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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第8章 ~日台vs中最終決戦! 敵本拠地高雄市陸海空軍総力戦!~
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〔E:Mission 25〕南シナ海『高雄沖海戦』 まさかの行動 3/3

―TST:PM13:00 南シナ海 初期地点南西10海里地点 日台連合艦隊DCGやまとCIC―







「よし、最後のSSMは撃ったな?」


 副長が最終確認を取った。

 返答はすぐに来る。


『はい。こちらはもう撃ちました。艦長からの許可も得ています。副長、お願いします』


「了解した」


 CICにいる艦長からのオーケーをもらった副長は、すぐにさらなる指示を出した。


「よし、航海長。“はじめるぞ”!」


「りょ~かい!」


 航海長も待ってましたといわんばかりにノリノリで返事すると、威勢のいい声で指示を出し始める。


「よっし、取り舵10度修正。1分後に戻せ。機関……」










「最大せんそーく!」









「了解! 取り舵10度修正。1分後に戻せ!」


「機関最大!」


「とーりかーじ!」


 すぐに指示通りの行動が行なわれた。

 速度制御盤の中の最大戦速のところを、左右両舷ともに押し、機関制御室に伝えた。

 向こうでもすぐに指示を引き継ぎ、すぐさま機関を最大戦速まで回転数を上げていった。

 その瞬間、特徴的な甲高いエンジン音が鳴り響くとともに、少し後ろにもってかれる感覚に襲われながら、やまとはどんどんと加速していった。

 やまとだけじゃない。他の艦船も同じく最後のSSMを撃ったと同時に最大戦速まで加速していった。


 ……悪いが、ここは陣形維持は最低限にさせてもらう。

 大体は保つけど、ここからの本題は……、


「いいか、ここからはとにかく“一時散会して敵を覆い囲む”ぞ。隙を与えるな」


 副長がそういった。

 そう。ここからはあくまで敵に次の行動の機会を与えないための作戦。すべては、これのためにあった。


 こうやって向こうから見て扇状に散会することにより、敵は逃げ場を失う。しかも、敵は今さっきまで潜水艦からの攻撃をとにかく避けまくってきた結果なのか、艦隊陣形が乱れに乱れまくっている。

 組織的戦闘もクソもない。まあ、さすがに対艦攻撃や対空戦闘にはほぼ問題なかったようだが。


 しかし、悪いがそれは意識をそらす“囮”のようなものだ。


 本命は……、ここじゃない。


「敵対艦ミサイル、本艦に弾着まであと4分!」


 乗員がそう報告した。

 と、まさにそのタイミングで、前甲板のVLSから5本ほどミサイルが放たれた。

 SM-6。艦隊防空のものだ。


 さっきからこれをバカスカ撃ちまくってる。そして、ついさっきまではそれに加えてSSM-2Bもバカスカ撃ちまくってた。

 ……現代の艦隊戦も中々壮観なものだと思う。うん。


 やまとはすぐに最高速度に達した。


 その速度、実に35ノット。

 これの前段階で少し機関をまわしすぎたので今はこれくらいにとどめる。というか、最大速度出すとはいえ一応周りとの連携の関係もあるからどっちにしろこれくらいにしないとまずい。

 しかし、それでもこの速度。いやはや、いつもながらかっ飛ばしてますな。やつは。


「よーし、頼むぜやまと、そのままガンガンまわしてもらってかまわないから」


“え、もっと出してもいいんですか?”


「あ、いや、そういう意味ではなくて……」


“本音言えばもう早く行きたいんですがダメですかね?”


「ダメです」


“ショボーン……”


 悪いが回りがいるため勘弁な。


 その間にも、敵の対艦ミサイルはどんどんとなぎ払われた。あ、それと残念ながらこっちの撃った対艦ミサイルはすべてなぎ払われました。あの飽和攻撃かわすとか、向こう相当な強敵である。


 しかし、残念ながら状況はこっちとほぼ同じ。こっちとてこれくらい簡単になぎ払ってくれるわ!


