ダメだ、最初に考えよう。
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▼クルルカンは、てがみを しわけている・・・
▼めんどくさい!
▼クルルカンの ては とまった!
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「……ダメだ、このまま進めたら、ダメだ」
確実に嫌気がさす。
いや、手紙に込められた気持ちを、蔑ろにするつもりはない。
……ただ、作業効率的に、この方法は続かない。
砂糖がないと、甘くならないように。
塩がないと、しょっぱくならないように。
確たる手紙の分別方法がないと、確実に、これらの配達は進まない……。
普通なら、お手上げ。
でも、私はクルルカン……
ううぅ、そこで何か考えてみよう……。
「……ねぇクラウン。知恵、貸してよ……」
『────目的は、手紙の分別と認識。
────設定する区分けジャンルの入力。』
「うーん……とりあえず、届け先の、街……ごとに分けたい」
『────現状、不可能判定。この手紙を分別可能な機構が存在しません。』
「ですよねぇ────……」
『────積載量による、ポイント座標系統情報の記載面の不可視が要因。』
「えっと、"かさばってんだから、住所見えねぇだろ!"ってことよね?」
『────肯。的を射た意訳。』
「はは……褒められちゃったよ……」
そうか……つまり、住所の欄が、全部見えていたら、クラウンに見せたら何とかなるかもな……。
「机のうえに、住所欄を上にして並べる……いや、そんな事をするなら私がしたほうが早い……」
『────肯。的を射た予測。』
はぁ、どうすっかな……
最近増えたスキルは、戦闘向けのものが多いし……
今回は、"眼魔"や、"反射速度"なんざ、どうでもいい。
『────仮面より、悲痛な叫びを感知。』
「今回はっつってんでしょが。いつもは助けてもらってるわよ」
『────喜びました。』
仮面の機嫌なんざ、更に、どうでもいいのよ……。
うーん、どーすっかな……。
戦闘向けのスキルじゃなくて、ええと、サポート的な能力、読み取る……。
────────!
「……"状態分析"!!」
そうだ!
"分析"。
これで何とかならないかな。
父さんらにもらった時のアナライザーカード。
文字を写し、喋る、透明の板。
その特性は、クラウンに引き継がれている。
クラウンの言う、"根幹スキル"ってヤツだ。
「手紙の、文字を、"分析"出来たらいいんだ……」
『────視野域では、現状不可能判定。』
「うーん……」
文字を見て"分析"はムリ……手間がかかる。
文字を見ないで判別する方法、か。
「クラウン。 空中に、無地のアナライズカードって出せる?」
『────レディ。
────ウインドゥ、オープン。』
ブゥンッ──!
透明の板!
これに、文字を取り込めないかな……
あ……。
「クラウン。あの部屋の掃除の時を思いだして。バッグ歯車……つまり、"時限結晶"は、指定した物だけを判別して格納できるわよね?」
『────肯。その通りです。』
「この手紙のインクの素材だけを指定。それの、文字のカタチだけを判別する事はできる? しかも、それをアナライズカードに文字入力する事は……? 」
って、そんな都合のいい事、ムリか……。
『────アンティ。
────クラウンギアは、"機構概念"を得ました。』
「へ?」
なんだなんだ?
『────アンティ。いくつかの手紙の束を、アナライズカードの上から落として下さい。』
「え? は、はい」
ガサッ……
えーと、こう、かな……?
大きめの、無地のアナライズカードの上から、手紙をパラパラと落としていく。
ブォン!
ブォン、ブォン!
ブォン!
わっ!
アナライズカードを通った時、変な音がする!
……あと、波紋が広がるわ。
雨の日の水たまりみたいね。
『────インク形状の読み取りの成功を確認。
────リスト化します。』
「えっ!?」
カタカタカタカタ……ブォン!
目の前のアナライズカードに、件数と、宛先! あと、差出人、届け先住所まで、きれいに分けて書いてある!
これめっちゃわかりやすいじゃん!
す、すごいわ!
きゅういいいいん……!
「!?」
『────小型飛行歯車による、分別実験開始。』
「え? わっ!」
ちっちゃな、指輪くらいの歯車がたくさん出てきた!
おっ? おっ! 挟んだ!
2枚で、手紙、挟んだ!
おおっ! すごい速さで手紙が動いていく!
きゅばばばばばささ────……!!
「わぁ──!」
目の前に、綺麗に陳列された手紙の小束ができた!
『────実験成功。手紙を住所別への分別を確認。
────"情報読取"の概念が生まれました。』
「やっった────!!!!!」
今、この手紙部屋に、革命が起きたわ!!!
この方法なら、かなり早く、手紙が整理できる!
「おっしゃ────!!! じゃあ、私は手紙を落としまくれば、いいのね!? クラウン! でっかいアナライズカード出して!」
そうと決まれば、ポイポイの、ポイよぉ────!!
あ、いや捨てるんじゃないわよ!?
手紙は丁寧には扱うからね!?
『────アンティ。その必要はありません。』
「ふぇ?」
どゆこと?
『────"再配分"を開始します。』
────ブオオオオオオオオオオオオオオ……!!
「わ! わぁああ!?」
な、何、何これ!!?
空中が、目の前がっ!
板だらけっ!!
うそぉ、これ全部、アナライズカードぉぉ!!?
────ビッビビビビビビビビビビビビビビ……!!
「あ……アナライズカードが動いて、手紙を通過してる……」
た、たくさんすぎる……
そ、壮観だわ……。
『────"情報読取"完了。
────件数:47873。情報をリスト化しました。
────分配行動を開始します。』
きゅきゅきゅきゅきゅ……!
きゅきゅきゅきゅきゅ……!!
きゅきゅきゅきゅきゅ……!!!
「て、てがみが、飛び交っとる……」
ねぇ、もしかして。
この"革命"……あと、数フヌで終わんじゃないの?










