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奴は空からやってくる

 ゴゴゴ……ガコン


「ふぅ……」


 部屋の雨戸を開けると、夕焼けが射し込んだ。


「わぁ……!!」


 ……綺麗!

 ここ、景色、最高だわ。

 ドニオスが、端から端まで、一望できる。

 ここが家賃タダとか、超、お得すぎる。


 照らし出された部屋は、からっぽの、ピッカピカだ。


 ふふ、変な場所だね。

 煙突のような搭の上に、小さなお家が建っているんだもの。

 部屋の中は、カーディフの私の部屋よりかは、わずかに広い。

 歯車パワーのお陰で、かなり綺麗になっている。

 魔力たっぷりの水の魔石も、ちゃんと付いている。

 お湯は、山火事で沸かせそうだ。


 この高さは普通だと、キッティさんの言うように、家具を運び込むのに一苦労だろう。

 けど、私はもう、あらかた歯車に突っ込んできてるからね。

 後で、ゆっくり家具の場所を考えよう!


 わぁ、楽しい!

 新しい部屋作りって、なんてワクワクするんだろう!


 看板娘のクルルカン、一人暮らし、始めました!




 にしても、綺麗……。



 と、景色に見とれてたら──────



「──きゃああ────────!!!!!」



 地上のギルドのほうから、ここまで届く、悲鳴が聞こえた!




「!! 今の、キッティさん!?」

『────声紋分析:適合99パセルテルジ。本人です。』

「一体なにがあったの……!」


 下のギルドの方を見る!

 あ! あれ、受付の天窓だわ!!

 丸く空いた窓から、受付の中が、少しだけ見える!


 何人かが、一箇所に走っていってるみたい!

 丸い大きめの天窓の下を、数人が、横切る姿が見えた!


 あれって……多分キッティさんの所に集まってるよね……。


 ま、まさか!


「大人数の男に、襲われてるとか!?」

『────……。』


「──たすけて────────!!!」


「うわぁ! た、たいへんだ!!」


 ど、どうしよう!

 とりあえず早く降りなくっちゃ!

 こうしてはいられない!

 ────はやく、はやく、いかないと!!



 気づけば私は、手すりを飛び越え、空中へ踊り出ていた!



「クラウン! 重力補整!! 着地ぎりぎり!」

『────仔細把握。カウント開始。』


 コォォオオオオオ────……!


 おちる、おちる!

 白い塔を、夕焼けの中、真っ逆さまだ!!

 キッティさんとは、昨日会ったばっかりだけど、

 もう、他人とは思えない!

 これから、苦楽を共にする仲になるんだ!


「助けを求めるならば! どこへだって、駆けつけてやるわ!」

『────地表接近。慣性制御。』

「マフラー展開! 風も使う!」


 ────シュバッッ!!!

 ────きゅいいいいいん!!



 さぁ。


 受付嬢に手ぇ出してるのは、


 どこの、どいつだ。










 ひゅるるるるるる……


「ん?」


 るるるるるるるる……


「お?」

「なんだこの音」


 ルルルルルルルル……


「「「???」」」


 ヒュッ!


 ────ドゴォォオオオオオオオン!!!

 ────キィイイ──────────ン!!!


「「「うおわああああああああああ!!!」」」







 

 よぉ! お前らァ!


 野菜食ってるか!?

 あ? くえよッ!!


 おれの名前は、カイセッツ・スルーゼー!

 しがない冒険者さ!


 ……ハッ!

 お前らの食生活なんざ、どうでもいい!

 あっ、口に虫が入った!

 ペッ!


 今……起こった事を、ありのままに話すぜッ!


 おれは、受付での騒ぎの中、奇妙な音をきいた……

 そして、ものすげぇ音がしたと思ったら、天窓の下に、クルルカンの格好をした女が降り立っていた……。


 な……何を言っているのか わからねーと思うが、おれも、なにが起こっているのか、わからねぇ……

 頭がどうにかなりそうだぜ……。

 俺が街を離れているあいだに、いったい何があったんだ!

 仮装大会とか、ドッキリ企画だとか、そんなヤワなもんじゃあ、絶対ねえ……

 世界の常識が、崩壊する序章を、味わったぜ……。


 それから、いきなりぶっ壊れたデカいドアを支えてるキッティちゃんを見ると、肩のマフラーがシュルシュルと縮んでよ……。

 その場から動こうとしたようだが、床に金色の足がめり込んで、抜けなかったんだぜ……!

 そこに、ギルマスのヒゲイドが来てよ……。

 両側から、ほっぺたを掴んで、持ち上げやがったんだ……

 ほっぺた、でだぜ……!

 クルルカンも、周りの冒険者も、もうびっくりさ……。

 泣き声は、ずいぶん可愛らしかったぜ……!



 ギルマスが、クルルカンを床材から引っこ抜いている間に、おれ達は、デカいドアを退けて、キッティちゃんを助けだしたんだ……。

 でも、クルルカンのほうは、どうすることも出来なかったんだぜ……。

 なんせ、ギルマスの腕も合わせて、4メルトルテも上空に、ほっぺたが固定されてるんだぜ……。


 おれは、久しぶりに、自分の無力さってモンを思い知ったぜ……。


 ていうか、このクルルカンのお嬢ちゃんは、なんで、空から降ってきたんだぜ……。




「……きっさまぁぁあ〜〜!!

 力を隠す気があるのかああぁ〜〜〜〜!!!!!」


「びゃわわあああ〜〜!!

 ぎょめにゅなしゃいぃぃい〜〜〜〜!!!」





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