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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第8章 ~日台vs中最終決戦! 敵本拠地高雄市陸海空軍総力戦!~
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予想外の援軍の参戦

―TST:PM13:25 日台連合艦隊より北東7海里地点上空13,000ft 『IJYA隊』―







「隊長、まもなく射程内です」


 僕はレーダーを見つつすぐにそう報告した。


 視線を前に移すと、そこには少し曇りが目立ってきた空が見えていた。

 雲量は大体7~8。いや、もう9あたりになるだろうか。

 どんどんと厚くなってきている。今日は午後少しだけ曇って夕方ごろにまた晴れるという予報だったはずだけど、まさにこんなタイミングで曇られてもなぁ……。

 こっちは今から戦闘が始まるってのに。しかも、相手があの『赤龍』。

 あの時のように行くとは限らない……。あのときよりきつい戦闘になるだろう。


 中国本土から来ている対艦攻撃部隊は艦隊側に任せることになった。まあ、H-6爆撃機3機に載せれる対艦攻撃兵装の量なんて高が知れてるし、艦隊側の防空能力でも十分対処できるだろう。

 ……まあ、例の作戦直前なんですがね。


 隊長が答えた。


《了解。IJYAリーダーより全機、戦闘準備。中距離対応戦スタンバイ》


 ここで使う中距離ミサイルはもちろんAAM-4Cだけど、全員さっきの戦闘で使い切ってしまっており、こちらからの攻撃が出来なかった。

 もちろん、僕もさっきの台湾軍機救援で4発全部使い切って、今手元にあるのは短距離ミサイルのAAM5Cが2発とそこそこ大量の機銃弾しかない。


 今頃艦隊は敵の弾道ミサイルを迎撃し終えたころだろうけど、まだ安心は出来ない。

 ここを防げないとまたここに対する攻撃の手が及ぶ。

 ……それだけは本気で止めないといけない。だから、ここは精一杯全身全力でお相手しなければ。


《『アマテラス』よりIJYA全機、まもなく攻撃がくる。準備しろ。……君達の腕を信じる。全滅させる必要はない。『赤龍』を撃退せよ》


《IJYAリーダー了解。……くるぞ。全機スタンバイ》


 隊長から少し低めの声で指示が来る。

 一言「了解」と答えると、僕はその視線をひとまず目の前の各計器類に移し、準備がすべて完了したことを改めて確認すると、また真正面に向きなおした。

 ……いよいよ戦闘開始だ。相手はあのときよりもっとレベルアップしてくるはず。

 こっちとしても機を引き締めないと。そして、全身全力を。

 もうすでに射程に入っているはずだ。そろそろきても……。


 ……きても……、うん、きても……、







 ……きても……、











 ……きて……、も……、

















 ……って、














「(敵から攻撃が全然こなぁぁぁああああい!!!)」











 はてさて、これはいったいどういうことなのか。

 もうすでに中距離ミサイル射程内どころか、うまく見れば視界にも入りそうな距離。

 だがしかし、向こうから攻撃が来る様子が全然こない。これっぽっちもない。

 レーダーでは見事なV字編隊を組んだ6機のSu-35が見事に同高度でこっちに対する衝突針路をとっているのが確認できるんだけど、それでも全然それを崩さないどころか、速度は結構速いとはいえ全然攻撃意思を示してこない。

 こっちはもうすでにスタンバイ完了覚悟完了なんですが、いったいこれはどういうことなんですかねぇ……?

 まさか、この期に及んで中距離ミサイル持ってこなかったorオアそもそも残弾ありませんでしたテヘペロなんてオチじゃないよね?

 こんな大事なときにそんなヘマは犯さないよね? じゃあこれはなんですかね?


《……おいアマテラス、向こう全然撃ってこねぇぞ? もうほんとに射程に入ってるんだよな?》


 思わず隊長もあまりの状況の動かなさに不審に思ってAWACSアマテラスのほうに確認を取った。

 向こうからも返答はすぐにきたが……、


《そ、そのはずなのだが……、す、すまない。少し確認を取る。現状待機。向こうの対応に合わせろ》


《IJYAリーダー了解》


 向こうでもこれは想定外だったようだ。

 まあ、明らかに射程内なのに全然撃ってこないとかありえないからね。仕方ないね。


《……どういうことだ? なぜ撃ってこない》


 隊長もそのまま疑問を口にした。

 ……まあ、その答えはぜひとも向こうに聞けってやつなんだろうけど、でもそんなことできるわけないし、そうなるとほんとどういうことなのか謎だ……。


 し、しかし油断は禁物だ。こうやって混乱させつつ近距離でいきなり大量のミサイルをプレゼントなんてことになったら割りと本気でシャレにならな……。


《……ガッ……、だ……》


「……ん?」


 と、そのときだった。


《……き………ガッ……、だれ……》


 無線が大量の雑音交じりで届いてきた。

 ……しかし、こんな雑音交じりの無線とか、送り主は誰ですかね? ジャミングでもかけられてんの?

