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クマさんと闇の聖域




 おま、まったく。

 クマったことに、なったぜ。


 "暗黒"と呼ぶのに相応(ふさわ)しい空間。

 そこへ続く、"浮遊する階段"を、

 おれ達は、ゾロゾロと降りている──。




          オ オ オ ォ ォ ……


   ━━

    ━━━       ☼

     ━━━━

      ━━━━━

  ☼    ━━━━━━

        ━━━━━━━━

         ━━━━━━━━━━


        ☼





 まったく、広さが分からない、(ブラック)──。


 正直、ブルっちまうぜ。

 ヒトリだったら、

 ぜってーに行かなかったろう……。


 先頭を行く金銀ペアーは、

 さっきから、まるで(しゃべ)らねぇ。 

 

 光源となる、ちびっとの、

 火のランプのような歯車が、

 おれ達の周りを、

 付きまとうように飛び、

 不安げに、行く先を照らしている。


 ヒナワの妹たちも、時たま、

 息を飲むように上を見ようとするが、

 闇は深く、浮く足場を踏み外さないよう、

 慌てて足元を見ることを、繰り返してらぁ。


 静かな空間の中で、騒音エルフだけが、

 まったく空気を読まず、(しゃべ)り続けた。



白童:「──"ラグエル領域"は、

    700年前に、白死王、

    ゼウガ・リレイズが発見した、

    "崩海(ほうかい)"を除いて、

    新規には発見されていません。

    これは、大発見ですよ」


金娘:「……! ……"リレイズ"?」


白童:「どうかしましたか? アンティさん」


金娘:「……いえ」




 (じょう)ちゃん、明らかに機嫌(キゲン)がワリぃ。

 どうしち、まったんだ……。




白童:「"ラグエル領域"は、

    魔素の干渉が、ほぼ皆無の空間だと、

    されています。呼吸はできますから、

    西の最果(さいは)てにある、

    "崩海(ほうかい)"の奥地とは違って、

    風の魔素は、あるのでしょうが……。

    "魔術職(マジナリー)"のマジカさんにとっては、

    地獄みたいな場所でしょうね」


萌殺:「……まぁ、マジ、それな。

    こんな所で魔法をマジ使いまくったら、

    マジ自分から魔力が出るばっかだからよ、

    マジ、すーぐに息切れすんだろーよ……」


白童:「肉体強化系のスキルも、

    かなり弱体化すると言われています。

    近接職も、油断は、できませんね」


獣王:「──ガオオオオオオオオオオオオ

    オオオオオオオオオオオオオオオ

    オオオオオオオオオオ!!!!!」



 急にアホが叫んだので、

 何人かが、飛び上がりそうになった。

 当然、視線が集まる。



熊神:「……言い訳は聞いてやるよ。

    ゴウガのダンナ、なーんで、

    こんな、せめぇ、(ちゅう)に浮く階段の上で、

    おれ達にビックリ・ドッキリ・

    ハウリングを、しかけやがった?」


萌殺:「ま、マジ、ビビらせんなって……。

    ここだと、ウチでもマジ、

    飛べんかもしらんのに……」


銃侍:「はは……」


獣王:「ガオ……」



 会話ログ機能の翻訳を使って聞いてみると、

 どうやら、声の反響で、

 広さを(はか)ろうとしたらしい。

 アホ……やまびこ かよって……。



姉乳:「……確かに、うるさかったけど、

    キレそうな(ほど)ではなかったわ」


妹乳:「そうですわね……。

    まったく反響が、

    ありませんでしたから。

    この暗黒は……恐ろしく、

    広大なのでしょう」



 おっぱい姉妹が言ったとおり、

 ドキリとはしたが、うるささは、

 そこまでだった。

 音を反射する壁が、近くに無いんだ──。


 外で叫んだほうが、

 山やら地面やらに声が反射して、

 もっと、うるさかったはずだ。


 こんなマトモに、

 ラグエル領域に入ったのは初めてだが──、

 やっぱり、一歩、()(はず)せば、

 下が底なしの(ヤミ)だってこたァ、

 マジで、ゾッとするぜぇ……。



熊神:「二度とやるなよ」


獣王:「ガオ……」


白童:「この深度も驚くべきことですが、

    ヤバいのは、人工物があることですね」



 いつもは、もっと、

 うるせぇ代表のユユユが、

 相変わらず、よくダベるのだが、

 めちゃくちゃ、淡々としてやがる。



白童:「この階段も、どうやって浮いてるのか、

    まるで分かりませんよ。

    それに、さっき、歯車の火で、

    少しだけ照らされてましたが、

    横に、大きな柱のような物が、

    ありますね?」



 それは、おれも気づいている。

 光が届かないくらい、ひれぇって、

 怖ぇことなんだな……。



姉乳:「何かのダンジョンの、

    成れの果てなんじゃないの?

