ヨロイのふにゃふにゃ
A little later ──…… ▼
熊神:「……ドラゴンの鎧を着ていたとされる人物で、一番有名なのは、"汗っかきのエルムンド"なんだ。おまぃら、聞いたことは?」
銀娘:「しやない……」
金娘:「……! 絵本のタイトルで、見たことがあるような……。でも、確か、悲しそうな、お話だったから……途中で読むのを止めて、買わなかったことが──……?」
銀娘:「その人も……アンティみたいな?」
熊神:「いや……その男は、伝承が真実なら、鎧に食い殺されている」
金銀:「「 …… 」」
妹乳:「……悲しい話ですけれど、心温まる物話でもありますのよ? とある貴族が……とうとう、レッドドラゴンの全身鎧を造ってしまう所から、話は始まっていて──……ぇえと」
姉乳:「だいたい300年か……400年前に実際にあった話だと言われているわ。孤児院の絵本棚にあったわね──」
妹乳:「──貴族の娘・オルデンが炎龍の鎧を造り、身分の低い男を実験台にして性能を試そうとするんです。当時はまだ、ソウルシフトの事は、あまり分かっていなかった時代で──」
銀娘:「ひどいね……」
金娘:「それが……心温まる、お話?」
妹乳:「たくさんの罪人が鎧に食い殺され……しかし、エルムンドだけは鎧に耐性があった。彼は汗っかきだった」
姉乳:「当時、まだ安住の地が無かった世界で、オルデンは、汗っかきのエルムンドを、幾度となく戦地に送るわ」
妹乳:「彼は炎龍の鎧で戦い、彼女を守り続けた」
熊神:「……エルムンドは鎧が体に食い込み、脱げなくなる事がよくあったが、オルデンは塩水に漬けると鎧の食い込みが穏やかになる事を発見したと言われてる」
金銀:「「 ……! 」」
銃侍:「娘は最初は自分勝手に鎧を着せるが、勇ましく自らを守る男に、次第に思いを寄せていく」
白童:「……あくる日、これから進もうという土地にドラゴンが発見されます。既に彼を愛し始めていたオルデンは、エルムンドを送り出す事を拒みますが……彼の功績を知っている他の貴族は、竜には竜を送れ、と、エルムンドを向かわせます」
妹乳:「やがて……不可思議なことが起きます。彼の戦いを待つ者達から──彼を忘れる者が、出始めるのです。彼を想っていた、オルデンさえも──」
金娘:「……え?」
銀娘:「みんなのために戦っているのに、忘れられちゃうの……?」
妹乳:「やがて土地を進んでいった先で、オルデンたちは、ドラゴンの死骸の前で立つ炎龍の鎧の姿を発見します」
姉乳:「"炎の騎士は堂々と剣を地に立て、構えていた。だが、その中身は空っぽだった"」
妹乳:「激しい戦いの中……エルムンドの身体は、ほとんどが鎧に食われていました。でも、汗っかきのエルムンドは……頭だけは、残っていたんです」
姉乳:「残った彼の表情は──……穏やかだったというわ。その首を見て、最後にオルデンは、彼の事を思い出すのよ」
妹乳:「自分の行いを悔やんだオルデンは、彼の墓を作り、鎧を壊す所で物語は終わります」
金銀:「「 …… 」」
白童:「ドラゴンのソウルシフトは"捕食"と言われていますが、それは正式名称ではありません」
聖女:「……! ユユユ・ミラーエイド……あなた……」
金娘:「そっ、そうなんですか?」
銀娘:「ちがうの?」
妹乳:「……え……!?」
姉乳:「……それ、私も初耳なんだけど」
熊神:「本当なのかよ?」
白童:「ふふふ、続きは聖女様から話していただきましょうか──ね???」
聖女:「……、……」
幼官:「……?」
銀娘:「むー?」
金娘:「……リビ?」
聖女:「っ! ……。ドラゴンのソウルシフトですが……正式には捕食、ではなく──"概念捕食"──だと言われています。なぜ、そこのポンポンエルフが知っているのかは、いささか疑問ですが──……」
