〔F:Mission 25〕南シナ海『高雄沖海戦』 一大海戦勃発 1/3
―TST:PM12:30 台湾高雄市西80海里地点 日台連合艦隊DCGやまとCIC―
「敵艦隊、射程に入りました!」
俺はそう報告した。
進撃開始から数時間。
ついに敵艦隊を捕捉した。
例の施琅機動艦隊。とんでもない大艦隊が着やがったぜ。
こっちといい勝負だ。面白いぜ。
ここで、双方の戦力を確認しよう。
【日台連合艦隊前衛主力部隊】
旗艦:丹陽級DCG『1210“丹陽”』
ミ巡:やまと型『190“やまと”』
丹陽級『1211“媽祖”』
ミ逐:ながと型『185“ながと”』
あたご型『178“あしがら”』
こんごう型『173“こんごう”』
『174“きりしま”』
旗風級『1901“旗風”』
『1902“島風”』
汎逐:ふぶき型『123“ふぶき”』
『124“しらゆき”』
しきなみ型『121“ゆきかぜ”』
あきづき型『115“あきづき”』
むらさめ型『103“ゆうだち”』
『105“いなずま”』
『107“いかづち”』
フリ:康定級『1202“康定”』
『1203“西寧”』
『1205“昆明”』
『1206“迪化”』
【中国海軍施琅機動艦隊】
旗艦:002型正規空母『17“施琅”』
駆逐:昆明級(052D型)『172“昆明”』
『173“長沙”』
『174“貴陽”』
『176“成都”』
蘭州級(052C型)『171“海口”』
広州級(052B型)『168“広州”』
『169“武漢”』
旅海型(051B型)『167“深圳”』
フリ:江凱II型(054A型)『569“玉林”』
『571“運城”』
『572“衡水”』
『573“柳州”』
江衛II型(053H3型)『597“宜昌”』
『567“襄樊”』
江滬V型(053H1G型)『558“自貢”』
『560“東莞”』
『561“汕頭”』
『562“江門”』
『563“佛山”』
以上、両軍総勢20隻。
まさかの大艦隊同士の攻防。面白いですな。
数は同等。しかし、こっちは全部戦闘特化型艦船なのに対して、向こうは旗艦が空母、さらにそれを守る分のを考えると、少しこちらが自由な戦闘ができる。
それにしても、南海艦隊ってもっと艦船があった気がするのだが、これ以外はこれの前の戦闘で沈んだと見ていいのかな?
とはいっても、その結果がこれか。思ったより減ってないな。さすがは中国の精鋭が集う南海艦隊か。
俺の報告を聞き、艦長も指示を出した。
「了解。旗艦からの指示はどうだ?」
「今来ました。データリンクでASEコマンド受信。データリンクフル」
「よし……。では、いよいよ我々の本番だな」
艦長の言葉に砲雷長も反応した。
「はい。ここで奴らを喰いとめなければ、台湾に進出している日台地上援護部隊が危険にさらされます。我々が、文字通り盾になってでもここで奴らを防がなければ」
「そうだな。……それに、」
「あの……、“作戦”もあるしな」
「……ええ。わかっております」
あの作戦。
そう。今回、これが一番のメインとなる。
尤も、これは俺たちがもしかしたら来るかもしれない核攻撃から身を守るための、いわば“護身”のものなんだけどね。
どういうことかはまあ後々わかるかもしれない。みてればね。
「とにかく、コマンドはきてるから速攻で攻撃を始めよう。……総員、」
「対水上戦闘、用意」
艦長からの戦闘配置命令。
すぐに指令は艦内に伝わるとともに、攻撃開始の命を受けた砲雷長が指示を出し始めた。
「データリンクフル。目標配分急げ」
「了解。データリンク。目標配分」
各艦で狙う艦を選定する。
数が数だ。こっちとて全部の艦からSSMを放たないといけないだろう。
……そうでもしないと、こっちが危ないので。向こうも大量に撃ってくるだろうし。
そのうち、各艦の目標配分が完了する。
で、俺たちの目標は……。
「目標配分完了。本艦目標、昆明級駆逐艦『成都』」
成都か。中華版イージス艦と名高い蘭州級駆逐艦の改良型、昆明級という最新型の駆逐艦の4番艦で、南海艦隊に所属する同型艦の中では一番新しい艦だったはず。
つまり、一番手ごわい相手。いくらパクリ云々と名高いとはいえ、性能自体は結構脅威である古都に変わりはない。中国がいろんな意味で侮れなくなってることはもう今までの戦闘でいやというほど味わった。
よりによって俺たちの相手がこれか。はは、ある意味最新鋭の定めか。
……面白い。やってやろうじゃないか。
艦隊中央にいる……。旗艦である空母施琅の近く。おそらく、この旗艦様の護衛かなんかかね。
なるほど。確かに、これはつぶしておいて損はないな。
他の全部からも目標を各個で確認した。
それぞれで1隻。1対1のミサイル戦である。
「手はずどおり、若干間隔をあけて4回に分けて攻撃する。“全弾発射後機関全速でな”」
「了解。艦橋に伝えておきます」
なぜ機関を全速にするのかって?
