へんそうって何ですか?
久しぶりに勢いで書きました(笑)
「こちらです」
ナトリの外周出張所に着くと、
いきなり馴染みの受付嬢さんが、
密やかなピリつきと共に、
私たちを誘導した。
木組みの、正方形の扉は、
そんなに身長が高くない私たちでも、
屈まなければいけないほどだ。
まさに、裏口……ってやつだろう。
ギルドの職員さんしか、
使うことのないルートだと思う。
王冠と、二ツ角が、
擦らないように、気を払う。
「天が低くて、すみません……お気をつけて」
確か……チホちゃんと言ったはずだ。
前に、オニギリを差し入れた時は、
ほがらかな、プリティ笑顔だったはず。
赤と白の、和風の出で立ち。
小さな受付嬢さんの後ろに、
マイスナと一緒に続く。
たまたま人が少ない時間に着いたんだけど、
通された通路は、さらに人がいなかった。
「すみません……隠れるように」
奥の部屋に着き、謝罪される。
「若様からは、鳩が飛んでおります」
「くるっぽー!」
どうやらナトリでの商売ガタキは、
この部屋にいる鳥のようだった。
木製の檻にいる数の割には、
とても静かなものね。
「状況は……あまり芳しくありません」
ちょ……、ちょ、ちょ、ちょ──。
なんだ、この深刻な雰囲気は。
「そんなに、ヘヴィな気持ちで来ていないんだけど……?」
「ヒナワさん、そんなに、まずいんですか?」
「完全に軟禁状態、となっております。トウゼンロー様も、近隣に助けを呼ぶ気配は、微塵もございません」
トウゼンロー……という人が、
この街のギルドマスターで、
ヒナワくんの お父さんみたいね。
「しかし、驚きました……。恐らく、貴女様方が、最も早くに着くと、若様からの文には認められておりましたが……」
どうやら、チホちゃんが、
ヒナワくんからの、
ハトぽっぽレターを受け取ったのは、
昨日の夜らしい。
「髪が短くなっただけで、なぁんで、お城に閉じ込められんの? つまり……実家に、なんでしょ?」
「助けを募集しないのも、意味が……わかりません」
ヒナワくんが、予想より遥かに、
身分が高そうなことにも、
少し、辟易してんだけど……。
「お詳しくは、お聞きになっておられないのですね……。若様は、肩口に毒傷を負ったのです」
「ひどいの?」
「完治はしていないのですか?」
「奥方様が、可愛い若様の傷を、放っておくはずも、ございません。高価な治療薬を、出し惜しみするはずも、これまた、ございません故」
「わっかんないわねぇ……。そりゃ、完治したのは良かったけどさ?」
「それって、やっぱり髪が短くなっただけですよね?」
「トウゼンロー様とハイ姫様は、なんだかんだ、若を溺愛しておられます故……。髪が肩までの長さともなり、もし、あのお美しい顔が、毒で爛れたやも知れぬ、などと、お考えにもなると……」
「うっわぁ……。ママさん、過保護、こじらせちゃった……?」
「気持ちは分かります。私もアンティの顔が怪我したら、トテモ暴レマス」
「妹君も、ハイ姫様と徒党を組んで、すっかり若を取り囲んでおりまして……あれは逃がす気がございませぬ」
「ちょ、ちょっと待ちぃさ……」
「ヒナワくん、囲まれるほどの妹さん、
いるんですか……?」
「全員が、母君であるハイ姫様から槍を仕込まれた、最も厄介な、親衛た……槍兵でございます」
ブラコン……、……こじれてんのか……?
ちょっ! けっきょく、
人数、言ってないわよ……!?
