銀のウロコ さーしーえー
挿し絵を追加。(●´ω`●)
「じゃ……リビ、そこで見てろよ?」
「エコたん、怖かったら目、とじてねー」
お姉さま達が、鎧に食われる所を、
ナマで、ガッツリ見た。
── ギ ャ オ オ オ オ オ ン ……!!!
── ギ ゥ ウ イ イ イ イ ン ……!!!
「「 、…… 」」
正直に言うと、さいしょは。
パンいちで立つ、
御二人のあまりの美しさに。
エコに見せても良いものか、
悩ましいとさえ思った。
………、……うつく、し、すぎる……。
同性でも、惚れるレベル。
──が。
装着が始まった時点で、
そんな生ぬるい火照りが吹っ飛ぶほど。
それは、凄まじいものだった。
「…っ」
「ひっ─、」
絡みつく、筋肉。
締めつけられる、身体。
噛み砕かれるような、装甲。
──食われている。
おぞましいとさえ感じ、
自分の身体だったらと想像し、
知らぬうちに、震えている。
それを、小バカにするかのように、
小気味よい音が鳴って。
さいごに、仮面は、装着された──。
── き ィ ン ん ・・・!
── ギ ぃ ン ん ・・・!
肉の暴走が、
少女の肉体に、
ムリヤリ、封印されるかのように。
金と、銀の、装甲の境い目は、
無くなっていく。
黄金の義賊と、花の狂銀。
語りかける──。
「……あによ。そ、そーんな顔になるほど?」
「刺激……つよかったです?」
「「……」」
エコと私は、なんて答えていいか、
わからなかった。
──。
「みんな……行っちゃったのね」
「少し、さびしいねー」
「「……」」
私は、少し頭を冷やすために、
椅子に座って、両ひじを、両ひざに立てて、
顔を、手で支えている。
エコが、ちょっと心配そうな目で、
隣に座っていた。
先ほどの衝撃的な変身シーンを、
紛らわすかのように、言葉を放つ。
「ああ見えて彼らも……各地方から頼りにされる、至高の冒険者ですからね。一箇所に集まりすぎると、あらぬ誤解を受けることもあると、知っていますから──……」
「……それ、あんまり聞いてて、気持ちよくないわね」
「リビっち、子供っぽくないなーっ」
「ふふ……同感ですわ」
「クマさん……よろしくって言ってたよ!」
プレミオムズ達は、あっさりと霧散した。
今朝早く、出立したのだと言う。
ほんの少しだけ遅く起きたら、
お姉様方と、エコしか居なかったのだ。
「えっと、エコちゃんは……ここにいるの?」
「にょきっと」
「……!」
エコは、言葉に詰まったようだった。
私は……素直に、そのまま言う事にする。
「審議局で……エコの職場で、クーデターが起きたんです。あそこの神官は、子供に人体実験など、平気でしていましたから──……」
「「……ッ!!」」
さすがに、お姉様たちも、
驚いているようだった。
「……ほんとなの?」
「……」
「……はぃ」
「──なので。私の名の元に保護する事に致しました。恐らく、数ヶ月か……数年は、こちらに滞在します」
「何か……力に、なれることは?」
「子供を道具にする奴らに、未来など無い」
「ふふ、安心してください。すでに、全てが終わっています」
「……うんっ」
私の笑みを見て、義賊さまと狂銀さまは、
肩透かしを食らったような、
キョトンとした顔になる。
「今回の……この街を救っていただいただけで、本当に……十分過ぎるのですよ」
「かんくゆっ、ぷしっ!」
飾りのない、感謝の気持ちがあった。
まぁ……他のプレミオムズにも、
感謝しといてあげても……いい。
ただ、このふたりだった。
この、ふたりじゃなきゃ……、
たぶん、ダメだったのだ。
「……心苦しい報告があります」
「あによ」
「今回の件は……隠蔽する事にいたしました」
「たすかります」
「ですが……それは、正式にギルドから、あなた方に依頼が成されなかった。そういう……形になると、いう事です……」
「? なにが言いたいの?」
「イレギュラーコールにすら、ならない……。今から書類を捏造しては、ギルドクルーに、いらぬ情報を与える事になりかねません……。正式な形で、ギルドから……謝礼が、出せない……! それに、今は──」
「──薬草不足の街のために、お金が必要、でしょ──?」
「……!! そこまで、わかっていて……!」
グワリと、膨らむ心を。
なんとか、押し留める。
「──秘密を守ってくれる。それが、報酬よ」
「うんっ」
当然のように、言われた。
「私たちが……ここに居られるのは、なんでだと思う?」
「……?」
黄金の義賊の問いに、
私は首をひねる。
「──強いことが、バレてないからよ。私は……私のチカラのヤバさを、それなりには──自覚してるつもり。それを隠しているのは、私の、ワガママ──」
「アンティだけじゃない。私は、世界のためだけじゃなくて、アンティのためにチカラを使いたい」
明るい部屋の中で、
ふたりは、真っ直ぐに言う。
「たぶん、本当は──チカラがある人は、ベアさんや、オシ姉みたいに……他の人のために、チカラを尽くすべきなのかもしれない。"責任逃れ"をしてるような……そんな気持ちもある。でも、私は自分勝手だとしても──自分をまず、大切にしたい」
「他の人のために生きれるほど、私は大人じゃない」
「「……」」