白童:「ふふふっ♪♪♪」
金娘:「── がいねん……ほしょく?」
銀娘:「どういう、チカラなんですか?」
聖女:「"概念捕食"は──肉体的にだけでなく……"存在"そのものを食う力だと伝わったようです。首から下を鎧に食われたエルムンドは、オルデン達からも、その存在を忘れかけられた──」
白童:「──もし、エルムンドが首まで鎧に食われていたら、オルデンでさえ、彼を思い出すことは出来なかったという事です」
金娘:「……!! それって……いなかった、ことに……?」
銀娘:「そんなのやだよ!! アンティを忘れるなんて……!」
熊神:「落ち着けよ。誰も忘れてなんかいねぇだろ……? 何にせよ、それは、かァなり厄介なシロモンだってことだ。オシハはな……その金ピカ鎧がドラゴンのだと確信した後、随分と……おめーを心配していたんだぜ?」
姉乳:「これくま、余計なこと言うな!」
妹乳:「……! お姉ちゃん……」
金娘:「……。でも……このヨロイ、今まで、そんなことは……」
銀娘:「アンティの事、かた時も忘れたことなんて、ありません……」
熊神:「ん、わかってる。正直、まだ信じられねぇトコもあんだけどよォ……おれは、目の前で鎧から出る筋肉組織を見ちまってるからなぁ……」
銃侍:「今も、不調を感じているようには、とても見受けられぬ。着こなしている、とさえ感じるでござるよ」
聖女:「それはそれで、大きな問題ですが……誰も運用できないドラゴンメイルを、平然と着こなしているのですから……」
熊神:「まぁ、な……」
幼官:「……不認可のドラゴンの鎧も、その……すっごく問題ですが、エコは、マイスナお姉ちゃんの鎧も、すっごく……危ないと思う」
銀娘:「? ??」
金娘:「えっ、ど、どういう意味?」
熊神:「いや、ソレなんだよ……。実はな、まだドラゴンの鎧って言われた方が、まーだ、信じられる範囲なんだぜ……? それが、おま──……」
白童:「それは……本当に── "天空鯨の鎧"、なんですか……???」
銀娘:「ぅ、うん……」
金娘:「そう……、聞いています」
幼官:「……ドラゴンも、ホーリーホエイルも伝説の魔物だと言われていますが、その扱いの差は歴然です。ドラゴンは──脅威の象徴だけど……それに対して、天空鯨は──神の御使い様です。私たちの信仰している象徴のひとつでもあります」
聖女:「はぁ……頭が、ついていきませんわね。マイスナお姉様の鎧は……もしかしたら、アンティお姉様の鎧よりも、遥かに希少なものかもしれません……。だって……価値がつけられませんから……」
銀娘:「そ、そうなの?」
金娘:「天空鯨の鎧を着ていた人の記録なんかは……残っていないんですか?」
幼官:「そんなの……ないに決まってます……。辛うじて、天から届く声を聞いた──とかです。本当にいるかどうかさえ、わからない存在なんです……」
白童:「歴史的価値も、宗教的な価値もある、という事です。ふふ、本物ならね──……???」
姉乳:「でも、本当にそうだとしたら、あの自由自在な錬金スキルは、かなーり、納得できるんじゃない? だって……ミスリルを水みたいに加工できるのよ?」
熊神:「ほんと……ぶったまげさせてもらったぜ。おま、アレ見せただけでアウトだからな?」
白童:「ホーリーホエイルのソウルシフトも、"概念捕食"と同じく、正確には"錬成"ではありません。そこは、エコちゃんの方が詳しいでしょう」
金銀:「「 ──! 」」
聖女:「……」
幼官:「うん……。天空鯨のソウルシフトは、"天地錬成"であると伝えられています。世界を創造する力のひとつです」
金娘:「てんち……」
