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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第8章 ~日台vs中最終決戦! 敵本拠地高雄市陸海空軍総力戦!~
117/168

〔F:Mission 27〕日台連合艦隊防空戦

―TST:PM13:10 日台連合艦隊東北東25海里地点上空12,000ft

              日本国防空軍第9航空団第210飛行隊『IJYA隊』―







「確認しました。現在交戦中の両軍の航空部隊をレーダーで捕捉」


 僕はそう報告した。


 高雄市決戦開戦から早6時間を経とうとしてるけど、戦況は何とか優勢を保っていた。

 陸の最前線では敵味方が“わざと”入り乱れた混戦を演じており、そしてその隙に日本国防陸軍の第1空挺団の部隊が総司令部に強襲することに成功。

 1機ほどオスプレイが落ちたみたいだけど、まあ中身はしっかり下ろしたみたいだから後は何とかなるでしょう。

 今頃、敵の総司令部を確保するのに躍起になっているに違いない。


 そして、今の僕たちはというと、早朝に高雄市上空で行なわれた航空戦に少し参加して航空優勢に貢献した後いったん帰還。すぐに燃料弾薬を補給してまた飛び立った。

 その“途中変更された”目的地がここ。今敵艦隊に向けて突撃をかけている日台連合艦隊の上空だった。

 といっても、正確にはもう少しで到着するって感じだけども。


「(……さて、艦隊もそろそろ“時間”だね……)」


 ここでいう時間の正体は後々明らかになるわけですが、まあ大体後15分後くらいですかね?

 まあ、みてりゃわかるよ。結構な無茶をやりますがね。


 隊長の声が聞こえる。


《了解。各機、中距離ミサイルは使えない。すぐに格闘戦で行くぞ。向こうは待ってくれん》


「了解」


 実は向こうではもうすでに戦闘が始まっている。本当は僕たちは参加する予定はなかったんだけど、今向かっている台湾空軍のF-CK-1C“雄鷹”戦闘機隊が中国軍の空母施琅艦載機と格闘戦を展開させていて、すでに何機か落とされていて少々マズイ状態になっている。

 だから僕達が急遽お呼ばれしたというわけ。本当なら今頃高雄市で味方航空部隊と上空警戒任務を交代しているはずなんだけどね。さっき“途中で変更された”っていうのもそういう理由。


 ……さて、そろそろだけどどんな状況になっていることやら。


《IJYAリーダーよりアマテラス、目標空域の戦況を》


 隊長が上空で警戒任務についている日本国防空軍AWACS『アマテラス』に情報提供要請。

 すぐにデータリンクとともに無線の声が耳元に響いた。


《IJYA各機、データリンクを送った。詳細はそちらで確認してくれ。だが、簡単に一言言うとすれば、状況は“劣勢”といわざるをえない》


《台湾の奴らの損害は?》


《すでに戦闘開始初期の約3割を失っている。敵はまだそれほど被害は受けておらず、とにかく君達の支援が必要不可欠だ。急いでくれ。台湾側のコールサインは『PRIESTブリースト』だ》


《了解した。各機、少し速度を上げるぞ》


 先頭の隊長機が速度を上げるとともに、僕を含め周りもすぐにそれに合わせて編隊を保ちつつ増速していった。

 台湾の状況は思ったよりやばそうだ。さっさと向かわなければ。


《IJYAリーダーより全機、AAM-7、及び機銃の安全装置マスターアーム解除アンロック。そろそろ見えるぞ》


 隊長の言われるがままに、機体に乗せている武器の安全装置を解除する。

 ここでは出来ればAAM-4Cも使いたいけど、あんな混戦状態で使おうものなら絶対1機や2機ほど友軍誤射ブルー・オン・ブルーが起こる。

 幸いこのAAM-4Cはある程度なら近距離でも使えないことはないし、そこで近距離ミサイルとして使うことにする。……ずいぶんと無理したやり方だけど。


 ……すると、


「……お?」


 前方のほんの少し曇ってきた雲をかき分けると、そこでは黒い点が様々な機動で空を待っているのが見えた。

 レーダーにも詳細が乗る。

 台湾空軍と中国施琅機動艦隊戦闘機隊。そして、数は後者が少し有利。

 ……なるほど。確かに劣勢。台湾側が追い詰められている。


 どれ、ではさっさと追い払ってやりますか!


