せくすぃーなるてっけん
おまたんたん(●´ω`●)♪
「なん、だと……?」
純粋な、怒り。
私たちは、守れなかった。
だが、わずかに、
取り戻す事はできた。
だから……次は、守ろうと。
そう決めて────、、、
────なのに……!
「何度でも、言うのであーる。
そのヨロイでは──、
誰かを守ることは、出来ぬ……!!」
「「「「「「 ッ──……!! 」」」」」」
六人全員で、睨みつけるっ……!!
少し気性が荒いハルは、もちろん、
大人しいメーチでさえ、
殺気を漏らす……っ!!
私自身、湧き上がる怒りを感じていたが、、、
一応の理性は保ったまま、
目の前の半裸を、問いただす!
「ミスター……アブノ。これでも私たちは……かなりの修羅場を、くぐってきた。腕には自信があるし、この鎧は最高の物だと感じている。何故、そのような心無い言葉を吐くのか」
「やはり、分かっておらぬか……」
「何が言いたい」
私自身の怒りと戦いながら、
後ろの姉妹たちの殺気を、
自らの背中で、押しとどめる。
ミスター・アブノ……。
納得のいく説明が無ければ、
これは……収まらないぞ?
「むぅ──…… 」
彼は、ズムゥッ、と立ったまま、
刹那、考えているようだった。
そして──。
「……先に、詫びておこう」
「何をだ」
「きみたちを、今から殴る。
そのヨロイで、避けてみよ」
「「「「「「 ──! 」」」」」」
その言葉を聞いて。
──呆気に、とられる。
怒りより……驚きが、上回った。
「フフ……いま、何と言った──?」
そして──認めましょう。
多少の、"愉悦"があった。
フフ、こいつ……"殴る"だと?
身軽な私たちを、
その、重そうな腕で────……?
「"暗殺職"に、"格闘職"が、攻撃を当てる、と?」
「……用意は、いいのだな?」
どうやら、本気のようだ。
フフ……姉妹の何人かは、仮面兜の下で、
呆れと……嘲笑も、あったかもしれない。
それは……致し方ない。
舐められたものだ。
何にせよ──私たちはリラックスしていた。
よい、コンディションだ。
あの、御二方とは、違う……。
このような大男のパンチなど、
絶対に、かわすことができる。
目の前で、ほぼ全裸の男が、
右腕を、上げる動作をした──。
「……"ダーク・カウント"──」
──?
───手を、広げている?
────、私たちは、ステップを───……!
「────" シックス・ハウンド "」
── 今度、浮くのは、私だった。
「 く ぉ っ ・・・!? 」
──ドゥオオオオォオ……ンン──……!!!
──空洞の金属に、衝撃が貫通する音!!
「 ── だ っ …… !? 」
──ダ ァ ア ア ・ ア ン ン !!!
見渡せる床──天井、天井だ!
背中が、天井、にッッ───……!?
はね返る──……!!
──ドゥゴォオオオオオオンンン・・・!!
「 ぐ、くぅお── ─ 」
ら……──落下し、たっ……!
響く、鎧の反響音……!!
何が、おこった……!?
殴、られたのか……っ!?
目の前にいる、半裸のマスクの男!
「 ……ふぅむ 」
──シュゥウウウウウウ……ッッ。
先ほどは、指を広げていた右手……!
今は、拳を握り──煙が出ているッッ!!
「──っ……!? ば、バカなっ……!」
こ、こいつッッ……!!
私たち6人を、あの一瞬で……!
……右腕だけでッ、殴ったのか……!?
「うぅ、……」
「な、何、が……?」
「ど、どう、して……!」
「ぐ、ぅ……?」
「信じ、られない……ッ!」
他の姉妹たちは、
5人とも、壁に寄りかかり、項垂れていた!
わ、私だけが……天井に、殴り飛ばされたのだ!
他の5人は、壁の端まで飛ばされたのか……!?
あの、一瞬で……!?
驚愕が、頭の中でグアングアンと響く中、
目の前の変態から、落ち着いた声が届く……!
「……そのヨロイの防御は、優秀であぅる。鎧貫きは、しないでおいた。ダメージは、ほとんど無かろう……」
「──な、何者なんだっ……!? こん、な……!?」
な──、"並"ではないッッ──!!
私たちは、全員が──Aランクの暗殺職だ……!!
それを、相性が悪いとされている、
格闘スキルで……6対1で、
こんな、一方的にッ──……!?
「……己の せくすぃーを正しく理解するのは、
容易ではない……。時には、見たくないものを、
どっしりと、受け止めなければならぬ」
「……!?」
どうなっているんだ……!?
ドニオスは、優秀な格闘職が多いと聞くが、
この男は、……服飾店の店長、だぞ……ッ?
こ、これではまるで──、
Aランクの格闘職……、
──いや、それ、以上の……ッ!
「……立つのだ」
「「「「「「 ……ッッ!! 」」」」」」
青銅色のフルメイルの中では、
グッチョリと、汗が滲み出してきている……ッ!
「 ── 立 て イ ィ ッ ッ !!!
そ の 魂 に あ る
せ く す ぃ ー は !!!
そ の 程 度 か ッ ッ !!! 」
「「「「「「 ──ッ!!! 」」」」」」
──カィンん──……デゥオオン・・・!!!!!!
床を、青銅のブーツが撫でる音!!
雷に打たれたかのように、
皆が、飛び跳ねるように──立つッ!!
幸い、鎧のお陰で、ダメージは無い……!
優秀な鎧の内で、冷や汗を噴き出しつつ、
私たち姉妹は、キッ、と、睨み返す……!!
そして────、、、
「 ── "兜"を、取れ 」
「「「「「「 ──ッッ……!? 」」」」」」
目の前の半裸は、そう、言った・・・!!!
