わーぷ・どらいぶ さーしーえー
【悲報】愛用の100均の水彩スケッチブックが、
半年間、入荷しません……(°-°;)
※いま、24冊目!
世界の皆さん、こんにちは。
マイスナです。
やっと血まみれ週間(※意訳)が終わり、
私たちは今、人系がいない野外に来ています。
そう、今から始めるのは、
誰にも言えない──ヒミツの実験です。
『────震音感知:視覚感知:
────共に反応:無☼
────人型生命体の反応は:
────半径100メルトルテ圏内に:
────私達以外は皆無と断定☼』
『>>>よし……じゃ、さっそく始めようか! まず、危険度が低いものから試したい所だけど──』
「や、それなんだケドさ……? 逆に、未知数のモノから やった方が、いーんじゃん? ホラ、2人は……何だかんだ言って身内だし。安心度が段違いっていぅか……」
『>>>む、そうかぃ……? きみがそう言うなら。さっすが、夏休みの宿題を溜めないタイプは、言うことが違うねぇー!』
「どーゆーイミよ……苦手な方からやるのは鉄則!」
『────同意しました☼
────アンティ。対象を手元に出現させます。
────:一応:警戒を──☼』
「ん! ばっちこい!」
「どうなるだろうね、アンティ」
「にょきっとぉー!」
「くゅうー? くゆっ!」
私は、少し離れた所で、
アンティを見ています。
今日のモフモフ係は、私です。
腕の中には、カンクルが。
私の仮面の二本角を、うさ丸が持っています。
頭を踏まれていますね。
ゆるす。
「にょんやぁー♪」
「かんかーん!」
クラウンさんが、音声入力。
すると、アイテムが転送されます。
空気が振動するような、
不思議な感覚がします──。
『────アイテム選択:"わーぷ・どらいぶ"☼』
「──……っ!」
──コォ・ォ・ぉ・ぉ・おん・・・・・!!
──くぅぉぉおおおおおんん・・・・・!!
すごい反響音が響いて、
どこかで、鳥が飛び立つ音がしました。
アンティは、自分の手を見ています。
それは、顕現していました。
「これ……は──……光の……波紋?」
アンティの黄金の右手に出現したのは、
半透明の──歯車です。
それは、何重かに重なっていて、
歯の部分は……ほとんど見えません。
ライトグリーンに光る、お皿のようですが、
確かに、歯車のカタチをしています。
ふわふわと浮いて、
くるくると回っています。
あ、やっぱり、お皿に見えますね。
「……あのカニさんがくれたお皿にしては──ずいぶん可愛らしいわね?」
そうです、これは──。
あの、"女神モドキさん"、
"ワープ・ゲイザー"という巨大カニさんから、
ドロップした、" どらいぶ " なのです……!
「コレ……持たなくても、手のひらの上で浮いてるわ。ぉ、指が……曲げられない?? 変な抵抗がある!」
『>>>そうなのかぃ? 抵抗って、どんな感じの?』
「えーっとねぇ……見えないオッパイを揉んでるみたいな?」
『>>>はーい、後で生徒指導室ね?』
「え? なんでよ。きひひ……♪」
『>>>恥を忍べッッ!! 変な空気になんだろがッッ!?』
「そっちも良くわかる例えでしょ?」
『────あははは……☼
────アンティ:怒りますよ☼』
え……透明のおっぱい? なんだと。
ふざけんなよ、どらいぶ、そこへなおれ。
アンティが揉んでいい乳は、私ノダケダァァァァ。
『────" わーぷ・どらいぶ "☼
────完全に:時限結晶内から:
────外部空間へと露出を確認☼
────分析を:試みています……☼』
「っ!? 待って! "むねあて"が、反応してる──!」
『>>>ッ! 展開しかけているのかッ!? 後輩ちゃんッ!! 胸元から、"どらいぶ"を離せ──!!』
「ちょっとおおおおおお!!」
──ガシャ……! こぉおオン──!!