《IJYAリーダーよりPRIESTリーダー、聞こえるか? 援軍ただいま到着。指示をくれ》


 無線で向こうに問いかけると、すぐに返答が来た。


《ッ! 日本空軍か! 助かる! こちらPRIESTリーダー、現在敵航空部隊と交戦中。援護してくれ! こっちじゃ手数が足りない!》


《了解した。これより本隊は貴隊の戦闘支援に入る。ちょっと割り込むぜ》


《すまない、頼んだ!》


 向こうの隊長さんからもゴーサインが来たところで、今度はアマテラスから改めて指示が来る。


《まずは今交戦中の施琅航空隊を撃退しろ。台湾航空部隊の損害を最小限に抑えこめ》


《了解。……よ~っし、それじゃあ全機、魚達を海に返す時間だ。奴らを……》









《海にリリースしてやるぞ!》


《「了解!》」










 海に向けて魚をリリースか。

 まあ、魚になる前に魚達のいい住みどころになるのではないかな?

 ……あ、その前に水圧にやられて木っ端微塵かな?


「……魚を海に返しますかな」


 では……、参ろうか。




 戦 闘 機 を 空 か ら リ リ ー ス す る 時 間 で す ぞ 。




《全機、散開ブレイク!》


 その合図とともに隊長を中心に広範囲に一斉に散らばった。

 同時に、さっきまで胴体下部に取り付けていた増槽も捨てる。


 すぐに僕も近くの戦闘機に狙いをつける。

 ……J-15。やっぱり敵の空母艦載機。

 なに、スホーイ系統は今まで何度となく戦を交え合ってきた。落とせる!


「後ろをがら空きにさせるとは……、隙だらけだね」


 まったく、そんなやつは一回天国にでも行って空戦機動学びなおしてきやがれ!


 AAM-5Cスタンバイ。少しばかり遠距離だが、十分これでもいける。というか、AAM-4Cをするには少し近すぎる感がある。

 ミサイルコンテナが目の前のゆらゆら飛んでるJ-15を捉えた。

 そのときのアラートに気づいたのか、すぐに回避機動を取るが、今さらやったって遅いわけで。


「IJYA02、FOX2!」


 すでにこっちの準備は出来ていた。

 すぐに左主翼から発射した1発のAAM-5Cは、自分の想定している距離より短距離だったとはいえそのまま敵J-15に向けて正確に飛んでいった。

 すぐに反応はしたが、その敵機の機動は少しゆるかった。

 ……もしかして、急制動機動の後だったの? だからあんなにノロノロ飛んでたの?

 まあ、どっちにしろ運が悪かったね。申し訳ない。


 そして、そのままフレア撒布もむなしくミサイルは敵機の右主翼あたりで近接信管が作動し爆発。右主翼を胴体からもぎ取り、その敵機はきりもみ状態で落下していった。

 どうせならパイロットが脱出したところを確認したかったが、しかしそんな暇はない。まあ、あれなら一応コックピットは無事だろう、うん。


 次の敵機を探す。


 レーダーから僕のほうに近いもの……、ッ! あった。少し距離を置いて1機のF-15MJに追われているJ-15を確認。

 ……というか、追ってるの隊長か。しかし、その後ろにもう1機のJ-15が接近中。隊長が狙ってる敵機のウイングマンかな? 狙われてるのに気づいているだろうけど、どれ、援護に回ろう。


 すぐにスロットルを少し前に倒し、隊長機の元に接近。

 例のJ-15を確認すると、無線で声を発した。


「隊長、援護します。僕の前に敵機もってこれますか?」


《お、HOPESホープスか。すまない、前はいい。後ろを頼む。できるか?》


「お任せを。いきます」


《あいよ、頼んだ》


 すぐに隊長の機体の真正面、の下にもぐりこむ針路を取った。

 隊長に追われているJ-15が上を通り過ぎたが、それは無視。そして、その後ろから狙ってきている隊長のF-15MJも、上昇しつつだったために結構すぐ上を通ったが、それも無視。

 隊長機が通り過ぎると同時に、高度は隊長機と同高度になり、そこで水平飛行に移行。

 後ろからつけていたJ-15が目の前に来た。

 ……ここまで無防備でいるってことは、すっかり意識を隊長に持っていってたな? 残念、常に周りを見ないと死にますよ?