説明めんどくさいから後にして。
「対水上戦闘。SSM-2B攻撃始め。目標『成都』。発射弾数4発」
「目標『成都』、発射弾数4発。目標位置、 21度25分N、118度30分E」
今回使うのもおなじみSSM-2B対艦ミサイル。
今回はF-2の援護がないから、完全に対艦攻撃は俺たち任せ。一応下には味方日台潜水艦が大量にいるはずだけど、向こうからは水上戦闘には参加しません。彼女らにはあのまま俺たちの水面下の護衛をさせてい
ただきます。“今後のためにも”。
なお、このときSSMを撃ちやすくするために敵艦隊のいる前方に艦の片舷を向けたりはしません。今回最初は右舷に向けて撃つから、少し取り舵したほうがいいんだけど、それは今回はしません。“後々のために”。
「諸元入力完了。SSM-2B発射用意、よし」
SSM-2Bの発射準備が完了。本艦だけでなく、他の艦でも準備が整ったようだった。
……運がいい。まだ向こうは撃ってこない。先手いけるでこれ。
すぐさま砲雷長が反応し、攻撃の手を下した。
「SSM-2B、撃ち方はじめ!」
「SSM-2B発射。1番発射用意……、てぇ!」
火器管制員より発射ボタンがプッシュされ、まず向かって右舷に向いている発射管から1発勢いよく放たれた。
さらに間隔をあけて、
「2番発射用意……、てぇ!」
2つ目のSSM-2Bも発射。
1発目の後を追って飛んでいった。
4回に分けるから、全8発あるから、2発ずつ放つことになる。しかし、やまとに限っては全部で16発もあるから、さらにこの後2発撃って、計4発撃った。
これの最高速度はM4,5。されど低空での超シースキミング飛行だから摩擦云々の関係もあって出せるのはM3,5くらいが限界。
その速度でいくと、今の敵艦隊との距離は70海里だから、単純計算で大体6分弱で向こうに弾着することになる。
……向こうが6分の間にこっちの射程にはいるか微妙だが、はてさてどうなることやら。
他の艦からも対艦ミサイルが放たれた。やまと4発以外はどの艦も2発。計42発の対艦ミサイルが飛んでいった。
今頃前方数kmの海面上は対艦ミサイルの吐く白い煙が尾を引いていることだろう。
……想像したらそこそこ壮観だと思った。
大体2分くらい経ったときだった。
「ッ! 敵艦隊、ECM展開。電子戦に移行。同時に、敵艦隊より対空ミサイルらしき小型目標分離」
敵が対空戦闘に移行した。
思ったより反応が早い。電子戦性能は先の東海艦隊の奴らより高いということか。ほぼ同じ同型艦がいっぱいいるはずなのだがな。
ここで出てくるのはHHQ-9AやHQ-16といった、艦隊、ないし僚艦防空用対空ミサイル。HHQ-9Aは、運動性能を高めて低空から来る対艦ミサイルを迎撃する目的で作られたが、その今こっちがやってるシースキミングの迎撃能力がなぜか苦手という、本来のこのミサイルのとりえが消えかけているのです。そのため、これを搭載している艦に関してはこれのほかにこの低空迎撃能力の低さを補うために『9M38M2“シュチーリ1”』とかの中距離ミサイルを搭載するはめになったとか。なんてこったい。
しかし、それはこのHHQ-9Aの次に出来たHQ-16艦隊防空ミサイルでは克服されている。こっちはむしろこの低空迎撃能力を重視されており、もちろんこのHHQ-9Aとは比較にならない。
超低空飛行のほか、ホップアップ機動の対艦ミサイルにも十分に対応可能。今では信頼性は抜群の主力対空ミサイルとなった。
