クマさんと闇の聖域
おま、まったく。
クマったことに、なったぜ。
"暗黒"と呼ぶのに相応しい空間。
そこへ続く、"浮遊する階段"を、
おれ達は、ゾロゾロと降りている──。
オ オ オ ォ ォ ……
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まったく、広さが分からない、闇──。
正直、ブルっちまうぜ。
ヒトリだったら、
ぜってーに行かなかったろう……。
先頭を行く金銀ペアーは、
さっきから、まるで喋らねぇ。
光源となる、ちびっとの、
火のランプのような歯車が、
おれ達の周りを、
付きまとうように飛び、
不安げに、行く先を照らしている。
ヒナワの妹たちも、時たま、
息を飲むように上を見ようとするが、
闇は深く、浮く足場を踏み外さないよう、
慌てて足元を見ることを、繰り返してらぁ。
静かな空間の中で、騒音エルフだけが、
まったく空気を読まず、喋り続けた。
白童:「──"ラグエル領域"は、
700年前に、白死王、
ゼウガ・リレイズが発見した、
"崩海"を除いて、
新規には発見されていません。
これは、大発見ですよ」
金娘:「……! ……"リレイズ"?」
白童:「どうかしましたか? アンティさん」
金娘:「……いえ」
嬢ちゃん、明らかに機嫌がワリぃ。
どうしち、まったんだ……。
白童:「"ラグエル領域"は、
魔素の干渉が、ほぼ皆無の空間だと、
されています。呼吸はできますから、
西の最果てにある、
"崩海"の奥地とは違って、
風の魔素は、あるのでしょうが……。
"魔術職"のマジカさんにとっては、
地獄みたいな場所でしょうね」
萌殺:「……まぁ、マジ、それな。
こんな所で魔法をマジ使いまくったら、
マジ自分から魔力が出るばっかだからよ、
マジ、すーぐに息切れすんだろーよ……」
白童:「肉体強化系のスキルも、
かなり弱体化すると言われています。
近接職も、油断は、できませんね」
獣王:「──ガオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオ!!!!!」
急にアホが叫んだので、
何人かが、飛び上がりそうになった。
当然、視線が集まる。
熊神:「……言い訳は聞いてやるよ。
ゴウガのダンナ、なーんで、
こんな、せめぇ、宙に浮く階段の上で、
おれ達にビックリ・ドッキリ・
ハウリングを、しかけやがった?」
萌殺:「ま、マジ、ビビらせんなって……。
ここだと、ウチでもマジ、
飛べんかもしらんのに……」
銃侍:「はは……」
獣王:「ガオ……」
会話ログ機能の翻訳を使って聞いてみると、
どうやら、声の反響で、
広さを測ろうとしたらしい。
アホ……やまびこ かよって……。
姉乳:「……確かに、うるさかったけど、
キレそうな程ではなかったわ」
妹乳:「そうですわね……。
まったく反響が、
ありませんでしたから。
この暗黒は……恐ろしく、
広大なのでしょう」
おっぱい姉妹が言ったとおり、
ドキリとはしたが、うるささは、
そこまでだった。
音を反射する壁が、近くに無いんだ──。
外で叫んだほうが、
山やら地面やらに声が反射して、
もっと、うるさかったはずだ。
こんなマトモに、
ラグエル領域に入ったのは初めてだが──、
やっぱり、一歩、踏み外せば、
下が底なしの闇だってこたァ、
マジで、ゾッとするぜぇ……。
熊神:「二度とやるなよ」
獣王:「ガオ……」
白童:「この深度も驚くべきことですが、
ヤバいのは、人工物があることですね」
いつもは、もっと、
うるせぇ代表のユユユが、
相変わらず、よくダベるのだが、
めちゃくちゃ、淡々としてやがる。
白童:「この階段も、どうやって浮いてるのか、
まるで分かりませんよ。
それに、さっき、歯車の火で、
少しだけ照らされてましたが、
横に、大きな柱のような物が、
ありますね?」
それは、おれも気づいている。
光が届かないくらい、ひれぇって、
怖ぇことなんだな……。
姉乳:「何かのダンジョンの、
成れの果てなんじゃないの?
異空間系のヤツで、
似たようなものを、
見たことがあるわ」
白童:「着眼点は買いますが、
ダンジョンは、魔素の再構成を、
絶えず繰り返す、
マジック・フィールドですからね──。
ラグエル領域では、魔素の共鳴活動は、
基本的には停止します。
バッド・アンサーでしょうね」
姉乳:「アンタ静かでもハラ立つわねー」
白童:「それほどでも。
つまり──"コレ"は、
"人工物"、なんですよ。
"正しく"、ね──」
魔素同士が干渉しないのなら、
この、下へと続く階段は、
どうやって空中に固定されているのか。
……ふん、重盾職のクマさんには、
まったく分からねぇ分野だぜ。
──金の、足音。
金娘:「……この空間は」
キィ────────ン──。
金娘:「この空間は、
幅、3メルトルテの階段が、
ずうっと下まで、
緩やかな傾斜で続いてる。
左右には、直径28メルトルテの支柱が、
等間隔に並んでいて、
その上下の設置点は、
観測したことがない」
熊神:「直径、28メルの支柱だと……!?」
姉乳:「バカでかいわね……。
人の手で作れるものなの?」
魔法を使わず、手作業で作ったとしたら、
それは神さんか、
山みてぇな巨人さんの、仕業だろうよ。
当然:「……其方たちは、ここへ、
訪れたことが、あるのだな?」
ヒナワの親父が、嬢ちゃんたちに聞く。
金娘:「……二度だけ、ね」
銀娘:「この先に、建物があるの」
白童:「それは、驚きだ。
空いた口が、塞がらない。
世界中の魔術学者たちが、
間違いなく、発狂しますよ?」
──── キ ィ ン ──……!