 でもそんなことなら即行でアマテラスあたりが察知して電子支援とかECM回復あたりしてくれそうだけどね。味方なのかな? でもどこの味方?


 隊長もすぐに反応した。


《あん? おい、この雑音混じりは誰だ? よくきこえんぞ?》


《こちらでも確認した。……待っててくれ。周波数を特定する》


 アマテラスもすぐに動いた。

 日本国防空軍のE-767“AWACS”は、この無線の送り主の使っている周波数を逆探で特定して、その雑音を除去することができるが、今はその作業中だろうね。

 ……しかし、こんなタイミングで無線とか、いったい誰ですかね? こっちは赤龍のお相手で神経すり減らしてるってのに……。


 ……と、ほとんど時間が経たないうちに、


《……、よし、例の無線の使用元を特定した》


 何とかアマテラスが無線の送り主の正体を突き止めることに成功したようだ。


 ……が、


《……ッ! こ、これは……ッ!》


 どうやら、無線を聞く限りとんでもない相手から来たらしい。

 ……しかし、誰だろうかね? 聞く限り明らかに男の、それもシブメンのおじさまが出しそうな声だったけれども、もしかして台湾政府の人からかな? でもわざわざこっちに無線よこす必要なんてないよな? というか、向こう周波数わかってるはずだし雑音関係なくむせのくれると思うけど?

 ……じゃあ誰なんだべね、いったい。

 アマテラスの反応見る限り明らかにヤバイ相手さんなのは間違いないはずなんだけど。


《? どうした? お電話の相手は誰なんだ?》


 隊長も声をかける。

 ……てか、お電話て。これは無線ですって、ていうツッコミこの場合もはや野暮ってやつかな。


 すぐにアマテラスも反応したが、その声は少し驚きを隠せない様子だった。


《……驚いたな。この無線は……、》












《今君達を狙っているはずの敵、赤龍こと『閃龍隊』からのものだ》










「……ファッ!?」


 と、驚きのあまり思わずネットスラングを声で出してしまった。……でもこれ、元々はホモネタなんだよなぁ……たまげたなぁ……、って、そうじゃなくって。


「(……敵からの無線……?)」


 いきなり敵からの無線とは、いったいどういうことなんですかね?

 しかも、今僕達を狙っているはずの閃龍隊から。まさか、今まで攻撃してこなかったのもこれが関連する?

 しかし、いずれにしろいったい何を考えてるんだ?


 無線使って何する気なんだ? 意味がわからない。


《敵からの無線? それマジでか?》


《間違いない。周波数は中国空軍内で使っているものだった。そこから、どうにかしてこっちの周波数に入ってこようとしている》


《はは……、なんだ? こんなときに降伏宣告か?》


 はは、んなアホな。


「まさか。こんな空の上で降伏を要求するなんて、そんなのありえませんよ。陸や海ならまだしも、こっちは空飛んでて今すぐにでも戦える状態で降伏要求なんてそこら近所の子供でも考えませんよ」


《まったくだ。……しかし、いったいなに考えてるんだかなぁ……?》


《まさか、宣告、じゃなくて“宣言”、だったりして》


《ハッ、うまいこというな。だが、ある意味降伏宣告のほうよりないわな》


《デスヨネー》


 と、そう考えていた同僚パイロットが笑って返した。


 しかし、それでも隊長も意味不明の様子だ。

 まあ、隊長や僕だけでなく、ここにいた全員と、あと後方から支援しているアマテラスも同じなんだろうけど。


 ……だけど、それでも疑問は尽きないね。

 まず、いったいなんの目的でこっちの無線に入ってこようとしているのか、理由というか、目的がわからない。これをする意味は? そして、そこで何を伝えたいのか? 何を僕達に言い伝えたいのか?

 考えれば考えるほど意味がわからなくなった。


 ……しかし、


「……どうするんです? 向こう、無線に入ってこようとしてるってことは、おそらく僕達に伝えたいことがあるはずです。聞くんですか? それとも一貫して無視するんですか?」


 まず、こっちがとらないといけない行動はそこだ。

 明らかにこっちに何かのメッセージを伝えようとしていることは明白。

 そのメッセージを聞くか否か。向こうの内容がこっちにとっていい話か悪い話かはひとまず置いといて。


《こっちでも迷っている……。今ここの幹部達が協議しているが……》


「いや、でも急いでくださいよ。こっちはもう目視圏内に入りかけてるんですよ? もし何らかの要求がきてて、それの代わりが戦闘するか否かとかそういう強盗がやりそうな内容だったら……」


《まあ、それはわかってはいるのだが……》


 しかし、こう迷っているのも無理はない。攻めるべくもないだろうね。

 こんな“異常事態”、僕の知る限り今までの近代戦史上初だ。どう対応すればいいのかわからないだろう。マニュアルあるわけでもない。


 でも……、できるだけ急いでね。送り主は今こっちに突っ込んできてるあちらさんだし、今すぐにでも対応を決めてもらわないと……。でないと、僕達としても次の行動を決めきれないし……。


