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ドント・フォアゲット・サンクス

え? 前話に挿し絵が三枚ふえた?

まっかさー(´∀`*)♪

え? さらにオチが変わってる?

まっかさー(*´∀`)♪


☂️





 ガチャ……。

 鍵を、しめました。



 玄関のドアから後ずさりしながら。

 お互いに、顔を見る。



「……」

「……」



 ──ぶにぅ。


 マイスナと、お互いのほっぺをツネり合う。


 ぷにぷに。ぷにぷに。

 うん……、……可愛ぃ、夢だ。



「……続き、していぃ?」

「ドンと恋ぃ♡」



 ふぁああぁあぁあぁ。

 両手、フルオープン・マイスナ……ッ!?

 なんと……なんと可愛い、世界一の嫁!

 仮面ごしでも、この威力!

 いま、全アンティが泣いた!



『────震音探知に:

 ────まるで引っかかりません……☼』

『>>>なんだ、アイツら……魔人から助けてやった人達だよね?』



 もう、いいんだ。

 私は、にゃにも見ていない。

 下僕セールスとか、一生、お断りッス。


 とりあえず、マイスナを抱き上げて、

 クルクル回ろう!

 どうでぇ、これが!!

 バカップル・スクリュー、だッッ!!



「あーん♡ この子は、なんでこんなにかわいーのぉー!」

「わーい♡」

「む、ビックリしたから、ちょっとだけ、のど乾いたねっ!」

「うん!」



 恋人と体調が同期しているっつーのは、

 こーゆぅ時は、とっても便利!

 調子わるい時とか、すぐに気づくし。

 お腹減るタイミングも、ピッタシ同じ。


 ……え?

 "お花つみ"は、って……?

 ──アレだ……。

 ソレは、考えちゃーいけない。


 私たちの御手洗事情は、

 永遠に……誰にも言えにゃい。



「じ、じゃ、お茶が、いっかな!?」

「ラワムギ茶ぁー!」



 なんにせよ、

 私とマイスナの循環のみで、

 水分量が増えるはずが無い。


 戦いに、水分補給はツキモノだ。


 えーっと、ラワムギ茶は、

 何番区画の格納スペースだったっけ──……? 




「どうぞ」


「「 ぁ、ありがと 」」




 ゴクゴクゴク。


 ──うん!

 ラワムギ茶っつったら、やっぱ、コレよね!

 ガラスのコップに、氷の魔石!

 キンキンに……良く、冷えてるわっ!

 ……ふーぅ。

 マイスナと、空のグラスを、


 おぼんに……、乗せ、 、  て……。




 トん……。

 




「「 …… 」」


「お粗末さまでございます」





 銅色のヨロイで覆われた女が、

 おぼんを持って、(ひざまず)いている。

 あれっ、おかしいぞ〜〜。

 ……。




「「 …… 」」


「 ── 」

「「「「「 ── 」」」」」





 いや、全員、おるし。

 ……。

 素直に聞いた。




「何しに……来たんスか……」

「でてけ」


「お(つか)えしとう、ございます」




 わぁ……話が通じない。

 侵入されている。




「我ら全員、貴女様方に、この身を(ささ)げます」




 ……ガシャ……!!!!!!



 ひざま、ずいていくぅ。


 ほぁー、なんコレぇー。

 誰かぁー。ヘルプみー。

 もうやだー。




『────妙な事に:なりましたね……:

 ────申し訳ありません☼

 ────セキュリティを強化していれば:

 ────こんな事には……☼』


『>>>いや、すぐに叩き出せ! ガチな不法侵入だからね!? コイツら……!!』



 この、お姉さん達──うん、

 モチロン、覚えている。


 つい先日、

 ホールエルの北東の森を調べてた時に、

 がるがるブラック装備だった私とマイスナを、

 目玉ヤローの仲間とカンチガイして、

 襲ってきた、お姉ちゃん達だ。


 ぶっ飛ばし過ぎたので、

 ヨロイを修理してあげて、

 一泊、アイノスに泊めてあげたっけ……。


 確か、暗殺職のクラン、6人組で。


 "銅の刑死者(ブロンズワークス)"──だたっけ??