アンティのスーツの胸部装甲は、
" さいしょのむねあて "という、
特殊なアイテムです。
ぜったいに破壊できない素材らしく、
不思議なチカラを持っています。
でも、私が触ったら、
柔らかそうな素材でした。
ちゃんと揉めます。
展開し、引き出しのように、
内部機構を露出できます。
円柱状の、積層構造の……ソレは。
まるで、心臓の代わりのモノを、
大切に、しまっていたかのような────。
「……──勝手に"むねあて"が開いたわ! だいじょうぶ……手元にある"わーぷ・どらいぶ"は、まだ残ってる!」
『>>>あっぶねぇ……。容赦なく、強制的に起動してしまうタイプかと思ったよ! ヒヤヒヤさせてくれんなぁ!』
『────分析完了☼
────結果を表示します☼』
「ぉ? どれどれ……」
アンティと私の視界の前に、
透明の、お手紙の窓が表示されました。
──ヴォン・・!!
────────────────────
アイテム名:【 わーぷ・どらいぶ 】
────────────────
◎視界野領域にてDS(PS)の
生体オブジェクトを転送する
◎確認しているDSデバイスへと
生体オブジェクトを転送する
────────────────────
「……???」
『────二つの主要な能力が:
────あるようですね☼』
『>>>"生体オブジェクトの転送"……!! これって!!』
「ちょい待ち……私の視界に、なんか映ってるわ! あによコレ、"マーカー"……?」
あ、なんだろう……。
アンティの見ている地面に、
歯車型の、光の輪っか……みたいなものが、
映っていますね。
へなちょこ魔法陣みたいにも見えますが……、
あ、動いた。
どうやら、
アンティの視線に合わせて、
光のマークが移動するみたいです。
アンティは、あそこを見ているんだ……。
「ぁ……マイスナも?」
「うん、わたしにも見えるね」
『────座標を……指定できる:
────という事なのでしょうか☼』
『>>>取り出しただけで、ひとつめのスキルが発動しているのか……? どうする、後輩ちゃん』
「うーん……。一回、やってみよっか。ラチあかないもんね?」
アンティは覚悟を決めて、
"むねあて"から展開した"引き出し"に向けて、
右手の"光の歯車のディスク"を構えます。
ふぅん……。
アンティの胸の引き出しは、
薄い円盤状のモノを、
横から挿し込んで、何枚も保管できるような、
そんな構造をしているんだね。
──キィィィイイイインンン──!!!
──ぐぉぉぉおおおおンンン・・・!!!
アンティと、クラウンさんの、
透明な声が、光る空間に響きました──……!
「" わーぷ・どらいぶ "── オ ン ──……!」
『────わ、あ、ぷ、ど、ら、い、ぶ──☼
────とらんすぽーと:くらうにんぐ──☼』
─ ── ─── ──────!!!!!
アンティが掛け声と共に、
右手に浮いている透明の歯車を、
むねあての引き出しへと、滑り込ませます──!
すると──……!!
「──ッっっ!?」
「アンティ!」
驚くことが起きました。
アンティが……!
足元から出現した、歯車の輪っかに、
フッ、と、飲み込まれたのです!
消えた……!?
輪が、上にシュッ、と持ちあがったと思ったら、
アンティの姿は──もう無くなっています!
私は、恐怖シマス……!!
アンティハ、ドコ……!?
すぐさま、"反射速度"を発動して、
アンティの行方を探します!
幸い、その場所は、すぐに分かりました!
さっき、アンティが見ていた地面──。
──"光の歯車の紋章"が、映っていた場所!!
──……ぐ ぅ ぉ お お お ん ん・・・!!
「──……アンティ!!」
「──ぉ……??」
空気が震える音がして、
私の身長くらいの高さに出現した、
歯車の輪っかが……地面へと、
輪投げのように、ストンと落ちた!
そこに、アンティが現れました!
よかった……とても、ホッとします!
さっきアンティが居た場所とは、
7メルトルテくらい離れています。
ビックリした……。
この、"どらいぶ"の、能力って───……!
