一兎を追うは、トドメなき。さーしーえー
挿し絵は昔の目次絵です。
『────ゴールド・フレーム:
────脚部インパクター:
────ギアチェンジ:トルク5☼』
〘------シルバー・フレーム;
------姿勢制御システマ;
------フローアウト──☪︎.*・゜〙
〘『 ── ジャンピング / スペル ── 』〙
──きゅぅううういいいんんん・・・──!
──ギリリリリリ・・・!!
────ガチャん!!
私とマイスナの体内に埋没している、
"憑依型・機械縁組素体"だけれど、
結局は、まだ以前のバージョンのまま、
運用している。
体内で誤作動でもして、実体化すりゃ、
そりゃー、危険なんだろーけんども。
現状装備のように、
筋肉内蔵型の外装を全て取り払ってる時には、
体内で強制的に身体を動かせるフレーム媒体は、
緊急時において、画期的だ。
ほれ、こんなふぅに─ ─ ─。
「ホシは」
『────見つけました☼
────六時方向:距離:300──☼』
ふん。
手間かけさせやがって。
景色は、軽やかに流れている。
もちろん、からだンなかに、
幽霊のロボットが入っていなければ、
いくら学校で追いかけっこクイーンだった私でも、
こんな爆速で走れやしない。
いくら地面を蹴っても上半身は怖いほどブレず、
つまり、爆走する神官さんが二人、
疾風の如く、目的地に向かっていた。
「前より摩擦熱が減ってるんじゃないの?」
『────バージョンは変わりませんが:
────あなた達の限界温度は:
────正反対に推移します☼
────空間接続で相殺し合うのは:
────定石ですよ☼』
『>>>龍のヨロイを着てない事もある。
>>>筋力は落ちるが、余計な重量や、
>>>駆動部の摩擦は減るんだ。
>>>無駄なチカラが無い』
殺し合う、発熱と冷却。
やれやれ。
私たちにゃ、お似合いってこった──。
「はだかで走った方が、フレームのチカラは使いやすいのかもね。マイスナ、寒くない?」
「だいじょうぶ。アンティの温かさを感じる」
「きひひ、例えでも何でもないから、むずがゆいわ。おわ! 居たな、アレだろ」
「なんだか、モクモクしてるね」
爆心地に辿り着くと、
確実に、空から何かが高速で落下したかのような、
ものっそい茶色の砂煙が、
ゴーストの親玉のように、風に彷徨っている。
粒子は、落下しているようだ。
「制動しろ!」
『────レディ☼』
クラウンとローザが、
私たちの体内のフレームを操り、
ガガガ、と両足でブレーキをかける。
──ジャが・ゴ、、パキ……。
靴底から露出していた、
歯車と鎖で形成されたスパイクが、
収納されたため、少し目線がダウンする。
「どこや、あのボケ」
『────透過映像を:網膜に転写します☼』
『>>>無事だろう。寝ぼけてて、打ち上げロケットになっただけさ。は、月には行けなかったようだけどね?』
「バカ……。あのウサタマ野郎は、私があのヨロイ使って全力で地面に投げつけても、無傷なのよ。落下地点にヒトがいたらどうすんの」
『────この星に初めて落ちた:
────隕石になるやも:
────しれませんよ☼』
『>>>そいつは、アブない……地面がお月様になっちまう』
クレーターはラビット型には、
なっていないみたい。
でも、すごい衝撃だったろーな。
まだ舞っているんだ、時間は経っていないはず。
『────新規の対象を感知しました☼』
くそったれ。
煙が捌けていくと、
人影と白玉のシルエットが目視できた。
怪我がなければ、いいんだけど。
「よしよし♪」
「にょき?」
小さな女の子が、弾丸ラビットを撫でていた。
ずいぶん可愛らしい。
変な形の杖を持っている。
私とマイスナが近づくと、
女の子は、ハッとした表情を見せた。
「……あっ!? えっ……!」
「にょんにょん!」
にょんにょん! じゃねぇわ、バカたれ……。
心配させやがって。
女の子に向き直る。
「も……も! もしか、して……神官、さん、ですか……!?」
ちがう、とは言えないわなぁ……。
「え、えぇ……そうね。ごめんなさい、そのラビット、私たちの連れ合いなの」
「そっ、そうなのですか! おっ、お空から、落ちてきましたっ!」
はっはは……、めんたま、まん丸にしてるわねぇ。
『────軽微ですが:
────損傷していますね……☼』
まじかぁ、てか、損傷て、アンタ。
『────す:すみません☼
────オペレーションの後は……:
────悪いクセですね☼』
いや、まずはケガだ。
クラウンが詳細を視界にマークしてくれた。
……この子、ずいぶんなローブを着てるわね。
「ごめんなさい、やっぱり、ケガしちゃったようね……。ビックリしたでしょう」
「こ、これは! その、驚いて、少し、ころんだ、だけで……!」
「いいから、見せなさい?」
この子は、私たちの服が神官のモンだって、
わかってんだな……妙な緊張を与えてしもとる。
何にせよ、ウチのシラタマが負わせたキズだ。
怪我を放置する選択肢など無い。
ローザ?