戸惑いによる……思考の、停止──!
ど、どういう──……!?
「 ──臆すのか? "守る"──と宣言した者が?
兜一つ無くなるだけで、せくすぃーを、喪失するのであるのか……? 」
「「「「「「 ──ッッッ……、──!!! 」」」」」」
頭が……──カッ、となる感覚……!
……認めよう!
この男……、もしかしなくとも、
私たちより──強い!!
ただ……こちらもな。
今まで、無我夢中で積み上げてきた、
なけなしの、プライドというものがあるッッ……!!
──……。
私たち全員が、歯を食いしばり、
気づけば、兜を脱ぎ捨てていた!
アブノ・マールは、言う。
「 ……──最初に十秒、
攻撃させてやるのであーる。
かかって、くるが良い!! 」
──彼が、言い終わる前に。
私たちの攻撃は始まり──、
──シュダダダダダダダダダダ──……ッッッ!!!
────すべては、防がれていた・・・・!!!
( な……!? 一撃もっ──入らないッッ!! )
( 何なんだッッ!? コイツはあァっ……ッ!! )
( 私たち全員のを、左手だけでッッ……!? )
( なんで、こんな化け物がッッ……!? )
( わ、私の蹴りをっ、仲間の防御に使われた!? )
( こんなっ、ほとんど裸の奴に、そんな……っっ!? )
「……──" ダーク・カウント "──」
────ぞわり。
「「「「「「 ──〜〜〜〜!!! 」」」」」」
久しく無かった────" 恐怖 " 。
「────" シックス・ハウンド "」
──ぅ、ぅうおおおおおおおおっっ──!!!??
来るであろう攻撃にッッ、
全神経を、集中させるッッ!!!
──み、えたっ・・・!!
ろ、6本の、"腕"……!!
闇の……アシュラ……!?
み、右側、だけだっ・・・!!
動くのはっ・・・!!
避けろ・・・っ!!
── さ ば く ん だ っ !!!!!!
「──くぅおおおッッ──・・・!!?」
体をくねらせ、
腕の装甲を使って、
闇の魔素で形成された、
拳を──いなすっっ!!!
すごい、勢いだ!!
なんとか、左側に逸らし、
自身の身体が、回転するっ──……!!!
──デォヴウアオオオオオンン──ッッ!!!
──キュウルルルルルッ・・・!!
先ほどまでは知らなかったが、
この、祝福されし銅の合金は、
摩擦が発生した時、
独特の音色を放つようだ……!
回転する視界は、
床についた足とひざで、
なんとか、一回転で止まってくれた……!
「く……!」
攻撃を受けた腕の装甲が……熱い!
なんという、スキルなのだ!!
今は、頭は完全に露出している……!
防げていなければ……危なかった!!
「 ほぅ── 」
さっき、この変態の背中に顕現した、
闇の揺らめきで出来た、6本の腕……!!
コイツは、それの、
右側3本だけしか、使っていない……。
手加減、されている……!
なんということなの……。
「 ふむ……防いだか 」
「「「「「「 ──ッ……! 」」」」」」
次の攻撃に、私たちは備える。
だが──。
「 何故だか、わかるであるか? 」
──、……?
黒きプレッシャーは、すぐに霧散し、
変態は、私たちに、問いかける。
「 何故、此度は防げたか、わかるであるか? 」
「「「「「「 ……? 」」」」」」
そ、それは……。
「……正直に、申し上げます。先ほどまでは……あなた様を侮っておりました……。ですが、今は私たちは、本気で──」
「──否。今、再び兜を被れば、其方たちは、この攻撃を避けることはできぬ」
「「「「「「 ──……!? 」」」」」」
ど、どういう、こと……?
「何故……兜を脱いだことで、見えぬ攻撃が、察知できるのか──」
「「「「「「 ──……、…… 」」」」」」
誓おう。
確かに、この時のミスター・アブノは、
誰よりも変態で──紳士であった。
「──肌の露出による僅かな魔素のピリつきの察知、頭髪の露出による風の流れの感覚。脅威を正しく感じ取る力の上昇──そして、"加護"の、"弱体化"──」
「「「「「「 ……──!! 」」」」」」
「きみ達は──愛する せくすぃーに、抱きしめられたことがあるか?」
──……。
「……父と母は、血の繋がりのない、盗賊でした。しかし、あの二人は──私たち七人を、本当の娘のように愛してくださった」
「あるのだな?」
「ええ、とても」
「問おう」
それは、私にとっては、
とても、わかりやすい問いかけだった。
「──愛する者に抱かれた状態で、迫り来る危機を感じれるのであるか?」
「「「「「「 ……ッッ!!! 」」」」」」
「"加護"というのは……お主たちが思っているより、凄まじき せくすぃーぱぅわを、持つのだ──……」
裸の頭で、自分の手を見る。
両手だ。
継ぎ目からも、肌の露出など無い。
私たちの肌と同じ、
銅色の装甲に走る、
神秘の、淡い青の光。
守られている。
見事で……安心だ。
そうだ、この鎧は────。
「この鎧は……!」
「 …… 」
「この鎧は……私たちが、
"危機"を察知する力を、奪うのですね……?」
「「「「「 ……──ッッ!!! 」」」」」
黒い変態は、ゆっくりと頷き、
私たちに、正解を教えてくれる──。
「
──それは。
" 誰かを守るヨロイ "ではない……、
" きみ達を守るヨロイ "だ。
その優しきヨロイを着、
半年もすれば──……。
君たちは"技"と"感覚"を忘れ、
ただの、"街娘せくすぃー"と、
なるであろう──……。
」
着ているだけで、
暗殺者では無くなっていく、ヨロイだ。