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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第7章 ~神の炎の恐怖~
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中国のヅァンイーヌゥー

―ACT:PM14:00(JST:AM15:00)南シナ海 東沙諸島南130海里地点

     『施琅シーラン機動艦隊ジードーンジエンドゥイ昆明クーミン級(054D型)駆逐艦DDG176“成都チュヨンドウ”艦橋上―






「……はぁ~」


 私『成都チュヨンドウ』は目の前の手すりに前のめりに寄りかかりながら、思わず重く長いため息をつく。


 南シナ海で活動を始めて早19日。

 フィリピンでの戦況悪化、そんでもって台湾がひどくなってきたってことで、司令部の命令どおりそっちにいこうとしたら、今度は東南アジアとインドの連合軍が総出で差し止めにかかった。


 それを押しぬけようにも中々開かず、むしろ損害が増えるばかり。

 あまりにひどいので、人間の皆さんはいったん止めて再度体勢を立て直してから、てことにしたらしい。


 で、いったんここで待機中なんだけど……。


「……なんか母国のお偉いさんやっばいことしちゃったのかな~……?」


 そう、私のこのローテンションの原因がこれ。


 なにやら、聞いた話ではそのお偉いさん達が核をちらつかせてるとか聞いたけど、それまずいんじゃ……。


 政治全然詳しくないけど、核って確かとんでもない大量破壊兵器の……。


 ……ってくらいしか知らない。とにかくヤバイってくらいしか知らない。


 でも、それのおかげで東南アジアやインドの国の皆さんが一斉に攻撃をやめちゃうくらいなんだから、相当なもんだと思うけど……。


 ……はぁ~。


「(……な~んか不安)」


 少し、自信なさげです。


 ……尤も、私艦としても自信ないんですがね。


“……どうした~? またいつもの憂鬱タイムか~?”


「ん? ……、別に」


 そういってきたのは簡単陣形で左隣を航行している『海口ハイコウ』さん。

 私の一つ上の蘭州ランジョウ級(052C型)の2番艦で、私の親友。

 私が進水したあたりからずっと気にかけてくれてるいい人。


 ……まあ、その縁なのかなんなのか、作戦でも結構一緒になるときが多いです。


「……少し、考え事してただけです」


“いつも考え事じゃん……。なに、こんなときに悩み事とか?”


「悩みねぇ……」


 ……悩みというか、不安かなぁ……。


 母国のお偉いさんのあの核っていうやつ……。


「……今の中国の政府って、共産党ですよね?」


“まあね”


「それのお偉いさんが核使う云々って言ってるんですけど……、あれほんとなんですか?」


“……あー”


 と、海口ハイコウさんは思い出したようにいった。


“……一応事実らしいよそれ。なんか状況によってはそれ確実に使うことになるって”


「ふ~ん……」


 やっぱりか……。

 ……でも、大丈夫かなあれ。聞いたところじゃ使ったらいろいろとひどいことになるって……。


“まあ、そういう政治は人間に任せるわよ。私たちのしったこっちゃない”


「でも……、やっぱり不安で……」


“まあまあ。あんたはまずその自信不足な性格を何となしなさいって。それが先だって”


「自信不足って……」


 そしてそれを否定できない自分が悔しい。


 ……だって、今の今までこっちもあんまり活躍できてないし……、それにそれのおかげで僚艦にも迷惑掛けまくって……。

 そんでもって最近なんて敵の攻撃迎撃し切れなくて危うく命中しそうになって乗員危険にさらしたりとか……。


 ……という、ネガティブ思考な私。


“中国の戦乙女ヅァンイーヌゥーとしての気概を持ちなさいって。アンタ私より高性能だからいけるって”


「はぁ~……。そうですか」


 そして、ため息しかでない私。


 ……数年前に就役したばっかりの新人とはいえ、まだまだ艦として一人前じゃない。

 まだ海口さんみたいなやり手じゃない。


 ……もっと、他の先輩に追いつけるよう努力しなければ。


「……にしても、お偉いさんもいったいなに考えてるのか……」


 その核っていうのの関係でここに留まることになっちゃったし、作戦的にはそのままさっさと突っ込むほうがいいはずなのに……。

 まあ、正確な戦術とかは人間の人たちが考えてくれるけど、何か打開策でもあるの?