    異空間系のヤツで、

    似たようなものを、

    見たことがあるわ」


白童:「着眼点は買いますが、

    ダンジョンは、魔素の再構成を、

    絶えず繰り返す、

    マジック・フィールドですからね──。

    ラグエル領域では、魔素の共鳴活動は、

    基本的には停止します。

    バッド・アンサーでしょうね」


姉乳:「アンタ静かでもハラ立つわねー」


白童:「それほどでも。

    つまり──"コレ"は、

    "人工物"、なんですよ。

    "(まさ)しく"、ね──」



 魔素同士が干渉しないのなら、

 この、下へと続く階段は、

 どうやって空中に固定されているのか。


 ……ふん、重盾職(シールダー)のクマさんには、

 まったく分からねぇ分野だぜ。




 ──金の、足音。



金娘:「……この空間は」



 キィ────────ン──。



金娘:「この空間は、

    (はば)、3メルトルテの階段が、

    ずうっと下まで、

    (ゆる)やかな傾斜(けいしゃ)で続いてる。

    左右には、直径28メルトルテの支柱が、

    等間隔(とうかんかく)に並んでいて、

    その上下の設置点は、

    観測したことがない」


熊神:「直径、28メルの支柱だと……!?」

姉乳:「バカでかいわね……。

    人の手で作れるものなの?」



 魔法を使わず、手作業で作ったとしたら、

 それは神さんか、

 山みてぇな巨人さんの、仕業だろうよ。



当然:「……其方(そなた)たちは、ここへ、

    (おとず)れたことが、あるのだな?」



 ヒナワの親父が、嬢ちゃんたちに聞く。




金娘:「……二度だけ、ね」

銀娘:「この先に、建物があるの」


白童:「それは、驚きだ。

    空いた口が、塞がらない。

    世界中の魔術学者たちが、

    間違いなく、発狂しますよ?」



 ──── キ ィ ン ──……!


 無表情で、クルルカンが振り向く。

 オクセンフェルトも、目が凍っている。

 おっと、っと、っと……──。


 おこだぜ? 騒音?




白童:「……ぼくは探究心は有りますが、

    ロマンは大切にするエルフです」


金娘&銀娘:

「「 …… 」」




 ──くるり。


 絵本の主人公たちは、

 前を向き、また、降り始めた。



白童:「……、ふ、ぅ……」


熊神:「ははは、ユユユの冷や汗なんて、

    珍しいモンが見れたなァ」

姉乳:「──は! そうね、

    お天道様(テントさま)の下なら、

    お酒が進んだわ」


妹乳:「……アンティ。マイスナさん。

    あなた(がた)が怒ってるのは、

    この先にある場所を……、

    毒で、(けが)されたからですか?」


銀娘:「……むぅ」

金娘:「……ノーコメント」


妹乳:「……やれやれ。

    それは、大正解、と言っているような、

    ものですわよ──……?」



 ユユユのヤツは、

 絵本サマ方の威圧をモロに食らったが、

 ヒキハに対しては、少し、

 (じょう)ちゃんたちの"当たり"が、

 (やわ)らかな感じがすんなァ。



銃侍:「……毒は、この下からなので、ござるな?」


金娘:「 ── 」




 この、無限の暗黒から、

 毒は、立ち(のぼ)っていた。


 今は、小さな黄金の歯車の輪っかが、

 闇を恐れず、足元の闇に特攻し、

 あらかた、毒を吸い取ってンだろうが──……。


 ぜったいに原因は、真下(ました)に、ちげぇねぇ。

 んだが、絵本の嬢ちゃんたちは。

 この、(ゆる)やかな階段を、

 ひたすら、ナナメに、

 えっちら、おっちら、(くだ)っている。

 

 この先に建物があるってンなら──。


 ソイツは、この二人にとって、

 "でーじ"な場所で、

 ソコが無事かどうかを、

 確かめてェ、ってトコまでは、

 ──おれにも、分かった。



異火:『ひええー、おっかないのー……!

