ヒゲイドさんの昔のやらかし 上
ちと短し。(/ω\).*・゜
「正直、スマンかったとは思っている」
「……ふぁ?」
「冊子への、記載のことですか?」
執務室のソファで項垂れていると、
ピザを食べつつのヒゲイドさんに謝られた。
「もちろん、お前たちの心労には察しがついたのだが、一応、ギルドマスターズの一人なのでな……。規則を遵守しているかどうか、仲間同士で見張り合っているきらいがあるのだ」
美味しそうにピザのワンカットを食べながら、
先ほどとは打って変わって、
ヒゲイドさんは、とても落ち着いている。
「ほおぅ、これは美味いな! 金は?」
「……いらないっす」
「みかじめ料だー!」
「アンティ。この呑気な銀の姫に、よく言葉の意味を教えておけ」
あ、はは……。
……。
まぁ、そりゃそうだ。
私も、さっきまでは取り乱したけど、
けっこう頭が冷えてきてる。
"至高の冒険者"、なんて人材の情報は、
ギルドの正式な書類などに、
記載されて然るべきだ。
「なぜ、新しいメンバーが載っていないんだ?」
なーんてイチャモンつけられたら、
色々そこからポタタづる式に、
探られてしまう、かもしんない。
さっきのテンションのまま、
私はギルド執務室のソファに、
横向きに寝転んでいた。
左右の肘当てに、それぞれ、
頭と両足を放り出している感じだ……。
実に、お行儀がワルい、ったらないが、
ちょうどいい、大きさなんだよなぁ……。
ギルドマスターの前でする態度としては、
非常に失礼、極まりないけれど──、、。
「ふ。朝からピザなどと、初めてやもしれん」
なんだかんだヒゲイドさんは、
気にしていないようだったので。
それに甘えて私は、天井を見上げながら、
惚けた感じで、質問した。
「……やっぱり、ギルドマスターって、そゆぅの、厳しいんすよね?」
「ん? まぁそうだな。色んな冒険者どもに規律を生むためには、まず自分が率先せねばならん」
「……」
「くっく。お前たちに関しては、色々とイレギュラーだがな?」
……それ、私らの立場からだと、
どう反応していっか、わかんないすから。
「もぐもぐ、、、ごくん。ふむ。ギルドの長たる者が規律を守るなんぞ当たり前の事だが、他のギルドマスターの中にも……特に、ソレにうるさいヤツがいてなぁ。おぃ、これ、ぜんぶ食べていいのか?」
ジェスチャーで、ドゾ、と、手で表してから、
疑問を上乗せする。
「そなんですね……誰だろ。会ったことある人かな?」
「まさか、リビっち??」
「ふむ……お前たちが、"兼任聖女"と仲良くなるとは、予想外だったなぁ……。アレは有能だが、まだ経験は足りんのだろう。最近まではブレイクのジィさんが口煩かったが、マイスナの件を見ると、やっと歳相応の情が生まれやがったようだし……クックック」
流石、自分のギルマスの師匠。
仲、いいんだろうなぁ。
うーん、ブレイクさんかぁ。
厳しそうな、おじいちゃんだったけど、
マイスナの件は、確実にあの人が、
揉み消してくれてんだよなぁ……。
あんまりルールに厳しいイメージは無いし、
悪い印象は、まるで無い。
ヒゲイドさんは、モグモグやりながら、
続けた。
「ナトリのギルドマスターは、ただの熱血バカだ。
問題は……" 王都のギルドマスター "なのだ」
「え?」
「おうとかー」
南のナトリと、まんなか王都。
この二つの街のギルマスには、
まだ、会ったことがない。
熱血バカ、ってのも気になったけど……。
ヒゲイドさんが警戒してる、
"王都のギルドマスター"ってのに、
ずいぶんと、興味を引かれた。
「ヤバいんすか」
「ヤバい。彼女は戦闘は、まるで出来ないようだが……保有している情報量と部下の質は、異常なものだ」
「──! 女のひとなんですね!」
「とし、なんさい?」
「む? ゃ……確か、20代後半だとは思ったが……」
へー! それは知らなかった!!
しっかし、王都のギルマスかぁ。
お仕事、なんか大変そぉー……。
「あれは、俺や、お前たちの天敵になり得る。用心しろよ?」
「え"っ」
「どゆことですか?」
「アレに情報を掴まれたら、この国では、終わりなのだ……。王都ギルドの執務室の椅子に座りながら、全ての街の問題を解決すると言われている」
「な、なによ、それ……」
「さっぱりわからん」
「全ての街に、彼女の部下の目があるという噂もあってな……まったく、油断すると、えらい目にあいそうだ! 関わると、ロクなことにならんに決まっている……まったく恐ろしい!」
ぉおぅ……ヒゲイドさんにしては、
えらく辛辣だなぁー。
なんとなく、会ったこともない、
ギルマス・レディのフォローをする。
「そ、そこまで言わなくても……あはは」
「レディに恐ろしいとか言っちゃだめ!」
「むっ、だってなぁ……俺より大きな女かもしれんのだぞ?」
「「 へっ? 」」
どゆこと???
「王都の、ソルデ・ゴーツィン、という女ギルドマスターは、巨人系統の血筋なのだ……」
「「 ええっ!? 」」
そ、それって……!!
王都のギルマスさんも、デッカいってことですか!!!
「し、しんちょう、3メルトルテの、女の人……?」
「ビッグおんなさん」
「それに俺は、あっちからは嫌われているだろうしなぁ……たぶん、鬼みたいな顔してるんだぜ!」
「いやいや! さすがに──」
──流石に、それは言い過ぎでしょ!
……って、アレ? まって……。
" たぶん "、って──。
……、んんっ??
マイスナが、私の疑問を代弁する。
「ヒゲイドさんって、王都のビッグおんなさんと、会ったことがないんですか?」
「ぉ、おんなさんて、アンタ……」
ヒゲイドさんは、
実にバツの悪そうな顔をしている。
「むぅ……しゃべったことはある! だが……姿を見たことはないのだ」
「「 ??? 」」
なんかの、なぞなぞ、かな?
ヒゲイドさんは、露骨に変なカオである。
「この話、続けるか──……?」
「……! よう、わからんですが──」
「がぜん、気になるっ♪」
──きししっ♪
私とマイスナは顔を見合わせ。
とりあえず、三つのカップに紅茶を注いだ。
( ´∀`)σ)Д`)










