勇者のお墓の??? さーしーえー
マジメに地の文 書くと
恥ずかしくなっちゃう(/ω\)笑
「……う──む。ズズズーっ……」
ババアで、早朝であった。
起きたまま家から追い出された花守の巫女は、
花まみれの庭先で、
まっずい聖茶を嗜んでいる。
目線の先に広がる天国のような花畑では、
数十人の、美麗なる容姿のエルフ達が、
男女共に、木材や家畜などを運んでいる──。
「やー! ここの精霊花の植え替え、誰か手伝ってはくれないかぁー!?」
「えっ……はっ、柱ァー!! これ、はやく風魔法で乾かして! 生木のままじゃ、精霊花が生えちゃうでしょー!?」
「アヒガモの小屋は、もっと畑寄りで良いのではないか?」
「うーん。匂いもあるだろうし、もう少し家を建てる場所から離してもいいんじゃない?」
「ひえぇ……! 増築用の木材に、もう、精霊花が生えてるぅう……! 純度の高い精霊花が、こんなにも木材クラッシャーだったなんて!」
「これ、バチ当たりだろうけどさぁー、精霊花が生えることを前提に屋根を作ったらどうかなぁ?」
「ロクプタの餌場は、精霊花が生えない場所にしないといけないな。勿体ないが、ここに金属を使うことにしよう」
「メェ〜〜、メェ〜〜」
「べェべェ、べェべェ、ブゥゥーっ!」
「おーい! やったぞー!! 豆が見事に巨大化していた!! 今夜のスープはご馳走だぁー!!」
「まさか、こんなに集まっちまうとはねェ……! ずずずーっ……」
第24代目、花守の巫女。
バババ・フラネットは、
早朝のマズいお茶が、嫌いではない。
ほんの少し離れた場所では、
エルフの子供たちが、
微笑ましく、花と遊んでいる──。
「みてー! ハナカンムリ作ったのー!」
「わー!! きれいぃー!!」
「あーっ!? せいれいかを、そんなのに使ったら、いけないんだぞーっ!?」
「なによぅ! こんなにあるんだから、べつに、いいじゃない! ねっ? ロロロ!」
「う、うん……大丈夫じゃないかな?」
「ははは! ロロロ、声ちっちゃーい!!」
「ラララ、作り方おしえて!」
「うーむ、ふふふ……。ずずずぞぞ──……」
──トン!
子供たちを含めると、
ぜんぶで、30人くらいだろうか。
バババの前には、
かつての故郷のような。
同族たちの賑わいが、花開きつつあった。
茶を飲み干し、湯呑みを置いたババアに、
すぐ後ろから、エルフにしては筋肉のある、
首元まで髪を蓄えし男子から、声がかかる──。
「──巫女様! どうです、家の外壁までは出来ましたよ! いーい大きさでしょう! 通路も広くなりますよ!」
「巫女様はおよしィ。まったく……こんなババァに、大層な家なんて、いらないンだよゥ!!」
「しっ、しかし、せっかく壊れたのですから。どうせ直すなら、新しくて大きな家がですねぇ……」
「あっ、みこさま、おはよー!」
「おはよー!!」
「こら、おはよーございます、だろー!」
「むふふ、はァい、おはようさん」
「うむ……! やっと子供たちも、馴染んだようです!」
「うーむ。ロロロとラララ以外にも、子供がいる日常に、やっと慣れてきたよォ。かかか……ま、同年代の友達が増えたのは、いーい、ことだねェイ!」
「食料も、問題なく確保ができそうです。鳥も良く取れますし、野菜は言わずもがな……巫女様の畑が、あんな、ミラクルスポットだったとは──……」
「巫女様はよしなァ。昨日はトウモロコシが花火みたいだったって?」
「あれは驚きました……夏は気をつけねばなりませんね」
「巫女様ぁぁ〜〜!!」
違うエルフの女性が、
また、ババアを訪ね、お伺いをたてる。
「──みっ、巫女様! 屋根の件なのですが……草を結わうのを止めて、精霊花が覆うのを前提に造ろうかと……! どうか、許可をいただきたく!」
「巫女様はおよしィ。いいよォ! やっちゃいなァ!」