銀娘:「れんせい……?」
萌殺:「……おいおいオイォィォィ、マジかよ……なぁ。さっきから黙って聞いてたけどよぉ……スケール、マジ・デカすぎなんじゃねーの……?」
銃侍:「はねくじらは、ナトリでは饅頭が有名でござるなぁ♪」
聖女:「お姉様方……もちろん、通常なら、国に届出なければ、完全にアウトなんですのよ……。ドラゴンの鎧は危険すぎて、御法度ですし……。天空鯨の鎧なんて、発見されたら、確実に歴史書と教本に記載されます」
幼官:「危ないです。新しい宗教が生まれかねません……」
金娘:「そ、そんな事、いわれてもォ……!」
銀娘:「神様云々は、知り合いがたくさんいるので間に合ってます」
銃侍:「からから……♪ それも重大な史実になりかねんのでござるが♪」
萌殺:「魔王様と精霊王が、マジ仲良しこよしかもしんねぇんだぜ……マジ・宗教書、書き変わるよな……」
熊神:「ぁー……影響の懸念は兎も角、まず、鎧自体に集中しようぜ……」
姉乳:「そうね。ねぇ、ダメ押しするけど、ホントーに身体に不調はないのね?」
金娘:「な、ないです……! 普通に着ている限りで、不都合なんかは……」
銀娘:「内側ベトベトだから、着る時、ちょっとビクってなるけど……着たら凄く快適なんだよ」
妹乳:「ぅ、内側ベトベト、というのは……」
熊神:「うへぇ、想像しちまった……」
姉乳:「私、手の皮膚、食われてたんだけど、やっぱり筋組織が露出しているの?」
金娘:「それ、次は絶対やらないでくださいね……? はい、内側は、それはもうビッシリです」
銀娘:「生肉まみれだよ」
萌殺:「マジで言ってんのか……ゾッとすんだけど」
熊神:「外装はどうなんだ? 繋ぎ目がねぇな、とは思ってたが……今は普通の衣服にすら見える。でも、形が変わってたよな?」
金娘:「その、気合いを入れると硬質化したりして……」
銀娘:「私はそれプラス、液体や金属でスキ間を充填して、追加武装を作ったり、装甲を増やしたりできます。アンティも歯車で同じことができます」
熊神:「少し……見せてもらっても?」
金娘:「……えぇ」
銀娘:「こーう?」
熊神:「……すげぇな」
姉乳:「かなり滑らかに変化するわ。外側の装甲も……まるで筋肉ね」
白童:「……長生きするもんだ」
銃侍:「しなりのある外骨格が、一瞬で形成されるのでござるな……形も融通が効きそうでござる。それに加え、自由に出現する歯車の回転武具に、あのミスリル銀の外装か……」
萌殺:「マジ・その時点で、マジほぼ無敵じゃねーかぁ……」
熊神:「……わりぃ。見世物みたいな事は重々承知なんだが、生体鎧の特徴は全部、試しておきてぇ」
金娘:「えっと、何をすれば?」
銀娘:「??」
熊神:「ホレ、さっき言ったろ……? オルデンは、塩水が生体鎧に及ぼす効果を発見した、って──」
金銀:「「 っ!! 」」
熊神:「反応が見たい。その……メシも作ってもらってて悪ィんだが、塩水を用意できるか」
金娘:「できると思います。濃度は──」
銀娘:「先生が調節してくれるって──」
萌殺:「……。……。なぁ。その……四角く浮いてる水は……どうやって、マジ、浮いてんだ……?」
白童:「やはり、魔力は全く感じませんね……?」
金娘:「あ、あはは……キギョー秘密、ってことで……?」
銀娘:「ぎ……義賊と狂銀のマジックですっ!」
萌殺:「いや、その奇術……マジでどんな魔力察知もスリ抜けて、どんなヤツでもマジ・溺死させられっからな……?」
熊神:「マジカ、あと、後……! それ……塩水のキューブ、複数つくれるか?」
金娘:「こうですか?」
銀娘:「大きめがいい?」
幼官:「きれい……」
聖女:「人目を気にしないなら、朝日に晒したいわね」