「急な来訪になってしまった事、お詫び申し上げます」


「ぇ、いや、うん……」

「……そこじゃないと、思います……」



 カギかけて中にいるとか、

 もはや、不法侵入とおりこして、

 大道芸だかんね……。


 ともかく、回らない頭で、

 お願いしてみよう。



「あの……、ふたりっきりに、してくれません?」

「アンティと、やりたい事があるんです」



 あるある。ものっそい、ある。

 せっかくの、昼間お家デートなんだぞぅ……!

 つーか、マジで見られたら、

 ガチアウトだったっつーか……。

 やっべぇ、やべぇ……。



「ご安心くださいませ。お二人の性癖(せいへき)について、とやかく言うつもりはございません」


「「   」」



 は?



「けっこう外まで、漏れておりました」




 ──方針変更。


 コイツら、タダじゃ帰さねぇ。


 即座に歯車と鎖で6人を拘束し、


 天井から吊り下げる。




 ──ぎゅぅいいいいいいんんん!!!!!!

 ──じゃらららららららららら!!!!!!




「「「「「「 ……、……っ、…… 」」」」」」



「「 ふふふ、ふふふふ……♪ 」」



 私とマイスナの、屈託(くったく)のない笑顔を見よ。

 いいか、お前らは吊るされたハムだ。


 ああ、世界よ。

 私は今、笑えているか。



「き、ひひ、ひ……♪ 私は暴力が嫌いだけど……今は、お前らの記憶が無くなるまで、殴ってもイイカナ……?♪」

「ケケケケケケ……♪ アンティと私の聖戦を、邪魔した罰は大きいイィィィイイアアア……!!!」


「どうぞ、気が済むまで、おやりください」


「「 ── 」」




 はぁ……?

 ……。あのねぇ……、……。

 ──ちくせぅ!

 いったい、なんなのよォ!!



「……人ん家の前で、女同士で楽しんでるのを盗み聞きした挙句……オシオキ願望ってか? はぁ、勘弁してよね……チッ。すぐ消えるなら、放り出して手打ちにする。私たちも忘れる。それでいいの?」

「二度と来ないで……。私たちの邪魔、しないでほしい。私たちが、どんなに苦労して、今、一緒にいるか、わかる?」


「貴女方に、(つか)えとうございます。それは、どのような状況でも、変わる事はありません」


「「 ……、……?? 」」


「にょきっとなー?」

「くゆーっ?」

『 がるるーるぅ……Zzzzz 』




 いったい、どうなってんの……。

 思考が、まるで追いつかない。


 …………//////。

 あぁーぁぁぁぁああああああ。

 バッチリ、聞かれちゃってんじゃないのよぉぉ……!!

 ああぁぁぁぅああぁ……//////。




「配下に、お加えください」


「──あんたたちッッ……!? さっきから、意味わかんないわよっ……!? 頭、おかしいんじゃないのッッ──!?」

「まったく……言っている事が、わかりません……」


「お願い、申し上げます」



 ダメだ、まるで、ラチがあかにゃあ。

 何なんだ、この6人はよォ……。



「なんで、こうなっちゃったかなぁ……!」

「配下って……子分の事ですよね??」



 どちくせぅ。

 吊るされたハム共を、

 オシオキする趣味は、実はない。


 仕方がないので、天吊りから降ろしてやり、

 歯車と金属で、簡素な椅子を作ってやる。


 口から、魂が抜けそうだ……。

 マイスナも、私と同じような、

 何とも言えないツラをしてる。


 ちくせぅ……昼間っからの、きちょーな、

 マイスナとの、イチャイチャがぁぁ……!