〘------直撃せんで;よかったのんなぁ……☆〙
まっっっ、たくだ……。
私が手をかざすと、
杖の女の子の、擦りむいた所から、
双葉のような、
聖なる翼が現出する。
小さいが、正真正銘、
"精霊王の癒し、ってヤツだ──。
── パ ァ ァ ア ァ …… ──
「す、すごい……!」
仄かに輝く白翼たちに、
杖っ子ちゃんは、感動していたようだった。
擦り傷ごとき、
未来永劫、跡すら残りはしないでしょーや。
「は、初めてみました! 神官さまの、いやしのちから……!」
「ん? は、は……そうね? いたい所は、もうない?」
「はい……! すごい、キレイでした……!」
はは……酒と雨と、スライムの汁で、
形成されているとは、思うまい……。
「ごめんなさい、する」
「にょきっと、にょんやぁ……」
マイスナに抱えられ、
ショボンとした うさ丸が、
おミミを垂れながら、謝っている。
まっ……なんだかんだ、優しいウサギさんだ。
ちびっと、とはいえ、
女の子をケガさせた罪悪感は、
正しく感じていることでしょう。
「か、かわいい……! 丸ぅい!」
「にょ、にょっきり……」
きゃっきゃ、もっと言ってやれ。
「──くゆぅ!」
「わっ!」
カバンから上半身を飛び出させたカンクルが、
再び、杖っ子ちゃんを驚かす。
「くゆ! くゆ、くゆ!」
「にょんにょん……」
何やら、説教をしているようだ。
「わ、わ! わんちゃんですか!」
「キツネだよ」
「──くゆっ……!?」
マイスナが、ねじ曲がった真実を教え、
しかし笑顔は華やいだ。
「は、はじめて近くで、魔物をみました……わぁ、耳に花が咲いてる。この子たちは……神官さんたちの、従獣なんですか……?」
マイスナと、神官帽ごしに目線を交わしたが、
どする?
ま、まぁ、いいよね……。
というアイコンタクト後に、
「そ、そうなるかな?」
と、言ったのだが────。
「ぐすん……」
「「 ──……っ!? 」」
な、なぜ、そこで泣くの!?
さっぱり、わからなぁあああああい!
「にょんやぁ!?」
「くゆぅー……??」
「い、いきなり、どうしたの!?」
「まだ、いたいトコ、ある?」
慌てる私たちに、杖っ子ちゃんは言う。
「──……トドメは、トドメは、
ダメダメなのです……うっ、うっ──」
杖を抱きしめて泣き始める女の子に、
私たちは、ドギマギするのだった。
『────む……外傷は:
────もう無いようですが……☼』
「ど、どうしたの……お姉ちゃんたちが、
聞ぃたげられる、コトかな……??」
「うぇ〜〜っ」
(;ω;)oh……