《……う~ん、》


 すると、隊長が少し軽く鼻でうなりつつ、アマテラスに提案した。


《アマテラス、とりあえず向こうに聞いてみないか? 無線周波数に入ろうとしてるってことは、一応向こうにこっちの周波数はもうバレちまってることだし、たとえ無線を開いてもデメリットは少ないはずだ。……一応、一聴の価値はあると思うが?》


《ふむ……、すまん、少し待っててくれ》


 すると、また無線が切れた。

 たぶん、例の今向こうにいる幹部とやらに意見提言中なんだろう。

 まあ、確かに隊長の言うとおりだね。

 こっちの無線に入ってこようとしてるってことは、要はこっちの無線周波数自体はバレてるわけだし、条件は互いに差はないはずだしね。

 ……どうやってこっちの無線周波数求めたのか知らないけど。何らかの無線周波数の逆算探知機器でもあるのかな? でも戦闘機に載せれたっけ? ていうかそもそも中国がそんなのを持っているかどうかも疑問なんだけども。


 少し間をおいて、アマテラスが返答をよこしてきた。


《……今、対応が決定した。とりあえず、向こうの要求を聞いてみることに決定した。今から例の赤龍に対してだけ、こちらの無線をオープンにする》


 どうやら、隊長の提案を受け入れる形をとったみたいだ。

 これで、アマテラス側から例の赤龍部隊に対してだけ無線周波数をオープンにして無線提供を開放。向こうとの無線のやり取りができるようにする。


 少しの間をおいて、向こうからの無線が届いてきた。

 ノイズが徐々に消えていき、声がはっきりと聞こえる。

 ……やっぱり、最初聞いたときに想像したように、結構シブメンのおじさまの声っぽいね。


《……ああ、やっと応答があった。こちらはシャンローンドゥイ。君達の言葉で『閃龍隊』と呼ぶ部隊の隊長だ。TACネームはティエンシャン》


 うん。やっぱり聞くからにおじさま風味漂う方だわな。

 ティエンシャンって、確か日本語で『天閃』って意味を持つはず。

 一応職業柄中国語もマスターはしている。しかし、向こうが使っている言語は日本語だけどね。いくらかカタコトだけど、それでも結構流暢に話してるあたり日本語にもある程度は慣れているのだろうかね。


《こちらは日本国防空軍AWACSアマテラスである。現在貴隊を特別措置として我が方の無線周波数に迎えれているが、そちらからの要求は何か》


《アマテラスか……。日本に伝わる太陽の神。なるほど、管制機にはピッタリの名前だ》


《……お褒めの言葉は純粋にうれしくはあるが、早く要件を言ってくれないか。さもなくば、こちらとて相応の措置を取らせてもらうぞ?》


 少し低めの声で言った。

 ……ていうか、アマテラス知ってるって、あんたどんだけ日本に流通してるんですか。これ日本神話の話なんだけどれども?


《ああ、すまない。……我々の要求、いや、“御願い”を聞き入れてもらいたいのだ》


《御願いだと? 悪いが、降伏勧告とかは受け付けてないからな》


《はは……。まあ、そう考えるのも無理はないか。だが、私はこんな空の上でそんなことをするほどバカではない》


《……じゃあなんだ? もったいぶらずにさっさと言ってくれ》


 そうしているうちに、いつの間にかその赤龍の部隊が僕達の視界に入ってきた。

 一応僕たちはそのまま身構える。もしかしたら、無線で気をそらしつついきなり奇襲をかけるなんていうこともあるからね。


 ……しかし、


《……ああ、例の部隊が見えたか。あれがあの“ツァンシー”か》


「……え? ツァンシー?」


 えっと、日本語で“蒼侍”っていうのかな?

 それ、僕達のこと? なに、そっちじゃ僕達のこと蒼侍なんて呼ばれてるの?

 ……なんとなくかっこよくはあるけど、いつの間にそんな名前付けられてたの……?


