ビッグホワイト げぇー
れんとう、げぇー(*´ω`*).*・゜
「ブロンズ──……、」
「ワークス──……?」
──" 銅の刑死者 " 。
その響きは、
オシハとヒキハにとって、
まったく、ナナメ上からの質問だった。
彼女たちは、まるで予測していなかった、
内容だったのである。
だが、王都にて数々の任務をこなす、
彼女たちである。
当然、そのクラン名には、覚えがあった。
「……"銅の刑死者"って、アレ、ですわよね……?」
「女ばっかのクランで、手練の暗殺職ばっかで構成されてる──……」
「その認識で構いません。プツンと、行動が追えなくなったのです」
「「……、……?」」
オシハとヒキハは、
軽く、顔を見合わせる。
それを見て、ソルデは意図を、噛み砕く。
「……彼女たちの"やり方"、には、前々から注意を払っていました。かなりグレーゾーンの手を使って金を稼いでいましたからね。厄介な事に、"こちらの者"よりも、隠密に長けているメンバーが殆どで、今までも行動を把握するのは、非常に困難だったのです」
"こちらの者"、というのは、
十中八九、犬耳族のクノイチのことだと、
姉妹は理解できた。
「かなりの実力者ぞろいとは聞いていますが……」
「そんなにヤバいヤツらだったっけ?」
「"盗賊を狩る盗賊"、"悪人殺し"なんて呼ばれをして、一部では人気もあるようですが……。とにかく、彼女たちは、手段を選ばない。少女ばかりを狙った盗賊に遅効性の毒を被せ、魔物寄せの香を焚いたまま森に放置し、金銭を奪った上で、後日、弱った魔物を狩り毛皮を売り払う、などもしていたようですし──」
「「……」」
「直接、手はくださないが、ただ、それだけのこと。法を掻い潜り、かなり道徳的に汚れた"仕事"をしていました。私が警戒しなければならない理由、わかりますね?」
やり遂げるために手を選ばず。
効率を何よりおもんじ。
それを、観測する実力者の手が足りない。
それは、確かに……恐ろしいな、
と素直に思うシナインズ姉妹である。
「Aランクの暗殺職、女ばかりで6名、と言うのが、また厄介なことです。知っていますか? 数あるクランの中で、唯一、" 銅の刑死者 "だけが、国家を転覆させられるクラン、と言われていました」
「……!」
「本気で……城なんかに忍び込まれたら、察知するのは難しいでしょうね」
後ろからの、最初の一撃が、
さいごになるなら。
文字通り、暗殺職は無敵である。
ソルデ・ゴーツィンは、
まだ、穏やかに。
しかし、無表情に言った。
「お金のために動いていたのよ。明らかにね。確実に、何らかの──"悲願"が、あった」
また、シナインズ姉妹は、
顔を見合わせる。
「それが……分からなかった。金のためなら、王城にまで忍び込むんじゃないかと、踏んでいたのよ。それほどまでに、彼女たちは……行動に移していた」
「……」
「ま……聞いてるだけでも、そんな感じはするけどさ」
「危うい、存在だった。ワン族を以てしても、彼女たちの拠点は、まるで分からなかった。たまに、換金素材を、夜遅くにギルドに持ち込んで……それでも、尾行を撒かれた。執念が磨いた業って言えばいい? それに、私たちは翻弄されていた」
「……? なんだか、話が……」
「急に、過去形になったじゃない」
「……買い物を、してたのよ」
「「 は? 」」
オシハとヒキハは、
思わず、素っ頓狂な声を出す。
ソルデは続けた。
「彼女たちはね……" 隠蔽のジェム "にだけは、金を惜しまなかった。仕事を……金稼ぎを、円滑にするためにね。それ以外は、自分たちの治療代をケチるくらいだったのよ。あの銅の鎧の下は、キズだらけだったはずだわ」
「そこまでして、お金を……」
「彼女たちの夢には、大量のお金がいったわけね?」
「その通り。賄賂か……はたまた、自分たちでは苦手な、大型の魔物か……。もしくは、要人の暗殺か──。彼女たちの目的は、まるで分からなかったわ。でも、それがいきなり、お買い物をしだしたのよ」
「な、なにを、買ったんですか」
「? ??」
「──"家具"。あらゆるお店の」
「「 へっ? 」」
「そして、まったく足取りが掴めなくなった」
「「 …… 」」
「これでもね……"こっち側"は、数日置きには、かなり、食らいついていたのよ。たとえ、一瞬だったとしてもね」
「それは、つまり……」