「トウゼンロー様も、" うおぉぉおおおおーっ!!! 倅に毒なんぞ喰らわす怪異はァァアアッ、必ずやぁああッ!!! タネガシの名の元にィイイあ!!! 討ち取ってくれるわぁぁああッッいいい!!!!! " ──みたいな感じでして……」
「ぅん……。チホちゃんが思ってるより、すっごいビックリしたからね、私たち」
「ホコリ云々、プライド云々ですか。そのモノマネは、似ていますか」
「外周出張所で、一番、トウゼンロー様のモノマネが上手いのは、私でございます」
たいへん、厄介そうだわ……。
「マジカちゃんが、説得をトライしてるって、聞いたんだけど……?」
「話にならないとも聞きましたが」
「お足だけではあらず、お耳もお早い。今言った、妹君の槍使い部隊に、文字通り、門前払いされております」
「妹、平均年齢、何歳なのよ……槍とか持たせるんじゃないわよ……」
「ギルマスさんは、そんなに自分たちだけで、解決したいんですか……?」
「かなり、意固地になっておられますね……。その……息子のカタキは、ワシがとる! みたいな……?」
あほくさ……。
おカッパでピンピン、
してらっしゃるでしょうに……。
とりあえず、お土産を渡しとこっか。
「これ、今回の配達。お納めください。サインはココね?」
「ひと箱に解毒薬が1000本、あわせて2000本です。すこし少ないかもですが……」
「わぁ……! これは……"青"の解毒薬、ですか……! 感謝に、堪えません、ね……。我がギルドでは、量が心許ない所だったのでございます」
チホちゃんは、
いきなり出た木箱にビックリすることなく、
ただただ、感謝を述べる。
外周専属っぽいし、
私たちのマジックにゃ、
ま、もう慣れとらぁな。
「ヒゲイドさんが持たせてくれたけど、公式じゃないから、ポケットに入れといてね?」
「しーっ、だよ?」
「……。ウワサなど、アテにならないものですね……。ヒゲイド様には、厚く御礼をお伝えください。特A級の解毒薬を、こんなに……」
「そ、そんなにすごいもんだった?」
「よくわからん」
「希釈すれば、この10倍の人数には、行き渡ります故」
そりゃッ、すっごい……!
ま、ヒゲイドさんは、
ヒゲイドさんだからねっ。
きひひっ……♪
「で? ココに通されたってことは、私たちが来たこと……トウゼンロー様、にバレたら、ヤバい感じ?」
「追い出されますか?」
「大変、お恥ずかしながら……。叩き出される様なことにも、なりかねないかと……」
めめめ、めんどくさぁーい!!!
「私たち、外周組のギルドスタッフは、アンティ様方の偉業を身に染みて知っておりますが……」
「それは大袈裟じゃね……?」
「アンティは偉大だ」
「あの量と速度は、イミが、わかりません。ただ……新参者のプレミオムズ、という切り口ですと……」
「──はッ。ニューフェイスが、お家の問題に、手ぇ出すな、っつーコトかしら……?」
「キレそう」
「まことに、おはずかしながら……///」
チホちゃんが悪いワケじゃねーし。
しっかし、まいったわねぇー……。
お母様とシスターズ(物理武装)は、
大好きお兄ちゃんを、しっかりガード。
お父さんは、息子を傷つけられて、
わからん敵? に、キレている、と……。
「おなか、いたくなってきたわ……」
「シャバダバだもんね」
「しゃばだば……?」
ごっラ、マイスナ。
女の子が、んなコト言うんじゃ、
あーりません。
今回は……ガッチリ、タイミング、
被っちゃったモンなぁ……。
ちくせぅ、他のメンツが揃うまで、
休憩がてら、
海鮮丼の お店でも、
見てまわろうと思ってたのにぃぃぃ……!
「あ、あの……シャバダバ、とは……?」
「うん。マタが──ぶへっ」
二代目オクセンフェルトの後頭部を、
叩いておいたが、
時すでに遅し、チホちゃんには、
正しく意味が届いてしまったみたい。
「す……/// すみませんっ……/// その……体調が、わるい時に……///」
ほぉぅれ、みぃさ。
赤面しとるやないのぉ。
ヒトのマタ事情を、シャバダバとか言ーなし。
「あっ、あの……/// ギルドから支給されているモノを……横流しくらいは、できます、が……///」
「はっはは……。お気持ちだけ、受け取っておくわ……。生理用品を、ギルドからパクったとか、曲がりなりの義賊としても、ハズかしいので、やめときたい」
「べつに無くてもいいよ──ギュムっ」
チホちゃんを、
これ以上、混乱せしめる前に、
我が嫁の口を押さえつける。
バカタレがー!!!