    ひなわー、おとすなよー……!?』


銃侍:「からから、大丈夫でござるよ。

    ポニテは(ほど)いたでござるから、

    肩車(かたぐるま)の邪魔には、

    ならぬでござろう?」


萌殺:「マジで、おっかねぇ場所だぜ……。

    ヲィ、(ジュー)の神さんよォー?

    おめーがマジもんの神だってんなら、

    ココが、なんで、こんななのか、

    マジで、知ってんじゃねぇのか?」


異火:『われはー、かみのなかではー、

    ひらしゃいんの、ばいとりーだーよー。

    じゃが──ここは、

    " かみが、つくりそこねたばしょ "、

    " まにあわなかった、ばしょ "、

    じゃな── 』


金娘:「……!」

銀娘:「……間に合わなかった、ばしょ?」


異火:『せかいのはじめは、

    とっかんこうじー。

    すておくしごとも、

    あったであろうよー』



陽神:『────!:

    ────:……☼』

金神:『>>>こいつ……』



 実に興味ぶけェ表現だし、

 何だか、おもしれェ言い方だ。



熊神:「ははは、世界の納品まで、

    締め切り、ギリギリだったってか?

    ソイツは、難儀なハナシだぜ」


姉乳:「──くま」



 金と銀から、威圧の雰囲気(シンエル)を感じた。

 オィオィ……。



熊神:「……──嬢ちゃんの回し蹴りを、

    食らうのは、二度とゴメンだ。

    何を言っちまったのか分かんねェが、

    謝るから、許してくれ」


姉乳:「──ハァイ?

    不機嫌な理由は分かんないんだけど、

    ない尻尾を()まれたくないのなら、

    隠し事なんて()めて、

    素顔で暮らしなさいな。

    こっちは何で怒らしたのか、

    チンプンカンプンなのに、

    無言でキレられるのは、迷惑よ──」


金娘:「……! そ、れは……ご、めん……」

銀娘:「……すみ、ません……」



    おっぱい、ファインプレー。

    持つべきは、良いおっぱい、

    良い後輩(どうりょう)だ。



熊神:「先の(タテ)モンを確かめてぇってのは、

    なんとなくだが、伝わってるぜェ。

    ちゃんと、着いて行くからよ?

    ソッチを、先に見ようぜ?

    どうせ、真下のマックラ空間の調査は、

    オメーらのユニークスキルに、

    頼ることになンだ。

    こっちもワリぃとは思ってる……。

    だから、機嫌(キゲン)なおせよ──」


金娘:「──……! す、すみません……」

銀娘:「ごめんなさい……」



 変な謝り方を、されちまったが──。

 どうやら、このカイダンの下ってのは、

 相当に、大切な場所らしィなぁ。

 おれにとっちゃあ、おっかない暗闇だが、

 果たして、なァにが待ち受けて、

 いやがるのか──……?



当然:「ふ、む──恐ろしい広大さよのぅ……。

    不用意に他言する気はないが、

    コレを知れたのは、財産である──。

    う、むむ……しかし、

    本来ならば、王の都には、

    報告せねばならんのじゃが……」


封火:「──父上、ダメですよっ!」

禍火:「──大恩(たいおん)が、ございますでしょう!」



 ぉ、ククク、流石、

 あの奥方さんの娘、と言った所かよ?

 将来、結婚するダンナが、

 尻に敷かれそうなこった……!


 ぁ、そーだ──。



熊神:「──よォ、ギルマスの殿(との)さんよォ?

    例の、赤ニンジャと、

    ラクーンの避難地(ひなんち)には、

    "アレ"で、ちゃんと届くのかよ?」


当然:「む? ──うむ。ワシが使える、

    数少ない"器用な魔法"のひとつじゃ。

    重いものは運べぬが──。

    あの、小さき(カミ)クズなら、

    問題なく飛べようて──」


蝶火(ちょうか):「大丈夫ですよ!