「ワンちゃん達は、ギリギリ足取りを、追えていたのね?」
「それが、もうダメ、パッタリ。完全に音沙汰無し。でも、クランは解散していない」
オシハとヒキハは、
先ほどまでの狼狽を忘れそうになりながら、
考える。
ソルデは続ける。
「小さなチェスト、とか、だったんだけれど……それが、かなり高級なやつなのよ。可愛らしい、白が基調のやつ」
「そこまで調べたんですのね……」
「貯めまくったお金を、やっと使い出す、何らかの準備ができた……?」
「私は、ふたつの推論を立てています」
知らぬ間に、ソルデは特注のカップをテーブルに置き、
優雅に、背もたれに巨体を預けた。
「恐らく、彼女たちの悲願は、達成された」
「「……!」」
「そして……それを、手伝った者がいる」
「それって」
「どういう……」
「買われた家具は、だいたいが貴族が使うようなレベルの物よ」
「「 ! 」」
「問答無用の暗殺集団の裏に、どこかの女性の貴族様がいたとします」
「そ……考え過ぎでは?」
「……なびいた、と?」
「どんな形であれ、例えば──あれらに感謝されるのは、まずい」
ソルデは、言い切る。
「恩を返すのに、手段を選ばないのなら」
「「……」」
これには、オシハが返礼した。
「──どんなことでもする、暗殺集団?」
「まさに、恐れています」
ソルデは肯定する。
「もし、いるのなら──女性だと考えています。怖いのですよ。まさかとは思いますが……あの6名が、心酔するような存在が、どこかにいるとしたら」
「ね、ねぇ様……」
「うーん……」
「どちらにしろ、あれらを丸め込める人物が、そうそう居るとは思えません」
「えっ」
「矛盾、してるじゃない」
「あんな……やろうと思えば、誰でも消せる集団が、誰かを慕い続けることなど、できるのでしょうか……私は、疑いを、隠せない」
「「……」」
「勘違いはしないでください? いつも、思い過ごしであればいいと、いつも……思っています」
真剣な眼差しで、ソルデは言い。
オシハとヒキハは、深呼吸した。
「……」
「質問は?」
「"銅の刑死者"の、悲願の内容と、行方に心当たりは?」
「申し訳ありません……」
「マジで、なんも、知らん」
オシハとヒキハは、ハッキリと答えた。
「そうですか……」
少しだけ、女性にしては大きめの肩が、
丸くなったような気がした。
「本当に、いるとお思いで?」
「そうよぅ」
「悪名だかい暗殺クランを、統べるような人物が?」
「はい」
「ん」
「イエス」
座る巨躯は、前にも曲げられ。
頬杖は、己の膝の上より生える。
「ま……思い過ごしなら、良いのですがね。どっちにしろ……あの子たちを従えられる英傑など、実際にいたら会ってみたいレベルです」
「…… 一応、わたくし達も聞き耳を立てておきますわ」
「注意はしとく」
「感謝します。あ、それと……ホールエルの防衛戦、良くやってくれました。この機会に、直接、お礼を申し上げます」
「……! い、いえっ!」
「ど、どってこと、なかったわよ」
「なるほど……隠したい内容は、そっちでしたか♪」
「「 、……!! 」」
「ふふふ♪ 今は聞かないでおいてあげますわよっ♪」
ソルデ・ゴーツィンは、
チャーミングに、ウィンクした。
彼女の美徳は、
この可愛らしさを、
いつも手放さない所である。
いっぽう、そのころ────。
「アンティ様、マイスナ様。やはり、ベッドを新調されては」
「おだまり」
「まにあってます」
「では、こちらのサイドチェスト新商品カタログなど!!」
「おめーらこれ以上家具ふやしたらホントおこるかんな」
「あのシャンデリア落ちそうで怖いので取ってください」
「では、アイノスの方に、ぜひ!!」
「「 なんで、その名前、知ってんだ 」」
「ガルン様が、とても可愛いです……」
「たりめーだろ」
「ぷにぷにだかーなー」
「お部屋のお掃除、完了しました!」
「いや……また窓のカタチ、変わってね……?」
「掃除とちゃう。あっ、床が貼り変わってる」
「今日のディナーでございます」
「あっ、これ野菜の下ごしらえミスってんな、味は美味い」
「まったく、この後、アンティの料理道場だ。失格者は腹筋10回だ」
「「「「「「 は っ !! 」」」」」」
「そうなの?」
「そうなの」
「にょきっと」
なかよしか(*´ω`*)。