「シーカーオープン。FOX2」


 今度は近距離だしヘッドオンなので短距離ミサイルのAAM-5Cを右主翼から1発放った。

 放ったと同時に機体を右にクォーターロール。さらに一気に操縦桿を手前にひいて敵機の針路を開けた。

 僕からの置き土産ですよ。どうぞお受け取りください。


「(どうだ?)」


 すぐに機体をそのまま右旋回させ、180度真後ろを向きなおしたところで姿勢を戻した。

 右を見ると……、


「……よし、落ちたか」


 下方向に火を噴いて海に落ちていく敵機が見えた。

 原型は保ってるが、間違いなくさっきのJ-15。何とかミサイルが命中したみたいだね。


 よしよし。これで2機目。


「後ろ落としました。そっちは?」


《サンキュー。こっちも今海に返したところだ》


「了解」


 どうやら隊長も落としたみたいだね。

 とりあえず、隊長機の右隣についた。

 機体に損害はない。一応無傷みたいだね。


《ナイス援護だ。これでまた撃墜数上げたな》


「何機でしたっけ? 数えてませんよ僕」


《今ので16機。どんだけ落としてるんだよ、俺でもまだ今のでやっと10機だぜ?》


「はは……」


 もうそんなに落としてたのね。まあ、ぶっちゃけ撃墜数とか割りと真面目にどうでもいいんですがね。


《よし、そろそろ次にかかるぞ。お前はこの先の1機のJ-15を狙え。俺は……》


 と、隊長が指示を出そうとしたときだった。


《こちらPREIST03! 誰か! 誰かいないか!》


 無線だった。無線がいきなり叫び声をあげた。


《後ろから追われている! 2機だ! 誰か助けてくれ! 援護を!》


「ッ!」


 PREIST。台湾軍機だ。

 後ろから2機。マズイ。状況から想像をするに事態は一刻を争う。


「(位置は!?)」


 すぐにレーダーで救援要請があった台湾軍機を探す。

 ……あった。データリンクで援護コマンドが発せられている。

 ここから右の方向。そこから近いのは……、


「……僕だけだな」


 いや、正確には他にもいるんだけど、ここからその台湾軍機までの道のり上は敵味方の混戦状態。とてもじゃないけど救援に行ってる暇なんてない。

 しかし、ここからその最短距離で行くとなると、どうやってもこの混戦空域を突き抜けないといけないわけでして……。


 ……いや、迷ってる暇はない。どっちにしろ今は僕しかいない!


「隊長、僕が行きます!」


《え!? あ、おい!》


 隊長が声をかけるまでもなく僕はすぐにクォーターロールで右旋回し、すぐに90度方向転換するとすぐに機体姿勢を修正、少し後退しつつ、今度は若干右に機体を傾けつつ一気に増速した。

 目の前を見る。

 そこには大量の敵味方の戦闘機が入り混じっていた。これをかわしつつ、その先の敵機をつぶしに行くとなると、これは至難の業だけど……。


「……面白い、やってやる!」


 むしろこういうのは最近お手の物になってきた、今日この頃です。


 すぐにAAM-4Cをスタンバイする。

 増速したまま若干降下していると、まず敵のJ-15が2機、こっちに気づき追っていたF-15MJから目標を変更して機首をこっちに向けた。

 そして、まず片方の1機がこっちにミサイルを放つ。

 1発。おそらく短距離だ。


「甘い!」


 しかし、そんなの読みどおりだ。

 すぐにタイミングを合わせてスロットルを絞り、同時に操縦桿を一瞬思いっきり引きつつフレアを放った。

 そして少しだけ高度を上げ、そのミサイルがフレアにだまされたと同時にハーフロールからのピッチアップ。すぐに高度をほんの一瞬安定させると、さらに今度はもう片方から1発ミサイル迫ってくる。

 隙を与えない気か。だけど、それくらいならどうてことはない。

 高度を戻しながらにフレアを放ちつつレフトロールを繰り出し、真正面から来たミサイルを上に見て後ろに受け流した。……当たってないのに受け流すってのは少し言葉おかしいけれども。

