アンティのサイコロ
※2話前に挿し絵を追加。
今日はキテレツアッサリ味。
私がギャンブルが嫌いな理由は、
実は、ふたつある。
ひとつは、お金ってのは、
汗水たらして稼ぐ、ってのが、
父さんと母さんの教えで、
それが、好きだからだ。
でも、もうひとつの理由は、
実は、ちょっと怖かったりする。
10歳のころに、門番のおっちゃんから、
サイコロ、という物の存在を知った。
小さな四角の石に六面、
1から6まで、
数字の窪みが掘ってあるのだ。
食堂の机で、おわんの中に。
おっちゃんは、小さな、小さな、
3つのサイコロを、
チンチロリン、と転がしていた。
それを見た母さんが、珍しく、怒った。
もちろん、可愛らしくだけれど。
後で知ったんだけど、あれは、
簡単な賭け事で、
よくやる行為なんだそうだ。
もちろん、おっちゃんは、
お金なんて賭けていなくて、
手遊びだったんだけど、
すまんすまん、と言いながら、
後で、こっそり、
私にサイコロをくれた。
私は、数とかの目は兎も角、
おわんの中で、"チンチロリン"と鳴る、
その音が綺麗で、部屋でひとり、
こそっとサイコロで遊んでいた。
家では昔から陶器の食器も使っていたし、
磨かれた石のサイコロは、
とても良い音で転げ回る。
なるほど、数字がランダムで出る。
これで大人も、子供も遊べるんだ。
賭け事は、薄らぐ怖さがあるけど、
このサイコロ自体が悪い物には見えない。
私は数字を当てる遊びを思いつき、
ふくく、と変な笑いをしながら、
自分の机の上の器に、
サイコロを3つ、投げる。
チンチロリン。
⚂
⚁
⚁
「もういっかい」
チンチロリン。
⚄
⚀
⚀
「もういっかい」
チンチロリン。
⚃
⚁
⚀
「もういっかい」
チンチロリン。
⚀ ⚂
⚂
ななしか、でない。
「……?」
2個で、やってみる。
チンチロリン。
⚂
⚃
チンチロリン。
⚅
⚀
チンチロリン。
⚄
⚁
「……そういうふうに、できてるのかな?」
私は、いっこで、やってみた。
コロロン。
⚀
コロロン。
⚀
コロロン。
⚀
コロロン。
⚀
……タァン……!! カッカッカッ、……。
⚀
っ、カラカラ、コロコロロン……。
⚀
「……」
ふと、そばに置いていたサイコロ2つを見る。
⚃
⚁
最後に、みっつで、やってみた。
チンチロリン。
⚀
⚀ ⚀
「……」
カッ、カランカラン、コロコロ……。
⚀
⚀ ⚀
その日は、怖くて眠った。
次の日に、母さんにサイコロを渡し、
おっちゃんに返しておいてほしいと頼む。
その前に、母さんに振ってもらうと、
当然、バラバラの数字になった。
ユータたちと、スゴロクをやる時も、
自分では、サイコロを振らない。
うまく、やらせる。
あれは、なんだったんだろうか?
「……めっちゃ、思い出したわー」
「……? どうしたの?」
屋根の上で。
槍持った、
ポニーテールの巫女さん、七人に囲まれ。
なぜか私は、
あのサイコロのことを、
やたら、思い起こしていた。