    父上の"伝令鳥"は、ああ見えて、

    (すご)いんです!」

炊火(たいか):「スズメ程度に見えますが、

    かなりの遠距離を飛べますから!」



 ヒナワの方を見ると、

 笑顔で(うなず)いていやがる。

 ナルホド──信頼できる能力なんだろう。



銃侍:「──ふ、父上の魔力で出来た、

    あの小さき炎の不死鳥は、

    伝令を成すまでは、決して消えぬ。

    アンティ殿たちの配達力には、

    もちろん、負けるでござろうが──。

    そのように心配せずとも、

    届くでござるよ──」


熊神:「──は。さっすが、

    神さんを肩車するヤツぁ、

    説得力が、あんなァー」


異火:『なんだぁー、このくまー、

    やるかぁー!』



 ──は、こうして見てる分にゃ、

 ただの、お子ちゃまにしか、

 見えねぇなあァー。



姉乳:「──くま、見て」

熊神:「ん? ぉ────……」




 ──巨大な、" (きゅう) "だ。


 そうとしか、言えねぇ。




異火:『 わっかつきの、

     ほしのかたちを、しておるー 』

銃侍:「輪っか、でござるか……」





       ━━━━━

     /       \

    Ⅰ         Ⅰ

    Ⅰ         Ⅰ

 ━━━━━━━━=━━━━━━━━

    Ⅰ    ━    Ⅰ

     \  ━━━  /

      ━━━━━━━

    ━━━━━━━━━━━━

  ━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 その、輪っかが、

 階段と、繋がっていた。


 デケぇ。ほうける。



銅壱:「……大丈夫ですか?」


新火(にいか):「……は、ぃ……」

茶火(ちゃか):「これ、見れただけで……、

    来た、価値、あるよね……」




 進む。




 階段が終わり、

 バカでかい、"輪"の円盤(えんばん)に着くと。


 左右に、人の立像が、

 道を作るように、立っている。



白童:「わぁ、すごいや」



 それぞれ、7体ずつ……。

 14体だ。


 女の形で、みな、立礼している。



金娘:「 ── 」

銀娘:「 ── 」



 アンティとマイスナは、

 まるで、配下に(むか)えられる、

 王と、王妃のように、先に進んだ。




 おれは、どうやって、


 " (きゅう) "に、入った────……?





熊神:「 すっげ……! 」

姉乳:「 やば……! 」




 埋め尽くされる、ステンドグラス。

 壁に光る、無数の──宝石。




当然:「こ、このような場所に── 」

封火:「きれー……!」


萌殺:「マジかよ……」


妹乳:「息を呑む、美しさ、とは、

    このような、ことですね──」




 誰も知らない場所に──、


 その、" 大聖堂 "はあった。




魔王:{{ ──ようこそ、皆様方 }}

魔獣:『 がるるぅー♪♪♪ 』




 ここは、暗黒の地下のはずなのに、

 光が──射している。


 ──壮観(そうかん)だ。


 くまの、クマった語彙力(ごいりょく)では、

 それくらいしか、出ねェ──。



獣王:「 ガ オ オ オ オ ー・・・! 」

白童:「きれいすぎませんか!!!」



 まちがいなかった。



魔王:{{ 良かったわね?

     どこも、壊れてないわ }}


金娘:「そう、だね」

銀娘:「うん」




 ちょっと、気持ちが分かった。

 こりゃァ、"聖域"だ。

 こんな所、台無しにされたら、

 キレるわなぁ。


 いや、分かるぜ。



銃侍:「(かべ)の装飾の宝石は、

    全て、"時限石"でござるか──……!?」

異火:『 ひえぇー 』





 ──すべての宝石が光ったのは、

   その時だった。





 ──── カ ッ !!!




妹乳:「 ── ア ン テ ィ ッ !! 」




金娘&銀娘:

「「 ────ッ──……っ!? 」」








 ── それは、




 " (ひかり)(たば)()()かれる "。




 そういう、感じだった。








 

──デデン !



Q.しゃべってない妹ちゃんは、

  だれでしょおかあああ!●▼≦.*・゜


 A.逢火   B.新火

 C.蝶火   D.封火



『→→→HAHAHAHAHAHA!!!

 →→→FINAL ANSWER???』


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『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
[良い点] A.逢火 クイズ正解数分だけの挿し絵があっても… [気になる点] お料理(小説)に必要なのは さ とう し お え ごま? だよね(oゝД・)b [一言] あっ、えごまは、ズルいか エ…
[一言] ゴウガのダンナが、アホとか言われて涙っっ 獣の王よ、熊や羊は、食ってもいいぜ~!
[良い点] 年の功なユッ君の真面目な解説。人種経歴詐称疑惑があるから何知ってても不思議じゃないなあ ″つくりそこねた まにあわなかった″って事はアップデートで追加予定だった制作途中の未実装エリア的な場…
2021/10/05 04:18 ズブロッカ
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