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転生少女、難事件に見舞われる

「女子生徒が行方不明……ですか」



「えぇ。何かご存知ありませんか?」



夜も更けてきた頃、部屋のベットでウトウトしていたら扉をノックする音が聞こえ、慌てて開けたら真正面にユノ様が立っていた。


ここ女子寮なんですけど!?と突っ込みたくなったけど、いつも柔らな笑みを湛えている彼が深刻な表情を浮かべているので、何かあったのかと尋ねてみた。すると彼はうちのクラスの女子生徒数名の行方が分からなくなってしまったと口にしたのだ。


生徒の名前を聞いたけど、いなくなった女子生徒複数名はみんな六時間目の授業終了時点ではクラスにいた。だから、居なくなったのは放課後って事になる。



「ごめんなさい。わからないです」


「そうですか」



首を横に振って答えるとユノ様は眉を下げると共に深くため息を吐いた。かなり探し回ったのか、白いシャツはよれて土埃や葉っぱが至る所に着いている。顔には僅かだが疲れも見えた。



「誰も彼女達を見ていないんですか?」



「いいえ。何人か彼女達が放課後に園内を歩いていた所を目撃しているのです。証言を頼りに生徒会役員全員で手当たり次第探したのですが……」



「見つかってないんですね」



ここに聞き込みに来たという事は未だに彼女達は見つかっていないという事だ。私の言葉に彼は頷く。


「お力になれなくてすいません」



「いいえ、お話をお聞き出来ただけでありがたいですよ。では私は生徒会室に戻らなければならないので、これで。夜分遅くに失礼致しました」



「はい。早く見つかるといいですね」



丁寧に頭を下げるユノ様に微笑んでゆっくりと扉を閉めた。

彼女達の行方が気になるけど、流石にこの時間に探すのを手伝うと言ってもユノ様は頷いてくれないだろう。とりあえず、明日になっても戻ってこないようなら、放課後私も探すのを手伝おう。




そう思っていた矢先の事だ。

翌朝、彼女達は普通に学園に登園してきた。

特に大きな怪我もなく、本当に普通に。



みんなは彼女達に駆け寄って何故昨日の夜姿を消したのか、何処にいたのかなどをこぞって聞き出したが彼女達は誰もそれに答えない。

いや、答えられなかった。

なんと誰一人として昨日の放課後以降の記憶がない、すっぽりと抜け落ちてしまっていると言うのだ。



そして、その日を境にして学園中の女子生徒が放課後に姿を消しては、翌日に戻ってくるという摩訶不思議すぎる事件が多発し始めた。

しかもどの女子生徒もその放課後から翌朝までの記憶を全く持たずに戻ってくるのだ。



「うーん。どう思う?リディアちゃん」


「私にはなんとも……。というか、リアム様はどうして私達と一緒に行動してるんですか」


「えっ?もちろんリディアちゃん達を守る為だけど」


「はぁ」



隣でさも当たり前のように言いながら笑うリアム様。どこまで本気なのかわからなけど、まぁ私一人ではリーナを守り切れないかもしれないし、その分リアム様がいるのは心強い。



「……ねぇ、リディアちゃん。もしかして、自分は無関係だと思ってない?」


「え?そ、そんなことないです」


「いいや。今絶対リーナちゃんを守らないとって思ってたでしょ」


「……」


図星すぎて何も言えない。

なんだ。ユノ様といい、攻略者には人の心を読む力でもあるのか。……それとも単に私が読みやすいだけなのか。

何も言わないのを肯定と取ったらしいリアム様が呆れた表情で溜息をついた。



「あのね。危ないのはリディアちゃんも一緒。君だって可愛い女の子なんだよ。だから君は変に他人を守ろうとするんじゃなくて、俺に守られてればいいの」



「ご、ごめんなさい。あ、りが、とう」



言葉が途切れ途切れになったのはいつになく真面目な表情で真っ直ぐ瞳を見つめられたからだ。

居たたまれなくなった私はさっと目を逸らす。

こう、男の人に真正面から見つめられる機会なんて前世はもちろん、今世もなかったからなんとも気恥ずかしい。それもリアム様程顔の整った人だったら尚更。


……えぇ、ドキドキしましたとも。しちゃいましたとも!私だって乙女ですからね!?



「……まぁ、そこがリディアちゃんの良いところでもあるんだけどね」



緊張気味になりながら次になんて言おうか考えていると、ふいに真面目な雰囲気が崩れて、普段どおりのあの子供のような笑みが戻ってくる。

その事に少しホッとして短く息を吐いた。



「それよりも、リーナ。さっきから一言も喋っていないけど大丈夫?」



話を切り替える為にリアム様と反対側の隣を歩いているリーナに声をかける。が、反応がない。

聞こえてないのかな。なんだか、ぼーっとして上の空みたい……?



「リーナ?」


「……」


「リーナ!」



不安になって強めに名前を呼ぶと、彼女はビクッと肩を揺らし目を丸くする。なんだ、やっぱり聞こえてなかったみたい。



「えっと、ごめんなさい。なんの話だったかしら?」



「さっきからリーナが一言も話してないからちょっと心配になったのよ。大丈夫?気分が悪い?」



「い、いいえ。ちょっと考え事をしていただけよ。本当に」



そうかな。考え事にしてはちょっと顔色が悪い気がするけど。まぁ、本人が大丈夫というなら無理に保健室に担ぎ込むわけにもいかないか。



「そう?無理しないでね?」



「えぇ。ありがとう」



そう言って柔らかに微笑むリーナ。

だけど、その笑顔がやっぱりどこか引っかかってしまう。なんだか無理して笑っているように見えるのは、私の考えすぎだろうか。




しかしその予感は後に的中する事になる。

この会話をした翌日、リーナは寮の自室から忽然と姿を消してしまったのだった。












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