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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第7章 ~神の炎の恐怖~
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イ・東亜連合艦隊の謎の動向

―9月1日(火) ACT:AM06:45 南シナ海 東沙諸島南40海里地点

                 『施琅シーラン機動艦隊ジードーンジエンドゥイ』DDG176“成都チュヨンドウ”艦橋―







「……うん?」


 朝日が昇り始め、周りが徐々に明るくなっていく中、俺は航海レーダーを見ていた乗員のその呟きを聞き逃さなかった。


 すぐに反応する。


「どうした。何を見つけた?」


「いえ、前方のイ・東亜連合艦隊なのですが……」


 イ・東亜連合艦隊とは、前方にいるインド・東南アジア諸国からなる艦隊だ。

 東南アジア諸国の海軍総戦力がすべて終結し、一応フィリピンが総指揮を採っているということであったが、インドからの援軍が来たことによってさらに戦闘力が上がった。

 向こうは空母も1隻ある。こっちもあるが、それでもこっちは空母艦載機の消費が激しかった。

 この休止期間を使って、何とか“一部”は補充したものの、それでもまだまだ足りないのが状況だ。


 その中で、我々は彼らと戦いいくつかの犠牲は出したものの、それでもこのままの戦線を保っていた。


 しかも母国の核宣言によって、その後の攻勢も思うように出来なくなってしまった。


 だからこそ、ここで互いに固まっていたのだ。


 こっちとて、いくらなんでもこれ以上の無理な攻勢を出したら犠牲がでてまずいことになる。


 ……が、


「……みてください。彼ら……」









「……どんどんと左右に別れ、我が艦隊の道を開けています」









「なに? 道を譲るというのか?」


 私は艦長席から降り、すぐに航海レーダーを見た。

 航海レーダーは広域モードに切り替わっていたが、そこには、前方に立ちふさがっているはずの、敵イ・東亜連合艦隊が左右二手に大きく分かれ、我々に対して道を作っていた。

 もうすでに、結構離れている。急いでいるのだろう。速度も結構速かった。


「なんだ。何が起きたというのだね胡艦長」


 と、そういってきたのはこの艦に乗っている政治将校だ。名前など知らん。聞く気もない。

 あんまり乗られては迷惑なのだがなぁ……。こっちの自由な戦闘戦略に支障が出てしまうしな……。


 ……まあ、面倒ごとは起こさなければいいだろう。そうすれば何もされまい。


「いえ、こちらを……。どんどんと、彼らが我々の道を明けるように左右に分かれていっています」


「? ……ほう、これは面白い動きをしたものだ。とうとう諦めたか?」


 んなわけねえだろドアホが。

 ここまでやって簡単に諦めるわけねえだろボケ。きっと何か考えてるはずだ。

 んでなかったらわざわざ“左右に綺麗に”分かれるわけなんてないんだよ。

 結局は多国籍の艦隊だ。撤退しろとなったらそれぞれで散り散りになるはずだぞ。向こうはそれほど繰り返して多国籍での艦隊行動は訓練でもしたことないはずだ。というか、俺の知る限り向こうはこんなの初めての試みだったはずだ。

 だからああやって少しぎこちなくはあっても最大限こっちの航行を妨害してきた。こっちとて予想外だ。


 だから、今この時点でもここで留まっているのだ。


「(……奴ら、何考えてやがるんだ?)」


 航海レーダーを未ながらそう思った。

 これほど綺麗な艦隊行動でわざわざ道を譲るかのごとく動くわけはない。きっと何か考えてやがる。


 すると、隣にいた政治将校が「ふむ」とあごをなでながら言った。


「まあ、いずれにしろチャンスではある。いずれ、旗艦を通じて司令部から進軍命令が下るであろう」


「はぁ……。そうですか」


 まあ、一応チャンスにはかわりはないわな。

 でも、何か引っかかるな……。そう簡単に道を譲るか?


