三度の身旅
みたびのみたび(*´ω`*)。
会話は最低限に行われた。
魔王:{{ レエンは無事よ。
あのカバが守ってる }}
金娘:「 かば? 」
魔王:{{ たれぽん }}
金娘:「 ! 」
魔王:{{ 湖の上に、バカでかい、
半透明のカバが出現して、
毒を防いでる }}
金娘:「 ……ゼロンツさんも? 」
魔王:{{ 話してきた。
騎士の聖樹の力も使って、
水の流出も防いでいるのよ }}
熊神:「 おま、バカやろう……。
レエンに聖樹があるなら、
大騒ぎになるぞ…… 」
クマが、いらんチャチャを入れた。
魔王:{{ フフフフ……普通の人間には、
ぜったいに行けないから、
大丈夫よ }}
金娘:「 向こう? 手前? 」
このアンティの質問を、
何人が理解しただろうか。
魔王:{{ ──手前よ。
遺跡に大きな亀裂が入って、
毒が噴き出してる }}
金娘:「 災害? 」
魔王:{{ 人為的だったわ。
何かによって、攻撃されてる。
イヤな感じがした }}
金娘:「 すぐに出よう。
ミスター・トウゼンロー?
先ほどの要件は? 」
おちゃらけた雰囲気が掻き消え、
その鋭き金色に畏怖するのは、
領主風情である。
当然:「……── 」
提案を聞いた七姉妹は、仁王の如く立ち、
槍の尻を、大理石の床に突き立てた。
魔王:{{ 間引いては来た。
でも、お勧めはしないわね }}
当然:「 強くなるために、無理は必要なり。
だが、無茶をすることは── 」
封火:「 ──このような程度で後ろに引き、
何が、タネガシの娘ですか!!! 」
禍火:「 ──街への伝令なら、お父上が、
お引き受け、なさりますよう!!! 」
魔王と領主は説得に かかったが、
トウゼンローは、我が娘に、
若き日の妻を見る。
当然:「 し、しかし…… 」
魔王:{{ あら、困りましたわね }}
金娘:「 どの程度やった? 」
魔王:{{ 感じ取れるものは、全て殺してる。
でも、小さく潜んでいるものは、
逃がしているかも }}
金娘:「 プウカちゃん── 」
封火:「 ──……ッ!? 」
金の踏み込み、光のように素早く、
しかし、手加減は成されている。
アンティ・クルルの拳を、
槍で受けた彼女は、
それなりに後ろに跳び、足は使えたが、
その踏ん張りは、震えていた。
アンティは、静かに苦笑し、
プウカは、恥ずかしく、悔しそうである。
ずいぶん、疲れは残っているのだ。
金娘:「 一切の戦闘への参加を禁止する。
見聞のみなら、許容する 」
封火:「 そんな……! 」
金娘:「 私の目を見ろ 」
ご飯を作ってくれた、優しい人とは、
まるで別人である。
いや……思いやりはある。
それは、感じられる。
七姫は、従わぬなら送り返されると悟り、
子供のように、コクンとした。
封火:「 ……、はぃ 」
金娘:「 完全な警護を命じる。
傷ひとつ許さない 」
銅壱:「 ハ ッ 」
金娘:「 私より、前には出るな 」
従者の六人は鎧ごと変容し、
それは忍ぶ形となった。
婦従の面影など、とうに無い。
萌殺:「ヲィヲィ……。マジで、
どこの王様なんだってばよぉ、、、
あんの、義賊ちゃんは、よぉ……?」
頭に回る王冠が、
全く飾りに見えないので、
魔女は、冷や笑いと汗を流す。
異火:『 ぬ、ぬー?
よりしろどのも、
でられるのかー!? 』
異形の銃神、流れを止め。
銃侍:「 依代、殿……? 」
異火:『 ば、ばかなー!?
ひなわ、とめろー!
あの、かたがたを、
まもらねばー!! 』
拙い言葉に、皆、不思議がる。
異火:『 せんじんを、きるなど、
あ、あな、おそろしやー!!
ぬしらは、その、きんとぎんを、
いのちをかけて、
まもらね、ば、ならぬー! 』
言葉はアレだが、
銃の神は、焦っている。
異火:『 ななー! わからぬかー!
この、かたがたは、
" かみの ひきつぎ " を、
するものぞー! 』
金娘:「 ──ッ!! 」
銀娘:「 ──っ!! 」
異火:『 なにを、ねぼけておるー!
しちようは、せかいの、ようそじゃ!
いま、このかた、たちが、
ほろびればー、
ともに、せかいが── んぐっ 』
─────────ォォン──・・・!!
ガンゼルレインの口を塞いだ、
アンティ・クルルと、マイスナ・オクセンの、
その、足音は、聞こえなかった。
熊神:( は え ェ な ・・・!! )
姉乳:( 今のが本気か・・・ )
瞬間移動、と呼ぶに相応しい歩法に、
しかし、驚かない、羊が一人──。
妹乳:「 ……──気になることを、
言い、ましたね…… 」
金娘:「 ……──、…… 」
妹乳:「 アンティ……。あなたは……、
あなたは、いつも誰かを、
守っているけれど──。
本当は……本来ならば、
それは逆で……私たちが、
あなたを── 」
金娘:「 やめて 」
アンティは、踵を返す。
マイスナの仮面が、ガキンと閉じる。
金娘:「 聞かなかったことにして 」
金属音の、足音は深く。
誰もが、何も、言えなくなった。
──。
移動は円滑に行われ、
動く大獣は死滅し、
遺跡の切れ目へと立った。
姉乳:「 長いわね 」
金娘:「 ? 」
姉乳:「 マフラー 」
アンティの首に光る、
無敵の三角板のマフラーは、
遺跡の裂け目から吹き上がる風で、
高く、舞い上がっている。
姉乳:「 なにを、怒ってるの? 」
金娘:「 は……? 怒ってないから 」
姉乳:「 通せるつもり? アンタも! 」
銀娘:「 ……! 」
金娘:「 ……、 」
金銀は、見事に心を見透かされ、
観念は、素直に思いを吐き出させる。
金娘:「 ん……ここには。
想い入れがあって、
こんな風に、地面を裂かれるのは、
実に、腹が立つのよ…… 」
銀娘:「 ゆるさないよ…… 」
姉乳:「 ……そうなの……? 」
妹乳:「 おもいいれ、ですか……? 」
まるで、地割れのような大地の傷を、
ふたりは、憎むように、睨んでいる。
異火:『 なぁー、ひなわよー……。
われは、さっきの、やしきで、
まずった、かなぁー…… 』
銃侍:「 ……ふふ、お気になさらず、
行きましょう、ガンゼル殿 」
萌殺:「 んっだよ、てめーマジ神のくせに、
マジ気に、しすぎだって 」
異火:『 そおかなー…… 』
金娘:「 ……下に、隠された空間がある 」
銀娘:「 いこう 」
上澄みの毒は、無限に食われた。
地割れの中は、恐ろしく暗く──。
義賊と狂銀は、
そこから、難なく階段を見つける。
萌殺:「 つーか、マジくれぇ!
うわ、マジで階段、あるぞ! 」
白童:「 ……これは凄いな 」
毒が取り除かれた暗闇を覗き、
クマが、驚嘆の声を上げる。
熊神:「
おま、信じらんねぇ……!!
" ラグエル領域 "、じゃねえか……!
」
獣王:「 ガオッ……! 」
隣のライオンの獣人の、
毛並みが、ブルっと逆立った。
伝令どうすんねん(*´ω`*)。