 今の戦況、それこそ戦線止まっているとはいえとてつもなくまずいことには変わりなし。


 それでも、その中国の政府からのお達しらしくて、ほとんどの戦闘がストップ状態。


 ……さっさと動いたほうがいいはずなのに、一体真面目に何を考えてるのか……。


「……よからぬこと考えてなきゃいいけど……」


 乗員の話じゃ、なんか最近妙な行為が目立ってるらしいし……。

 ていうか、そういう政府って表立った行動あんまりしちゃまずいんじゃ……。


 ……はぁ、でもほんと、何もすることがないって暇……。


「……もういっそのことこのまま戦争終わっちゃえばいいのに……」


 軍艦らしからぬことをいう。我ながら。

 なんか、こうやって海戦するのも嫌になってきた……。今も全然動きがないから泥沼化しそうだし……。


 ……それよりならもう終わって他の艦ともあってみたいと思ってたり……。


 たとえば……、日本の艦とか。

 あそこって錬度高いからぜひともアドバイスいただきたいんだけど……、特に最新鋭の『やまと』っ艦。

 まあ、それこそ今は敵だからむしろ刃物を向け合う関係なんだけど、終わって互いに生きてたらぜひとも一回……。


 ……なんて、言っても生き残れるとは限りませんがね……。

 というか、そもそもその『やまと』さんが台湾あたりに来てるかわからないし……。

 でも、絶対でかいだろうな……。私は駆逐艦、向こうは巡洋艦だし……。

 そんでもって装甲付きの重装備。どっかの半島の駆逐艦みたいにアンバランスにならずにあそこまでの重装備を両立できたのは、やっぱり技術立国って言われてる日本のなせる技って言うのかな。


 ……やっぱり、一回はみてみたい。こぶしを交えたくはないけど、ぜひとも一度だけでも……。


「……でも、あんな最新鋭だしもしかしたら怖い人だったりして……」


 ああいうのって、結構怖い人だったりする勝手な偏見が……。


 ……といっても、うちの艦隊そんな怖い人いないどころかむしろ無口な艦ばっかなんですがね……。

 今だって全然しゃべらないし……。これそのまま放置してると、そのうちこっちも気まずくなってしまうのは私だけなんでしょうかね。


 もし、私と会った瞬間「アンタそんなひ弱ので艦魂やってんの?」とか豚を見るような目で見られたらもう耐えられなくてたぶん逃げ出したり……。


 ……うわぁ、


「……お相手できる気がしない……」


“……何が?(汗”


 思わず海口さんも声をかける。


「いや……、日本の最新鋭艦いるじゃないですか」


“……ああ、あのやまとって言うの?”


「ええ……。あれ、一度会ってみたいな徒は思ってみたいんですよ」


“ふ~ん、で?”


「でも……、あの人怖い人だったらどうしようかと……」


“会うと決まったわけでもないのに何を考えてるのよこの娘……”


 ご尤もではありますが。

 こういうのを考えると止まらないのが私の悪い癖。


“大丈夫だって。日本人あんまり怒らないどころかむしろ温厚でご丁寧な国民性だって聞いてるから”


「それ私たちみたいな艦魂にも適用されますかね?」


“う~ん……。基本されるんじゃないの?”


「そういうもんですかね……?」


 乗員の国民性に影響されるとかそんな感じかな?

