せくすぃーなるせんたく
真剣な回ですが、
アブノさんは食いこんでます(*´ω`*)
最強の、ヨロイ。
青銅の、ヨロイ。
あまりにも、素晴らしく。
──"敵意"すら、忘れさせる────。
「──せく……──すぅぅういいいいいいい!!!!!」
「「「「「「 ──……!!!?? 」」」」」」
ブォオンぅ──!! と、
ミスター・アブノは、何かを宙に投げる!
ぃ……椅子だっ。
丸い、座り板の、
積み重ねられる形の、ものだろう……!
絶妙に空中で回転する、
6つのシンプルな丸イスは。
まるで、店内の床に吸い付けられ、
踊り子のように、着地した──……!!
カカカカカカっん──……!!
「……座るが良い。少し……せくすぃーな話をしよう」
「「「「「「 」」」」」」
……この男は、
私たちを無下には、扱わない。
……。
静まりかえった感情のまま、
私たちは、座る──。
コォォオオオ・・・!
コォォオオオ・・・!
……!
奇妙な音がするかと思えば、
黒く揺らめく、影のような手が、
6つほど飛んでいた。
闇の魔素のオーラが固まったソレは、
まるで……漆黒の手袋だけが、
浮遊しているかのようだ。
先ほどは、私たちを殴った魔力の塊。
だが──、
今は……床に投げ捨ててしまった、
私たちの銅の兜を、優しく拾い上げ。
ひざの上に、そっと……乗せてくれる。
私は、素直に言うことができた。
「……──お見事です、ミスター・アブノ。魔素のオーラで実体化させた闘拳で、あのような、凄まじいパンチを繰り出せるとは──。さぞ……優れた闇属性の格闘者であらせられるのでしょう」
「そのような事は……良い。むぅ……」
ズ、しぃ……。
ミスターアブノは、椅子には座らず。
店内の段差がある床に、
筋肉に覆われた裸体を降ろした。
キワどいV字のパンツを履いているが、
今は……不思議と、あまり気にはならない。
「──それは、我が今まで見た中で、
一番、優しきヨロイだ」
私たちは、柄にもなく膝を揃え、
静かに、彼の話を聞いた。
「このヨロイの造りは……"攻め"を度外視している。"守り"だ……どこまでも──"守り"の、せくすぃー……。これは……自ら攻撃することは、ほぼ、考えられていない」
「「「「「「 …… 」」」」」」
「このような、せくすぃーな技術で装甲が形成可能ならば……例えば、肘や膝、爪先、肩、頭部──……。あらゆる関節や打突部位に、武装を仕込ませる事が可能であろう」
ひざの上にある、
つるんとした、のっぺらぼうのような"顔"……。
「執拗に、それらを、しなかったのは──"防御"だけを、せくすぃーとするため……!」
どこかで、わかっていた。
もし、ナイフの雨が降ったとして。
このヨロイなら──平然と、していられる。
そのようにさえ、思えてしまう、
甘えの、ココロ──……。
「それに加え……このヨロイには、恐らくは──お主たちの、" 親族の加護 "が、付与されているのであーる……。神聖の加護に比べ、それは──実に、せくすぃーである。せくすぃーだ……とても、せくすぃーなのだ。"神"は……世界を救いたいと想いを持つが、"家族"は──きみ達だけを、救いたいと願う」
「「「「「「 …… 」」」」」」
「──故に、" 極限の安心感 "が、生まれる」
ああ、言葉にされて、飲み込める。
身体に、染み渡る。
これは、卵の、カラ。
世を知らぬ、母の腹の中の、こども──。
「そして──"危機"を、忘れていく!! ダメだ……この、ヨロイでは……ダメなのであるっ……! 君たちの、"守りたい"という、せくすぃーにとって、これは……ッ! せくすぃーNGと、なってしまうのだ!!!」
何故か、ミスター・アブノは辛そうに。
まるで……自分のことのように、
握りこぶしを作って、語る。
「──君たちが!! 超・重量級の槍や盾を扱う、屈強な重盾職であったなら……!! 無敵の武具で先陣を斬りひらく、剣技職であったなら……!! まだ、よかったのやもしれぬっ!! だが……!! 君たちは──"暗殺職"っ……!! "暗殺職"、なのだっ……! であるから、だから、してっ……、……!」
は、は……。
辛そうな、彼に。
私から、力の抜けた、
声が・・・出せる。
「……ミスター・アブノ、有難う……。私たちは、よく……理解しました」
──"暗殺者"とは、"技"。
──"暗殺者"とは、"攻"。
その身は軽く。
その身は速く。
その身は、虚を突く針でなければ。
"攻め"は、"攻め"。
"守り"は、"攻め"。
数多の攻撃を、かい潜り、
"攻め"を成せない者は、
決して、暗殺職ではない。
ましてや、
誰かを、守るなど────……!
少し、自嘲が混じった声で、
私は、情けない台詞を吐いていた。
「もし──ナイフの雨が降ったのなら……。平和ボケした私たちは……ヨロイのチカラで生き残る。そして、主君となる者は──当然、守れずに、死んでしまう。ミスター・アブノ……。あなた様が言いたかったのは、そういう事、なのでしょう?」
「 ──、…… 」
ミスター・アブノは、
俯くように、頷く。
……?
その、含みは──……?
「……あはは、そっか」
私は、笑っていた。
「私たちが、仕えたいと思う方々から、このヨロイは、贈られた……。そう、私たち自身が、あなた様に、言ったのですね……。ですが……このヨロイは──私たちを守ることだけを考えて造られている」
「……」
「──あなた様は、気づいたんだわ。私たちは、求められていないって事に」
「「「「「 …… 」」」」」
「……」
「ははは……あなたは、気遣った」
「……せくすぃーは、時に、伝わるのだ」
はは。
なんのことはない。
このヨロイは、こう言っていたんだ。
" そんなことは もうやめろ "
" しあわせになれ "
それだけだ。
この、半裸の紳士は、
とっくに、見抜いていたのだ。
「……その、せくすぃーなるヨロイは、心である」
アブノ・マールは言う。
「きみ達を……デンジャーせくすぃーから、
遠ざけようとしている」
「「「「「「 …… 」」」」」」
「きみ達以外の全てが、
そう、望んでいるように思う」
「「「「「「 …… 」」」」」」
「実に……せくすぃーなのだ」
は、はは。
こいつ、優しいな。
こうは言ってくれているけど。
つまり、私たちが、やろうとしている事は。
このヨロイに宿った想いに、
ツバを吐くようなモンなんだ。
この変態は、私たちに、
それを、悟らせたんだ。
みんなが、私たちの幸せを願っているのに、
何故、そんなことをしようとしているのか?
それだ。
そこで、問いかけられる。
なるほど、そういう事だ──。
「──覚悟が、なくてはならない」
想いを、踏みにじるための。
「ここは……せくすぃーなる、選択だ」
私は──。
顔を、あげた。
((((;゜Д゜))))
どうしてこんなシリアスに……!?










