共闘せんかい
『────分析完了。』
目の前に、分析結果が表示される。
「"レッドハイオーク"……ユニーク認定?」
「な……わかるのですか?」
つい読み上げた内容に、女剣士のヒキハさんがのっかる。
「え、ええ……多分そう」
「……あの」
「はい?」
「……そろそろ降ろしていただける?」
「ぁあ!」
ずっと抱えたままだったわ。
えらいこっちゃ。
よいしょと。
「ブゴオォ……」
あんだよ、お前も何か用かよ。
あ……ハンマー?
受け止めてるね。
…………。
今、左手で受けているので、
右手でハンマーを殴ってみる事にする。
────ガチャん。
おお!
ナックルガードおりた!
クラウンがやってくれたのかな?
どれ……"変態印"の力、確かめてやる。
「とりゃ」
────ガゴオオオオオオン!!!
「ブッゴオオオオオオ!!?」
ガンッ!
バキャ!
ゴッ!
ドッドド……!
ズゥン……!
ゴシャッ!
ガラガラ……ゴン!
「「「………………」」」
…………。
レッドハイオークが、指差す。
こっち見る。
……うん。
そうだね。
バラバラだね。
──思わず頷いたわ。
右のナックルを見る。
ヒキハさんも覗き込む。
傷ひとつない。
炎が、ユラユラ反射している。
……今度、アブノさん問い詰めよう。
「…………」
「…………」
「…………ブゴ」
うーん、"力量加圧"?
これだよな……。
決められた量のパワーを増やすんじゃなくて、
"加えた力に比例して、力を加圧する"んだよな……。
…………。
力入れる。加圧する。
その力に、加圧する。
その力に、加圧する。
その力に、加圧する。
……かな。
ハンマーを、殴って、
拳から離れるまでに、
そういう事が、起こったのでは。
仮説。
最後、"スカッ"ってしたのよ……
いみわかんなぃ……。
そして、その力に耐えるナックルガード……。
私、知らないうちに、超、危険人物になってんじゃね?
「…………」
「…………」
「フゴ……」
……お覚悟。
きゅううううううん……!
ト──────────ン……!
紅大豚さんの上空より、お届けしています。
「! フゴ! ブゴゴゴゴゴゴゴッ……!!」
いや……そんな、「ムリムリムリムリッ……!!」みたいな反応されても……。
────ガちゃん。
「せ────のぉ……」
────アンティぃぃい、ぱぁぁあああんち!!!
「ブゴギュゥゥゥゥゥゥウッッ!!!」
どがあああああああああん────……!!
────キン。
着地して、振り返ると……
レッドハイオークさん、
頭から地面に突き刺さってました。
……あれ、地面内に、ちゃんと頭あるかな……。
「…………」
「…………」
空気、重いなぁ。
ボォォー。
ボッボッ。
夜に、小さな炎って、綺麗だよね。
地面、でかい豚が刺さってるから、
今は、なんか儀式みたいだけどね。
ガチャ……。
ん?
何の音だ……?
あ……ヒキハさん、しゃがみこんでる。
なんか顔ふさいでる。
なんでやねん……どないしてん。
「…………はい」
ヒキハさん、顔を膝に埋めたまま、片手をあげました。
なによ……学校みたいに。
私が先生ですか?
「……はい、ヒキハさん」
「…………」
顔を持ち上げたヒキハさんは、涙目でした。
「……私、生きて帰れるのですか?」
「……はぁ?」
何を、おっしゃっておられるの?
「……あなた、本当に何者なんです? こんな馬鹿げた腕力、聞いたことも見たこともありません……」
「……それが、なんであなたの生存率に関わるのよ……」
「いやだって、あなた賊ですよね? さっき言ったでしょう。私、そういうのを見逃せない立場なのですよ……」
いや、うん……確かに世界で一二を争うほど有名な賊のカッコをしてるけどね……?
「私とあなたが戦う事は、もう確定です。最初は可愛いらしい声で油断していましたが、あなたは恐らく、私より格上でしょう……格上すぎます……」
「いや、あの……」
「ああ……剣に生きた人生でしたが、こんな所で散るとは……せめて恋愛してみたかったです……」
勝手にせぃや。
いきなり人を、死神みたいに言わないでくださる?
「あああ、こんな可愛らしい娘にやられてしまうなんて……」
「だれがやるか!」
ズガン。
……あ、思わずチョップしてしまったわ。
「ひっッ! ……? あまり痛くないですね……?」
「……とりあえず、落ち着いてください……私は冒険者です」
「!! ええっ! 冒険者なのですかっ!! そっ……」
ヒキハさんは言葉を飲み込んだが、だいたい何言おうとしたかは、わかる。
────"その格好で?" でしょ?










