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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第8章 ~日台vs中最終決戦! 敵本拠地高雄市陸海空軍総力戦!~
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〔E:Mission 22〕突然の猛追

―TST:AM08:15 南シナ海 東沙諸島南東50海里地点

                『施琅シーラン機動艦隊ジードーンジエンドゥイ』DDG176“成都チュヨンドウ”艦橋―







「……後どれくらいで着きそうだ?」


 俺は航海長に聞いた。

 航行を再開してからかれこれ1時間30分ほど。

 少し前に第3戦速から第5戦速にあげたため、さらに早く着くことが予想されるが……。


「このまま行けば、後6時間ほどで着きます。現地には、午後の2時前後当たりに着くかと」


「それまでは向こうにまかせっきりか……」


 6時間では遅すぎる。

 午後2時ごろなど、すでに戦争の趨勢が決しかけているときではないか。

 今の戦況の勢いなら、正午過ぎあたりにもう優劣が傾くというのに……。


 だが、それと同時に、どれだけ艦隊速度をだしてもこれが限界だった。これ以上はあげようがない。


「敵艦隊の速度を見積もって、後どれくらいで交戦予定となるのかね?」


 すると、隣で相変わらず胡散臭い顔してやがる政治将校が横槍を入れてきた。

 交戦予定時間ね。ま、聞いてて損はないだろうな。


「このまま行けば、後4時間ほどで我が艦隊の射程内となります」


「そうか……。今回は、我が艦隊には最初みたいな航空支援は望めん。我々で敵艦隊を撃滅する必要がある」


 そう。今の俺たちは空の援護がない。


 というか、そもそも少し前に中国沿岸に米軍のものと思われる原潜から巡航ミサイルが大量に放たれ、すべてを迎撃しきれず沿岸におかれていたすべての空軍基地が壊滅的被害を受けたばかりだ。

 まだあそこは完全に修復し切れておらず、もちろん航空機の離発着も出来ない。

 ……というか、それ以前にあそこに前々から増強のためにおいていたものも含めて全部そこでぶっ壊されたから、仮に基地が修復されてもその補充の航空戦力をまた内陸から持ってこないといけなくなるんだが……。

 そんでもって、その内陸の航空戦力を持ってくるといっても、いくらなんでも空軍にも無限に大量の戦闘機爆撃機攻撃機があるわけではなく、例えきても最初とは比べ物にはならないほど小規模なもんだろう。

 ついこの前『施琅』にやっときた補充組も、結構少なかった。どれくらいだったか。大体十数機しかこなかったはず。


 ……今現代の戦争はその航空支援が必要不可欠だというのに、本当にこれで大丈夫なのか……?


 まあ、日本のF-2が厄介ではあるが、そのF-2は来ても極少数だったはずだし、それをこっちにまわしてる余裕はないはずだ。

 台湾のF-CK-1戦闘機が確か対艦攻撃能力を持っていたはずだが、それがどれくらいくるのか。

 だが、予想される戦闘海域を見るかぎり、どうもその線も微妙だ。つまりは南シナ海の真っ只中にとんでこないといけなくなる。

 向こうとてそんな遠洋飛行なんてほとんど経験がないはずだ。簡単には出てこれるはずがない。


 ……とはいえ、それでも航空支援エア・カバーがほとんどないというのはどうにも不安だ。


 向こうとて、攻撃機は出せなくても、せめて防空用の戦闘機くらいは出してくるだろうし、それをどうするのか。

 対艦攻撃能力がないただの戦闘機に対艦攻撃など出来ないから、結局は無視ししても別段問題はないだろうが、それでも、いたらいたでこっちも不安以外の何者でもない。

 こっちからはせめてもの防空機ということで、空母施琅から補充できた航空部隊を全部上げていくということだし、今も交代で数機ずつ上空哨戒には出ているが、それがどこまで効果を成してくれるか……。


 数にもよるが、やはりいくらなんでも少なすぎやしないか……。


 俺は思わず意見具申した。


「ですが、そうは言ってもやっぱり少なすぎやしませんか。司令部に頼んで1機でもいいので追加上げてもらったほうが……」


 だが、俺がすべて言い切る前に向こうがさえぎった。


「無理なもんは無理だろう。そうでなかったら向こうとてすぐに上げてくるはずだ。……なに、我が軍の力を持ってすればあんな日台の“鉄の箱”など即行で海の藻屑よ」


「はぁ……」


 んな簡単にことがうまくいくわけねえだろドアホが。

 日台の鉄の箱とか、どう考えても技術で見たら向こうも馬鹿にできるわけねぇだろ。いったいどの目で見てんだ。節穴でも開いてんのか?