ある意味、一番の脅威はこっちだろうな。
しかも、ECMが展開されている中だ。日本のや、ついでに台湾の対艦ミサイルも、日本譲りでECCM能力は高くなっているとはいえ……。
「……ッ! 反応が消えました。空母施琅を狙っていた2発のSSM-2Bと、2発のSSM-1B」
やっぱり、完全にしのげれるといううまい話はなかった。
まず4発が途中で墜落。しかし、例によって例の如く他の対艦ミサイルはそれを探知したと思うとさらに低空に避退した。
これでECMはもうほぼ機能しないも同然。さて、ここからどれくらい減らせるか少し見もの……。
……と、楽観していたら、
「……ッ!?」
……思ったより、敵はやるようである。
「ッ! 敵ミサイル命中。……ッ!? や、約60%が撃墜されました! 残り弾数13発!」
「なッ!?」
一気に半分以上も減らされた。
……おいおい、いくらなんでも落としすぎでね?あ、いや、今まで散々落としまくった俺たちがいうのもなんだけどさ。
しかし、奴らの対空ミサイルここまで性能よかったのか……。東海艦隊のってもう少し撃墜率低かった結果がここにあるんだが? この南海艦隊のって向こうのと違うのか?
その後も、まだギリギリで対空ミサイルを撃つ機会があったようで、第2波の迎撃。そこで、さらに5発落とした。
俺たちが狙っているSSM-2Bも、すでに3発が落とされ、今度は近接火器による迎撃が始まった。
……が、
……思ったより早く決着がついてしまった。
「……ッ! て、敵艦隊迎撃完了、我が方のミサイル全弾撃墜されました!」
「……わ~ぉ」
俺は思わず感嘆の声を上げてしまった。少し苦笑いしながら。
なんと、こっちの超音速の対艦ミサイル全部落としちまったのかよ。まあ、今まで散々同じようなことしてきた俺たちが言うのもなんだが、よく落としたなおい。
俺たちが狙っていた『成都』も、近接火器で残りの1発を落としてしまった。超音速でシースキミングしていたとはいえ、やはり落とされるときは落とされるということか。
向こうも精鋭ぞろいか。さすがに中国海軍の主力やってるだけある。
砲雷長は思わず舌打ちをした。
「チッ、落とされたか……」
そこを艦長がなだめた。
「まあ、別にいいだろう。これはあくまで“意識的な面での陽動”だ。このまま落とされてもかまわない。いや、むしろ“ある程度は生き残ってくれないと困る”」
まあ、そういうことですな。
いくらかそぎ落としはしたいけど、後々を考えるといろいろと東海艦隊のときみたいに壊滅されるのは少しまずいのでね……。せいぜいがんばってくださいよ施琅機動艦隊の皆さん。
……自分達のためにでもあるんだろうけど、“俺たちのためにも”ね。
「……となると、問題は」
「うむ……。そろそろくるな」
そう、艦長が言ったときだった。
「……ッ!」
レーダー上にあたらな反応。
敵艦隊のほうから、いくつかのブリップが表示された。
赤い。山形のアイコン。
……それは、
「敵艦隊から小型目標分離! 対艦ミサイルです! 各艦から2発、計38発確認!」
「ッ! やはりきたな……」
敵艦隊からの対艦ミサイル攻撃。
ここで確認できるのはYJ-12。前の鬼畜超音速のやつじゃない。データどおりのやつだ。
さすがにあれはうわさですら聞いたことないだけに、試作型かなんかだったか。しかし、それゆえに配備も全然行なわれてない。
これはこれでありがたい。これくらいの速度ならなれてる。
「対艦ミサイルを新たに4発放て。同時に対空戦闘用意」