無表情で、クルルカンが振り向く。
オクセンフェルトも、目が凍っている。
おっと、っと、っと……──。
おこだぜ? 騒音?
白童:「……ぼくは探究心は有りますが、
ロマンは大切にするエルフです」
金娘&銀娘:
「「 …… 」」
──くるり。
絵本の主人公たちは、
前を向き、また、降り始めた。
白童:「……、ふ、ぅ……」
熊神:「ははは、ユユユの冷や汗なんて、
珍しいモンが見れたなァ」
姉乳:「──は! そうね、
お天道様の下なら、
お酒が進んだわ」
妹乳:「……アンティ。マイスナさん。
あなた方が怒ってるのは、
この先にある場所を……、
毒で、汚されたからですか?」
銀娘:「……むぅ」
金娘:「……ノーコメント」
妹乳:「……やれやれ。
それは、大正解、と言っているような、
ものですわよ──……?」
ユユユのヤツは、
絵本サマ方の威圧をモロに食らったが、
ヒキハに対しては、少し、
嬢ちゃんたちの"当たり"が、
柔らかな感じがすんなァ。
銃侍:「……毒は、この下からなので、ござるな?」
金娘:「 ── 」
この、無限の暗黒から、
毒は、立ち上っていた。
今は、小さな黄金の歯車の輪っかが、
闇を恐れず、足元の闇に特攻し、
あらかた、毒を吸い取ってンだろうが──……。
ぜったいに原因は、真下に、ちげぇねぇ。
んだが、絵本の嬢ちゃんたちは。
この、緩やかな階段を、
ひたすら、ナナメに、
えっちら、おっちら、下っている。
この先に建物があるってンなら──。
ソイツは、この二人にとって、
"でーじ"な場所で、
ソコが無事かどうかを、
確かめてェ、ってトコまでは、
──おれにも、分かった。
異火:『ひええー、おっかないのー……!
ひなわー、おとすなよー……!?』
銃侍:「からから、大丈夫でござるよ。
ポニテは解いたでござるから、
肩車の邪魔には、
ならぬでござろう?」
萌殺:「マジで、おっかねぇ場所だぜ……。
ヲィ、銃の神さんよォー?
おめーがマジもんの神だってんなら、
ココが、なんで、こんななのか、
マジで、知ってんじゃねぇのか?」
異火:『われはー、かみのなかではー、
ひらしゃいんの、ばいとりーだーよー。
じゃが──ここは、
" かみが、つくりそこねたばしょ "、
" まにあわなかった、ばしょ "、
じゃな── 』
金娘:「……!」
銀娘:「……間に合わなかった、ばしょ?」
異火:『せかいのはじめは、
とっかんこうじー。
すておくしごとも、
あったであろうよー』
陽神:『────!:
────:……☼』
金神:『>>>こいつ……』
実に興味ぶけェ表現だし、
何だか、おもしれェ言い方だ。
熊神:「ははは、世界の納品まで、
締め切り、ギリギリだったってか?
ソイツは、難儀なハナシだぜ」
姉乳:「──くま」
金と銀から、威圧の雰囲気を感じた。
オィオィ……。
熊神:「……──嬢ちゃんの回し蹴りを、
食らうのは、二度とゴメンだ。
何を言っちまったのか分かんねェが、
謝るから、許してくれ」
姉乳:「──ハァイ?
不機嫌な理由は分かんないんだけど、
ない尻尾を踏まれたくないのなら、
隠し事なんて止めて、
素顔で暮らしなさいな。
こっちは何で怒らしたのか、
チンプンカンプンなのに、
無言でキレられるのは、迷惑よ──」
金娘:「……! そ、れは……ご、めん……」
銀娘:「……すみ、ません……」
おっぱい、ファインプレー。
持つべきは、良いおっぱい、
良い後輩だ。
熊神:「先の建モンを確かめてぇってのは、
なんとなくだが、伝わってるぜェ。
ちゃんと、着いて行くからよ?
ソッチを、先に見ようぜ?