あきらめなかったババアは、
なんだかんだ、
たくさんのエルフに慕われているようである。
「まったく……こーんなハーフエルフの、しわくちゃババァを、よくもまぁ……敬う気になったもんだ! 昔なら考えられなかったことだよォ」
「え、ええ!? 私に話しかけてます??」
バババに話しかけられた、
桶を持った、若そうなエルフの娘。
その、キョトンとした顔に、
巫女様は問う。
「今からでも遅かーなィ。誰かァ、アタシ以外のヤツを村長にした方が、いいんじゃないかィ──?」
「……! ふふふ……お戯れを。完全なる精霊花を、あの英雄クルルカンと共に復活させた、幻の花守の巫女様……! 並のエルフでは敬意を表さずには、いられませんよっ!」
「そっ、その……なんだィ。やっぱりアイツぁ……"黄金の義賊"ってのは、エルフの中でぁー有名なのかィ?」
「それはそうですっ! ずっっと南東の方にある河沿いの大きな街じゃ、絵本の英雄というよりも……"実在した人物"として、かなり有名ですからね! エルフと人間の架け橋となった、謎の黄金鎧の男! 黄金の義賊クルルカンと、幼い頃のセリゴ様、おふたりの立像とかも、街中に飾ってあるんですよ?」
「ほぉーぅ! そりゃー、偉いこっちゃだねェー!」
あのキザ野郎の像がたつ街があるなど、
バババにとっては、楽しい世の中の色である。
「そのような偉人が、安らかに眠る地が見つかり……! しかも、精霊花が、あふれているんです!! 私だって……初めて来た日は、ずっと泣いてましたよ! 私たちは……今まで、あきらめていたんです。でも、あなたは──……」
「……」
「──あなたでなくてはならない! 皆、そう思っています! ふふふっ♪」
「……、……はんっ! せェめて、村の名前だけでも変えてほしいんだがねェーッ!」
「えっ、なんでですか……!? いーじゃないですか! "花守の村フラネット"! 素晴らしい、の、ひと言ですっ! そう思いませんか!?」
「……はんっ、まったく! 時は……進んでいるんだねィ! いつの間にエルフにも、こーんな物好き達が増えたのったら……!」
バババ様が、眉を上げながら、
空になった湯呑みを引っくり返していると、
少し慌てた様子の、
エルフらしい、線の細い、髪の長い男子が、
手を振って、こちらに走ってきて──。
「おーい!!! 巫女様ぁー!!! まただー!!! また出たようだよー!!!」
「なんじゃーい!!! うっさい子だねぇーッ!!!!!」
「──ひ、ひいっ……ッ!?」
「おっ……しまったィ。いつも……ロロロとラララに言うように、やっちまった!」
歳が同じくらいだろうと、
んな事は関係なぃ。
「す、すみません……。でも、また黄金の勇者様の墓に、でたんですよ!!」
「……! まーた、早朝にかィィ!? やれやれィ……けったいな話だねぇィ!」
──そう。
興りつつあるエルフの村には、
最近、妙なウワサが流れていた。
とある場所に、"ゴースト"が出る、
というのだ────。
「夏場に出ずとも良いものを……どれ。どっこいしょ!」
「っ! いでむかれるのですか?」
「お供いたしますわ!」
「年寄りァ、たまに歩かないとねェ──」
男女のエルフ二人と並びながら、
丘の上の方まで、巫女殿は登っていく。
足取りは、しっかりしていて、
風景は、ただただ、美しい。
無限の花びらは、光と友である。
とっとこ歩くと、輝く花畑の真ん中に。
円と十字架を合わせたような、
磨き石造りの、
懐かしい彼の墓が、お目見えする──。
「ふん、フフ……。ちゃんと立ってるねェ」
この場所が、好きだ。
昔は悲しい場所だったが、
今は心から、そう思っている。
バババは、腰の後ろで手を重ねながら、
その墓の後ろにある──、
これまた、でっかい巨木を見上げるのだった……!