 そしてそのミサイルは後ろ上方においておいたフレアに爆発すると、次のミサイルがさらに迫ってきた。

 今度も1発。どんどん撃ってくるが、僕はそんなのお構い無しだった。

 とにかく急いだ。お助け求めてる親友の国の人が待ってるのでね。

 さらにレフトロールをしつつフレアを放ちながら左に回避。何とか回避に成功しロールを1回転で済まし機体を水平にさせると、さらにその目の前から来たもう1発のミサイルにも、再び機体を左に45度傾けつつ、ミサイルが弾着する少し前に一気に機首を上げて同時にフレア放出。

 タイミングさえよければ今の時代でもフレアは十分通じる。

 迫ってきたミサイルはそのままフレアに向かっていった。後ろで爆発の衝撃を軽く感じつつ、そのまま高度を上げて左に避けた機体を少し元の針路に修正してすぐさまAAM-4Cミサイル2発に目の前にいた敵のJ-15戦闘機2機をロックさせた。

 並んでいた。ありがたい。1機ずつ一々相手しないですむってこった。

 同時にロック完了。また向こうが撃たないうちにさっさと撃っちまおう。


「……よし、ロック。FOX1!」


 すぐに胴体下部から2発発射。

 すると、同時に向こうからも1発ずつ、計2発放たれた。

 同発か。途中で互いのミサイルが交差する。

 向こうは左右に分かれてフレアを放った。……て、うん? フレア?

 近距離だったから短距離ミサイルと勘違いしたか? だけど、今僕が撃ったのって終末誘導AHRアクティブ・レーダー・ホーミングなんだけど……。

 ……一つのミスが命取りになる。いい例だね。

 敵機の報はどうでもいいとして、僕のほうに向かっているミサイルは間違いなく短距離。1機につき1発ずつ撃ってたからそれは多重ロックができてないって証拠だからね。

 すぐに目の前に迫るミサイル。見事に横に並んでいた。

 ……だけど、間が開いてる。よし、そこを突き抜ける!


「……せ~の、よいしょッ!」


 タイミングよくライトロール。

 そのままフレアも放出し、敵のミサイル2発を左右に受け流した。

 しかし、


「ッ!」


 すぐ近くで近接信管が作動して1発は爆発。機体が大きく揺れた。

 でも、結構離れていたため、あくまでゆれたって程度で済んだ。

 そしてロールを終えたとき、もう1発のミサイルは後ろに流れていった。

 そのまま敵機を横目に即行で脇を突っ走る。

 レーダー上ではその敵機の反応が見当たらないんだけど……どこいったべ? もう落ちた?

 だとしたらこれで4機目ですかそうですか。


「……目標はどこだ」


 すぐにあたりを見渡す。

 ……が、案外すぐに見つかった。


「ッ! 見えた!」


 真正面から向かってくる味方台湾軍のF-CK-1C“雄鷹”1機、その後ろから追ってくる2機のJ-15。

 きたな。悪いがここで海に帰ってもらいますゆえ。


「PREIST03! 僕の合図ですぐに下に回避してください!」


《り、了解! 頼むぞ!》


「あいよ、お任せを!」


 返事と同時に残り2発のAAM-4Cをスタンバイ。もっててよかった中距離ミサイル。

 ロックが即行で完了すると、そのままいつもの発射フォックスコールとともにAAM-4Cを2発発射。

 2機のJ-15に向けて放たれた。


 そしてタイミングを見計らって、


「今です! 回避ブレイク!」


 そしてその返事とばかりに即行で右回転でハーフロールの後、ピッチアップで即行で降下を開始。

 そのまま敵のJ-15が2機、ミサイルの前に跳び出て行った。


 ……しかし、


「ッ! かわした!?」


 即行で左右上方にチャフをまきつつ回避したと思ったら、さすがに今回ばかりはそのチャフにつられた。

 そうそう何回もうまくいかないか。仕方ない。機銃で落とす!