《ツァンシーは君達の言葉で蒼い侍の意味だ。……我々は、彼らに、そして、君達に、我々の願いを聞き入れてもらいたい》


《だから、わかったからさっさと言ってくれ。こっちとて長くは待てんぞ? まさか、時間稼ぎとかそういうのではないだろうな?》


 そろそろイラついてきたアマテラスが少し威圧をかけて言ってきたが、それにやんわりと返す。


《……日本の太陽の神は少し怒りっぽいかな?》


《なんだと!?》


《ま、まあまあアマテラス。ここは穏便に、な?》


《ぐぬぬ……》


 思わず隊長が止めに入った。

 ……中々冗談が面白いというか、愉快な方ですね。まあ、僕自身そういうのは嫌いではありませんが。


《……うむ。そろそろもったいぶらずに、意思を示そうか》


 その瞬間、まさか攻撃来るか?と思って攻撃に備えたが……、


《……ふむ、では、これでどうかな?》


「?」


 向こうがそういうと、少し無線が沈黙した。

 いったい何をしているのかな? こっちに攻撃は来ていないっぽいが……。


《……ッ! お、おい! あれ! 前を見ろ!》


「?」


 すると、他の同僚パイロットが思わず叫んだ。

 そういわれるがままに、その前にをみた。……というか、その前にいるはずの、すでに目視圏内にとっくの昔に入っている赤龍の部隊を見た。


 ……すると、


「……えッ!?」


 思わず僕は二度見してしまった。









 その赤龍は機体をバンクさせていた。それも、“6機全部”。









《バンク……? おい、これってまさか……》


 そのとき、僕の脳裏にもある発想が浮かんだ。

 ……バンク。今ではそれこそすっかりやらなくなったけど、確か太平洋戦争時旧日本軍がバンクで各種指示を出したりしていた。

 その一つが……、



「(……友軍の、意思表示……)」



 自分は味方だ、という意思表示のとき、バンクが使われていたこともあった。

 ……あの隊長、聞くからに日本の事情に流通している。だとすると、この旧日本軍の事情に関してもいくらか知っていても不思議じゃない。

 いや、まさかさっきまでの長い前振りはそれを伝えてこのバンクの意味を悟らせるためか? そこらへんはどういうことかはさすがにわからない。


 ……だけど、もしそうだとすれば、まさか……、


《バンクだと? ……おい、待ってくれ。まさか貴様ら……》


《……どうやら、察してくれたようだな。そうだ。我々は、君達日本軍、いや、日台連合軍に“敵対する意思はない”》


「ッ!?」


 敵対する意思はない。

 僕のヘルメットに内蔵された無線機は、確かにその音を僕の耳に伝えた。

 ……へ? 敵対する意思はない? つまり、敵でない?


 ……うん? ごめん、こっちの脳内処理が間に合わないんだわ。


《……どういうことだ? 意味がわからんぞ》


 アマテラスが問いかけるが、その問いには答えず、静かに軽く独り言を言うように言った。


《……我々は、今のこの現状を変えたいのだ》


《は?》


 そして、フッと軽く息をついたと思うと、何かを決意したようにはっきりといった。


《……我々は、もうこれ以上戦争が長引くのを防ぐ。我々に、その手伝いをさせていただきたい》


《……え? え??》


《……おい、ってーことはまさか……》


 隊長の問いかけに一言「そうだ」と答えると、まるで宣言するかのように高らかに言った。


《……我々は、この戦争を終わらせる。だから、一つ、我々からの願いを聞き入れてくれ。無理なのは承知で言わせてもらう。……一時的にでもかまわない。……我々を、》










《貴軍に合流し、“この戦争を終わらせるために共に戦わせてもらいたい”》










《「……ふわぇいッ!?》」


 と、ここの無線を聞いていた者全員がそんな言葉にしたら思いっきり笑いそうな変な声を出してしまった。

 だが、そりゃそうなる。向こうから言ってきたのは、まさかの“俺たちへの寝返り”だった。

 思いっきり耳を疑いたくなる。この無線、変な内容送ってきたんじゃないだろうな?

 ……まあ、あるはずもないが。


 しかし、信じられなかった。

 ついこの前まで戦っていた、しかも、一度本気で殺しにかかってきていた者たちが、今度はいきなりこっちの味方になるとか、そう簡単に事実として受け入れるわけはなかった。


 もちろん、アマテラスが反論、というか、疑問の言葉を出した。


《ま、待ってくれ! いきなり言われても意味がわからぬ! どういうことだ!?》


《だから、何度も言わせないでいただきたい。……我々は、もうこの戦争に嫌気が差した。我々がこの戦争でわざわざ命を懸けて戦う意味を失ってしまったのだ。……さらに、今度は核を使ってくるときた》


 ああ、あの核のやつ向こうにも伝わってたのね。てっきり自軍の兵士達が怖気づくのを嫌って教えないでいるかと思っていたが。


《……我々は、もうこんな虐殺じみた戦争を戦うのが嫌になった。だから、こんなけったクソ悪い戦争をさっさと終わらせたい。……だからこそ、我々は君達に合流したいのだ》


《……我々に合流し、その戦争が終わるのを早めると?》


《……我々にできることはそれくらいしかない。もちろん、簡単に受け入れてくるとは思っていない》


《当たり前だ。そんな要求、いくら何でもすぐにというわけには……》


 すると、向こうは「ふむ……」と考えると、また無線に向けていった。


《……そうだな。なら、》








《ここで、“我々の決意を示す”としよう》







《……決意だと?》


《……今、中国本土から来る対艦攻撃部隊の情報はあるか?》


《あ、ああ……。だが、どうするつもりだ?》


《できる限りでいい。情報を提供してもらいたい。……今、ここで彼らに艦隊を攻撃してもらっては、後々また戦争が長引く可能性がある。日台連合艦隊が今こうして行動しているのは、何かの作戦があるからだろう。それを邪魔させては厄介だ。……だから、我々はあの部隊を、》







《この手、今もっている中距離ミサイルで攻撃し、日台連合艦隊を奴らの攻撃を防ぐ》







《「……はぁ!?》」


 この場全員がハモる。

 ……あーもうめちゃくちゃだよ。いろんな意味で。


 本気なのかこいつら? 自分達の味方だぞ? 確かにここからなら中距離ミサイル届くし、うまくいけば一気に撃破できるかもしれないけど、それだとあんたら反逆罪ですよ……?

