クラウン様は、家政婦さん?
3人で塔の中に入ると、前に入った、クルルカンの隠れ家の迷宮跡を思い出した。
ま、こっちのほうは、白っぽいレンガ造りだけどね。
中は空洞だったんだね。
大きいな。
一辺10メルはあるんじゃないの?
四角い空間の壁際に、螺旋の階段が張り巡らされている。
ちょこちょこ光を入れるスキマがあって、ガラスもしっかりはめられているみたい。
後ろの出入り口から、風がピュオピュオ入る。
「うぅ……私、この階段を見ただけで、足がすくみます……」
「夜はかなり暗くなる。気をつけろよ」
「あ、多分、大丈夫です」
階段は使わないし、
火は手持ちがある。
「……嘘ではなさそうだ」
「ええ〜〜っ! アンティさん、大丈夫ですかぁ〜〜!」
「大丈夫ですって……」
はやく!
はやく1人にして!
空、飛べないでしょ!!
「……床材ふくめ、基礎の素材には、かなり高度な保護魔法がかけられている。……だが、汚れはそれなりだぞ?」
「うっ……それは、がんばる……」
うわぁ、まずお掃除だなぁ……。
「少し、様子を見たら、1度、ギルドに顔を見せるよ」
「その時に毛布を渡そう。床だけは、今日、掃除を終わらせろ」
「ありがとうございます!」
「む…………」
「あ、しまった! ギルマス! 私、アンティさんに、明日からの仕事の内容を言うの、すっかり、忘れてました!」
「……後にしろ。降りてくると、言っていただろう」
「いや……でも、疲れているでしょうから。後で言うのは結構可哀想というか……戻って、先に伝えちゃいます!」
「……キッティ」
「? はい?」
「……俺の予想では、もうアイツは、部屋に着いている」
「……はい? ギルマス、何、言ってるんです? あの塔の高さは、40メルもあるんですよ? まだ、階段の途中ですって……」
「……止めはせん」
「?? は、はい」
タッタッタッタッ……
「まさかね……2フヌも、経って……」
ガチャコン!
「アンティーさ────ん!! いますかぁ──────!?」
かぁぁ────────?
かぁ────……
かぁ──……
────────────……。
「う、そ……。ほんとに…………?」
「くらっ! カビ臭っ!!」
ボッ!!
ボボッ!!
くるる〜〜!
ミニ山火事、浮遊。
「うわああああ、粉っぽいぃぃい!」
砂か? 砂なのか!?
こんな高い所にも、風とかで運ばれるのか!?
「うううう……箒とかどこ〜〜」
1人部屋にしてはまぁまぁの広さがあるけど、幾分間取りがわかんない。
ミニ山火事を増やそうかな……。
「うぇええ……カビくさい……あ、ここ、シャワーかな……?」
お、おそろしい。
中を見たくない……。
逃げよう……。
「うわあああん!! こんなの1人で無理だよううう!!」
今晩、こんなカビ臭い所で寝ろってか!
……頭さげて、下界で寝ようかな。
こんなカビ臭い隠れ家、どっかに見えない場所にポイしたいわ……。
「……ん?」
見えない場所に、ポイ?
「……クラウン。"汚れ" "隔離格納"」
『────レディ。』
きゅる、
きゅるる、
きゅきゅきゅきゅ!
………………。
────ぶぉぉぉおおおおおおおおおん!!!
バ、バ、バ。
「────バッグ歯車さま! きたァァアあああ!!!」
す、すごい! めっちゃ汚れ吸い込んでる!!
わあああああああああい!
やったあああああい!!!
最低の"時限結晶"の使い方だぁあああああ──!!!
ひゃっほう─────!!!!!!
「あ、でも、カビは生き物だからムリか……」
『────案。適量の"カーディフの火"と水で、煮沸消毒しながら死滅させた後、格納可。』
「何それ、やって!!!!」
ぐぉおおおおおおおん!!!
「おお……!」
2重になった歯車のスキマから、オレンジの熱気がでている。
おおっ! あっちは、なんか水蒸気を吹き付けてるぞ!
あれ!? カビ臭く……ない!?
おっ? おっ?
はやいぞ!!
すごいぞ!!
『────確認。"身体"、"衣服"はどうされますか?』
「……はい? どゆこと?」
『────"身体"に含まれる該当対象。』
『脂、歯垢、垢、汗、頭髪等の汚れの殺菌、格納。』
『────"衣服"に含まれる該当対象。』
『肌着、クルルスーツ、クルルカンの仮面等の殺菌、汚れの除去。』
「…………」
……それってさぁ。
お風呂も、
歯磨きも、
洗濯も、
ぜぇんぶ、歯車で出来るって事じゃないの……。
マジっすか……。
「……お願い致します、クラウン様……」
『────敬称はおやめ下さい。実行中。』
きゅうううううん────────!!