梅じそとポテトチップス ③
今日も思いつきです(*´∀`*)
〘#……〙
突然だが、おじさんにとって、
ポテトチップスはご馳走である。
40を超えると血の圧力は体を突き破ろうとし、
それが、剣術などの運動を好み、
アドレナリンを出しやすい体質なら、
尚更である。
だが、運命とは残酷だ。
酒を緑茶に変え、ほうれん草と春菊を食い、
塩分を控えていても、
異世界で死んでしまう事もある。
廊下に出現した、
ポテトチップスに眉をひそめる、
私の心情を、理解できるだろうか。
形のみで顎に指を当て考え、
私はソレを拾い上げると、
馴染みのBARに行こうとした所で、
旧神に見つかった。
『──……❖』
『 ニョロゥア 』
火の少女は、片手に揚げ物の皿を、
もう片方の手に、絵描きの亡霊を持っていた。
〘#……君が抱き枕のように抱えているソレは、世界最強の覗き魔だ〙
『──……これ、かじったけど、すっぱいの。ソレと交換して❖』
『 ニョロンゾ 』
箱庭にて出現した食品が、
腐っていた事はない。
その形状で酸味となると……梅じそだろうか。
〘#……かじった所は、切り取って、ちゃんと食べなさい〙
『──その、ぽてちとは違う方、なに?❖』
火の旧神は、私の片手にある、
ノートを指さした。
〘#……これは……〙
『──ああ、トバシ・カオコが仕込んだ、変換ロジックね❖』
私は、目を見開く。
〘#……どういう事だ〙
『──じょうほうりょう❖』
『 ニョロニョロ 』
……。
炭水化物とアルコールのデュエットは、
あきらめる事とする。
自室に旧神を誘い、
緑茶をローテーブルに置き、差し上げる。
くく、ローテーブルなどと言っても、
実に古臭い木でできた、
記憶の中の、年代物だが。
居間よりかは大きめの座布団に座った、
小さな旧神の少女が、物申す。
『──お箸はないの? チョップ・スティックス! ニホンコクは、チップスはハシで食べるんでしょう?❖』
『 ニョロッッ……! 』
〘#……〙
未来の日本はどうなっているか心配になったが、
旧神に言われるがまま、
黒檀の箸を渡してやった。
ん? ラヨチ殿よ……貴殿の箸は無い。
……。
何故、悲しそうなのか……。
口、ないだろ……。
『 ニョロリン…… 』
『──せんせえも、お箸を使ったら? そのノート、油まみれにしたくないでしょ?❖』
〘#……〙
死後含め人生初めて、
箸にて揚げ菓子を食うはめとなる。
〘#……効率を重んじると、間抜けになる事もある……〙
『──せんせえ! やっぱりコレ、すっぱいわ!! くさってるんじゃないの!❖』
〘#……君も大きくなれば、その美味さが解ろう。それで、このノートの事を……君は、知っているのかね?〙
私も、座椅子に腰を下ろし、
見せたソレは、カネトキから預かったノート。
『数学』
『化学』
1年A組 黄野 金時
〘#……"変換ロジック"とは、なんだ……? 戸橋が……"仕込んだ"、とは……?〙
『──? それがココにあふから、"箱庭"の言語依存は起こっていないんじゃない❖ ぽりぽり……❖』
〘#……な──〙
更に、質問を矢継ぎにしようとし、
シュタッ! と箸を突き出され、
呆気にとられる。
〘#……ぉ、お行儀が……〙
『──ほれはぁ、第二改世界までの単位で書かれているでしょ? それが、抗体プロセスを踏んでるのよ。だから──第三新世界の言語プログラムから、逸脱した思考ができる❖』
〘#……?〙
『──クラウンのさ……"パセルテルジ"って、違和感あるでしょ?❖』
〘#……──……!!〙
──バッ・・・!!
ノートを開く。
高校一年生の頃のカネトキは、
真面目にノートを取っていたと記憶している。
……。
パーセント。
キロ。
グラム。
メートル。
センチ……ミリ!
誰もが知る、変わってしまった……基礎の値……!
『──なんでアンティ達が、"単位"を修復できたか、もう分かるでしょう?❖』
〘#……!!〙
『──"まちがいさがし"って、子供の遊びだもの❖』
〘#……これは──この、ノートが……!〙
『──0になるまでの……あの、思い出の中の、学校で。アンティは……" 感染 "できた ❖ 』
〘#……"違和感"を植え付けるための──……、" ウィルス "……!〙
『 ── そして、概念から、逸脱した ❖ 』
私が、かつて採点した、教え子のノート。
これが、
世界を書き換える、礎……なのか?
ニョロ助にはフォークあげぃԅ(¯﹃¯ԅ)