 ……でもまあ、俺が考えても始まらないだろうな。どうせ意見具申しても即行で隣にいる空気読めない頭固い奴に否定されるのがオチだ。


 と、そのときだった。


「ッ! 艦長、旗艦より通信。“これより進軍開始。我に続け”。以上」


「やはりきたか。では艦長、頼むよ」


 ふん、言われなくてもさっさとやってやるわ。

 少しムッとしつつも指示を出す。


「……了解。航海長、艦隊に続け」


「了解。操舵、針路そのまま、機関第2戦速。艦隊に続け」


「了解。針路維持、機関第3戦速」


「よーそろー」


 艦隊が動き出した。

 周りの艦が一斉に動き出すとともに、我が艦もそれに続いた。

 高くなる機関音とともに、艦が前進をはじめ、すぐに速度に乗った。


 一応、ここから急いで台湾に向かうことになるだろう。


 ここから向かえば、早くても午後ちょいすぎに着くか?


 ……まあ、なんら妨害がなければの話ではあるが。


「とりあえず、これでやっと台湾に迎えるな。我が国に歯向かう奴らを一掃できる」


「……」


 一掃……、ねぇ。


 別に戦争のためだし戦うこと自体はかまわんが、あんまりやりすぎると後々痛い目にあうのはこっちだからなぁ……。

 国際世論もちゃんと考えてるだろうな……? どうなっても俺は知らんぞ……?


「艦隊陣形維持。自分の位置を見失うなよ」


「了解」


 とにかく、俺はそう指示しつつそのまま他の艦とともに台湾に向かう……。










「……で、これはなんでしょ?」


 私は思わず隣にいた海口さんに聞いた。

 今頃、前方の敵艦隊は左右に分かれて、こっちの横を通るように航行しているはず。


 ……でも、狙いはもちろんわからない。


 海口さんも「う~ん……」と少しうめきながら言った。


“さあね……。ただ諦めたわけじゃないでしょうけど、まあチャンスだし別にいいんじゃない? ……ていうかさ”


「?」


“……別に進んでやりたいわけじゃないけどさ、あの敵艦隊攻撃しなくていいの? じきに互いの攻撃射程内はいるよ?”


 それは、私でなく旗艦の施琅さんに対してだった。


 それには、向こうもすぐに答えた。


“……向こうは撃ってきてない。なら撃ち返すな。その指示だ”


“まあ、そりゃそうだけども……”


 人間側の司令部からも、一応撃たれるまで撃つなとは言われいたしね。

 それなら仕方ないけど……、しかし、嫌な予感しかしないのは私だけなのかな?


 ……しかし、向こうはいったい何を考えているのか……。


 まさか、割と本気で諦めたわけではないわよね。

 こんなタイミングで諦めるとか、それじゃそもそも何でここ妨害してたのよって話になるわけでして。


 ……まあ、そうなるととにかく私たちは台湾に行くことになるのか……。

 もう、向こうではどうなっているのかわからないけど、向こうと鉢合わせした瞬間ミサイル戦勃発かぁ……。

 相手は今までと違って、台湾の主力と、あと日本の最精鋭が来てるしなぁ……。今までよりきつい戦闘になることは確か。

 その中でどこまでやれるか……。ここでこそ私みたいな主力の本領が発揮されることになるだろうし、期待に最大限こたえねば……。


 ……と、


「……あ、朝日見えた」


 すると、西の空から少し太陽が顔を出した。

 明るい太陽の光が、私の目に光り輝いて見える。


“今日の分の日の出ね。……考えてみれば、これを見るのが当たり前だけど、あっという間にみれなくなるのが戦争だっけ……”


「何を今さらなことを……」


 でも、実際そうだからね……。これが当たり前だったけど、いつこれが見れなくなる日が来るのか……。

 へたすれば、この後の起こるであろう海戦でもしかしたわ私即行で……。


 ……いや、弱気になるな私。みれなくなるのは、とかそういうのではなく、みるために生き残らないと。


「……とにかく、」








「まずは台湾に向かわないとね……」











 私は足を台湾に向けた…………

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