梅じそとポテトチップス ①
サブタイトルかんがえられへん(*´﹃`*)
『>>>うわぁ……なっつかし』
ぼくの好きなコンビニのメニューで、
梅じそフライ、というのがあった。
今、箱庭の渡り廊下で拾った、
タロー・ウラシマが開けそうな、
小さな玉手箱の中に、
ソイツが──しこたま入ってやがる。
『>>>アレかな……昔、運動部に差し入れしようとして……結局、ぜんぶ自分で食った時の、だよなぁ……はは』
……優しさは、時に空回りする事もある。
生前のガキっぽい失敗の思い出と共に、
ぼくは、揚げ物のオヤツを手に入れたワケだ。
『>>>ここだったよな』
茶色い飴色の木の戸棚を開けると、
ペットボトルや缶ジュースの中に、
いくつか酒類も混ざっている。
ダイさんは、箱庭でドロップした飲料系を、
一度は必ず試飲して、戸棚にしまうが──、
< うんっ、これは子供向けやねぇ♪ >
強い、お米のお酒を、
確実に飲み慣れている彼女にとって、
チューハイも炭酸飲料も、
あまり大差はないようだった。
『>>>ウイスキーは、ぼくにゃー早い』
シルバーグレイ以外では、
この戸棚が唯一、お酒を手に入れられるポイントだってこった。
ぼくは、グレープフルーツ・チューハイの、
ロング缶を二本、拝借していった。
『>>>クラウンちゃん、どっかに居るかな……』
今日は臨時メンテナンスの日であり、
箱庭と現実世界の昼夜は逆転している。
『>>>……』
〘+++……〙
居間で、先代の水の女神さんが、
ポテトチップスを食っていた。
開け放たれた障子の外では、
四角く切り取られた明るい庭で、
後輩ちゃんと、紫電ちゃんが、劇の練習をしている。
クラウンちゃんと、シゼツも居た。
どうやら、練習に付き合っているようだ。
さぁて。
今、一番ちかくにいるのは、ミス.QQだ。
目は、合ってしまった。
気まずい。
〘+++……〙
『>>>……』
気まずいが、ここで踵を返すほど、
ぼくは、アホには、なれなかった。
後々、逃げたみたいで、
余計にギクシャクするのは、ゴメンこうむる。
ふぅ、と、ぼくは息をはいて。
和風のカウンターに置かれた、
逆さまのグラスをふたつ、
トン、トン、と、居間の食卓の上に置き、
どっしりと座った。
〘+++ ! 〙
何も言わず、トポトポと、グラスに注ぐ。
──トン。
『>>>ん』
〘+++……〙
ミス.QQは、グラスに手を伸ばす。
〘+++ふふ……、ずいぶん、女の子っぽいお酒が好きなのね?〙
『>>>ぜってー、偏見だろ……』
ぼくは、梅じそフライの乗った皿を、
彼女との中央に、ドゴンと置く。
彼女が指をパチン! と鳴らすと、
ふたつのグラスに、カランと氷の塊が落ちる。
やがて、ポテトチップスの袋は、
パーティ・スタイルに、なろうとしていた。
『>>>久しぶりのジャンクフードの感想は?』
〘+++──……///〙
慣れない手つきで、油っこい袋を裂きつつ。
彼女は、弱く笑いながら、
首を左右に、小さく振る。
うーむ……。
『>>>ぁー……。なぁ、ぼくに辛辣なのは、なんか……ぼくが、やっちまってるからかな? ガキくさい言動は自覚してるつもりなんだ……あやまる時ゃー、あやまるよ?』
水の旧神は、意表を突かれたような顔をした。
〘+++いきなり過ぎて、ワケが分からないわね。別に、嫌ってるとかじゃないから〙
『>>>そうなの?』
〘+++ただ……あなたは大事な点を見落としてるわね。女友達のダンナが、好きな人の祖父だった時の事を考えてみなさいよ〙
『>>> ──、…… 』
一瞬、付け焼き刃の高校生ハートが、
フリーズしかけたが。
『>>>……ぁ、あんなチャラい孫を育てた覚えはねぇから!』
〘+++ふふふ……。あのバカのお陰で、何千回かは、救われているのよ──……、んむっ……♪〙
梅じそフライに、かぶりついた元・女神さんは、
ぼくでも分かるくらいには、華やいだ。
どうやら、好物だったようだ。
これで、ぼくの学生時代の失敗は、
報われたと言える。
〘+++おいひぃじゃない。昔の日本では、ポピュラーだったの?〙
『>>>骨なしチキンには負けてたね』
〘+++? なんでいきなり悪口を?〙
彼女の育った、未来の環境が気になったが、
そのままの意味だよ、と付け加えておく。
ああ……と彼女は納得し、会話が途切れる。
逃げる訳ではないけど、
ぼくは、グラスを持ち上げる。
氷が溶けだしたチューハイは、
飲みやすく、薄く、
はは、まさに、ジュースといった感じだ。
ちかく、とおくで、元気な声。
まさしく"箱庭"で、演劇の練習をギャーギャーする、
後輩ちゃん達と、嫁さん連中を、
ぼくらは、ボーッと見ていた。
〘+++……クラウンが、神様の代わりになるNPCを作ろうとしたのは、間違いないのよ〙
『>>>──っ、、、』
あまりにも重大な話を始めるので、
ぼくは、困った。
〘+++キングマン……──ジュンヤと、クラウンの考えは、一緒だった。でも何故か……ジュンヤは宙に残り、クラウンだけが、地上に降下した。その事を……ジュンヤは、気にしてたみたい〙
後輩ちゃん達のほうを、ボーッと見ながら、
彼女は言う。
〘+++なぜ……ジュンヤが残ったのかは、分からない。でも、記憶を失う前のクラウンは──たくされていた〙
……。
『>>>この世界の人間である"NPC"に……神様としての"バトン"を、繋ぐ?』
〘+++ ──そう。 〙
水色の瞳だけが動き、
ぼくを、射るように見た。
〘+++そして、バトンは繋がれている〙
『>>>……』
〘+++でもね。ジュンヤと、クラウンの計画は、全く同じものでは無かった〙
『>>> ? 』
〘+++ジュンヤが提唱したのは、"リレー方式"。神に選ばれた者が、次の候補者を選び、自らを解放する〙
『>>>……部活の部長みたいだね』
〘+++ふふふ、可愛い例えをするのね。ふふふふ……〙
何を笑ってんだ、コイツは。
〘+++……ふぅ。でも、言い方は悪いけれど……。クラウンは当初、"なすりつける"つもりだった〙
『>>>──、……!』
──トン。
グラスが、置かれる。
〘+++彼女が最初に立案したのは──〙
昼の、箱庭。
美しい逆光の中で──。
〘+++───"唯一神の創造"──よ〙
年末さいごかな!? かなっ!?
((((\(*´ ꒳ `*)/)))).*・゜