「……とぉ、逃がさないよ!」


 そのまままず向かって左の敵機を追いかけるべく左に傾けつつ上昇開始。

 その後方に着くも、後ろからもう1機のJ-15が狙いを定める。

 ……サッチ・ウィーブか。だけど、そんなのもう想定内というやつでして。


「おらぁ!」


 すぐにエンジンをアイドルに絞る。

 上昇中だけに重力の関係も相まってすぐにガクンとスピードは落ち、その代わり右脇すぐ近くを機銃弾の閃光とJ-15の機体が通り過ぎていった。

 俗に言うオーバーシュート。これで敵が目の前に出てきた。

 ガンレティクルオープン。ピパーも敵が目の前にいたから即行で捉えてくれた。

 こっちの意図を察した敵はすぐに回避のために機体左に傾けたが、しかし時はすでに遅い。


「FOX3!」


 すぐに右手親指で発射ボタンを一瞬だけ押し、機銃弾を放った。

 その機銃弾は、やっぱり距離が近かっただけに即行で敵機に吸い込まれ、エンジンあたりがやられたのか右側のエンジンノズルから火を噴いたが、それも一瞬で今度はね燃料に引火したらしくそのまま大爆発を起こした。

 僕はそれを左旋回で華麗に避けつつ、改めてもう1機を狙いに行く。

 目の前の敵機はそのまま左旋回で降下していく機動を取ったが、それくらいの機動で逃げれると思ってるのならとんだ侮辱ですね。

 ミサイルはもったいない。機銃で十分だね。


「……そのまま……、そのまま……」


 ハイGターンで必死に逃げるも、向こうも向こうでさっきまでの戦闘で疲れていたのか、全然機動がゆるゆる。

 そんなんで逃げれるわけなかろう。簡単に機銃の射程内だよ!


「……よし、ロック。FOX3!」


 敵機の大体後ろ上方を陣取った僕はそのまま機銃弾を放った。

 コックピットにはできる限り当たらないようにし、大体胴体中央に命中させる。

 こちらも燃料に引火したらしく、小規模な爆発とともに機体が空中分解してそれぞれ大小の金属の破片となってで青い海に落下していった。


 ……エリアクリア。こで敵の心配はない。


「……味方は?」


 そして、レーダーと目視で例の救援要請機を確認。

 すると、どうやら何とか無事らしくて心配になって僕のほうに来ていた。

 ……ありがたいですね。こうやって心配してくれるのは。


「PREIST03、無事ですか?」


《大丈夫です。援護、感謝します。見事でした》


「いえいえ、お構いなく」


 とにかく、何とか無事でよかった。

 僕の隣に来たときに簡単に機体を確認したが、何個か機銃弾が当たったらしい跡はあれど、それほど大きな傷というわけではなさそうだった。

 大丈夫。これくらいならまだ飛べる。


《では、自分は部隊に合流します》


「ええ。お気をつけて」


 まあ、こんなときに何を気をつけるのか知らないけど。

 隣にいたF-CK-1Cはそのまま左に旋回しつつ増速して飛んでいった。


 さて、僕も部隊に合流するか……、と、


 そんなことを軽く思ったときだった。


《アマテラスより各機、敵航空部隊が後退する。よくやった。艦隊の空は守ったぞ》


「お?」


 と、どうやら敵が痺れを切らして撤退を開始したようです。

 データリンクで上方をまとめてみると、どうやら僕達の乱入によって多くの敵機が撃墜されたようで、これで一気に優劣が逆転。たまらず撤退という形になったみたいだね。


 ……ふぅ、とりあえず、何とか敵を撃退できてよかったよかった。


《PREIST隊、貴隊は損傷が激しい。任務をIJYA隊に引継ぎ、そのまま帰還せよ》


《PREISTリーダー了解。……PREISTリーダーよりPREIST全機、これより基地に帰還する。RTB。……あー、それと、》


「?」


 少し間をおいて、その向こうの隊長さんは言った。


《……救援、感謝するぜ。やっぱ日本は強いや。帰ったらなんかおごるぜ》


《それは基地に帰ってから言え》


 たまらず隊長がつっこんだ。

 ほんと、こういうフラグはわりとマジで現実になるって今までの経験で散々学んだから割と真面目に勘弁な。


《わかってるって。……では、これより帰頭する。貴隊の幸運を祈る》


《感謝する。なに、必ず戻ってやるよ》


 て、あんたもフラグたてちゃってもー……。


 ……まあいいや。ぶっちゃけ最悪そんなフラグへし折っちゃえばいい話だし。


《アマテラスよりIJYA、これより艦隊防空に入ってもらう。燃料弾薬はどうか?》


《こちらIJYAリーダー。弾薬はそこそこ消費したが、まあ燃料はまだまだいける。他はどうだ?》


 こっちもほとんど同じだ。

 さっきの戦闘でAAM-4C全部と、AAM-5Cを2発消費したけど、それ以外はなんら問題ない。

 機銃弾もまだたんまりある。燃料も、戦闘直前まで増槽つけてたおかげでそれほど減ってはいなかった。……とはいっても、さっき激しい機動したからそこそこは消費したかも知んないけど。でも、これくらいなら想定の範囲内だった。