「意味が……わかんない、ワケ、わかんないぃぃ……」

「一杯だけ……飲み物を出してあげます。出来るだけ簡潔に、要点を説明しなさい」


「「「「「「 はッ 」」」」」」



 6人の銅の皆さんは、

 どうやら、敵意だけは無いらしい。

 実に姿勢よく、全員が座った。


 私とマイスナは……、

 二人でベッドに腰掛け、

 この不法侵入者どもの話を、

 聞いてあげる事にする。






     *^-^*

     (・・) くゆーっ!

     (﹀)シ






「「──……」」


『────…………なるほど☼』

『>>>そういうことか』





 ひと通り、話を聞き終え。

 あぁ……そゆこと、と、事情は理解する。



「にょきっとな?」

「くゆーぅ!」


「えーっと……つまり、要約すると……」

「妹さんと、あなた達の故郷が、ものすごく、助かった……?」


「「「「「「 はい 」」」」」」




 ぁ────……。

 つまり、だ。


 私たちがあげた、

 ローザの汁・由来のエリクサーが、

 とんでもぬぁー効果を、発揮しちゃったらしい!


 妹さんの"呪い"がとけて、

 呪われた土地が、"浄化"された?

 ホンマか……。

 さっすが、精霊王の汁である。


 つーか、そのまんまの濃度で、

 使っちゃったのかぁー……。

 ハイポーションでも、眠くなるって言うし。

 ぶっ倒れても、おかしくないわよ……。



「……アレ、濃いママで使うの、けっこう危ないんだかんね? 私、水で薄めて使うように言わなかったっけ……?」


「妹は、重度の呪いにかかっていました。問題なく全快し、残った聖薬は、土地の邪気を全て祓い飛ばし、我らの故郷は救われました」


「……! それは……まぁ、とても良かったと思うけどサ……」

「──判決ッッ! 妹さんと一緒に、どっかで幸せになってください! 以上っ!」



 マイスナが、手を上げながら、

 ぴしゃんと言った!

 うん……私も、マイスナと完全に同意見である。

 こういうの、ハッキリ言ってくれるので、

 とっても助かる!

 なして、私たちの下僕を志望するのか、

 イミがわからぬ……。

 そーゆーのは、いいんだってば。



「──いえ。それでは……私たちの気が済みません。どうか、下僕なり護衛なり、好きに我ら6人をお使いください」


「……──護衛、ですって?」

「大きく、でましたね──……」



 少し、カチンとくる。

 アンタら、私にぶっ飛ばされたの、忘れた?



「あのさぁ……。もう、バレてるから言うけど、アンタたち6人が束になっても、私たち片方にも勝てやしないわ?」

「自分より弱いと分かっている者に、護衛など任せる気はありません」


「至極、承知しています。しかし、先ほどのように、お二人・共に、鎧を着けておられていない時や──休息時の護衛など……やれる事は、あるはずです」



 こっ、コイツらぁぁあ……!!

 覗いてたんじゃ、ねっだろうなぁぁ……///。



「て、てめぇら、よくも、ヌケヌケと……!//////」

「あっ……/// アンティと私は、ふたりだけで、十二分に生きていけます! あなた達は、必要ないです! どうか、お引き取りください!」


「そうは……参りません。この大恩、返さずにはいられません」



 イヤに、食らいついてくるわ。

 ええーぃ、ややこしくなってきた!

 ベッドで足を組みながら、言う!



「もーっ!! あんた達が私たちに、もんのっっっすげぇ感謝してんのは、よォーく、分かったわよ! でもねぇ、私たちにだって、自分たちだけで生きていきたいっていう、欲? みたいなモンがあんのよ……! さっきの……その……/// プライベートの事だって、その……困るし! あなた達が助けてくれるような事は──たぶん、私たち二人だけでも、問題なく行える。そうでしょう?」