 あと、そのほかの周りの人間もほとんど日本人なのは間違いないしそれの影響で。


“あ、それにさ”


「?」


“日本じゃ大和やまとって、昔日本にあった国の名前、かつその日本の代名詞とも言えるほど有名らしいから、たぶんそれに合わせてむしろおっとりした性格してるんじゃない? または、少し凛とした正確だったりとか”


「それって日本人というかただの天然キャラじゃ……」


“ある意味日本人じゃん。向こうの作ってる二次創作キャラって大抵女キャラこんな感じでしょ? あ、二次創作といえば日本のアニメって「日本では美少女が国を守る」とか言われてるほどヒーロー=美少女ってパターンが頻繁に出てくるとか。あんだけ女キャラ出るってやっぱ需要かな?”


「なんでそこまで知ってるんですかねぇ……」


 おかしい。彼女がここまで日本に詳しいなんて聞いてない。あの人日本となんらかかわりないはずなのに。

 いつ時か日本にでも言ったの? それとも日本の艦とあったの?


 ……わからない。いったい彼女はどこからそんな知識を得ているのか。


 それともどんどんと他の人から伝ってきたのか。それとも、彼女の乗員にとんでもない日本関連のオタクがいるのか。


 まあ、こっちにはいないんですがね。むしろ日本興味ないないし否定的思考を持っている人ばっかりですがね。……割合的には前者が圧倒的だけど。


“まあ、あんまり日本関連話してると……、うちの旗艦様に怒られますがね”


「はは……」


 うちの旗艦様。

 まあ、様、ていうのは余計なんだけど、それがだれなのかは言うまでもなく。

 私たちの艦隊旗艦の最新鋭空母『施琅シーラン』さんです。


 ……でも、


“…………”


「……でも、いつもどおりですよ」


“……だね”


 あの人、いつも寡黙な人で、全然言葉を発しない。

 一日に100語発するか発しないかくらいしかしゃべらない。私たちとのコミュニケーション? 必要最低限しかしません。ハイ。


 “容姿は綺麗なのにね~。残念美人ってまさにこのことを”


“……海口、聞こえてる”


“あ……、これは失礼”


“……”


 ……っていうふうな感じで、たとえしゃべってもこれくらいしかしゃべらないって言うね。


 ……さすがにもっとしゃべってください。うん、しゃべってください。


“……でもほんと、ああ見えてもたまにかわいい面だすんだけどねぇ”


「へ~、そんなもんですか?」


“ッ!?”


“たまにだけどね。前に私がこっちの乗員が話してた猫関連の笑い話聞かせたらあいつそのまま手押さえてばくs”


“余 計 な こ と は 言 わ な く て い い”


“アッハイ”


 と、話してる最中に威圧かけられた。

 ……相当聞かれたくなかったか。そうやって寸止めされるとむしろ気になるのが人間だというのに……。結局は自分のイメージが大事ですかそうですか。


“ま、とにもかくにも、今は暇だしゆっくりしてましょう。戦闘しまくってこっちも疲労がたまってきたし”


「そうですね」


 こっちもこっちでこのつかの間の休憩を有意義に使わなければ。


 ……なぜ戦争中なのにこんな休憩時間が出来たのかは理由はわからないけど。ほんと、政府は何を考えているのか。気になってしょうがない。


 ……艦魂である私がそんなこと気にしたってしょうがないけど。


「……いつになったら動くのかなぁこれ」


 終わるならさっさと終わってしまいたいし、戦闘まだあるなら同じくさっさと終わらせてしまいたいんだけど……。

 あ、でもあのやまとさんとかっていう艦と当たるのはちょっと勘弁かな……。ま、今時そんな艦隊戦なんておこりゃしないけどね。やるにしても互いに対艦ミサイルぶっ放して終わりだろうし。

 そんなのでやまとさんがこっちを相手するとは限らないし、まさか第二次大戦であったような主砲弾ぶっ放しまくる砲戦が現代で再現されるわけ無し……。


 ……はぁ、


「……いずれにしろ、」








「……やっぱり不安だなぁ……」








 さっさと状況が動いて終わらせたい……、とうめく軍艦の私であった…………

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