福音は凛として さーしーえー
おまたまたまたまた……!<(_ _*)>*.+゜
いやー( ^_^ ;)
こんな忙しなるとは思ってなくて
「ぉ、おちつくんだ……!!」
南の、ナトリの、
これまた、南──。
南第一駐屯地は、
今は臨時の避難地として、
獣人たちにも、開放されている。
野外の木々の中、
少し拓けた土地の平場──。
使い古された、丸太のログハウスが並ぶ広場で、
あまり穏やかとは言えない、
ここ何回目かの、騒ぎが起こっていた。
「おい、今、森は、どうなっているんだぃ……!?」
「私たちの集落は、無事なのですか……!?」
「ま、待て……! 落ち着いてくれ!」
「皆で、押しよせてくるんじゃあない! ぉ、落ち着いて……!!」
アライグマのような獣人たちの集団と、
黒と赤の装束を纏う、武の者たち。
ふたつの色合いが、相対し、
言い合いに なっている。
争っている訳では無い。が、それは、
平和な雰囲気とは、とても言えぬ、
ピリッとしたものだ。
ラクーンの里の民の不安は、
もはや、限界に近かったのである──。
「森の中に……! 調査には、行っていらっしゃるのだろう……! 我ら、ラクーンの里は、どうなっているんだ!?」
「おしえてくれよぅー! 1000年も前から続く、オイラたちの故郷なんだよぅーッ!!」
ガヤガヤと、皆で詰め寄る、
"レエンへの守り手"、ラクーン族。
遥か昔、アライグマの魔物から派生した、
1000年の歴史を持つ、太古の獣人。
かつては、アライ族と呼ばれた、
古き都の終焉を、伝え行く者──。
「こ、こら……! 押すのは、やめないか……!!」
──相対する、
武装束の人族の集団は。
ナトリ直属の私兵部隊・" 刀連 "の、
第一師団のメンツであった──。
「──わ、わかっている……! 故郷に思い入れがあるのは、もちろんっ、わかっているから……!!」
「正直に言うと、まだ我々も……"毒"が侵食してきている度合いは、掴みきれていない所が、あるんだよ……ッ!」
勇ましき者たちの頬には、冷や汗──。
着込むは、まるで、
忍者のような出で立ちである。
その黒の上に、
色濃い、赤の装甲を、
所々、部分的に纏っている。
──" 半武半忍 "。
軽技職でありながら、
それなりの"防"も兼ね備えた、
特殊な鎧を、身につける者たち。
そろいの赤い額当てと共に現れる、
ナトリ屈指の、精鋭部隊である。
だが────、、?
「ひ、ひとまず家の中に入り、落ち着いてくれ・・・!」
「──これが、落ち着いていられないよぅ・・・!」
「──今にも、故郷が毒まみれに、なっちまってるかも、しれないじゃないかぁ!」
突然の"毒の霧"に侵されつつある森からの、
ラクーン族の避難の誘導に、
尽力した、"刀連"、
第一師団だったが。
駆け、攻め、守る、は速くも、
獣人たちの不安を宥める技は、
まだまだ、未熟だったようである。
小柄な、ラクーン族の若者たちは、
必死な表情で、刀連の者に、
食ってかかる──……!