「「「「「「 …… 」」」」」」



 暗殺職のクランだけど、

 ここまで義理堅いとは、思わなかった。

 悪人では無いと、よく分かるわ。

 だからこそ、言ってやる。



「──運が良かったと割り切って、いーんじゃない?」


「「「「「「 ……ッ! 」」」」」」


「妹さんも、あんた達も……五体満足で、元気! なによりじゃない! 神様が、ちょっとした気まぐれで、サービスしてくれた……そう、思えばいいわ。一所懸命に生きてきて、思わぬ幸運に、ブチ当たった。人生でさ……そういう日があって、いいじゃない」


「「「「「「 …… 」」」」」」



 別に、勝手に私たちが、やった事。

 ボールを投げて、たまたま当たった。

 恩を返してもらう義理なんて、

 まるで無いのだ。



「気にする必要なんてない。全て忘れて、やり直せる。そうでしょう? ちゃんと、幸せになれ── 」






 ── ガ タ ア ァ ァ ア ア ン !!!




「「   」」




 このセリフを言い終わる前に、

 真ん中にいた、銅のヨロイが、

 すンごい勢いで立ち上がり、

 イスが、ぶっ飛んだ。




「じぶんたちが何をしたのか……わかっておいでなのですか?」


「「   」」



 私とマイスナは、呆気にとられた。

 目の前の彼女は、唸るように、

 せきが切られたように、喋り出す。



「死にものぐるいで……生きてきました。他人から見たら大して美しくもない、あの故郷のため……生き残った家族を救うために、全てを捨てて生きると、かたく、誓った……! どんな汚い仕事も、法に触れるギリギリの事も、全て、行いました……! 全ては、あの呪われた地から、育ててくれた両親の骨を探し出し……! あの醜くなった、可愛い妹を救い出すために……!! 何度、殺してやった方が楽かもと、考えたことか……!! 忘れた方が、どれだけ幸せかと……! だが、それは、永遠に無理だと、分かっていました……!! 忘れる事など……全てを忘れ、幸せになる事など……永遠に、ない! だから、私たちは……選んだ! 全てを賭し、金をかき集め、せめて、妹だけでもと……! 大神官を買収し、身体を売り、私たちの過去を取り戻す──そういう、計画を立てた!」


「「 ……、…… 」」


「それが……どうだ!! あなた達は、何をした! 斬りかかって来た無法者の傷を癒し、神秘の霊薬を与え、気にしなくていいから、とっとと忘れてくれ、と言うッッ……!! 信じ難いことです……!! 今、あの腐った血まみれの内臓をブチまけたような土地は、見たこともない綺麗な花畑で、一面を覆われている……!! この気持ちが、わかりますかっ!! わ、私たちは……確かに見た! 大地が浄化され、光り、輝く中で──父さんと母さんが、こちらを見ながら笑って、天へと消えていった──……!」


「「 …… 」」


「五日ほど前に、墓を建てましたっ……! ささやかですが、見渡す限りの花畑の中に建つ、なんと美しい墓か……! 妹は、すっかり美しい身体になって、夢を追いかけはじめた! どうだ……さぁ、私たちを見ろ!! 全ての私たちの悪行は、ぜんぶが、無かった事にはならない! だが、どうだ! 身体は清いままで、金は、全て残っている……!! 全てを汚す覚悟で来た私たちが、やり直すための全てを、今、持ってしまっている!!!」


「「 …… 」」


「ふ、ふ、ふざけるな……。そうでは、ない。そうであっては……ならないのです……。気まぐれでは……済まされない。あなたたちは、自分たちが成した事の……大きさを、わかっていない」