 ……なんか違う意味で心配になってきた。敵に対して心配するとかこれまたシュールな光景もあったもんである。


《……お前ら、本気か?》


《本気だ。ただし、一つ約束してくれ》


《なんだ?》


《……もし奴らを撃破したら、我々の合流を認めてくれるか?》


《え?》


 ふむ、交換条件かな?

 しかし、中々面白い条件ではある。さて、アマテラスはどう答えるか……。


《……疑い深い性格で申し訳ないのだが、中国自身が自分の国の人間を犠牲にして他の目的を達成するような国だから少し……》


 中国人本人の前でよういえるなそれ。

 でもまあ、本人は少しため息はつけど、それ自体は否定はしなかった。


《……まあ、無理もないか。なら、これでどうだ? 君達の蒼侍、えっと……》


IJYAイジャー隊だ。沖縄方言で勇気の意味を持つ》


 隊長が割り込んだ。

 そういえばそんな意味があったね。勇気って意味。

 沖縄方言だったっけか。すっかり忘れてた。


《勇気……、か。いい名前だ。では彼らを、》









《すぐ隣に付かせ、共闘時以外は我々を監視させる。これでどうだ?》








《え? お、俺たちをか?》


 隊長の問いに、彼は肯定で答えた。


《そうだ。すぐ近くなら、万が一我々がすぐに敵対行動をとったときに即行で攻撃できる。互いにちょうど6機だしな。いくら我々とはいえ、至近距離から攻撃されたらさすがに防ぐべくもない。……これなら、君達にとっても悪い条件じゃないはずだ。どうだ?》


《ぬぅ……、そうは言われても、やっぱりすぐには……》


《……できれば、すぐに行動に移させてもらいたい。もう我々は奴らを射程に捉えている。向こうとて、もうすぐ射程に捉える。今まだ艦隊から攻撃はきていないようだが、そろそろ……》


《むぅ……、そうせかされてもなぁ……これはきわめて特殊な事態ゆえ……》


 アマテラスが思いっきり決めかねていた。

 おそらく、向こうでも議論が勃発しているころだろう。僕達に監視させるという形で味方に引き入れるか、それとも拒否するか。

 ……でも、向こうから提示された条件は確かに互いにイーブンにさせるもの、いや、むしろこっちに立場的に有利にさせるものだ。

 こっちに監視させれば、いつ僕達から攻撃されるかわからないし、それなら向こうとてへたな真似はできない。

 そして、こっちとしても味方自体は増やすことができるし、案外まずい話でもない。

 しかし、それによるデメリットももちろんある。


 ……それらを踏まえたうえで、


「……あの」


 僕は、意見を提言した。


《? IJYA02、どうした?》


「はい。……とりあえず、時間がありませんし、今は一応、」






「向こうの言ったとおり、“僕達が厳重に監視するという形で味方に引き入れる”ということでどうでしょうか? 条件は、少なくともこっちには不利にはならないと思います」






《むむ……、しかし》


「ですが、どっちにしろ時間がありません。もうすぐ作戦行動に入る艦隊が、今防空をしている暇はないと思います。出来ないことはないですが、彼らにはこの後の作戦に集中してもらいたいですし、ここは僕達が厳重に監視しますから、とりあえずその“意思表示”とやらを見てみてはどうでしょうか?」


 すくなくとも、いきなり僕達が不利になることはまずない。

 こっちから監視してるんだ。何かあればすぐに攻撃できる。主導権はこっちにある。


 ……時間もないし、向こうもそういってるからとりあえずやらせてみてはどうだろうか。


 アマテラスも少し考え、そして、時間をかけずにすぐに答えた。


《……今、こちらのほうでも方針を決定した。現場判断として、彼ら『閃龍隊』を、一時的にではあるが我が軍に引き入れることに決定した》


「ッ!」


《……それはまことか?》


 向こうの隊長さんからも声が聞こえる。アマテラスはそれを肯定した。


《ああ。だが、あくまで一時的な特例中の特例の措置だ。また、少しでも不審な行動を行なった場合、否応なく君達には撃墜措置が下される。あと、悪いが君達に対するデータリンクは機密関係上できない。……いくら一時的に味方になるとはいえ、“形式上は中国軍”だ。さすがに、機密に触れるデータを送ることは出来ない。……これが、我々から提示する、君達を我が軍に引き入れるにあたっての条件だ。それでもいいか?》


