それはそう。後編
まきだまき(*´꒳`*)。.*・゜
『──や、やだなーっ▽
──そんなコワイ顔▽
──しないでちょーだいよぉー◎▽◎;』
この時の私は、
結構、おこっていたのだと思う。
自分らが、やってしまった事で。
あーんな、デッカイ魔物が、
また、復活してしまうかもしれないのだ……!
それなのに、冗談まじりで、
勘、とか……言われても、さ──?
『──あ、ありっ……?▽
──もしかして……ガチおこ?▽
──ガチおこ、プンプン丸な感じ……?◎▽◎;』
「 ……つーん! 」
それは、そうでしょおおおおおお!
煮っ転がされた人参を、
ひとつまみ、口の中に、放り込むっ!
「──んくっ……! あァーんな魔物が復活した原因が! 自分かもしれないのにっ! そぉーんな冗談ッ、笑えないです……っっ!」
──キッパリと、言ってやった!
くちを、とんがらせ、そっぽを向く。
アップルさん……!
お調子者ってのは、
空気、読めないと、
きらわれちゃうんだかんねっ……!?
ちょっと真面目に怒っている私を見て、
流石のアップル・メイップルも、
多少は滅入っぷるになったみたい。
返ってきたのは、ずいぶんと静かな同意。
『──それは……そう、よなぁ……◎_◎』
……ぁによ。
いきなり、しおらしくなっても……。
「言語修復」が、実はキケンな行為、
だってんなら、私は……。
『──ふむぅ……◎-◎』
「……」
……。
『──わ、わるかったよぉ……▽
──ごめんってば、アンティちゃんよぉー……▽』
チラリと、片目だけ開けて、見る。
『──勘、って言ったけどな……▽
──確証は、何個か、あんだよぅー▽』
「 ……? 」
あんだソレ、と思いながら、
話には、耳を傾ける。
すると──。
──ス、チャ──。
『──ん▽』
「 えっ 」
……メガネを、渡された。
ジャム瓶の底のような、
見事な、ガリ勉メガネだ。
アゴのジェスチャーで、
かけてみろ、と促された。
「……! ……私、目は、いいほうですよ?」
『──は、だろーな▽』
アップルさんは、もう、
ペンも、インクも、手に持っていなかった。
「……」
不思議には思ったけど、
仰せのとおり、
ビン底メガネを、かける。
──不思議な、光景だった。
「……──!!」
『──簡易VR出力が可能なデバイスになってる▽
──立体的に見えっだろ?▽』
ス、すご……っ!?
メガネの中に、違う風景が見えるっ……!
ここは何処だろう! きょ、
" 教会 "……??
『──何が見えるよ?▽』
さっきまでの、おちゃらけた雰囲気は消え。
落ち着いたアップルさんの声は、
別人みたいに聞こえる。
「……。ふ……るい、教会、に……神官、さんが……いっぱい」
みんな……跪いてる。
「その、中心に……、……──」
──!
この、人、って……!
「白い羽根だらけの……女の人?」
『──1000年以上前の▽
──地上の、オリジナル・ヒューガの記録さ▽』
「 ──・・・ッッ 」
こ……、これ、っが……。
昔の、ローザ・・・!?
「この、立体、映像っ……そのっ!?」
『──大きな植物さえ、そばに在れば▽
──私は観測できる、ってったな?▽』
「 ── 」
瞬時に、理解する。
これは……本当に、大昔に……、
あった場面なのね……!?
『──3D画像記録に強いんだ▽
──音声データは……聖樹レベルに▽
──ならないと、ムズいけどよ……▽
──よーするに、"風景を復元する"のが▽
──得意だってことさ▽』
「すっげ……」
流石に、視界の中の人物たちは、
喋りかけてはこなかった。
だが、すごい。
まるで、動き出しそうだ。
『──よく、ヒューガを見てみな▽』
これが……オリジナルの、ヒューガさん……。
真っ白の服で……羽根、まみれだ。
いや、ホントに……。
全身から……。
「まるで……翼に、侵食されてるみたい……」
異常に、白い、肌。
よく知る、顔の形と、くせっ毛。
頬からも、服からも、
純白の翼が、生えまくっている。
『──そだな……▽
──その後、"しろいふた"ってのに▽
──されちまうんだろ?▽
──詳しいことは、アタシも分かんねーけどよ▽』
……!
そ、うか……。
これから、ヒューガさんは……、
レエンコオトで……。
『──ぁー……しんみりしてっとこ▽
──わりぃけどさ……▽
──アタシが見て欲しい所は、手元!▽』
「 てもと? 」
翼に蹂躙された、
月の女神を見る。
あっ……拡大倍率が、かえられるのね。
彼女の手元が、アップになった。
「ぁ……アナライズ、カードの……はぐるま?」
『──たぶん、" じかん箱 "って呼ばれる▽
──デバイスを譲渡している場面だと思う▽』
「──……!」
──わたしはビン底メガネを取り、
アップルさんに、
なんて言っていいか、わからないまま、
視線を向ける。
『──"じかん箱"のデバイスを▽
──進化NPCたちに渡して▽
──全世界に量産させたのは▽
──ヒューガだ▽』
「……、……」
『──間違いねぇよ▽
──世界でイチバン慕われてる神さんの由来さ▽』
精霊王の、御業の、瞬間──。
考えたら、すっごいことよ……。
アレを……、この世にひろめた人が、
いま、すぐソコのBARで、酒飲んでんの……?