「そろそろ少しだけ波高くなるぞ。新澤、絶対この針路からずらすなよ!」


「了解!」


 天気はまだ晴れてるとはいえ、さっきから少しずつ波が高くなってきていた。

 雲量は大体5~6といったところか。これからどんどんと曇っていくだろう。

 だが、この波自体はどうやら一時的だという報告が来ている。今の季節が季節だけに、天気が少し不安定なのだという。

 まあ、これくらいならすぐに治まるだろう。

 しかし、それでも波というのはこういう最大戦速を出しているときだと結構煽られるものだ。まあ、もちろん元よりそういうのを想定しているのが日本の艦船だし、やまとはもちろん他の日本の艦船はこういうのにめっぽう強いが、それでも万が一ずれていたときはすぐに修正する。

 性能過信をしてはならず。いつでも気が抜けないのがこの操舵員の役目。


『……ッ! 目標、約8割の撃墜を確認! 本艦に向かう目標はありません』


 CICからだった。


 どうやら何とか迎撃したらしい。同時に、運のいいことに俺たちを狙っていた対艦ミサイルを撃ち落したみたいだった。

 性能が高いのは互いに同じか。となれば、後は残弾切れるのを待つのみかね。


「戦闘は向こうにまかせろ。こっちはとにかくもうダッシュするのみだ」


 副長が言った。


 もうダッシュといったら、アレを思い出すね。


「全速前進DA!」ってやつ。


 ……元ネタなんだったか忘れたけど。


「あと一回来るぞ。頼むぜ」


“わかってますって。ご安心を。即行で落としますから”


「おう」


 即行で、と自信満々に言うあたりがまた頼もしい。

 相手も相手で最新鋭勢ぞろいだしね。頼むぜほんとに。


 ……と、すると、


『ッ! 敵艦隊から第4波! 目標約38発!』


 敵からの新たな攻撃。

 38発、ということはこれで最後だな。1隻につき2発で。

 中国の場合はどの艦艇も8発が限界だったはずだ。これで向こうは残弾が切れただろう。


 つまり……、これを切り抜ければ、後はこっちが思い切って突っ込める。


「しのげよ。ここを切り抜ければ、後はこっちのもんだぞ」


 航海長も意気込んだ。

 そうだ。これさえ切り抜ければ、一番の関門は突破できる。

 後は……、こっちの、作戦通りだ。


「SM-6発射確認。正面に飛行」


 見張りからの報告だった。

 また前部甲板から、SM-6対空ミサイルが空高く飛んでいき、真正面に向けて鋭い機動を描いて飛んでいった。

 これで、こっちの迎撃のまず最低限のものは完了。

 あとは、ここでどれくらい落とせるか。そして、こっちにはどれくらいくるのか。


 結果はすぐに来た。


『ッ! 目標群、約7割撃破。本艦に向けて3発接近中』


 と、どうやらまだ残ってるっぽいな。

 なに、3発ならすぐに落とせるねん。


 すると、今度はESSMがすぐさま放たれた。

 個艦防衛用。同じく真正面に飛んでいった。


 その間にも、最大戦速でどんどんと敵艦隊に接近していく。

 敵は未だに艦隊陣形を整いなおせてない。

 ……まあ、がんばって直そうとはしてるみたいですが。


 と、そのうちに、


『……ッ、目標全弾撃墜確認。レーダークリア』


 敵の攻撃をすべて撃破した。

 レーダーからブリップが消える。これで敵の攻撃が消えた。


 ……と、いうわけで、


「……止みましたね」


「ああ、止んだな」


「止んだわな」


「……」


「……」


 …………。


「……よし、では、脅威は消え去ったので、」












「とつげきぃぃぃぃいいいい!!!!」


「あいりょうかぁぁぁぁああああいい!」













 なんとなく、最大戦速でとどめてるはずなのに少し速度が上がった気がした……。


























―同時刻 初期地点より北東12海里地点 DDG176『成都』艦橋―








「て、敵艦隊がさらに速度を上げて突っ込んできます! 衝突針路!」


 航海レーダーを見ていた乗員の報告に、俺は思わず唖然とした。

 というか、あまりの報告に思わず開いた口がふさがらなかった。


 少し前から敵の突撃は始まっていた。

 敵が、最後のSSMを撃った後だった。

 そのときはまさかと思っていたが、しかしそれはどうやらうそではないらしかった。


 航海レーダーを見る限り、敵艦隊はどうやらこっちからみて扇状に散会しつつ急速接近してきていた。

 まるで我々を覆い被せるように。


 何を狙っているのか、まったく予想が付かないが……、しかし、


「……まずい……、これでは、こっちも抜け出せない……」


 今、こっちもこっちで艦隊陣形を整えようと躍起になっているところではあるのだが、まだ完全には整っていない。

 そんな状態でこの突入を回避しようにも余計陣形が崩れていろいろと面倒なことになる。いろいろと。

 かといって陣形が整うのを待ってたら……。


「おい! このままでいった場合奴らはあとどれくらいでこっちにくるんだ!?」


 政治将校が叫んだ。

 もうこいつさっきからパニックになりっぱなし。悪いけど一回黙ってくれないかね。


 その問いには航海長がすぐに答えた。


「え、えっと……、現在の双方の速度、針路を維持すると仮定した場合、このままでは……」









「あと、“30分も経たずに”会敵します……」









「さ、30分!?」


 みじかっ! いくらなんでも短すぎだろ時間!