 とてつもなく厳しい条件だ。

 まあ、でも仕方ないだろう。いくら味方に引き入れるとはいえ、アマテラスの言ったとおり中国軍の人間なのには変わりはない。

 この後彼らがどんな行動をするかわかったもんじゃないのに、簡単に向こうに特になることをすることはない。


 ……しかし、向こうはこの厳しい条件を即答で快く受け入れてくれた。


《かまわない。最初からこの条件を突きつけられるだろうことは予測していた。だが、せめて無線はつなげてもらえるか? それくらいはいいだろう?》


《それはもちろんかまわない。現在の周波数を維持してくれ。こちらの指示があるまで絶対に変えてはならない》


《了解した。……では、行動を開始する》


 その宣言に、アマテラスも同じく宣言するように言った。


《こちらアマテラス。了解した。……これより、一時的な特例措置として、敵中国軍の戦闘機隊『閃龍隊』を我が軍に引き入れる。貴隊は我々日本軍、及び台湾軍の管轄に入る。以後、我々に指示に必ず従うように。途中、貴隊の行動が反抗的行為とみなされた場合は、容赦なく君達には撃墜措置が下される。いいな?》


《了解した。では、すぐに行動を開始する。全機、R-77スタンバイ。目標、4番機~6番機は護衛機に向けて満遍なく放て。他は私と共に、爆撃機を落とす》


 アマテラスの宣言と共に、向こうも準備をし始めた。

 これで、一時的にアマテラスの指揮下にはいり、そして僕達日台連合軍の勢力化に入ることになる。

 その間に僕たちは近くに来た赤龍こと閃龍隊の横を通り過ぎ、すぐ後ろに付いた。

 そして、いつでも撃てるようにAAM-7を準備しておく。念には念を、ってね。


 ……けど、


《……何度も確認するようで悪いけどよ》


《? なんだ?》


 隊長が一言いった。


《……あんたら、ほんとにそれでいいんだな? 一応俺たちは監視にはいるが、あんたらのやろうとしていることはいわば“国家に対する反逆”だ。……後々どうなっても俺たちは責任取らんぞ?》


 そう。今僕達が心配しているのはそこだ。

 これは、いわば国家に対する反逆罪だ。それも、国に忠誠を誓った軍人としてはこの罪はとてつもなく重い。

 国を、いや、中国の場合国もあるけど、どこでもない“共産党”を裏切ることになる。

 ……それを、現実は認めてくれるはずがない。


 彼らはそれで本当にいいのか。


 確かに戦争を終わらせたいのはわかるけど、そこまでして終わらせたいのか。

 ……いや、さっさと終わらせたいのは僕も同じなんだけど、それでも、わざわざこっちに合流してまで終わらせたいって……。


 その問いには、隊長である彼自身が、少し静かな声で言った。


《……まずは攻撃させてくれ。その後話す》


《……かまんぞ。すまんな、待たせて》


《いや、大丈夫だ。……全機、準備できたな。……よし、》








《全機、放て》







「……ッ!」


 すると、前方にいる彼ら6機のSu-35から、全4発ずつ、計24発のミサイルが放たれた。

 白い煙の尾を引きつつ、それは雲が広がる灰色の空を一直線に超音速で飛んでいった。


 ……えー、


「……あ、あいつらマジで撃ちやがった……」


 まさかとは思っていたが、本気で撃った。

 それも、容赦なく大量のミサイルを。

 R-77って言ってたし、おそらく中国ではおなじみのロシア製の中距離ミサイルなんだろうけど、その先にいるのは例の敵中国軍の対艦攻撃部隊。

 H-6が3機に、少数の護衛。おそらくJ-11だと思われる。


 ……何度も勘違いしそうになるが、あそこにいるのは自分たちと同じ中国空軍。自分達の“元”味方だ。

 ついさっきまで味方だったんだ。つい数分前までは。

 ……それが、いきなり向こうに対して牙を向いた。

 味方に攻撃できるってことは、おそらくデータリンク全部きったんだろう。今つないでいるのはその彼等の部隊内だけだ。


 ……もう、この時点でも彼等の本気度がうかがえる。


 そして、向こうの隊長さんが、まるで静かに語るように言い始めた。


《……この手ではどうにも出来ないと思っていが……、どうやら、方法はまだあったようだ》


「……方法?」


 思わずつぶやいたが、その方法が、もしかしてこれか?


《そうだ、方法だ。……我々のやっていることの重大さはもちろんよく理解している。とんでもなくイレギュラーなことをしているというのは、痛いほど自覚しているつもりだ。私だけでなく、ここにいる全員が》


《……なら、なぜわざわざこっちに味方についてまで? もっと他に方法なかったのか?》


 隊長がそういったが、彼はそれには軽く息をついていった。


《……他の方法で試しても、結局なんの結果にも繋がらない。結果、我が国が抵抗すればするほど、この醜い戦争は1分1秒でも長引く。私は、それが嫌だったのだ》


 戦争を長引くのを嫌った……、それでこっちに寝返るってか?

