表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
957/1216

当然着席

ちと多忙ふにゃふにゃ中です……!( ºωº ;)

短めごめぬ!





 本来、ナトリの領主たるトウゼンローが、

 ギルドマスターなんざやっているのは何故(なにゆえ)か?


 ──簡単である。


 彼は老いゆく自分が、

 (たたみ)の上でダラダラと腐るのを、

 良しと、しなかったのである。


 叩き上げだ。

 妻とは違い、良い血筋(ちすじ)でもない。


 情熱を(もっ)(やいば)を振るい、

 (いく)ばくかの冒険を認められ、

 惚れた女が、たまたまイイトコのお嬢さんで、

 (しろ)なんざ与えられたのだ。


 カッコイイ? 冗談じゃねぇ。

 家は、家だ。

 そこが、大事なのでは無い。


 家族が好きだ。

 街も好きだ。

 大事なモンは、ここから生まれた。


 だが、年食って、

 カガミモチみてぇなハラんなって、

 城で くたばるのは、性分じゃねえ。



「 当然、(ろう)ずるが(ごと)し 」



 それが──トウゼンローという男だ。



 息子がふたり、娘が虹の数ほど出来ても、

 そこらへんの所は、変わらない。

 バカだと言え。

 護り抜いて、死にたかった。


 だからこそ、今回の件は、ムカついている。

 彼の手が届く所で、

 彼の愛が、(けが)されたからだ。



( (おさ)たる身にて、なんと(のたま)う…… )



 ムナクソが悪い。理屈ではない。

 何のために、力落ちる中、

 この場所(ナトリ)で、立っているのか。


 サムライのプライドは燃えていたが、

 先行きの見えぬ葛藤(かっとう)もあった。



( ……(せがれ)の腕が、、、分からぬッ──……!! )



 ──どのようにし、治せば良いのか。


 幼き息子へ与えられた、火神(ひしん)の慈悲の腕。

 わからぬ……何を信用すれば良い?


 自分がバカであり、

 そのことを、知っていたのだ。



( 出しゃばるワシの、意味があろうか── )



 言いようのない、悔しさを感じていた。

 では、誰に頼れと、、、?

 いや、しかし──。


 驚くことに、悩んだのだ。

 そして、力を借りれぬ(つたな)さを思う。


 歳を食ったのだと、

 トウゼンローは自覚した。


 考えなしのバカ(ザムライ)と、

 経験を積んだ老いぼれの思慮(しりょ)が、

 鍔迫(つばぜ)()いを続けたのである。



( 救う方法が、わからぬ・・・。

  思うより……長く、生きたというに──…… )



 無力を、感じていた。


 自らの手で救ってやりたい父の、

 果たして、それは──、


 (サムライ)の、怒りであったか────……?





 ──悶々(もんもん)とする(おのれ)の心を、


 とある一喝が、(はら)(きよ)める────……!








   だ  ま  っ  て  、


    そ  こ  で  、


     み  て  ろ  ! ! ! 








「────・・・っつ!!」






 豪胆(ごうたん)(なり)・・・!


 入室したトウゼンローは、

 息子の両の腕に まとわりつく女子(おなご)たちに、

 余裕(よゆう)無き、憤怒(ふんど)の思いを()かしていた。

 弱みに付け込む売女(ばいた)とさえ、思ったほどである。


 それほどに、ささくれた精神(こころ)に、

 まるでそれは、冷水を頭からブチ撒けるかのような、

 妙な清々しさを、トウゼンローに与えたのである。



( む……、── )




 ────。


 彼は瞬間、外の青空(あおぞら)並々(なみなみ)と意識し、

 死にかけのセミたちの、気合の入る最期の愛歌(あいか)を、

 強く、受け入れた。




( ……、── )




 ふと、感じたのだった。


 それは、たぶん、

 森を駆ける、若かりし自分(サムライ)では、


 分からぬ、事だ────。




( 何かが、、、動いたのだ ── )



 このような女子(おなご)たちに、

 (カツ)など入れられる稀有(けう)さもあったが。


 何故かトウゼンローは、結納(ゆいのう)の朝に見た、

 空飛ぶ二匹の機織雀(スズメ)を思い出していた。


 不思議な、憑物(つきもの)がおちるような、

 そのような午後である。


 陰より(ひさ)しく、

 中道(ちゅうどう)の心となったトウゼンローは、

 深呼吸など思い出し、その(まなこ)となって、

 その二人を、見貫(みつらぬ)くのである──。



( ぅ、む……。(さき)啖呵(たんか)の切り方は、かえって、(よこしま)な者ではない……。だが、如何(いか)に……? )



 (そろ)いの道着(どうぎ)まとった金銀(きんぎん)の髪は、

 (あわ)き光を(もっ)て、意志を持つように動き、

 素直に面妖(めんよう)である。


 一度(ひとたび)、落ち着きを戻したトウゼンローに、

 (となり)()するハイ姫が、

 ()れる(そで)をつまみ、言う──。



「 ──トウゼンローよ……。

  任せて、よいようじゃ ── 」

「 ──! ……む、──……  」



 改めて見ると、

 娘七姫、思いつめた表情で、こちらを見返す。

 だが、その瞳には。

 ここ数日には無い、()ゆる何かが宿(やど)る。



( ほぅ…… )



 ヒナワを見ると、

 (おもて)は、()ました顔をして、

 眼差(まなざ)しは、熱を得ていた。

 苦笑を、浮かべているのだ。


 自分に似ず、色男である。



( あのように任し、あの表情とは、、、── )



 そばの、謎の女子たちは、

 こちらをガンと無視し、

 神秘の絡繰(カラクリ)と、組み合っている───。



 ────、一応、殿様なのだがな?






( ──く、く。畏敬(いけい)欠片(カケラ)すら、皆無 ──  )




 口髭(くちひげ)が、少し、()れる──。






 陽の傾きは、ひし型の光となりて、


 自らの足を食い、(たたみ)(うなが)すのみ。

 






 ・・・・・ ザ ──・・。





「 ……! 」

「 父上、、──…… 」






 ()(かい)されぬ、妙な愉悦(ゆえつ)(もっ)て、



 トウゼンローは、家列(かれつ)()したのである。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
[良い点] >──とある一喝が、祓い清める────……! >殿姫アンマイ「 だ ま っ て 、           そ こ で 、           み て ろ !!! 」 ……せっ、せめて口の…
2021/07/01 19:50 電悩過敏症
[良い点] こうして若武者は姫様と結婚して末永く~みたいな冒険譚があってから熱血親バカ殿様になってたのか。真面ならメッチャええ人やん 視野狭窄でマジカが忘れられてるー。⬇この辺にマジカ。みたいに視界か…
2021/06/30 05:49 ズブロッカ
[一言] 尊主反逆花ペアと殿様なら、国側でもペア優先しそう そんな位の二人なのである
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