『──なんで、そんな事をしたと思うよ?▽』
「 ? 」
『──不思議だろ?▽
──なんで、こんなデジタル時計みたいな▽
──ファンタジーにケンカ売るようなモンを▽
──教会に、ぶんばら撒かせた?▽』
「……? じ、……"じかん"に、煩かったから……?」
『──うぇっへっへっへっへ……!▽』
少し、ムッとする。
『──ぁ……いや、ワリィ▽
──今のベロンベロンのアイツを知ってと、な▽』
「……二日酔いの常習犯ですからね」
『──アンちゃんの答え、あながち外れてはいねぇ▽』
「……どゆこと?」
『──なぁ、おかしいと思わねぇか?▽
──つい、こないだまで▽
──"時間の単位"は、おかしかったんだぜ?▽』
「???」
『──ゆで卵の茹でる時間は?▽』
「7分20秒」
『──即答・乙っっ◎▽◎
──15歳になるまで、失敗したことある?▽』
「……それって」
『──時間の"単位"がバグってたのに▽
──何故か……時間の"概念"はバグってねぇ▽』
「……! 本来なら……"ジカ"とか、"フヌ"は、正確な時間を狂わせてしまってたはず……ってこと?」
『──多分に、憶測も入ってっけどな?▽』
……BL漫画の原稿の前で、
話す内容じゃないわよ……。
『──前のヒューガは、それをマズイと思ったんだろ▽
──だから、無理やり時間を表示するデバイスを▽
──NPCに与えた▽』
「じゃ、じゃあ……」
『──みんなが時間が分からないってんなら▽
──みんなに時計をあげりゃあいいよな?▽』
「……。大衆認識による、概念の固定化……」
『──なん?▽』
何故か、変な言葉が自分から出て驚いた。
「ご、ごめんなさい……! 私の知識、もう、色んなのが混ざっていて」
『──いや……言ってるこたぁ、核心をついてら▽
──"時空間の応急処置"って、言い換えてもいい▽』
「……」
『──安定はしたけど、負荷は大きくなった▽
──アタシは、そーゆー事だと思ってる▽』
「……茹で卵が美味しいのは、あの飲んだくれスライムのおかげ、ってこと?」
『──うぇっへっへ……!(((◎▽◎)))』
アップルさんは陽気に笑った後、
スっ──と、真剣な顔になった。
『──もし、私の仮説どおり▽
──"じかん箱"が、"時の応急処置"だったとして▽』
「……はい」
『──でも、もう、"時間"は▽
──正常化したと見ていいよな?▽』
「そう、なのかな……?」
『──ああ▽
──じゃなきゃ、でっかいカニさんは▽
──起動してねぇ▽』
「むっ……」
『──た、頼むから、怒らずに続きを聞いて……!▽
──時間の修復を担う必要が▽
──無くなった" じかん箱 "は▽
──つまり──もう、"時計"じゃなくていいよな?▽』
「 !? ぇ、えと……? 」
『──何か、デバイスに変化が▽
──起きてると思うンだよ▽
──だって……もう、時を刻まなくても▽
──いーんだから▽』
「……それは……"言語修復"の、端末として……?」
『──だから、そーれを調べて欲しいんだってば▽』
「……」
『──何か、大きな変化が起きているなら▽
──絶対に、価値がある▽
──その……カニさんのことは▽
──すまねぇと思うけどよぉ……▽』
「……。あれの術式に触れるのって、いちお、今の世界じゃ犯罪ですからね?」
『──頼みますよぅ、義賊さまぁ◎▽◎』
「……はぁ。なんてこったぃ……」
知恵の林檎は、
色々な禁忌を、そそのかしてくるみたいだ。
ぅ、うーん……!
メガネを、アップルさんに返す。
『──ん▽
── 一度触れた" じかん箱 "にゃ▽
──" わーぷどらいぶ "で跳躍できんだろ?▽
──ひと目のない設置箇所とか▽
──心当たり、ねーか?▽』
「あのねぇ……。……今、パッと思いつく、一番ひと目の少ない"じかん箱"は、王城の中のなんですよ……」
『──あっ、はー……!◎▽◎;
──さいですかぁ……▽』
「さいですか、じゃ、ないですよぉ……!」
食堂娘にとっちゃ、
かなり良心にくるモンダイだかんね……!?
「い、いちおう気にして、おきますけどねぇ……!? 私だって、なんだかんだ、事勿れ主義なトコロも──」
「アンティ、アンティ」
──おわぅっ……!?
知らん間に、マイスナが後ろに立ってた……!
「ぉ、おはよう。起きたんだね」
『──ちょりあーす♪◎▽◎』
ちょりあす……?
「なに食べてたのー」
「ぁ、これは……」
「むーっ」
ど、ドゾドゾ……。
この世のものかも、分からないシロモノですが……。
「あ、それより、アンティ、気づいてる?」
「へ?」
「なんか、つーしんが来てるみたいだよ」
マイスナの言葉に、
刹那、呆気に取られる。
「……つーしん?」
「プレミオム・アーツ」
「……!」
首元を、確認する。
「アンティ、起きなきゃ」
「……! まさか、プレミオムズの、誰かから?」
『──まだ、お昼過ぎだろ▽
──そんな、慌てなくていいっしょ▽』
「でも、緊急の呼び出しとか……!?」
やべっ、起きるのって、どうするんだっけ!?
『──待ちな▽
──こっちで見れるようにしてやったから▽』
「えっ」
アップルさんの手元に、
一瞬だけ、光のキーボードが見えた気がした。
──PON・・・!
「ぁ……! ど、ども」
さ、さすがぁ……。
マイスナが、そばまで寄ってくる。
「見れるー?」
「……! ヒナワさんからだわ!」
なんだろな……。
全く心当たりが にゃい……。
また、プレミオムズ集会のお知らせ、とか……?
ドキドキしながら、私はメッセージを開けた。