 いや、まだ理由があるはずだ。それだけでこっちに寝返る勇気はないだろう。


 彼は続けた。


《……今の我が国はイカれている。敵味方関係なく目的のために攻撃するわ、はては核を撃つわ……。もはや、こんなの戦争ではない、ただの“虐殺”だ》


 心にグサッとくる言葉だった。

 ……確かにそうだ。今のこの戦争に限ったことじゃないけど、よく考えたらこれは虐殺と見てもそれほど違和感はない。

 近代戦争ではこれが当たり前だと思っていたけど……、でも、それでもこれは確かにひど過ぎる。

 中国も、度々人道的にひどいことをしてはきたけど……。


《……私はそんな戦争に嫌気が差した。もはや、自分がこの戦争を命を欠けて戦う意味などないと思った。私だけでない。ここにいる者、全員だ》


「……全員……」


 ……だから、こんな部隊全員で寝返り行動ということか。


 ……向こうも、国のために命を駆けて戦っていたんだろう。

 だが、今回、彼らにとってはそれは裏切られたように感じたんだ。だから、こうして寝返りの行為に走った。


 ……だけど、責める気は起きなかった。いや、責める理由が見当たらなかった。


 彼らだって、ただただ殺しのために戦争をしてるわけじゃない。彼らだって、国のために、国を守るために戦ったんだ。

 でも、それを国の側から裏切られた……。そのときの彼等の心情は想像に難しくなかった。


 ……相当、彼等の中でも葛藤があったはずだ。でも、それでもこうやってこの行動に走った。


 彼等のこの行動を起こす勇気の原動力。それが……、





 今すぐにこの戦争を終わらせたい、その、たった一つの思いだったのだろう。




《……我々は、もうこのような醜い戦いをしたくない。だから、たとえ反逆になっても、すぐにこの戦争が終わるであろう選択肢を取った。……それが、》


《……この、我々に味方に付く、ということか》


 隊長が言った。向こうも肯定する。


《そのとおりだ。……我々は、ここで、我々の意思を示す。……君達に、そして、誰でもない、“中国共産党”に》


 と、そのとき、


《R-77、まもなく弾着。残り20秒》


 アマテラスからの報告だった。

 レーダーを見ると、すでにミサイルに気づき、回避行動を取っていたが、その回避が全然回避になってない。

 なんといえばいいのか、とにかく回避するにはいろいろとツッコミどころが多すぎた。

 明らかに速度が遅かったり、急制動をかけないといけないのに全然動いてなかったり……。


 ……たぶん、向こうでも混乱してるんだろう。そりゃ、味方から撃たれたら誰だってそうなる。


 ……だが、彼はそれにはかまわず続けた。


《……我々は、ただ虐殺をするために借り出されてるわけではない。醜い虐殺に成り果てた戦争にまで、我々は命をかけるつもりはない》


《弾着10秒前》


 時々くるアマテラスの報告も無視して問答無用で続ける。

 その言葉は、弾着時間が迫るにつれて力がはいっていった。


《だから、ここで我々は意思を示す。我々はもう、このような戦争に加担するつもりはない。我々は、我が中国の未来のため、これ以上の無駄な死を増やさないため、独自の意思をもって行動する》


