かきだす者 さーしーえー
※タイトルかえました( ^_^ ;)笑
※挿し絵を一枚追加ぁ!
『>>>毒、か……』
後輩ちゃんズと姉妹剣士さんらは、
あのラクーン族の夫婦と再会し、
何やら、嬉しそうに話をしていた。
ええと……ポロくんと、コヨンちゃん、
つったっけ。
すぐに森へ調査に行くべきだが、
後輩ちゃんたちは、
避難地の雑用を、
少しばかり、手伝うようだ。
ま、彼女は食堂の一人娘だからね。
そこいらの有象無象より、
よっぽど炊き出しが、うまいだろう。
ミスリルで形成されたバカでかい鍋には、
味噌と豚肉と野菜が、
遠慮なくブチ込まれている。
他のプレミオムズは、
あの、刀連とかいう組織に、
森の現状を、詳しく聴き込んでいるようだ。
調査の直前に行われる、現状把握。
その僅かに できた時間で。
ぼくは、"毒"について考えていた。
『>>>植物か……はたまた、鉱石、か……』
ぼく達が、イニィさん関連で、
レエンに乗り込んだ時は、
毒の森、なんて存在は
まったく認識した覚えは無い。
生きている時も、こんな現象には、
まるで記憶がなかった。
あそこには、ぼくの生前のねぐらがある。
流石に、毒まみれの場所の近くに、
そんなもんを構えるワケがない。
『>>>天然ガス……? いや……やはり、虫系統の……?』
多分だが。
クラウンちゃんの"分析"を除けば、
ぼくは、"今の世界"の"毒"に、最も詳しい。
滅んだ帝国で英才教育を受けた、
ってのもあるけど、
ぼくは……ああなった後で、
独学で、実践を含めて、
学んでいった経緯がある。
絵本のファンの子ども達も、
クルルカンが、毒のエキスパートだとは、
思うまい──。
『>>>……理想と現実は、ちがうんですよって』
ぼくは、箱庭の中のノートに、
対抗策を、書き殴っていた。
『>>>熱で無効化できるものは、体内に入ってからは、厄介だし……』
カキカキ。
……つーか、これって"ロボットバトル鉛筆"じゃないか。
なっつかし。
こんなもんまでドロップすんのか、
この、箱庭は……。
『>>>……"毒"で右腕パーツを攻撃』
ロボットバトルとは。
『>>>ロボットに"毒"攻撃って……今、考えると、ワケが分からないよな』
〘#……そうでもないぞ? "酸"やら"錆"、などは、無機物構造体にとっても、"毒"となり得るだろう?〙
『>>>……!』
先生が、コップを持って、
ぼくの隣に座る。
〘#……すまんが、お前の分は無い〙
『>>>へへ、お気遣い、どーも』
〘#……知っている知識を、書き出しているのか?〙
『>>>ええ。まぁ……いざって時に、役に立つ事もあるかな、って思って』
〘#……見ても?〙
『>>>どうぞ。ただ、後で纏めたものを配布しますよ?』
先生が、ノートを見る。
〘#……丁寧に纏められている〙
『>>>教師目線では、内申点的に、どうですかね?』
〘#……くっく、名前は、ちゃんと書いておけよ? 返却が厄介になる〙
『>>>はは……そんな時も、ありましたね』
先生との関係は、わりかし良好だ。
変な気を使わない程度には、
距離感は、測れている。
〘#……こんなに、溢れているのだな〙
『>>>え?』
〘#……今の世界にも、このような、"毒"というものが〙
『>>>……そりゃあ、当たり前っすよ。らしくない事、言いますね』
〘#……、そうかもしれん〙
先生に、ノートを返される。
〘#……帝国で、習ったもの以外の要素も、多くあるな〙
『>>>ぼくは結構、勤勉だったんですよ?』
〘#……すまんな。生きるために、やっただろう〙
『>>>……、いや……そういう方向に、逃げただけです』
〘#……そんな事を言うな。私の立場がない〙
先生は、たぶんウーロン茶であろうコップを、
明後日の方向を向いて、
ひと口、飲んだ。
