当然着席
ちと多忙ふにゃふにゃ中です……!( ºωº ;)
短めごめぬ!
本来、ナトリの領主たるトウゼンローが、
ギルドマスターなんざやっているのは何故か?
──簡単である。
彼は老いゆく自分が、
畳の上でダラダラと腐るのを、
良しと、しなかったのである。
叩き上げだ。
妻とは違い、良い血筋でもない。
情熱を以て刃を振るい、
幾ばくかの冒険を認められ、
惚れた女が、たまたまイイトコのお嬢さんで、
城なんざ与えられたのだ。
カッコイイ? 冗談じゃねぇ。
家は、家だ。
そこが、大事なのでは無い。
家族が好きだ。
街も好きだ。
大事なモンは、ここから生まれた。
だが、年食って、
カガミモチみてぇなハラんなって、
城で くたばるのは、性分じゃねえ。
「 当然、労ずるが如し 」
それが──トウゼンローという男だ。
息子がふたり、娘が虹の数ほど出来ても、
そこらへんの所は、変わらない。
バカだと言え。
護り抜いて、死にたかった。
だからこそ、今回の件は、ムカついている。
彼の手が届く所で、
彼の愛が、穢されたからだ。
( 長たる身にて、なんと宣う…… )
ムナクソが悪い。理屈ではない。
何のために、力落ちる中、
この場所で、立っているのか。
サムライのプライドは燃えていたが、
先行きの見えぬ葛藤もあった。
( ……倅の腕が、、、分からぬッ──……!! )
──どのようにし、治せば良いのか。
幼き息子へ与えられた、火神の慈悲の腕。
わからぬ……何を信用すれば良い?
自分がバカであり、
そのことを、知っていたのだ。
( 出しゃばるワシの、意味があろうか── )
言いようのない、悔しさを感じていた。
では、誰に頼れと、、、?
いや、しかし──。
驚くことに、悩んだのだ。
そして、力を借りれぬ拙さを思う。
歳を食ったのだと、
トウゼンローは自覚した。
考えなしのバカ侍と、
経験を積んだ老いぼれの思慮が、
鍔迫り合いを続けたのである。
( 救う方法が、わからぬ・・・。
思うより……長く、生きたというに──…… )
無力を、感じていた。
自らの手で救ってやりたい父の、
果たして、それは──、
侍の、怒りであったか────……?
──悶々とする己の心を、
とある一喝が、祓い清める────……!
だ ま っ て 、
そ こ で 、
み て ろ ! ! !
「────・・・っつ!!」
豪胆、也・・・!
入室したトウゼンローは、
息子の両の腕に まとわりつく女子たちに、
余裕無き、憤怒の思いを沸かしていた。
弱みに付け込む売女とさえ、思ったほどである。
それほどに、ささくれた精神に、
まるでそれは、冷水を頭からブチ撒けるかのような、
妙な清々しさを、トウゼンローに与えたのである。
( む……、── )
────。
彼は瞬間、外の青空を並々と意識し、
死にかけのセミたちの、気合の入る最期の愛歌を、
強く、受け入れた。
( ……、── )
ふと、感じたのだった。
それは、たぶん、
森を駆ける、若かりし自分では、
分からぬ、事だ────。
( 何かが、、、動いたのだ ── )
このような女子たちに、
喝など入れられる稀有さもあったが。
何故かトウゼンローは、結納の朝に見た、
空飛ぶ二匹の機織雀を思い出していた。
不思議な、憑物がおちるような、
そのような午後である。
陰より久しく、
中道の心となったトウゼンローは、
深呼吸など思い出し、その眼となって、
その二人を、見貫くのである──。
( ぅ、む……。先の啖呵の切り方は、かえって、邪な者ではない……。だが、如何に……? )
揃いの道着まとった金銀の髪は、
淡き光を以て、意志を持つように動き、
素直に面妖である。
一度、落ち着きを戻したトウゼンローに、
隣に座するハイ姫が、
垂れる袖をつまみ、言う──。
「 ──トウゼンローよ……。
任せて、よいようじゃ ── 」
「 ──! ……む、──…… 」
改めて見ると、
娘七姫、思いつめた表情で、こちらを見返す。
だが、その瞳には。
ここ数日には無い、燃ゆる何かが宿る。
( ほぅ…… )
ヒナワを見ると、
表は、澄ました顔をして、
眼差しは、熱を得ていた。
苦笑を、浮かべているのだ。
自分に似ず、色男である。
( あのように任し、あの表情とは、、、── )
そばの、謎の女子たちは、
こちらをガンと無視し、
神秘の絡繰と、組み合っている───。
────、一応、殿様なのだがな?
( ──く、く。畏敬の欠片すら、皆無 ── )
口髭が、少し、縒れる──。
陽の傾きは、ひし型の光となりて、
自らの足を食い、畳に促すのみ。
・・・・・ ザ ──・・。
「 ……! 」
「 父上、、──…… 」
意に介されぬ、妙な愉悦を以て、
トウゼンローは、家列に座したのである。