「「 …… 」」


「忘れる事は……できない。のうのうと、幸せに、なる事など……。貴女たちは……そういう、そういう事を、したのだ……」


「「 …… 」」




 銅のヨロイの肩は震え、

 声は、泣いているようだった。


 私たちは、態度を改める必要がある。

 これは……困ったことになった。




「……わかった。ちょっと待って……。ちょっと、考えさせて……」

「ぅーん……」




 どうやら、私とマイスナは、

 ガッツリと、やらかしたようだ。


 つまり……私たちは、

 この人たちの覚悟や誇りをブチ壊し、

 永遠に、忘れる事のできないほどの……、

 理不尽な規模の大恩を、

 お届け、しちゃったのだ────。


 こ、これは……本当に、困ったな……。

 いや、しかし、でもなぁ──……。




「……むむぅー……」

「ど……どーする?」


「にょきっとなー☆」

「かんかんくるぅ?」




 金の仮面を手で押さえ、

 どうしたもんかと考えていたが、

 何を言ったらよいのか、

 まるで、出てこにゃい……。


 悩んでいると、

 銅の お姉さんの一人から、声がけがあった。



「貴女方のクランは、存在するのですか?」



 マイスナが答えてくれる。



「レター・ライダーズという……クランとして活動しています」


「それに、ぜひ私達も参加させていただきたい」


「それは……できないわ」



 私が、反射的に即答する。

 すぐに、お姉さんの一人から、返事がくる。



「是が非にも、お願いしたい。私たちは、貴女達の助けとなりたい。伝わったでしょう。いただいたモノが……大き過ぎるのです」



 んぁー……。

 出来るだけ、穏やかに伝える事にした。



「聞いて……。これは、感情だけで言ってるんじゃない。私たちには……あなた達が思うより、ずっと……人には言えない秘密が多い。だからこその、二人だけのクランなの。誰かをクランに入れるとなると──私たちに目をかけてくれている人の心労を……安易に増やす事になってしまう」




 ヒゲイドさんの采配は、

 思いやりからきている。

 裏切るという選択肢は無い。



「……ご安心を。どのような秘密も、命に替えても、お守りします。先ほどの逢瀬(おうせ)の事も、決して他言は────ぶえっ」

「──にょきっと♪」



 うさ丸を顔に投げつけ、黙らせる。



「ばっ、バーカっ……/// ……いいッ? これは、信用の問題なのよ。ぜったいに……クランメンバーは増やさない。私たちに恩義を感じているなら、これは……理解してちょうだい」


「「「「「「 ……、…… 」」」」」」



 マイスナが、続けて言う。



「ブロンズワークスというクランは……残っているんですよね? それは、絶対に無くさないでください。あなた達がキワドイ仕事をしてきたなら……次にクランを作り直そうとしたら、許可が降りないかもしれません」



 マイスナさすが。

 その観点は無かった。


 銅のお姉さんたちは、

 不服そうだが……飲み込んだようだ。



「「「「「 …… 」」」」」

「……承りました。ですが、私たち一族は、これより貴女様方の家系を見守ろうと、決めております」



 まーた、すげぇこと言い出したで!

 この褐色おねぇさんはぁ──……!!



「ほ、本気で言ってんの……!?」

「……、一生、という事ですか……?」


「はい、本気です。両親の魂を救い、故郷を清め、家族を助けていただいた──。とても、一代で返せる御恩ではありません」


「いや、そんな……あんた達、どうすんの。おばあちゃんになっても、ずっとそんな事するつもり……??」


「適当な男と子を作り、教育します」


「バカやろぉー……!! ぁ、あのねぇ!! 考えなしに恩を売った無責任さは、そりゃ認めるわよ! けどさぁ……せっかく、やり直せるベースがあんだから! 適当に身体ゆだねるなんてマネは、ぜったいにやめなさい……!」

「好きな人ができたら、それが、いちばんですから」


「はい。善処します」


「……、……だいたい、私たち一族って……、一代で終わる可能性大、だし?」

「多分、血の繋がった子供は無理だと思っていますから」



 ギギ、と、六つの銅のヨロイに、

 わずかな動揺が走った。



「「「「「 …… 」」」」」

「それは……男性と結婚しないという意味ですか?」



 は……、わかってんじゃないのよ。



「ぁー……カンチガイしないでよ? 別に、男性に嫌悪感があるとかじゃないの」

「アンティ、見せた方が早い」



 ──ぐっ。


 ……!