 ……こう見えても、結構国を愛してる面はあるし、一応常識自体はあるほうなんだがなぁ……。だからこそ、俺だってこうやって毛嫌いはするものの最低限の敬意を払ってるってのに……。

 ……まあ、たまに共産党信者な部分もあるが。あ、共産党からの政治将校だし当たり前か。


「なに、とにかく敵の陣営を突破できればこっちのものだ。後はこっちから揚陸艦隊を撃滅し、その後は地上に向けて……」


 と、無駄に意気込んでいる政治将校の横で俺がばれないように小さくため息をしていたときだった。


『……ッ! 艦長、衛星からの通信が来ました』


「お?」


 CICからの報告だった。

 どうやら、衛星がやっと復活したらしい。ったく、今さら遅いっての。

 しかし、それでも現状の戦況がより容易に入手できる。これでまどろっこしい報告合戦も終わったってこった。


「……どれ、それでは衛星からの戦況を……」


 と、そう思って艦橋に備えられているモニターの画面のモードを切り替えようとしたときだった。


『……ッ! か、艦長!』


「?」


 またCICからだった。いきなりの艦内無線に軽く驚かされる。

 ……いったいなんだよ。あんまえい馬鹿でかく叫ぶな。


「どうした? 状況報告」


『れ、レーダーに反応です』


「なに?」


 思わず眉間を寄せて顔をしかめた。

 レーダーにだと? まさか、例の日台連合艦隊か?


 ……いや、いくらなんでもそれはないな。まだ遠すぎる。こんなところにでてくるはずがない。もっと遠くにいたはずだ。


「どこの艦隊だ? 所属は? もう攻撃圏内に入ってるのか?」


『そ、それが……』


 そのとき、俺は思わず自分の耳を疑った。


『……い、』


「?」








『インド・東南アジア連合艦隊です! 本艦隊の後方から一直線に突撃してきます!』








「なに!? 後ろから!?」


 俺は思わず無線で叫んだ。叫ぶなといっておきながら。


 だが待ってくれ。いくらなんでも後ろから突撃など何を考えてるんだ?

 まさか、早朝のあの針路転換からの後方退避はこのためか?


 だが……、それでもこれでは明らかに不審な点がある。


 ……それが、





「……奴ら、俺らを“前線に追い立てる”気か?」





 この場合、俺たちはどうやっても向かって前方に避退せねばならず、結果俺たちはより台湾に速く近づくことになりかねない。

 向こうとしてはそれは困るはずだ。まず考えないだろう。

 だから、こっちとて向こうが後方に行ったのをみて、どうやら攻撃する様子はないし、こっちとてあんまり弾薬も消費しなくないから手は出さなかった。

 だが……、その判断は誤りで、結果向こうに先制されそうなのは認めるが、だがこれなんでだ?

 結局は自分達の不利益になるぞ? なに考えてやがる? とうとう気が狂ったか?


 ……それだけじゃない。


「……というかこれ、」







「……もうすでに射程内に余裕で入ってるんだが……」






 今までの戦闘データから見ても、もうとっくに射程内に入ってるぞ?

 というか、何で今まで捉えられなかった……。やはり衛星リンクでないと地平線より先は見えんか。


 だが、それでもこれはおかしい。向こうは弾薬がないのか? だがこれはいったいどういうことだ?