どうせ、真下のマックラ空間の調査は、
オメーらのユニークスキルに、
頼ることになンだ。
こっちもワリぃとは思ってる……。
だから、機嫌なおせよ──」
金娘:「──……! す、すみません……」
銀娘:「ごめんなさい……」
変な謝り方を、されちまったが──。
どうやら、このカイダンの下ってのは、
相当に、大切な場所らしィなぁ。
おれにとっちゃあ、おっかない暗闇だが、
果たして、なァにが待ち受けて、
いやがるのか──……?
当然:「ふ、む──恐ろしい広大さよのぅ……。
不用意に他言する気はないが、
コレを知れたのは、財産である──。
う、むむ……しかし、
本来ならば、王の都には、
報告せねばならんのじゃが……」
封火:「──父上、ダメですよっ!」
禍火:「──大恩が、ございますでしょう!」
ぉ、ククク、流石、
あの奥方さんの娘、と言った所かよ?
将来、結婚するダンナが、
尻に敷かれそうなこった……!
ぁ、そーだ──。
熊神:「──よォ、ギルマスの殿さんよォ?
例の、赤ニンジャと、
ラクーンの避難地には、
"アレ"で、ちゃんと届くのかよ?」
当然:「む? ──うむ。ワシが使える、
数少ない"器用な魔法"のひとつじゃ。
重いものは運べぬが──。
あの、小さき紙クズなら、
問題なく飛べようて──」
蝶火:「大丈夫ですよ!
父上の"伝令鳥"は、ああ見えて、
凄いんです!」
炊火:「スズメ程度に見えますが、
かなりの遠距離を飛べますから!」
ヒナワの方を見ると、
笑顔で頷いていやがる。
ナルホド──信頼できる能力なんだろう。
銃侍:「──ふ、父上の魔力で出来た、
あの小さき炎の不死鳥は、
伝令を成すまでは、決して消えぬ。
アンティ殿たちの配達力には、
もちろん、負けるでござろうが──。
そのように心配せずとも、
届くでござるよ──」
熊神:「──は。さっすが、
神さんを肩車するヤツぁ、
説得力が、あんなァー」
異火:『なんだぁー、このくまー、
やるかぁー!』
──は、こうして見てる分にゃ、
ただの、お子ちゃまにしか、
見えねぇなあァー。
姉乳:「──くま、見て」
熊神:「ん? ぉ────……」
──巨大な、" 球 "だ。
そうとしか、言えねぇ。
異火:『 わっかつきの、
ほしのかたちを、しておるー 』
銃侍:「輪っか、でござるか……」
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Ⅰ Ⅰ
Ⅰ Ⅰ
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Ⅰ ━ Ⅰ
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その、輪っかが、
階段と、繋がっていた。
デケぇ。ほうける。
銅壱:「……大丈夫ですか?」
新火:「……は、ぃ……」
茶火:「これ、見れただけで……、
来た、価値、あるよね……」
進む。
階段が終わり、
バカでかい、"輪"の円盤に着くと。
左右に、人の立像が、
道を作るように、立っている。
白童:「わぁ、すごいや」
それぞれ、7体ずつ……。
14体だ。
女の形で、みな、立礼している。
金娘:「 ── 」
銀娘:「 ── 」
アンティとマイスナは、
まるで、配下に迎えられる、
王と、王妃のように、先に進んだ。
おれは、どうやって、
" 球 "に、入った────……?
熊神:「 すっげ……! 」
姉乳:「 やば……! 」
埋め尽くされる、ステンドグラス。
壁に光る、無数の──宝石。
当然:「こ、このような場所に── 」
封火:「きれー……!」
萌殺:「マジかよ……」
妹乳:「息を呑む、美しさ、とは、
このような、ことですね──」
誰も知らない場所に──、
その、" 大聖堂 "はあった。
魔王:{{ ──ようこそ、皆様方 }}
魔獣:『 がるるぅー♪♪♪ 』
ここは、暗黒の地下のはずなのに、
光が──射している。
──壮観だ。
くまの、クマった語彙力では、
それくらいしか、出ねェ──。
獣王:「 ガ オ オ オ オ ー・・・! 」
白童:「きれいすぎませんか!!!」
まちがいなかった。
魔王:{{ 良かったわね?
どこも、壊れてないわ }}
金娘:「そう、だね」
銀娘:「うん」
ちょっと、気持ちが分かった。
こりゃァ、"聖域"だ。
こんな所、台無しにされたら、
キレるわなぁ。
いや、分かるぜ。
銃侍:「壁の装飾の宝石は、
全て、"時限石"でござるか──……!?」
異火:『 ひえぇー 』
──すべての宝石が光ったのは、
その時だった。
──── カ ッ !!!
妹乳:「 ── ア ン テ ィ ッ !! 」
金娘&銀娘:
「「 ────ッ──……っ!? 」」
── それは、
" 光の束に射抜かれる "。
そういう、感じだった。
──デデン !
Q.しゃべってない妹ちゃんは、
だれでしょおかあああ!●▼≦.*・゜
A.逢火 B.新火
C.蝶火 D.封火
『→→→HAHAHAHAHAHA!!!
→→→FINAL ANSWER???』










