって、あいつらの統率能力を最大限そぐこともできる。

 両軍入り乱れれば、敵とてそれを纏め上げるのには一苦労だ。自分達は急いでるけど、それでもこんな敵味方が入り乱れた大混乱状態で進軍なんてできるはずがない。

 向こうは急いでいるし、すぐにここから抜け出そうとして余計焦って抜け出しにくくなる。対してこっちはあくまで時間さえ稼げればいい。ならこっちは何しようと自由だ。

 こっちから仕掛けてるんだ。これのときの統率は確かにしにくくなるが、互いにどう行動してどう動けばいいかなんてとっくの昔に作戦策定済みなんですよ。

 それに対して向こうはこんな事態に対してまったくのノープラン状態。そんなので簡単に抜け出せれるわけはない。

 おまけに、砲撃戦だからあくまで沈める必要はない。最悪戦闘不能にすればいい。

 さすがに主砲弾で沈めるのは不可能だ。だが、最低敵の兵装をぶち壊すことくらいはできる。

 それでいい。最悪それをするだけでも、戦闘不能にするだけでここっちにとっては大きなプラスとなる。


 ……これが、俺たちの立てた、敵艦隊を攻撃から防ぎつつ、なおかつ核攻撃からも身を守る戦法。そのさまはまさしく、





「……“現代の殴り合い”だぜ」





 なお、これは誰もがそれを連想してしまった模様。

 まるで旧大戦の砲撃戦のようだかららしい。

 ……まあ、だからこそこのかつてソロモンとかで激しい大混戦を演じた転生組が発狂しているわけでして。ま、ぶっちゃけ止めようがないからもういいや。こんごうさんみたいにあきらめることにする。

 しかし、それでもこの場合は彼女らほど頼りになるものはいない。砲撃戦は彼女らの得意分野だ。ここで、存分に自分達の力を発揮させてもらおう。


 ……まあ、とはいっても、


「(……これの前、核撃たれたんだけどね)」


 しかし、あれはまだ敵艦隊とはいくらか距離があった。そこで弾着してもせいぜい津波被害が出て終わりだろう。……それでも甚大な被害になるはずなんだけども。


 だが、ここまでくればさすがにそんなことをすることはできないだろう。もう目の前に自分達の味方がいる。しかも、あいつらも覚悟を完了したのかこっちにむしろ突貫してきている。避けようともしない。……まあ、今さら避けたところでぶっちゃけ無駄足だが。

 だからこそこのこの選択だろうが、確かに間違ってはいないが、しかし“戦略としては間違っている”。

 核を撃つタイミングを逸した今、お前らが撃てるのは陸だけ。だが、その陸も陸で敵味方大混戦だ。もはや後々の俺たちみたいに敵味方入り乱れている。

 実は陸も陸で俺たちと同じ理由であのような状況を作った。敵味方を入り乱れさせれば、陸も同じ事情で核は撃てない。

 通常弾頭の線もあるが、しかしあいつらもうそんなに大量に持ってないだろう。今までどんくらい撃ったのやらか。


 ……というわけで、これでこいつらはもうある意味弾道ミサイル攻撃は詰んだも同然だ。しかも、こっちとしても思いっきり敵艦隊を足止めできる。沈める必要はない。あくまで“足止めさえ出来れば”こっちのもんだ。

 司令部はもうすぐ陥落するんだ。ここで少しばかり足踏みさせれば……。


「敵艦隊との距離、10,000を切りました!」


「ッ! 敵砲弾弾着! 至近弾多数!」


 またきたな。しかも至近弾が多い。


 ……だが、まだまだだ。こっちのもう突進をしのげれるかな? こっちは昔これを本業としていた奴らが大量にいるんだよ!


「頼むぜやまと。ここからはお前らの独壇場といってもいい! 前世の分まで思いっきりやっちまえ!」


“あったりまえですよ! ここからは私たち前世組がお~もいっきり暴れまわれさせてもらいますよ! ……よ~っし、次弾、撃てえッ!!!”


 その瞬間、目の前の主砲からさらに次の砲弾が放たれる。

 距離が近かったこともあり、その砲弾はすぐに弾着した。


「……ッ! 敵艦の艦尾に弾着! 1発命中!」


「よっしゃあ! 当たったぜ!」


 副長がすっかりハイテンションで叫んだ。

 ……あんた、もうこの状況をすっかり楽しんでやがる。ある意味恐ろしいというかすごいというか。


“よぉ~っし! こっちもう1発当てたよ!”


“なにぃ!? もう当てたの!?”


“ずるいぞ最新鋭艦! ええい、こっちだって即行で当てたやるんだから!”


“ハッハァー! どうしたどうした!? この程度か貴様らぁ!”


 もはや戦闘狂と化した彼女たちは各々で発狂しつつ砲弾を撃ちまくる。なお、まだ命中弾はない模様。

 ……もう、止めるのもよそうか。まあ少し時間が経てば勝手に収まってくれるだろう。ほんと、今までただただミサイル撃つのだけだった彼女たちにとっては、やっぱり今までのでは物足りなかったのだろうな。ここで今までの鬱憤とかその他諸々を一気に放出してやがる。


 ……もういいや、勝手にすきにしとれ。


 まだまだ敵からの攻撃は続く。次々と放たれてくるその砲弾は、すぐにこっちに弾着するが……。


「……ッ! 挟差弾! 近くに弾着!」


 そのうち、すぐ近くに弾着した。

 挟差弾。艦の前後に弾着することだ。

 ちなみに、旧大戦時代の砲撃の常識では、これが得られた場合その次の斉射で命中弾を与えることができるとされているが……。


「きたな! 回避だ! 取り舵5度! 10秒後に面舵10度にまわせ!」


 航海長から回避機動指示だ。

 悪いが、その次に命中弾がどうのっていうのは、あくまで昔のクソのろい戦艦とかの話でしてね。居間みたいな俊敏性・速度性に優れた艦船にやったとしても、あんまり意味はなかったりします。


 というわけで、すぐに取り舵コールとともに取り舵を5度だけ修正。その間にも敵からの砲弾は来るが、すべて回避に成功する。


「いいぞ! そのままかっ飛ばしちまえ! 大丈夫だ! 今のお前なら簡単に避けれる!」


“え!? あんなのに当たると思ってるんですか!? 心外ですね!?”


 お~っと、これはまた自信満々ですこと!


「はっは~、こりゃ失礼! じゃ、しっかり操鑑するからどんどんと避けまくってね!」


“もちろん! 操艦は任せましたからね! ……さあ、来るならこい! 当たれるもんなら、どうぞ当ててみなさい! 当てれるもんならね!”


 やまとが思いっきり意気込むと同時に、ちょうど10秒経ったそのタイミングでさらに俺は一気に面舵に10度傾ける。

 自信満々のやまとが意気込むのを聞きつつ、その艦はさらに敵弾を回避するために急激な機動を起こす。

 そのまま敵弾は左に流れた。


 ……ヘッ、照準がザルだぜ! これじゃいつになってもあたらんわ!


「……フッ、さあ、こいよ。こっから先は楽しい楽しい……」










「大乱闘の殴り合いの時間だぜ……ッ!」














 思わず航海長や副長と同じく無意識にこの状況を楽しんでしまっている俺は、



 自らの思うがままに、そう小さく、かつ力強くつぶやいた…………

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