 僕だけでなく、他も同様だったみたいだ。状況を聞いたアマテラスはさらに指示を出す。


《了解。これより艦隊防空に入る。艦隊上空に張り付き、敵航空勢力から艦隊を守れ》


《IJYAリーダー了解。……だけどさぁ》


《?》


 すると、隊長が軽く投げやりに質問する。


《……こっちは弾薬消費したんだぜ? 台湾方面からの代わりは来ないのか?》


 代わり、か。

 まあ、いくら燃料があるとはいえこっちは弾薬を消費したことには間違いない。燃料はあっても弾薬がないと戦えないのは当たり前。

 まあ、今はそれこそ防空任務はできるけど、後々考えるとやっぱり万全の部隊を送り込んだほうが……。


 しかし、。アマテラスはそれを否定した。


《……すまないが、今手空きの航空部隊が全然いない状況だ。これ以上台湾本土から引き抜いたら向こうの戦況に大きく影響がでる。すまないが、耐えてくれ》


《げぇ~……。マジっすか》


 隊長が思わずタメ口になる。

 むぅ……、これ以上引き抜けないのか。それだけ戦力も切迫してる状況なんだろうね。

 まあ、それだと仕方ないとはいえ……、少し不安だな。


 アマテラスもそのタメ口自体はスルーしつつもそれには肯定した。


 《マジだ。それに、今は敵は後退したし、そうすぐには来ないはずだ。もうまもなく艦隊も例の行動に……、ん?》


 と、離してる途中で声が途切れた。


《? おい、どうしたアマテラス? 何か見つけたか?》


 隊長が声をかけるが、すぐには帰ってこなかった。

 少しして、少し声を低くして帰ってきた。


《……どうやら、その何かを見つけてしまったらしい。“新手だ”》


《……は? なんだって?》


《新手だよ……。中国本土方面から敵航空部隊エネミー・ユニット探知コンタクト。さらに、台湾方面からも来ている》


《げぇ!? うそだろ!?》


 隊長から驚きの声が漏れた。

 無線でも他のパイロット達がざわついている。

 ……おいおい、こんなときに増援ってこと? マジで勘弁してくれよ。

 こっちは戦闘終わったばっかでくたくただってのに……、はぁ……。


《まだ戦闘空域に入るまでに時間はある。だが……》


《だが、どっちを優先的に狙えばいいんだ? 本土方面か? それとも台湾方面か?》


《台湾方面からのが早く着く。そっちを優先的に狙え。……しかし、問題が一つある》


《問題?》


《ああ……。その部隊、》






《……例の、君達が前に戦った『閃龍隊』だ……》






《……えー……》


 もう隊長からも力ない声が無線に響く。

 ……またあそこ? もうあの部隊錬度高すぎて違う意味で相手してられないんですけど……。


《ちなみに、その反対側は?》


《護衛を少数まかなったH-6爆撃機3機を主体とする対艦攻撃部隊だ。こちらはまだ射程に入るまでまだ時間がかかる。とにかく、優先順位はその例の“赤龍せきりゅう”だ》


赤龍せきりゅう』。

 台湾空軍内で伝わってる彼等の別称らしくて、その彼らの赤い龍の部隊マークから取ってるらしい。

 ……なんとも強そうな別称だね。うん。当たり前だけど全然うれしくない。


「……困ったな……」


 これ、どっちを優先させてもまずいだろ……。

 例の赤龍狙ったらきつい戦闘になって長期戦は確実。それだと最悪僕達が台湾に帰れるかわからなくなる上、本土から来てる対艦攻撃部隊の攻撃を許すことになる。

 かといって逆だと護衛を取っ払ってそしてH-6爆撃機をとやってるうちに向こうが戦闘空域に到着して絶対こっちの邪魔してきて本命を撃ち落すどころではなくなるだろうし……。


 ……マズイな。これどっち狙っても悪い未来しか見えない。


「(……どうすりゃいいんだ……?)」


 ……と、頭を悩ませていたときだった。


《……ん?》


 と、またアマテラスが疑問の呟きを漏らした。

 すぐに僕達も耳を傾けるが、その疑問の理由はすぐに判明した。

 無線がまた声を発する。


《衛星からデータリンクが来た。弾道ミサイル探知! 複数だ。台湾本土と日台連合艦隊の二方向に向かっている!》


「なッ!?」


 弾道ミサイルのデータリンク情報だった。

 な、なんだよそれ! こんなときに撃つの!?