 たった30分だと!? 今から艦隊陣形整えてそこから敵の突入を回避するには時間が足りなさ過ぎるわ!


「時間がなさ過ぎる! もっと早くなんないのか!?」


「無理ですよ! 今からなら即行でこれ以上の速度出して適当な場所に回避するしかありません!」


「それができるならとっくにやってるわ!」


「でしたら最悪一時反転の手段も……」


「こんなときに反転でもしたら向こうの思う壺だ!」


 おそらく、奴らはここで肉薄することによって、我々に反転を促すつもりだろう。

 そうすれば、後ろにいる潜水艦隊の射程に再び入ることになり、また向こうに攻撃させることができる。


 だが……、そうなった場合、今日の日中のうちの支援が出来なくなる。

 ここから支援できるといってもせいぜい敵艦隊をぶちのめして敵側の支援手段を断ち切ることくらいだが、それでもやらないよりはましだった。

 夜でもいいが、しかしそれだと危険度が高い。それに、疲労もたまっているこの状況で、夜もぶっ続けとなるとさすがにストレスや疲労で何かしらヘマを犯す。


 現代でも、夜戦自体は避ける。様々なデメリットがあるからな。


 しかし……、そうなると、そうすればいいんだ?


「(……このまま突っ込まれたら……)」


 明らかに、“昔の戦争であったアレ”が現実となる。


 現代でアレなんて聞いたことないぞ。というか、今の軍艦はそんなの想定していない。


 ……だが、


「(……切り抜けるには、アレしか方法がないのか……?)」


 と、そのときだった。


「……ッ! 艦長、旗艦から通信です。全艦隊に向けて」


「なに?」


 旗艦から指示か。

 おそらく、今の敵の動きに関しての対策であろう。


「何がきた? 向こうからの指示は?」


「はい。それが……」











「今すぐに、最大戦速で敵艦隊に突っ込め。……と、」










「……はぁ!?」


 おいおいちょっとまて。アレをマジでやる気なのか旗艦は!?

 しかも、こっちは艦隊陣形全然整ってないんだぞ!? そんな状況ではじめたら明らかに不利になるのはこっちだろうが!


「(……まさか、本気でか?)」


 確かに、ぶっちゃけ今すぐ考えれるのはこれしかない。だが、いくらこれくらいしか手段がないとはいえ、さすがに安易に決めすぎだろ。

 どっちが有利かとか、状況を見ればまだもう少し判断渋ってでも他の考えたほうが……。


「……旗艦は本気なのか?」


 あの共産党信者でいろいろと外れてる政治将校ですらこれだ。

 まあ、一応並みの常識はあるからな。……一応は。


「……こんな状況で突入すれば、それこそ組織的に突っ込んでくる奴らに袋叩きにされますよ。明らかに、T字云々とかそういうのを無視できてます!」


 というか、今の軍艦の性質上そういうT字とかって意味ないんだがな。ほとんどは前甲板に1基しか置いてないし。


 ……つまり、いろいろと策を練ろうにも意味を成さないということ。


 とはいっても、だからってこんな突っ込むか……? 奴ら、なに狙ってやがるんだ?


「と、とにかく旗艦の指示は絶対だ……、艦長、やりたまえ」


「し、しかし……」


「言いたいことはわかっている。だが、やるしかないのだ」


「ッ……」


 ……確かに、旗艦の命令は絶対。だが、今回ばかりはその指示内容があまりに安直すぎる。

 無駄に危険を増すだけだ。もう少し他の指示はなかったのか……。明らかに、このままでは起きるであろう“アレ”をより助長させることになる。どう考えても避けるべきだろう。


 しかし、何度もいうが、旗艦の命令は絶対だった。


 ……やるしかない。


「……了解。針路そのまま。機関全速!」


「機関全速! 針路そのまま!」


「よーそろー!」


 すぐに少し緩めていた機関をまたフル回転させ、もう一度機関を全速にさせた。

 速度が一気に上がるが、それでも少し効きは鈍いように感じた。

 ……やはり、前の段階で機関を一杯にさせたのに少し無理が祟ったか。だが、すまない。もう少しだけ耐えてくれ!

 たった30分だ! 向こうにたどり着けばすぐに速度を落としてやる!


「……クソッ……」













「……さっきから、状況が何がなんだかさっぱりだ……」















 俺は次々と来る予想外の事態に頭をかかえた…………

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