見ろっ! 純粋な受付嬢が、
なぞなぞを出された、
タコ焼きのよーじゃないのおぉ!
「///……? ///……ん??」
「こ、コホン……! で──? 私たち、どうやって、ナトリの街に入ればいいの?」
「ぎゅむー」
「──はっ、はい! そうでしたっ! ぁ、あの……たいへん、申し上げにくいのですが……」
うわー。
ヤーな、予感、しますっわー……。
「アンティさんとマイスナさんの風貌は……その……ぁの……ぉ、主に……私共の口コミによって……け、けっこう、街内にも知れ渡っておりまして……」
【悲報】私と嫁、バッチバチに噂になっていた
「そ……そのまま、その……お美しい鎧にて出向かれると……恐らく、30分ほどで、駆けつけられるかと……」
ちょ、何がやねん……。
こっわぁあぁ……。
「その、恐れながら……。その仮面と、鎧……。脱ぐことは、叶いますでしょう、か……?」
「「 ……、…… 」」
それは……マズい。
いくら、ぷるぷるチホちゃんの頼みでも、
ちょっと……聞けない。
「……! ……、……やはり、不可能ですよね……。すみません……。お二人がワケありっぽいというのは、何となく、ウワサになっておりまして……」
「ちょっ、ソレ、……かんなり、気になるんデスけど?」
「どの方面のウワサですか」
「ぃ、いえいえいえ……っ!/// それは、とてもとても、私のクチからは……///」
まさか……敵味方でヤリまくってんの、
バレちゃあ、いないでしょーねぇぇぇ。
「しかし……困りましたね。このままでは、槍に……」
だから、こわいってぇぇえええ……!!!
ブラコン・シスターランス部隊……。
見たら、震えあがる自信がある……。
んでも、確かに困った、な……。
よーするに……プレミオムズって、
バレにゃいよーに。
オシ姉とか、ヒキ姉たちが来るまで……、
ナトリの街の何処かで、
──" 潜伏 "しなきゃー、
いけないワケだ。
「仮面は……取れないし、な……」
「アンティ、アンティ!」
──んっ?
マイスナに、肩を指で、キンギンされる。
なんや? いいアイディア、あんのけ。
耳を、寄せる。
「ゴニョにょ、ゴにょニョ、ごにょ──」
「ぅん、ふん──。ぉ……なるほどぉ!」
「── ふ ぅ っ ── 」
「──ひゃッ……っ!?///」
ぉッ……!
ご、ご、ごら、ふざけんなよ……ッ。
なんで最後、息、吹きかけた。
押し倒すぞ キサマ。
「ドンと恋……っ♪ えへへ♪」
「はぁ……/// ったく……。まッ、それしか、なさそーねぇ。少なくとも……このヨロイよりは、マシだろーし──」
「? ??」
ったく、やれやれ──。
このカッコーが、変装だってのに……。
それを、さらに変装するって、
なんだってーの。
幸い、この部屋には、
私たちと、チホちゃんと、
ハトぽっぽと、丸い革のカバンしかない。
ま、えぇやろ。
「チホちゃん、ちょっと着替えるわよ?」
「誰か入ってこないか、見ててください」
「──えっ……!? よ、よろしいのですかっ……!?」
きしし……!
マイスナと、イタズラっ子のように。
シンメトリーに、ひとさし指を立てる──。
「「 仮面は、
とって あげないけどねっ♪♪ 」」
『────生体装甲:
────解除します☼』
──ぎゃぉおおおおおんんん・・・!!
──くぅぉおおおおおんんん・・・!!
────ガチャ、コン・・・!!
──────バシュ・・・!!!!!
────ばさぁ・・・!
「おっ……/// おふたりとも……ッ、、、
お綺麗で……ございまし……っ♡//////」
ほら、アレだ。チホちゃんの挿し絵は
たれぱぅわ溜まったら描くから(*´ω`*)ほげー