「対空戦闘よーい!」
すぐに対空戦闘配置も下令された。
対艦戦闘と同時にこなすこと自体はできなくはない。これも、現代の科学技術を持ってすればのことだった。……まあ、ずいぶんと珍しい例であることには違いはないけど。
その間に、新たなSSM-2Bが4発、さっきと同じく右舷に向けて放たれたあと、真正面の敵艦隊に向けて飛んでいった。
さっきと同じく全艦から2発ずつで計42発。
何という対艦ミサイルの撃ち合い。これが現代の艦隊戦か。昔みたいに大砲バカスカ撃ちあうのとは違うということを、改めて実感する。
……まあ、その代わり互いに対艦ミサイルをバカスカ撃ちまくってますがね。
「対空見張りを厳となせ」
「主砲目標よし、射撃用意よし、方向監視、方向よし」
次々と準備が整う中、俺はそのまま敵対艦ミサイルの情報を提供していった。
「本艦に向かう対艦ミサイル、12時方向、真正面から向かってきます。方位2-1-0、距離55海里、まっすぐ突っ込んでくる」
「了解。……艦橋CIC、目標は真正面から来る。監視を頼む」
『艦橋了解。真正面からの目標に注意』
「電子戦担当、『しらゆき』『ゆきかぜ』『あきづき』からECM展開確認!」
同時に、即行で電子戦担当艦からはECM、妨害電波が放たれ始めた。これで敵対艦ミサイルの目をつぶし始める。
すると、反応が一部消えた。
2発ほど。だが、これが限界か。敵対艦ミサイルは低空に避退。ECMも効かなくなった。
だけどまあ、2発だけでも落とせただけよしとしますかね。
砲雷長がそれにかまわず指示を出した。
「前部VLS開放、30番~35番、SM-6準備」
「了解。前部VLS30番~35番、SM-6準備。目標諸元入力」
まずは艦隊防空ミサイル。
SM-6は最初の台湾艦隊救援以来だけど、あの時は10発ほど消費したが、今回さらにそれを使うことになりそうですな。
……まったく、こっちも弾薬が限られてるというのにね。
「SM-6、諸元入力完了」
「対空戦闘、CIC指示の目標、SM-6撃ち方始め」
艦長のゴーサインがきた。すぐに砲雷長も反応し、それのゴーサインを引き継いで指示を出した。
「目標番号、2105~2109、SM-6、撃ち方始め!」
「SM-6、撃ち方始め!」
開放された5セル分のVLSから、SM-6が連続して空高く火を噴いて勢いよく飛び上がった。
連続で5発。それは鋭い機動を描いた後、真正面12時方向に向けて音速を超えて飛んでいった。形的には先に撃った対艦ミサイルの後を追う感じ見える。もちろん、それぞれの目標は違うから厳密には対艦ミサイルのほうを追ってはないけど。
他の艦からも放たれていた。俺たちみたいに新たな対艦ミサイルをさっきと同じく2発放った後、これまた俺たちとほぼ同じタイミングで対空ミサイルを放つ。……といっても、他、といいつつここで出てくるのはまだイージス艦のみ。
艦隊防空ミサイルであるSM-6やSM-2はイージス艦しか使えないゆえ。
……向こうも、俺たちと同じく対応をとってるときだろう。
まさしく、現代の艦隊戦だ。それも、現代には珍しい超大規模のな
これをどちらが制するか、それが、台湾の命運を握るといってもいい。
だが、まずはこれを落とさないとな。
でないと話にならない。
「……見てなよ中国。このやまとが……」
「ただの“高性能対空能力特化型巡洋艦”でないってことを教えてやんよ……」
俺はレーダー画面の表示を見てニヤリと不敵な笑みを浮かべた…………