〘#……言う通りだな。前の世界でも、工場の部品の洗浄には毒物を使うし、そもそも、多様な生物がいるのなら、"毒"として成立する物質も増える〙
『>>>……! その、工場……の、件は知りませんでしたが……。そうか……ぼくらにとっては"毒"でも、他の生き物にとっては、そうじゃない場合もあるのか』
〘#……そうだな。さっき、ロボットにとっての毒……というのを言っていたが、つまり、錆、酸、コンピュータ・ウィルスなどは、それに該当するわけだ〙
『>>>なるほど。さっきまでの ぼくには無かった考え方だ』
〘#……私が言うのは、忍びないのだが……"人間だけの毒の対処法"に、縛られすぎるな。もちろんソレが第一優先だが、視野は狭くなっている〙
『>>>すみません、元・暗殺者なもんで』
〘#……カネトキ〙
『>>>ジョークですよ。あんがとうございます、フツーに先生だなーっ、って感じでした。とても納得っす』
〘#……やれやれ。因果なものだな〙
『>>>まぁ……こっち側では、詳しくなっちゃいましたからね』
〘#……〙
『>>>でも、蝶々みたいな毒持ちは、確実に視認されてますからね。先生は、そこら辺の知識、どうすか』
〘#……む、オオカバマダラ、という蝶に毒性があるのは有名だな。幼体の時の食性から、毒物が蓄積しているタイプだ。蛾にも、色々とあるが……〙
『>>>蓄積、か……』
〘#……フグなども、同じ様な原理で毒を体内に溜め込んでいる。生活環境に適応した結果だ〙
『>>>……毒の拡散のせいで、そのような生物も、より、増える可能性がある……』
〘#……"元凶"が、広範囲なら、厄介だぞ〙
『>>>もうすぐ分かります。それに……いざって時も、"やれる"だけのコンディションは、こちらに、ある』
まるごと、焼きはらわなくては、
ならないと、しても────。
〘#……人目は引くだろうがな〙
『>>>今更な気もします』
〘#……く、相違ない〙
『>>>……ソレ、もしかして、ウーロンハイです?』
〘#……ローザが、これだけ残したのだ……まったく〙
ほろ酔いじゃあねぇか。
『>>>……ま、実際に、進んでみるしか、ないか……!』
〘#……しまった。調査の前に、酒を入れるべきでは無かったな……〙
『>>>いや、それこそ、今更ッすよ。ふふ、クビになる学校も無いでしょう?』
〘#……生徒の奥方には怒られそうなものだが? やれやれ……虫の大群に出くわすやもしれん……。"氷"と"電気"で、何処まで対処できるか……〙
『>>>炎もありますが、ヘタしたら環境破壊ですし……生きたまま、"格納"できれば、良いんですが……』
〘#……彼女たちの"嫌悪感"が優先されているという説には、私も賛成だ。"毒"、という成分だけを排除するなら問題ないが、ウネウネと動く虫共を、箱庭に入れたくないという気持ちも、分かる気がする〙
『>>>あとは、NPCの子孫、としての記憶が、邪魔をしてるか……』
〘#……おおいに有り得る。まぁ、このままで良いようにも思う。お前が考えている通り、格納できてしまえば、最大の凶器になるからな〙
『>>>……そうですね』
しまい込んでの"時間停止"なんざ、
前のぼくと、変わんないからな……。
ガキくさい六角形の鉛筆を、
ぼくは、プラプラと手で遊ばせる。
まぁ、いいや。
はじまっちまえば、
自分にできる事を、やりっぱなすだけだ。
ぼくは、ノートを閉じ、
ふぅ、と息をはく────。
〘#……個人的にも、虫が入ってこないのは、喜ばしい〙
『>>>あれっ? まさか……Gとか、ダメな感じっすか?』
〘#……知っているか、カネトキ。昆虫と言うのは、実は宇宙人であるという説があってな?〙
『>>>露骨だなぁ……先生。それ以上、酔わないでくださいよ?』