 マイスナに唇を奪われ、

 お互いのおへそに、紋章が現れる。


 肌に、根を張られる感覚。

 熱い、直線で構成される流路に、

 (ほほ)くらいまで侵食されながら、

 そのまま、しゃべった。



「「「「「「 …… 」」」」」」


「……訳あって、私たち二人は多分、一生……離れられない。それに私は、この子を心から愛してる。たとえ、どんな事があったとしても……添い遂げたいと思っている」

「どうしても子供を育てたくなったら、養子を貰おうと考えています。私たちは、私たちで終わります。未来に……残るモノは、保証できない」


「……血を残そうとは、思わないのですか?」


「そりゃ、血の繋がりは大切だと思う。でも、家族である、という事の、ぜったいの条件では無い。そうでしょう?」


「「「「「「 ……! 」」」」」」


「血が繋がっていなくても、大切な家族になっている人たちは、たくさんいると思う。私たちのように」


「「「「「 …… 」」」」」

「……、心から、その御意見に、賛同します」



 ──?

 なにやら含みのある返答だった。

 でも……銅のヨロイの上からも、

 ずいぶん、深く納得しているように見えた。



「未来の事は、さておき──お仕えする、お許しはいただけますでしょうか?」


「ぃ、いや、お許しって……」

「ぁの、ぶっちゃけ、困るのですが……」



 んぅー……、弱った。

 私はモチロン、マイスナもだが。

 つまり、どうも、

 真っ直ぐな意見に弱いのだ。


 誠実な思いには、誠実に返す。

 食堂娘として育った、接客魂の基本だ。


 くそったれ、身から出たサビってやつか。

 さいきん、ヒミツの流出がヤバぃ……!

 でも、正直に対応するしか……ないか。

 どっちくしょう……!

 


「……困惑は、おおきいわ。掻き回さないで欲しいとも、思ってる。それは……わかるわね?」


「「「「「「 ……(コクリ) 」」」」」」



 銅のお姉さんたちは、頷く。

 はぁ……だが、それでも。

 引き下がれない恩義を感じているという事を。

 私たちの方も……理解してしまった。


 妥協……しなくちゃ、いけない、か──……。



「んぅ〜〜……。──いざと言う時は、助けてもらうかもしんない! 今日の所は……それで、カンベンして」

「久しぶりの、お昼おうちデートなんです……。察してください!」


「「「「「「 (かしこ)まりました 」」」」」」



 銅チーム、いっせいに、音も無く、立った。

 さ、さすが、暗殺職……つーか、

 ホント、どうやって侵入されたのよ……。



「愛を育んでいらっしゃる時に、申し訳ありませんでした」



 マイスナの方を見ると、

 この子も、赤面していた。

 ほんっと、かんべんすれ……。



「本日の最後に、ひとつだけ……よろしいでしょうか」


「「 な、なんですかっ!? 」」



 先頭の銅お姉さんが、

 自分の鎧の胸を辺りを触りながら、

 そっと言う。



「この……造り直していただいた、素晴らしい銅の鎧ですが……流石に、ここまでの鎧を自分たちで手入れする自信は、毛頭ないのです。どこか……腕の良い、行きつけの鍛冶屋など、御紹介願えませんでしょうか?」


「む"っ……」

「それ、なんか、光ってますね」



 マイスナの言うとおり、

 6人おそろいの銅ヨロイは、

 何故か……所々、

 淡く、青く光っていた。

 ……??? なんだ、アレ……。

 まさに、"青銅(ブロンズ)"──って感じだ。



「どうやら、祝福の効果が永続的にかかっているようなのです」


「そうなの!?」

「加護つきのヨロイ、という事ですか?」



 私たちならメンテナンスできるかも、

 と思ったけんども!

 なんか、ヨロイが進化しちゃってる……!?

 流石に、食堂娘には手があまるってぇ!!