「やはり、コガネリンゴの木かィ?」
「ええ……普通の成長のスピードではありません」
「申し訳ありません、バババ様……。我らが連れてきた子供たちが、この墓の前で、リンゴを食べていたのは、確かなようでして──……」
「ふーむ。その種が落ちて、精霊花のせいでデッカくなっちまったんじゃなィか、そう言ってたかねィ──?」
まるで、ウン十年かは経ったかのような。
でっかい、コガネリンゴの木。
幹は、すでに大人のエルフ3人が手を広げ、
輪を作ったとしても──届かないほどの、
立派な太さになっている。
「──いーィ木だ。中々、カッコイイねェ。ま、いいってことサ。アイツの墓も、ちょーうど上手いこと避けて、墓の後ろに生えてくれているねェ!」
「申し訳ありません……せっかくの偉人の墓を……。子供たちには、あまり近づかないように言っておきます」
「やめな。こんな美しい墓だ。子は、とことん遊ばせるべきだョ!」
「! バスリー様……」
「完全なる精霊花の効果で、他の野菜と同様に、巨大化しているようですね……。ただ、不思議なのは──。こちらの木のリンゴの果実そのものは、まったく巨大化していないんです。枝や幹は大きいですが……葉は、そのまま普通の大きさですよね──……?」
「うーむ、立派なリンゴだよォ……! 夏の終わりだってのに……美味そうに熟しているねェ。で、でたのかィ」
「そ、そうでした!」
英雄の墓の後ろの大樹は、
穏やかな風と共に、
エルフ達を見守っている──。
「また、女の幽霊だったかィ?」
「はい……髪のうねった黒髪の、少女のような姿だったと」
「くそぅ……! 精霊花がホンモノなら、ゴーストなど近づけないはずなのに……!」
「こら! セセセ! 精霊花の本質を疑うなど……! バババ様に失礼ですよっ!!」
「……! そ、その通りだ……!」
「ンなこたぁ、いいンだよォ。この花は真に美しいが……あらゆる可能性を捨てちゃあいけない。見たのは……また子供たちかィ?」
「えぇ……。朝方に決まって現れるというので、どうやら……早起きして、待ち伏せしていたようでして──」
「──かかか! 子供たちにとっちゃあ、いい娯楽だろうねェ!」
「運良く、いや、運悪く、か……? 出くわしたので、"遊ぼう!" と、声をかけた、と──」
「ほおゥ、ほぃで?」
「すっ……と、消えてしまったようです」
「ほーゥ……」
「朝日に解けるように消えた、と──」
「ふーむ、難儀だねぇィ」
美しい、英雄の墓。
すぐ後ろから生えた、林檎の樹。
朝に目撃される、少女の幻影──。
「……ふん、あんの金ピカ──。生前、アタシ以外の女も、引っかけてたんじゃー、あるまいねェー……?」
「──……」
「ふふふ……」
「まァ、わからん。まだ、悪さは働いていないんだろゥ」
「ええ、そのようです」
「きれいだったと言う子供もいる始末で……あ、そういえば、金色のマフラーをしていた、と言っていたような──」
「ほぅ……」
バババは、朝日に照らされる中、
少しだけ、昔の彼の幻影を見た気がした。
黄金のマフラー、と言えば……、
彼の、あの、ジグザグ模様の、
キザったらしいピカピカを、思い出す。
彼女は、知っている。
彼の魂は、まだ、この墓の下では、
安らかに眠ってなど、
いないと、いうことを────。
「かかか……! 浮気旅行中の英雄サマと、その弟子の娘っ子が来たら────ちょいと、相談してみるとするかねィ!」
バスリーちゃんは、
楽しそうな笑顔で、墓前に誓うのだった!