表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/1216

ねぐらはかたいなおおきいな?

 

「私の……部屋?」

「ギルマス、どういう事です……?」


 私とキッティさんが、首を傾げる。

 ヒゲイドさんが真っ直ぐこちらを見て、宣言した!


「はっきり言おう。お前の仕事は稼ぎにならんッ!」

「────ぐっふぅッ!」

「ギ、ギルマス……」


 い、いきなり収入の心配をさせないでくださぃな……

 盗賊のカッコしてるのに、稼ぎの事で落ち込むとは……

 しくしく……。


「……だが、俺の管理している場所で、家賃を払わなくてもいい部屋に、一つ、心当たりがある」

「「えっ」」


 そ、そんな、貧乏義賊に、ありがたい場所がッ!?


「!! ギ、ギルマス! まさか! あそこですか!」

「え、キッティさん、知ってる場所なの?」

「いや知ってというか、昔っから放置というか……いやあそこは不便ですよぉ……」


 キッティさんが、明らかな難色を浮かべながら語る。


「女の子が1人で住めるような所じゃないです……」

「いや、ダメじゃないの……」


 一応、女の子には分類してください?


「……アンティ。このギルドに入る時、目立つ"塔"のようなものが見えただろう」


 え、急に話、飛んだわね……。


「"塔"ですか? あ! はい、見えたって言うか、このギルドの建物の真ん中に、だーん! と、建ってるやつですよね?」


 昨日、このギルドに初めて来た時。

 初めての盗賊仮装大賞で、とてもドキドキしていたが、それでも、その"塔"は、よく印象に残っている。


 天を突くような、たかい、たかい、"塔"。

 レンガで作られたような、四角い煙突みたいな。

 周りに、高い建物はそれだけだから、余計に目立って見える。

 砂色の外壁は、日の光で、白っぽく見えていた。


 そう言えば、ギルドの受付の天窓から、よく見えていたわ。


「そうだ。すぐそこにある、あの塔の事だ。あれが何かわかるか?」

「いえ……すみません」

「謝る事ではない。あれはな、"龍見台(りゅうみだい)"だったんだ」

龍見台(りゅうみだい)?」


 聞いたことのない言葉だ。

 "龍"って、伝説の魔物よね?

 確か、ドラゴンの1種と考えられている……。


 はぁ〜〜。

 と、キッティさんがため息をつき、説明を引き継いでくれた。


「"龍見台"は、街を作っている最中に、魔物を警戒して、接近をいち早く観測するために作られた塔の事です」

「へぇ〜〜!」

「主に、街の外壁や、門が形成されるまでに用いられ、遠くから魔物が迫ってきたら、警鐘を鳴らしたり、避難を誘導する役割がありました」

「なるほど! とても大事な役目がある塔なのね!」

「"役目があった"が正しい。今のドニオスの街門と外壁は、サイクロプスが突っ込んでも壊れんよ……」

「"役たたずみ台"……今は、そう呼ばれているんです」


 ひ、ひどすぎる……。

 昔は人々を守るために建てられたのに……

 それって、"ただ、役に立たずに、たたずんでいるだけ"ってイミでしょ……。


「塔ながら、哀れすぎる顛末(てんまつ)に同情するわ……ていうか、何で壊されなかったんです?」

「あはは……」

硬すぎて(・・・・)壊せんのだ(・・・・・)……」

「はぁ?」


 どゆことやねん。


「……あの塔のレンガはな、もちろん土壌の粘土から焼き出して作ったそうだ。だがな、その土壌は、粉状のレアメタル(・・・・・・・・)が、めちゃんこ含まれていたそうでな……」


 ヒゲイドさん……。

 めちゃんこ、って言葉、使うんだ……。


「勿体ないにも程がある話なんだが、あのレンガ、ミスリルの剣でも、傷ひとつ入らん……」

「うわぁ……」

「焼く時の温度で気づくだろって、当時の人に言いたいですよね……」


 ミスリルより硬いレンガって、そりゃアホみたいに頑丈な塔ができるわけね……。

 あの白い塔、ドラゴンが乗っても大丈夫なんじゃ……。


「壊そうと思った時には、どーしようもなかったらしくてな……。この街の中心にあったし、ある意味シンボルだったワケだ」

「そこに、当時のギルマスが、ドニオスギルドを立ち上げたんですよ。昔のようで、結構、最近の話です」

「いや、でも私やキッティさんは生まれてないでしょう……。ふーん、じゃあ、塔は街を見守ってきたんじゃないの」

「ああ。なんだかんだ愛着を持っている者は多いな。でだ。当然、その塔のてっぺんには、当直用の部屋があるわけで……」

「あああ!!!」


 その、塔のてっぺんの部屋が、まさか!


「あんな用済みの部屋は、義賊クルルカンの隠れ家にはもってこいだろう?」

「あんな……家具も何も運び込めない高い場所、どおぉしようもないと思いますけどねぇ……」



 ちょっと。

 人がワクワクしてんのに、

 ケチつけないで下さいよ……。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