熊神:「ぅ、ううむ……フワフワ浮いてる原理が、まるで分かんねぇが……ちょいと、その中に沈んでみてくれ」
姉乳:「……ヒキハ、耳貸しな」
妹乳:「……?」
姉乳:「……うしろから、ここ、胸よ……」
妹乳:「……!? ……、……! まさか……!」
姉乳:「ぜったいに、その話になるわ」
妹乳:「しかし、それは……!」
姉乳:「避けては通れない。アンタ、義賊ちゃんのは知ってるみたいだけど……狂銀ちゃんの方は、気になってるんじゃない?」
妹乳:「……! ……、……」
姉乳:「今は……油断してる。アンタは銀の方を」
妹乳:「……わかりましたわ」
金娘:「えと……、こう、ですか?」
銀娘:「首から下を、塩水に沈めてみる」
萌殺:「……、マジ、か……」
銃侍:「ベア殿の思惑を理解した。装甲同士の結合が弱まっている」
金娘:「これは……!」
銀娘:「フワッとする」
白童:「各装甲の隙間から、筋組織が翼のように拡がっていますね……なるほど、マイスナさんの内部組織は、ウォーターカラーなのか……」
金娘:「これは……驚きました。こちら側が持っていない情報だったと思います」
銀娘:「塩水に浸かると、ヨロイが解けちゃうってこと?」
熊神:「ふやけてる……って印象を受けるな。内側の筋組織が、ずいぶんと外に露出してやがる。は、"羽根を伸ばす"、って表現が、ピッタリ合うってもんだ」
銃侍:「魚のヒレが出たようにも見受けられる。だが、油断すると装甲の防御力は落ちるかもしれぬ」
金娘:「知らなかった……装甲の変化も、いつもより自由にできます」
銀娘:「硬質化もできる。とっさに形が変えやすくなったね」
熊神:「へぃ、へぃ、解けすぎだ……! ちょ、見えそうになってるぞ……地肌が──……、あっ!」
姉乳:「──── っ 、、、」
妹乳:「──── っ ・・・!」
──羊雲姉妹が、背後から何かを抜き取る▼
金銀:「「 あっ・・・!? 」」
熊神:「おま、バカ、おまぃら……」
妹乳:「これは……! やはり……」
姉乳:「はは、ベア……すごいわよ」
金娘:「か、かえして……! ──うわっ!?」
銀娘:「ヨロイ、がっ……からま……!?」
熊神:「バカたれ……さきを急ぎ過ぎるんじゃねぇよ」
──ベアマックスが 羊雲姉妹から
それぞれ投げられた物を受け取る▼
──羊雲姉妹は 生体鎧が解けて
転倒しそうになった二人を抱き止める▼
熊神:「やれやれ……こいつァーすげぇな……」
金銀:「「……っ、くぅっ……!」」
熊神:「
" GSランク/アンティ・クルル "
" SSランク/マイスナ・オクセン "
────か 」
聖女:「──Sランク……冒険者……!!」
幼官:「ふたりとも……です、か……?」
金娘:「オシ姉、あんたっ……!」
銀娘:「スキを、狙ったな……!」
姉乳:「ほぅら……ちゃんと立ちなさい」
妹乳:「やはり、そうでしたか……」
獣王:「ガ、ガオー……」
白童:「──ま!!! ナットク……という気もしますけどね!!!???」
萌殺:「マジかぁ……。フツー、Sランク認定なんて……マジそんな大事なこと、ぜったいウチらに通知くるよなぁ……?」
銃侍:「からから♪ えらいこっちゃでござるなぁー♪♪」
金娘:「き、きさま──っ……!? おっぱい、許さんぞぉぉ──ッ……!!?」
銀娘:「テヲ、ツッコンダ、マタ、チチニ……ワタシノ、チチニ……!」
姉乳:「ぃッ、いいから、はやく肌を隠しなさい! ふつうに見えかけてるわよ!?」
妹乳:「謝りますからァ!! 解けかけた鎧、すぐ閉じなさい!」
銃侍:「おぉ……♡」
萌殺:「ぅオい……。マジ・シバかれてぇか? ポニテ侍ぃい……」
だから、うさ丸、どこいった……?(^_^;)(笑)