「……そりゃ、"今回"は……大勢で、助けに来てくれたんだ……! 感謝は、しているんだよぅ……! けど……森の様子は見に行くな、って言うなら、向こうが、どうなってるかくらい、調べて、教えてくれても、いいじゃないかぁー!」
「そうよぉ! せっかく、夏のお祭りも終わって、秋の祭の準備にも、取りかかろうとしてたのに……!」
たじろぐ、数名の刀連たちは、
ただただ、手で制そうとするしかあるまい。
「わ、わかる! 気持ちは、わかるが……さっきも言っただろう……! かなりの濃霧で、毒の吸引が、どれくらいの近さで影響してくるのかが、未知数なのだ……!」
「単体でも、集団でも、前へ出た者が全滅する可能性がある! これは、トウゼンロー様が出した結論だ! 今しばらくは、耐えてくれ……!!」
それは確かに真摯な心から来る言葉だったが、
感情は──時には、理性に勝ち得る。
「耐えろ、って……! その間に、毒が、どんどん迫ってきたら、どうするのさぁ……!?」
「解決に、なっていないじゃない……!」
「──ふぅ、、。今日は、また、一段と、ひどいな……」
「そうですね。まぁ、彼らの気持ちも、よく分かります」
言葉の投げ合いが絶えない現場の、
少し、離れた所で──。
ふたりの"刀連"の男が、
やれやれ、と溜め息を、
つきたくも、なるだろう。
「あそこの団員に、助け舟を出しますか?」
「うーむ……いや、少し待とう」
「よろしいので?」
「やれやれ……。今、行っても、火に油、だろうからな」
「ビビってんですか?」
「おまえが行くか?」
「さて……獣人の好物は、どこにあるかな?」
「やれやれ……」
ひとりは、丸太を真っ二つにしただけの、
シンプルな椅子に腰掛けた、
ガッシリとした男。
もう一人の、少し細マッチョの男は、
そばに仕えるように、立っている。
そろいの額当ては、刀連の証──。
「しっかし、これまた……困りましたねぇ。けったいな事だと、思いませんか、団長。本来は外周警備に特化した我らが……このような、クレーム対応を押し付けられるとは」
「うぅむ……。だが、彼らの言い分、察するに余りある。さぞかし、不安だろう。誰かが、話を聞いてやらねば……」
「それはまぁ……、そうですけれど」
──リキヤ・トウシン。
───ヤマメ・ナツバラ。
困ったツラで、会話する、
第一師団のトップ、壱と、弐──。
師団長クラスといえど、
他の"刀連"の者たちと、
さほど変わらぬ装備を、身にしている。
黒き、シノビ・インナー。
肩や腰を覆う、
濃い赤の、重ねの鎧。
強いて言えば、額当ての柄が、
少しばかりだけ、豪華だろうか。
後ろ腰には、
シンプルな魔法刀のみが、
横一文字に備えられるのみ。
副師団長、ヤマメが言う──。
「街の、すぐそばで……厄介なことに、なったものです」
「もはや、他人事ではない」
「……。このままでは……ナトリまで、届く、と……?」
「ありえぬ、などと、言い切ることは、できんさ」
森の奥の"紫"は、
もはや、先が見えないほどであった。
見たものは、思う。
まるで、敵軍のようである、と。
攻め、入られているのだ。
──師団長は、言った。
「うしろを、見ろ」
「……ナトリ」
「もう、3ケルガ……メルトルテしか、離れておらぬ」
「……」
「まずい」
「わかって、います……」
あの、ゆっくりと進む、パープルの霧が。
何処まで、忍び寄って、来ているのか。
つい先日までは、かなり、遠い場所だったが……。
その濃厚な猛毒ゆえに、
「 ──油断、大敗 」と、
ナトリの長、トウゼンローは、
第一師団にでさえ、突出した調査を、
控えるよう通達していたのである。
師団長には、葛藤が生まれていた。
「……脅威の度合いを正確に掴み、人命を尊ぶ長は、まっことの頂なり。しかし……、この様な時にこそ、前に出向き、身を顧みず、何か……少しでも理を掴むが……我らが勤めではないのか……?」
──シノビとて。
想う武のココロが、
燃えておらぬ、訳では無い。
「無念だ……! このような……。"刀連"の、名が泣こうぞ……」
「師団長……。それには、心から同意いたします。でも、その前に……ヤバいですよ」
「む?」
「──あちら。言い争いの域を、超えてきています」
リキヤ・トウシンが見ると、
ラクーン族の若いのの何人かが、
対応する刀連の数名に、
掴みかかっている。
リキヤ達以外にも遠巻きに見ていた団員も、
「あちゃー……」といった表情で、
怒声に眉を潜ませていた。
「いかんな……」
「あれ、暴動、一歩手前ですよ」
「……」
「ほら……補給の食料が不足気味で、少しずつ、配給を少なくしてるでしょう。そういう所から、ラクーンたちにも、不安が広がってるんですよ」
「やれやれ……」
ラクーン族の避難は、
全員、終わっているが、
その人数の物資は、バカに出来ない物となる。
"長期戦"を見込んでの、"節約"だったが──。
「致し方、ないか──」
リキヤは一秒、悩み、
決意する。
「今まで、せっかく耐えてきたのだ。大きな声は、出したくなかったのだがな」
「師団長は、たいへんですね。ガンバ、リキヤパイセン!」
「おまえな……ちっ、しかたねぇーや」
やれやれ、すくり、と、
リキヤは立ち──、、。
──── きぃぃいんん──────・・・!
