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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第8章 ~日台vs中最終決戦! 敵本拠地高雄市陸海空軍総力戦!~
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〔E:Mission 24〕せかした結果

―ACT:AM11:30 南シナ海 東沙諸島東65海里地点

              『施琅シーラン機動艦隊ジードーンジエンドゥイ』DDG176“成都チュヨンドウ”艦橋―








「……な、なんとか撒いたか……」


 俺は思わず安堵の息を吐いた。


 謎のインド・東南アジア連合艦隊からの猛追から早2時間と45分。

 何とかここまで損失なく撒くことに成功し、機関への負担を考えて少し速度を落として第1戦速での航行に切り替えた。

 後ろから追ってきていたインド・東南アジア連合艦隊は撤退していった。諦めたのだろう。


 ……ふぅ、これでひとまずは一安心だ。私はほっと胸をなでおろした。


「ふむ……。敵は諦めたようだな。これでこっちも安心して進軍できる」


 政治将校が同じく安堵しつつそういった。


 ……まあ、ひとまず今のところ一番の脅威は去ったということか。だが、油断は禁物だな。


 速度が落ちて少し艦隊が乱れてしまった。修正しなければな。


「ええ。……航海長、艦隊の隊列を戻せ」


「了解。速度そのまま。面舵7。15秒後に舵戻せ」


「速度そのまま。面舵7」


「おもーかーじ」


 その瞬間に軽く艦首を右に振り、針路を若干変更。

 速度はかわらないのでそのまま少しゆっくりめに転針しつつ移動した。


 ……やっと安心した航海になる。とはいっても、まだ戦場だが。


「とりあえず、このまま隊列を戻して急がねばな。敵は待ってくれん」


 政治将校がいった。


 今現在ので向こうに到着まで後1時間ほどだが、敵はどれほど進出しているだろうか。

 まだ向こうの射程には入っていないはずだ。こっちも入ってないが。

 こちらの射程は100km前後しかない。まあ、性能の問題だ。

 ……この残りの1時間がまだ緊張するんだよな。また何が来るかわからないという……。


 少しして、隊列が何とか元通りになった。

 なお、本艦は大体艦隊の中央。旗艦の空母施琅の右舷前方に位置している。ちなみに、その左舷側には海口がいる。

 簡単に言えば、艦隊内での旗艦の直掩艦というわけだ。


「ひとまず、索敵を強化して進撃を急ぎましょう。このまま旗艦からの指示を……」


 ……と、まさにそのときだった。







 一難去ってまた一難とはこのことである。








『……ッ! し、CICより艦橋! 対潜哨戒中の直昇9Cが複数の敵潜を探知! 後方です!』


「なにッ!?」


 CICからだった。

 敵潜だと? こんなときにか? しかも後方か!?


「クソッ! どこだ! どこにいる!」


『本艦隊後方! 大量にいます! 少なくとも5! 距離8000!』


「はぁ!? 5隻で距離8000!?」


 おいおい、そんなに大量にいたのになんで今の今まで気づかなかったんだ!? というか8000って近すぎだろ! いったいどこを見てたんだうちの哨戒ヘリは!?


『ッ! 訂正! また反応が増えました! 少なくとも8隻はいます!』


「なんだそれは!? いったいどこから湧いてでてきやがったんだ!?」


 まさか、東南アジアの潜水艦が全部そろいやがったのか? クソッ、向こうも本気を出しすぎだろ……。いったい何を狙ってるんだ?


『音紋詳細。インド海軍スコルペヌ級3隻、インドネシア海軍チャクラ級2隻、台湾海軍海獅テンチ級2隻……。まだまだいます! 最大12隻確認しました!』


 見事なまでの多国籍潜水艦隊。

 ……なるほど。張り付いて一斉に魚雷攻撃か。さっきのあれはその罠にさっさと放り込むため!


 チクショウ! これじゃこっちはなぶり殺しだ!


「旗艦は!? 旗艦からの指示はないのか!?」


 あのいつも冷静な政治将校があわてていた。

 ……あのな、気持ちはわかるが俺の隣で大声出すのやめてくれ。お前無駄にうるさいから。


「旗艦からの指示とか聞いてる場合ですか!? CIC! こちらは狙われてるか!?」


『1隻から狙われてます! すでにピンガーを探知、魚雷発射管注水音も確認しました!』


「クソッ! 気づくのが遅かったか!」


 さらに、それに追い討ちをかける事態が起こる。


『ッ! て、敵潜から魚雷発射音を確認! 計3発! 本艦に向かってきます!』


「ッ!?」


 クソッ、こっちはまだ何もやってないってのに!