 というかちょっとまって。日台連合艦隊に撃つってのはまだ百歩、いや、千歩ほど譲ってもいいとして、台湾本土っていったいどこに撃ってるの!?

 まさか何もない台湾本土中央部撃つわけないだろうし、まさか南部の高雄市のほうか?

 でも、あそこ敵味方入り混じってるけど!? そんなところに落としたら敵どころか自分達の味方まで甚大な被害を受けますけど!? いったい名に考えてんの!?


 ……自分達の味方の損害省みないってことか? ふざけてるよほんとに……。


 幸い、距離と速度とを考えると、敵対艦攻撃部隊の射程内に入る前に弾道ミサイル迎撃行動に移れるかもしれない。いや、向こうが思い切った増速しない限り無理。でも、そんなことしたら燃料大量に食って本土に帰れなくなるかもしれないし、それはたぶんしない。


 ……でも、このままじゃどっちにしろ……。


《……とにかく、今は艦隊を守れ。すぐにBMD行動に入るはずだ》


《……了解》


 隊長も静かに返事し、編隊を組んでとりあえず北東に針路を向けた。


 その先には例の赤龍隊がいるはずだ。


 とりあえず、あいつらの相手をしないと……。


「(……でも、前回みたいにはいかないだろうなぁ……)」


 あのときの戦闘で向こうもこっちのやり方とかを学んだはずだ。まあ、それはこっちも同じっちゃあ同じなんだけど、それでもどこまでそれがつい要するか……。

 ……少なくとも、あの明らかに隊長さんだっただろうあの人とは当たりたくない。もうあれは勘弁だから。

 ……まったく、あの時もAAM-5Cが4発あればまだマシな戦闘ができたのに。あの時は「弾薬がもったいない」とかいう戦時中に言ってる場合かとつっこみたくなるような理由で2発しかもたせられなかったしなぁ……。


 ……まあ、こんなときに愚痴はいいや。とにかく目の前に集中し……、


《……ッ!? な、なんですって!?》


「ッ!?」


 すると、また無線が叫んだ。

 アマテラスだ。そのさび声とともに、向こうで何か話してるらしい声がかすかに聞こえる。

 いきなり叫ばれたので思わずビックリしたが、なにやらやばそうな事態とみた。


《アマテラス、どうした? 何かあったのか?》


 隊長が問いかけると、少し間をおいてアマテラスは答えた。


《……IJYA全機、何としても艦隊を守りぬけ。捨て身でかかってもだ》


《は? いや、もとよりそのつもりだが……、なんでわざわざそんなことを?》


 まあ、隊長の疑問はもっとも。


 それにも、若干間をおいて答えた。


《……今、司令部から緊急入電が来た。今の弾道ミサイルの内、台湾方面に向かっているものの一部の弾等は“通常にあらず”》


「……え!?」


 弾道ミサイルの弾等が通常じゃない。

 これだけで、僕の脳裏にはあの兵器が浮かび上がった。

 想像に難しくない。僕だけでなく、ここにいたほかの誰もがそれを想像した。

 隊長が、思わず震え声で確認を取った。


《……おい、それってまさか……?》


 そして、その言いたいことを察したらしい。アマテラスは肯定しつつ答えた。


《ああ……。おそらく、そのまさかだ。……奴ら、禁断の手を使ってきやがった》


「ッ!」


 禁断の手。

 これだけで、僕の疑問は確信へと変わった。


 ……うそだろ? あいつら、本気で……?


 そして、アマテラスはとどめの一言を放つ。


《……おそらく、あいつら、》











《“アレ”を、使ってきやがった……》
















 その場の空気が、無線越しでもわかるほどひどく凍りついた…………

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