「──移動、してるッ……!?」
『────周囲の地形と照合し:座標を確認☼
────間違いありません☼
────選択した座標へ:
────0.7秒で転移されました☼』
『>>>きみの身体……!! 一瞬、時限結晶内に、完全に格納されたぞッ──!?』
「マジっすか……!!」
どうやら……"わーぷ・どらいぶ"は、
バッグ歯車の機能を利用して、
アンティの身体を瞬時に移動できる、
とんでもないモノのようです。
『────スキルの冷却時間を確認しました☼
────再使用までの時間……判別不可能判定☼
────移動距離に比例すると予測できます☼
────驚きましたね☼』
「ぁ、ここ……さっき、私が見てた所か! あぶなっ。遠く見てたら、ヤバかったじゃん!」
『>>>いや、これ……!! 画期的な移動方法なんじゃないのかぃ……ッ!!』
私も、思ったことを、
素直に意見として言ってみます。
「──見える場所に移動できるなら、岩や木、壁の中なんかに誤って移動しなくて済むから、安全かもしれません。ただ……空とかは危険だと思います。例えば……真上を見上げたままで、その"どらいぶ"を使ったら……雲の上まで、一瞬で飛ばされるかもしれません」
「……! そっか、それは怖いわね……。アンタから離れるのは、ちょっと、有り得ないっていうか……」
「そうだね……離れ過ぎたら、この間みたいに暴走しちゃうかもしれないもんね……」
「そーいぅ問題じゃねーし。私が……アンタのそばに居たいのよ」
は?
あ、の……。
これ以上ホレたら、狂うけど?
やばぁ、足ふるえてきた。
あばばばばば……♡♡♡
もうヤダー、ささげるのは、
心と体と人生だけじゃ足りない? ん?
内臓? 内臓もささげよっか?
全部あげるから、全部もらうよ?
あ、それじゃ今と一緒か。
わーぃ♪♪ アンティ、好きーっ♪♪♪
『────はい……先日の件もあります☼
────余程の事態でない限りは:
────地表に接した移動運用を:
────した方が良さそうです☼』
『>>>座標指定をミスったら、かなり怖いな。後輩ちゃんだけじゃなく、紫電ちゃんにも使えるか試さなくちゃね』
『────ええ☼
────冷却時間が終了したら:
────安全に考慮して:
────短距離で:トライしましょう☼』
『>>>そうだね。おや……? こっちの機能は、冷却時間が適応されてないんじゃないか……? よっと──』
「えっ、なに、どゆこと……──きゃっ……!?」
──ヴォん・・・!!
────────────────────
移動する [DSデバイス]を
選択してください
────────────────
。
。
。
。
。
。
。
─────────────────────
「び、びっくりした……。見たことない、光の地図が表示されたよ! どゆことよっ!? うわ、顔にちっか……!」
『────複数の光点が表示されています☼
────選択できる:
────座標ポイントのようですね☼』
『>>>DS……って、"ダンジョン・サーバー"の略、だよな……?』
「にょんやぁー!」
「くゆゆゅゅゅ」
「ねぇ、アンティ。私とアンティの身体、淡く光ってるね」
「ほ、ホントだね……! ぇ……まさか。この地図の、点のトコロに──移動できる、って事ぉおー!? 何それ、超ヤバいじゃん! そんなの、ありえる……?」
「ちょっと、おじゃまします」
「にょきっとな♪」
アンティの顔に近づいて、
横から、光の地図を覗き込んでみます。
あ、この地図……やっぱり。
「アンティ。これ、ドニオスの街だねー」
「うん、そだね。……あれ? この、光の点の場所……、なんか……──ああッッ──!!」
アンティが、何かに気づいたみたいです!