「──聖女リビエステラ。私は、決して正義の味方じゃない。自分のために生き、自分のやりたい事を成す」
「狂った銀は、自らが決めた敵のみを滅ぼす。見えない所の笑顔など、知らない」
「とても──」
「ワガママな──」
「「 メスガキだ 」」
「……── 」
「……」
なる、ほど……。
確かに。
確かに、自分、勝手だ。
ふふふ、そうですとも。
このふたりには……自分の幸せのために。
他の者たちへの不平等を、
貫く意思があるんだわ。
「"英雄"ならず、"義賊"たるや……」
「……! リビ、お姉ちゃん……」
なぜか、ホッとする笑みが出た。
" 他の人の幸せより、まず、
自分たちの方が、イチバンじゃーっ! "
そう、伝えてきた御二方に、
私は……どう感謝を伝えればいいだろう。
「……その罪悪感に。お優しい、お姉様方が……いつまで耐えられるか、見物ですわね?」
「……!」
「「……」」
少し、皮肉で、仕返しをして。
私は、ギルドマスターとして、言い放つ。
──立て、私。
「──街の為を思うと、今、1イェルでも無駄にする訳には参りません。多くの人々を救う力を持ちながら、世のために戦う義務を全うしないと宣言した貴女方には──ギルドからの正式な報酬は、もはや不要でしょう」
「「 ! 」」
「せ、せいじょさま……!!」
「全てを隠す代わりに、何処ででも、好きに生きなさい」
「「 ──…… 」」
13歳で、とても、
大人っぽい発音で言ってやった。
どうです、少しは心に、ガツンと響くでしょう。
「 ですが── 」
でも、、、そうですわね。
実際に、私の街を助けてくれたのは、
揺るがない真実。
なら──。
「 ──ちょっと、待っててくださいね♪ 」
「「 ……、……? 」」
「り、リビお姉ちゃん、どこいくの……!?」
すたたたた──っ、と、
教会の宝物庫からパクってきた小箱を、
ひょいっと、手に取り、
ふたりの主人公たちに、わたす。
「えっ……と……?」
「……これは?」
「開けてみてくださいまし♪」
「にょんやぁ?」
「くゆっ!」
きぃ、ぃぃぃ────……。
「……銀色の」
「……破片??」
「────"羽鯨の天鱗"と呼ばれているアイテムです」
「「 ……──!! 」」
何枚かのミスリル板を、
重ね合わせたかのような構造。
遥か昔から、教会の奥底で、
ホコリを被り続けてきたもの。
「せ、せいじょさまっ……! ま、まさか、無断で……!?」
エコが、動揺している。
お姉ちゃん呼びか、聖女様呼びか、
どっちかにしなさい。
「……これを、私たちに?」
「なんだか……きれいなものだね」
「そっ、それが、本当に天空鯨のウロコなら……! かくじつに……国宝級のタカラモノですっ……!! そんなもの、無断であげちゃった、なんて知られたら……! り、リビお姉ちゃんが……!!」
「あくまで、もし本物なら──でしょう? ハッキリ言って……ホンモノかどうか分からない金属の板ごときに、そんな大層な価値なんて、永久に付きはしないわ? これが教会に眠っていると知っているのは、もう……年老いた神官と、私しかいないのよ」
「でっ、でも、保管記録とかには……!」
「そんなの、代わりになる板でも入れときゃいいでしょ?」
満面のキュートな笑みで、
審議官・第一席に答えてやる。
「さぁて、お姉様方ぁーっ♪♪ お金は、ビタ1イェルも差し上げませんが、この、ホンモノかどうか分からないガラクタでしたら、持って行ってもらっても構いませんわよ♪ マイスナお姉様のヨロイは……天空鯨製なのでしょう? その、お美しいおへそを守るくらいの追加装甲は、こさえられるかもしれませんわよ♪♪」
「き、ひひ……このやろっ!」
「リビたん、いー性格してるなぁー」
「あわ、ぁわわ、たいへんだぁ……!」
今、エコが目撃しているのは、
聖女が行う、宝物の横流しである。
構うものか。
人は、誠実さを忘れてはいけない。
「……今、私が現せる、最大限の譲歩です。そんな、下らないものですが……どうか……貴女方の幸せを守る何かに、使われて──……」
あなたたちは、あなたたちのワガママを。
わたしは、わたしのワガママを。
貫くための、思いやりを────。
甲高い、二重奏の、靴音──。
──き・ギ・ぃ・ん・ん──── ── ─ 。
「──感謝致します。聖女リビエステラ」
「──御身に。神々の加護あらんことを」
「──にょきっとな!」
「──かーん、くゆゆっ!」
アンティお姉様と、マイスナお姉様は。
私の両頬に、キスをし──、、。
── chu… ♡
「……」
「……消え、ちゃった」
忽然と、従獣と共に、
私の部屋から、姿を消した。
絵本の世界に、戻ったのかな?
──いや。
頬には、柔らかい感触がふたつ。
たしかに、のこっている──。
「と、とうとぃ・・・/// やばぃいい・・・!///」
「もぉー……。リビおねーちゃん、知らないよーぅ? あーんなの、勝手にプレゼントしちゃって……」
「あら、いつでも、誰にでも言いなさい。私が引きずり降ろされたら──貴女が、聖女を継げばいいわ?」
「そ、そんなこと、するわけないでしょーっ……!!」
ふふふ。
なかなか、可愛い妹分が、できたもんだ。