 このままではダメだ。とにかく回避をしなければ!


「機関全速! 囮魚雷デコイ発射急げ!」


「了解! 機関全速!」


「右舷魚雷発射管用意! デコイ発射!」


 すぐに機関を最大にし、速度をとにかく上げまくった。

 速度がどんどん上がっていく中、右舷に設けられた『B515 324mm3連装魚雷発射管』から囮魚雷デコイを計3発放つ。

 すべて一気に海中に突っ込んだ後、そのまま下にもぐりつつ敵からの魚雷に向かっていった。


 他の周りの艦も同じ手段をとった。尤も、“なぜか”旗艦の空母施琅は狙われていないのだが。

 しかし、そのほかの艦は全部速度を上げていった。だが、艦隊陣形を密にしてしまっていた関係か、回避機動がうまく出来ない。

 だから、ちょこまかと細かい無駄な回避っぽい機動をしつつ、速度を上げまくってとにかく逃げた。


 だが、その間にも、敵の攻撃はまだまだ続いた。


『ッ! 敵潜からさらに攻撃! 感3! 本艦にまっすぐ突っ込んできます!』


「はぁ!? またか!?」


 チクショウが! 多段攻撃か!

 これじゃ全部回避するのは至難の業だぞ!


「とにかく速度を上げて逃げろ! とにかく機関をまわしまくれ!」


 政治将校が思わずそういった。

 しかし、俺は意見を提言する。


「し、しかし! それでは機関に負担がかかってしまいます! それに、それだと無駄に艦隊の隊列が乱れます!」


「仕方ないだろう! こればっかりはそれを考えてる暇はない! 最悪自分の命を最優先にせねばならんのは艦とて同じだ! 早くしろ!」


 だが、彼のいったことも一理あった。

 仕方ない。確かに、最悪自分の命を優先しないといけないのは間違っていない。もちろん、状況には夜が、こればっかりはそっちのほうを優先せねばならない。

 機関をこれ以上まわすと負担が出るが……、ええい! 頼むぞ成都チュヨンドウ! こきつかってすまんが耐えてくれよ!


「機関一杯! 限界までぶん回せ!」


「え!? い、いいんですか!?」


「うるさい! いいから早くまわせ! 同時に左舷からデコイ発射!」


「り、了解! デコイ発射!」


「機関一杯! 急げ!」


 艦橋がにわかにパニックになった。

 しかし、それにかまわずそのまま機関をさらにまわす。これ以上は機関の負担を考えない機関一杯状態。いつ壊れるかわからないが、だがこればっかりはこいつを信じるしかない。頼む、耐えてくれよ!


「他艦でも速度増大を確認! 艦隊陣形乱れます!」


 航海レーダーを確認していた乗員が報告した。

 それは、艦橋から外を見ても確認できた。

 デコイによる回避で魚雷攻撃をギリギリでかわしてはいるものの、まだ脅威は去っていなかった。

 見えない脅威にパニックになった艦たちが自分勝手に増速をかけてとにかく突っ走りまくった。“前方に向けて”。

 面舵取り舵回避を考えてはいなかった。とにかく、皆前方にとにかく逃げていった。

 しかし、艦それぞれの速度も少しではあるが差がでる。これによって、どんどんと艦隊陣形がずれていき、それによって開いた隙間からまた速度が早い艦はそこから出て自分だけ突っ走るなど、一部明らかに馬鹿がやるであろう行動が目立った。だが、パニックの状況ではそんな冷静な判断はできないだろう。


 かく言うこっちもほとんど同じようなものだ。機関命令完全無視でどんどんと直線を突っ走っていた。


『デコイ命中! 魚雷回避しました!』


「次は!? 次はこないのか!?」


『えと……ッ! まだ来ます! 他の潜水艦からまた3発!』


「ええいクソッ! 次だ! デコイ装填急げ! 出来次第発射!」


 また指示が飛び交う。

 こっちの哨戒ヘリが敵潜攻撃に手間取っているうちに、生き残っている敵潜がまた次の攻撃を仕掛けてきた。

 日本みたいに対潜に慣れてないのがこんなところで……、チクショウが!


「……どこまで逃げればいいんだ……」


 となりにいた政治将校がまた珍しく焦っている。


 しかし、俺も同じだ。これ、結局どこまで続くんだ?


「……クソッ、」









「これじゃ、向こうに着くころにはこっちがグダグダ状態になるじゃねえか……」












 俺はそんなことをいいながら前方の海をしかめた顔で凝視した…………

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