「──……!?」
──音を、耳にした。
「む……?」
ずいぶんと、凛とした音に、
皆が、同じほうへと、振り向く。
「なんだ?」
「ぁ……! だ、誰か……きた」
リキヤは食料の追加補給を、
ナトリに嘆願するつもりだったが、
近さに甘え、まだ遣いは出していない。
ナトリの方角から近寄る人影は、
複数のようだ。
誰、だろうか──……?
──────それは、一陣の砂風の後、
はっきりと、見えはじめた。
「まさか……」
──獅子。
──鎧熊。
──剣士の双子。
──童顔のエルフ。
──寸胴の魔女。
────そして、炎の若君。
「──"至高"……!」
おったまげた、という言葉が、正しい。
「そろって、いるのか……!」
数日前のトウゼンローは、
確実に、身内で事を成すつもりだった。
なのに、伝説持ちの冒険者たちが、
まるで、示し合わせたかのように、
列をなして、こちらに近づくのである。
「若様……!! 負傷されたと、話が出ておったが……!!」
「なんと、凛々しゅう……!!」
「う、うそだろ……!? アレ、"ゴウガリオン"だぜ……!?」
「あの、頭の後ろに手をやってる エルフって、まさか……"ユユユ・ミラーエイド"か……!?」
あまりの有名人の勢揃いに、
"刀連"部隊の者たちも、
その目を、疑うほどである。
「助けに、来てくだすった、か……!!」
感激するリキヤ・トウシンの横で、
ラクーンたちも、ざわついている・・・!!
「あぁ……! あれ……!」
「ああ、オシハさんと、ヒキハさんだ……!!」
「おふたりで、来てくれたのか……!?」
「すごい!! ぼくらでも知ってる、至高の冒険者たちだ……!!」
びっくりする者。
ポカンとする者
嬉々と、する者。
多様な表情の中、確かに近づいてくる、希望。
いやに格好のよい砂風が、晴れ。
────そして、何人かが、気づく。
「……ん? あれ、は──?」
そのふたりは、、、小柄故に、
見えなかった。
いままで、は──────。
「 ──…… 」
リキヤは、不思議な印象を得た。
立ち位置、だ。
あれほどの、
生きる英霊とさえ、
呼ぶべきメンツの。
その少女たちは、
ド真ん中に、位置していたのである。
( 恐れ知らずな……あの界隈の、長を気取るか )
リキヤは皮肉ではなく、
純粋な心配から、
このように思った。
力ある者の、まんなかを、
ブッタ切って歩くなど……、
至高たちに、目を付けられやしないか、と。
んでもって、目が──、
────衝撃に、追いつき始める。
「……ッ、ヨロイ──……!」
光るヨロイだ。
いや、太陽だ。
乱反射するソレは、高貴な色である。
「 "金"と──"銀"? 」
── き・ぎぃい──────・・・ん!
マヒしていた感覚が、
やっと、足音を、捉える。
「……団長、あれは……?」
「……」
仮面をつけた、二色の、輝きの乙女たち。
小柄なはずの、ふたりの少女は、
何故か、他の至高たちより、はやい。
少しだけ前に、出。
とくに、黄金は、
もっとも、こちらに届き来る──。
金色のカミが、
われらに、ちかづく────。
「……!? なんだ……?」
ヤマメの声で、リキヤは、振り向く。
「「「「「「「 ──── 」」」」」」」
「「「「「「「 ──── 」」」」」」」
「「「「「「「 ──── 」」」」」」」
「「「「「「「 ──── 」」」」」」」
「「「「「「「 ──── 」」」」」」」
「「「「「「「 ──── 」」」」」」」
「「「「「「「 ──── 」」」」」」」
「・・・!?」
リキヤの驚きは、一番であった。
全てのラクーンの民が、
立礼していたのである。
あれほどの騒ぎは夢のように。
静かに、等しく頭をさげていて。
不思議なのは、
どの、"至高"に、でもなく────。
── きぃぃい──────……ん、ん、ん !
それは、黄金を向いているように、
思えて ならない。
( な、ぜ……──? )
リキヤは、ゆっくりと振り返り、
すぐ目の前まで来た、
金のヨロイ乙女を、見る。
「よっ、よしなさい……!
なぁーにを、やっとんのじゃー!!!//////」
ぷんすか、ぷ──ん!!
義賊は、赤面した。
(๑•̀ㅂ•́)و✧