 それに、毎回、ヨロイの整備のために、

 私たちの聖域に踏み込まれる……?

 そ、そにゃコトがあって、

 なるものかぁぁああああ──っ!!!//////



「ちなみに、私たちは半分、お尋ね者のような者ですので……」

「できれば、ワケありの者にも、寛容な鍛冶屋など知っておられたら、とても……有り難いのですが──」




 む、難しいコト、言いやがってぇぇ……!!

 ヨロイに詳しくって、

 ワケありの客でも、

 大丈夫なトコロ、ですって……!?

 

 ──そ、そんにゃの!!



 アソコしか、ないじゃない、のッッ──!!





「「 ……っ、…… 」」


「……? アンティ様? マイスナ様?」





 くっ……ダメだ!

 他に、思いつかねぇ。


 し、しかたねぇ……。

 アソコなら、肌着もぜんぶ、

 そろうだろうし……。


 私とマイスナは、顔を見合わし。

 うむむむむぅ、と考えた後、

 意を決して、教えてあげた!



「う"っ、腕はいいけど──かぁ、なぁ、りぃ、店主に難がある……お店なら、紹介できるわ……ッ!?」

「腕は素晴らしいですが、初見さんには、キビしいですよ……」


「……と、仰いますと?」


「「 まず……隠す、面積が少ない…… 」」


「「「「「「 ??? 」」」」」」



 もういい。

 地図、書いてあげた。

 超・正確。



「ほっ、ほら──!! これ、持っていきなさい!! つーか、その店が無理だったら、他は知んないからっ、あきらめなさいよっ!!?」

「さあ、出て行って!!! もう、出て行ってくださーいっ!!!」



「……! 有り難く存じます」


「「「「「 では── 」」」」」





「「 ……! 」」




 姿が、掻き消える。

 うっそぉ……。


 コレ、やられる側は、

 こんな感じなのね……。





「にょきっとなぁあああああ!!」

「かんかん? かんかんくる」


 


 少しの、静寂の間。

 まだ、高い太陽の位置。



 私たちは────身悶(みもだ)える。





「──ぬぁぁぁぁあああああぁぁぁ〜〜〜〜ッッ……/////////」

「──ばかばかばかばかばかぁぁぁ〜〜〜〜ッッ……/////////」



『────ご:ご愁傷様です……☼』

『>>>……これ、ヒゲイド氏には、なんて言うんだぃ……?』



 う、うるしゃ──い!!

 これ以上、心労かけて、どーすんだぁ!!

 モチっ、だんまりだっ、だんまりィっ!!

 バレるまでは、ゼッタイ、

 言わないもーんぅ!!!



「もー!!! 神様の、バカぁぁああああ──!!!」

「私たちが、何したって言うんですかぁああ──!!!」


『────す:すみません……☼』



 あ、そうでしたね。



「……えぇーい!!! 服脱げ、マイスナぁああ──!!! 記憶がトぶくらいぃ徹底的に、トコトン、やってやらぁあああ──!!!」

「うぇーい!!! 敵味方、ドッキングぅううううううう──!!!」





 ──ギャォオオオオオオオンンン!!?

 ──キュウウイイイイイィィ──!!?





 記憶を消し去る努力をするため、

 私たちは、全力で布団を被った!






(・ω・ )次回、超たのしみじゃん。

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[一言] ご無沙汰していて未読がたまってた中で、テキトーにぽちったらクリティカルに人情ものにぶちあたりました。 泣いた。 この「書き手」ってばっ! 泣いた。
[気になる点] アンちゃん両親思いだからなぁ、良い両親だし是非孫は見せて上げたいと思うんだがなぁ。 これからどうなるやら。 [一言] 今後とも応援しております!
[良い点] ブロンズワークスの皆々様、押しが強いっ!! 僕だったら押された勢いで吹っ飛んじゃうねっ!! [気になる点] さぁて、ブロンズワークスの未来は…いったいどうなるのやら(笑) [一言] 侵入し…
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