《5秒前》


 レーダー上ではすでにミサイルが目の前だった。

 少数の護衛の一部に対してはもちろん、H-6爆撃機3機に関してはもう回避するすべがなかった。


 もう、ほとんど当たったも当然だった。


 そして、彼は最後に宣言するように、力強く言った。



《……だから、我々は、ここで決意した》



《3秒》



《戦争を終わらせるために、手段を選ばないと》



《2秒》



《そして……》



《1秒》










《たとえ国を敵に回してでも、“この戦争をすぐに終わらせる”と!》











 その瞬間だった。


「ッ!」


 レーダー上から敵性輝点エネミー・ブリップが大量に消えた。それも、一瞬で。

 護衛機はもちろん、H-6爆撃機も3機全部落ちた。4発くらい一気にぶち当たったし、たぶん木っ端微塵だろう。


 ……途中で自爆とかすらさせなかった。まだあの時ならチャンスはあったはずだ。


 しかし、彼らはやらなかった。


《う、うそだろ……、マジで落としやがった……》


《おいおい……、味方落としやがったぞ……》


《正気かよあいつら……》


 部隊内でも他のパイロットが大きく動揺していた。

 だが、無理もない。仮にも元味方を、同じ国の人間を落とした。


 ……そこまでなのか。そこまでこの戦争に……。


 ……だけど、これではっきりした。


 ……彼等の決意は……。


「(……正真正銘の本物だ。それも、とてつもなく固く、そして強い)」


 このときでも、彼らは何の声も上げず、ただただ何事もなかったかのように僕達の前を飛行している。

 何の抵抗もなかった。


 戦争を終わらせるため、彼らは心を鉄にして、目的のために手段を選ばなかった。

 とても辛いことのはずだ。仮にも同国人を殺すのに、ためらいがないはずがない。


 だが、それでもやった。それほど、彼らはこの戦争に嫌気がさし、そして絶望感に浸っていたのだろう。


 ……違う意味で、その“勇気”には敬意を表せざるを得ない。


《敵対艦攻撃部隊、半数以上の撃破を確認。H-6爆撃機も全機撃墜を確認。……残存は、撤退を開始している》


 ここで、よくやった、とまでは言わない限り、やはりまだ抵抗があるというか、戸惑いがあったのだろう。

 だが、そんな思惑にはかまわず、平気な声で彼は言った。


《……これでいいか。我々の決意は、見てのとおり本物だ》


 驚愕のあまり思わず沈黙しているこっちにはかまわず、彼はさらに続ける。


《……我々は、この戦争を終わらせたいのだ。ただただ、我々の願いはそれだけだ。だから、頼む》







《……認めてくれ。我々は、君達と共に戦いたい》







 再び少しばかりの沈黙がこの場を支配する。

 彼等の決意の固さに、少しばかり驚愕していた。もちろん、僕も。

 ……彼らは本気だ。たとえ戦争を終わらせるためなら、たとえ相手が同国人でも容赦はしない。


 ……はぁ、負けたよ。




 僕たちは、あんたらには勝てへんわ。




 ここにいたもの全員が、そう確信した。


 隊長も、それを確信したのか軽くふっと笑っていった。


《……おもしれえじゃねえか。いいぜ、一緒に戦うか》


《ッ! た、隊長!?》


《ほ、ほんとによろしいのですか?》


 少し部隊内から反発の声が上がったが、しかしその声自体も半ば棒読みだ。

 ……本心じゃない。


《な~に今さら言ってんだ? ここまできたら互いに後戻りできないぜ。例え形だけでも、同国人を殺した。向こうも後戻りできない。……あいつらを孤立させたくないしな》


「……隊長……」


《えっと……、あんたらの隊長、なんてったっけ?》


《ティエンシャン。または、シャンローンリーダーでもいい》


《あ、そう。じゃあシャンローンリーダー。……いいぜ。あんたらがその覚悟なら、俺たちもお供させていただく。ここは少し共闘といこうぜ》


 すると、向こうも安心したように言った。


《……その言葉が聞けてうれしいよ。すまないな。えっと……、イジャーリーダー》


《おう。……ま、ただし!》


《?》






《きっちり監視はさせてもらうけどな!》






 そしてそのままガッハッハッと豪快に笑った。

 それにつられて僕達も笑った。というか、なんか向こうの部隊にまで軽く苦笑いされてるし。……なんとなく複雑だな。

 ……まったく、相変わらず豪快だな隊長め。これのせいでいったい僕達がどんな目で見られると……。


《はは、愉快な隊長だな。気に入ったよ》


《俺たちもあんたのこと気に入ったぜ。その意気やよし、さっさと戦争終わらせるか》


《ああ……。よし、シャンローン全機に告ぐ。ここからは、》


《IJYAリーダーから全機、いいか、ここからは……》







《《向こうとの共同戦線だ。いいな?》》


《「了解!》」







 両部隊隊長の声と、その返事が聞こえた。

 ……面白いじゃんか。敵であった中国軍の、それもエース部隊との共闘とか。戦争って、ほんと予期せぬことばっかりおきるな。いろんな意味で。


「(……これも、戦争あってのことかな……?)」


 こうやって敵味方の線を越えた友情が芽生えるのも、戦争のおかげっていうのかな? いや、おかげ、ていうのは少しおかしいけども。


《……ッ!》


 すると、アマテラスから報告が来た。


《全機に告ぐ。日台連合艦隊が“例の作戦”に入った。ここからは上空直掩に入れ》


《IJYAリーダー、了解》


《シャンローンリーダー、了解》


 と、海上ではいよいよ作戦が始まったみたいだ。


 ……では、僕たちはそのまま上空護衛だね。まだ燃料は結構もつし、ここからは少し長時間飛行になるかな。


《……で、下ではなにやってるのかな?》


 向こうの隊長さんが聞いてきたが、それには僕達の隊長さんが陽気に答えた。


《へヘッ、なら下見てみな。面白い光景が見れるぜ?》


《ふむ……。ほう、これは……》


 すると、言われたとおり下を見たらしい向こうの隊長さんが感心したように言った。


《……なるほど。これなら確かに向こうも撃てないな》


《だろ? ……あとは、陸しだいだがな》


《なに、どっちにしろ長くはもたんさ》


《だといいがな! ガッハッハッハッ!》


 ……さっきからテンションが高いね隊長。


 しかし、確かに長くはないだろうな。陸とて、今日本国防陸軍の空挺部隊が司令部に突っ込んだって話だし、ぶっちゃけ陥落は時間の問題だ。


 僕は下を見る。


 そこでは、日台連合艦隊がまさにその“例の作戦”を実行していたのだが……、


「……さて、」














「どこまで効果があるかな……?」














 僕は少し興味津々になってみていた…………

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