「──" じかん箱 "だわっ!! こ、この光の点!! 今まで行った事のある、"じかん箱"の場所よっ!! クラウン!」
『────レディ☼
────行動ログとの:照合を試みます☼』
『>>>なるほど、ソレだ! 間違いないよ』
アンティの、言う通りです。
この地図の広場の……光の点の位置。
確かに、"じかん箱"があったはずです。
クラウンさんが、肯定します。
『────ドンピシャです☼
────座標ポイントは:
────"じかん箱"の設置箇所と完全に一致☼』
「ふぅぅぅうううい────んッッ! 封印よっっ!! はいっ!!! この能力、つかっちゃだめぇぇぇええ──!!!」
『>>>はっはっは……これは面倒だねー』
" じかん箱 "というのは、
教会が管理している特殊な投影型の術式で、
透明の歯車で構成された、
数字で現在時刻が浮かび上がる便利なやつです。
それなりに大きな街にのみ設置され、
例えば……ちょっと小さめの街、
アンティの故郷の、カーディフの街とかには、
日時計などしか、ありません。
「" じかん箱 "はねぇっ! 街の、みーぃんなが見れる、だだっ広い公園とか……!! 大通りに、ゼッタイ設置してあんのよっっ!? そこに……いきなり私たちが、ピューん、バァーぁン!!! って、瞬間移動してみなさいなっ!?」
『────目撃情報:過多で:
────どえらい事に:なりそうですね……☼』
『>>>ははは……昼間は、あんまり使えないかなー?』
「やっ、いやいやいやいや、そーいぅモンダイじゃないかんね……っ!? 夜でも、ぶっちゃけバクチだわよッ!? ちょっと光ってっから……たまに本とか読んでる、おじいちゃんとか居るもん……っ!! いきなり私たちが登場したら、はーい、こんばんは☆ じゃ、すまないかんねッ!!!??」
便利そうですが、
目撃者の息の根を止めなきゃいけないかな?
おウチでイチャイチャしてるときに、
取材とか来たら、激おこします。
「──うっわ!? し、しかも、この地図……パートリッジの街の"じかん箱"も、ばっちり表示されてんじゃん……。いや! つーかぁ!! 王都の……お城の中のヤツまで、がっつり選択肢にあるよ……!? うわぁ……不法侵入、やり放題じゃん……」
アンティに城壁など関係ないです。
殴り壊すまでもありません。
「緊急避難時にしかぁぁあ〜〜〜〜、
使いまぁ────せ ん っ !
ぷ ぃ っ ! 」
は?
なに、今のアンティ……可愛いかよ。
内臓? 内臓でいい?
み も だ え る 。
「にょきっとぉ……」
「くゆーぅ??」
『────使用法さえ間違わなければ:
────良い切り札になりそうな:
────"デバイス"なのですが……☼』
『>>>お城に無断でお邪魔できるなんて、めっちゃいいじゃん!! やー!! 最高だねっ! お宝だなぁー!』
「アホぉ……! 親に顔向けできねぇだろぉがぁ……! ただでさえ、色々ピンチなんだぞぉ……!」
涙目アンティも、尊いです。
あの水分は、私のものだー。
だれにもわたさん。
「はぁ……せめて、隠れた路地とかに移動できるなら、配達が楽になったかもしれないのになぁ……」
『────うーん:緊急回避用でしょうか☼
────マイスナとの同時転移が必須ですね☼』
『>>>片方だけ長距離移動なんて、最悪だもんな』
は……?
アンティと、一瞬で、はなればなれ……?
発狂しますよ……?
泣きながら、地形を変えるかもしれません。
「先日の暴走を考えると……当たりだけど、ハズレって感じ……?」
『────わかります☼』
『>>>反則級の能力だと思うけどなぁー』
──ガシャ・コォオンン・・・!
アンティは、" わーぷ・どらいぶ "を、
" さいしょのむねあて "から抜き取り、
バッグ歯車へと、しまいます。
──きゅぅうううんん・・・──。
「はぁ……じゃ、次、やっていきましょー」
『────実体化投影します☼
────経験値を消耗しますよ☼』
「しょうがないね。どっちから呼ぶの?」
『>>>ま、まずは……あちらさんかな?』
──ジ・ジ・ジ。
──サァァァ────…………!
アンティと、私の前に。
女性型の幻影が、構成されていきます────。
それは、幽霊のようでもあり。
精霊のようでもあります。
神秘のホログラム。
無限から生まれた何か。
その人物が、
パチリ、と目を開きます──。
「──やっほ。気分は、どぅ?」
アンティは、話しかけました。
((((;゜Д゜))))だれだっ……!?