 追い立ててるのか? まったく意図が読めない。


 と、そんなことを考えていてもお構いなく政治将校は我が物顔で指示を出す。


「……なにやら考えがあるようだが、しかし、これは我々にはチャンスだ。使わせてもらおう。艦長」


 はいはい。わかってるって。


「総員対空戦闘用意! CIC! 目標の対艦攻撃に備え!」


 すぐに指示は伝達された。

 けたましいサイレンとともに、各乗員がすぐに配置についた。

 まだ対艦攻撃はされていないが、いつ来てもおかしくない。


「(……さあ、来るならこい)」


 と、まさにそう思っていたときだった。


『ッ! 敵艦隊から小型目標分離! 対艦ミサイルの模様!』


「ッ! きたか」


 どうやら遅れての攻撃だったようだ。

 この攻撃の遅さに何らかの意図はあるんだろうが、だがそれを今考えている暇はない。


 とにかく迎撃だ。なに、この艦の性能を持ってすればできる。


「CIC、目標指示は任せる。後方からの対艦ミサイルを迎撃せよ!」


『了解。対空戦闘、後方からの対艦ミサイルを迎撃します』


 その返事のすぐ後だった。

 目標選定が終わったらしい。前部甲板のVLSからHQ-9B長距離対空ミサイルが放たれた。

 最新型のAPAR(Active Phased Array Radar:能動型位相配列レーダー)を装備している本艦だからこそ運用できるこのミサイルは、主に艦隊防空用として使われている。

 今向かってきている対艦ミサイルは計6発。舐めた真似を。これくらい、即行で落としてやる。


 あまり時間はかからなかった。


『……、本艦のHQ-9B、敵対艦ミサイル。全弾撃墜を確認』


「よし、よくやった」


 とりあえず敵の第1波は防ぐことが出来た。


 ……と、できればここで反撃の手に出たいのだが……。


「……で、通信、旗艦からの反撃許可は?」


「いえ、とにかく防衛に徹せよとの一点張りです」


「やっぱりか……」


 まあ、この後の戦闘に備えて対艦ミサイルはあんまり消費したくないんだろう。

 こればっかりはこっちとて同意だからそれに従うほかはあるまい。


 ……が、


「……にしても奴ら、なんで後ろから追い立てたりなんか……」


「向こうもやけになったか? どういうわけか知らんがな」


 政治将校が少し顔をにんまりとさせながら言った。

 ……やけねぇ。ここまで追い詰めといていきなり後方に回ったと思ったらやけになって最前線に追い立てるってか?

 いくらなんでもそりゃないと思うがね……。それだと今までの戦闘はいったいなんだったんだって話になるんだが。


「とにかく、旗艦からの指示に従いたまえ。さらに増速をかけることになるかもしれん」


「ですが、それだと一部の旧式艦が置いてけぼりになりますが?」


「今はとにかく逃げるのが先決だ。旧式の足など待ってられんだろう」


「……」


 ……まあ、この場合旧式艦は足手まといにしかならんだろうが、それでもなぁ……。

 こいつの言うとおり、遅かれ早かれそんな指示が来るだろうが、本音そんな味方置いてけぼりはしたくない。

 出来れば最後まで付き添ってやりたいが……。それに、向こうとて追撃速度は今のこっちとあんま変わらないか、若干こっちが早い。

 別段それをするまでもないだろう。……尤も、すべての判断は旗艦にあるから俺からはなんともいえないが。


 ……すると、


『ッ! 敵艦隊から第2波! 同じく計10発!』


 またか。敵からの対艦攻撃。

 こう何度かに分けるのはいったい何の意味があるんだ? 本気で俺たちをつぶしにきてるのか?


 ……ダメだ。さっぱり意味がわからない。


 そして、そうまた時間を経てるまでもなく前部甲板VLSからまたHQ-9Bが飛んでいった。

 今度は2発。それは空高く上がると鋭い軌道で後方に飛んでいった。

 ……なんとなく、戦争初期の台湾海峡での追撃戦での台湾艦隊はこんな感じだったのかね。おそらく、これの比でもないだろうが。


 そして、またあんまり時間をかけずに迎撃成功。レーダーからブリップが消えた。


 ……う~ん、


「……迎撃自体は問題なく実行されていますが、本気で奴らが何を考えてるのかわかりません。まさか、こっちの対空装備の弾薬を消費させるつもりでしょうか?」


「とはいっても、こっちもこっちでまだ弾薬には余裕はそこそこあるんだがね。やるだけ無駄だと思うし、それにこんなリスク満載のことをわざわざ後ろからやるか?」


「……そこなんですよね……」


 まあ、こうやって見るとこちゃんとみてるから本気でぶち切れるほど嫌いというわけでもないんだよな。毛嫌いはしてるが。


 ……だが、こいつの言うとおりだ。この攻撃自体もリスクがあるし、それを犯してまで、それもわざわざ“後ろから追い立てるように”攻撃するのはいったいどういう意味があるんだ?


 ……わからん。さっぱりわからんぞ。


「……う~む、」











「……奴ら、いったい何をたくらんでるんだ……?」













 俺は少しばかり頭を悩ませた…………

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