表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
847/1216

マザーブレイン・クッキング さーしーえー

あっ、連投です(・ω・ )。




「……」

「……にょん」




 大司教と、ウサギであった。


 教会の中の、夜遅くの客室で。

 テーブルについた大司教の前に、

 まんまるウサギがポツンと置かれている。


 仮面ごしの表情は、まっこと無表情である。

 勇者は、毛皮に冷や汗が通る感覚を得た。


 1人と1匹。

 タイマンである。




「じ────っ……」

「…………にょ、…………にょきっとぉぅ……」




 うさ丸は、かしこいウサギさんである。


 彼の記憶力は良く、

 知能は成人男性並みであろう。


 いや、何が言いたいかというと。


 うさ丸は、この前マザーに、

 "ぜったいに顔に飛びつくな"

 と言われたのを、

 しっかりと記憶していらっさる……、

 と、いう点である。




「じ〜〜〜〜〜〜〜〜……」

「 に ょ き っ と 、 な…… 」




 勇者は思う──これは、責められているのか?


 そもそも、顔に飛びつくことは、

 そんなに悪いことなのか……?

 ううむ……。

 他のヒトに飛びついた時は、

 そんなに……嫌がられなかったけどな……??


 そう、思っている、今も。

 四ツ目のミスリルの瞳が、

 勇者に惜しみないメンチを送っている。


 怒って、いるのだろうか……。

 うさ丸のクリクリお目目と、

 恐るべき聴力を持つ肉厚おミミが、

 可能な限りの情報を集めようと、

 フル稼働で反応する。




「……………、……………ふむ……」

「にょ、にょんやぁいー……!」




 ──いや、謝ろう・・・!


 うさ丸は、思った!

 なんで顔に飛びついちゃいけないのか、

 イマイチ、分かんないトコはあるけども!


 イヤがってることをしたのは事実だし……、

 何より、ちゃんと前に注意を受けている!

 こ、ここは、ちゃんと謝って、

 許してもらおう──!




「にょ、にょや!」

「ん?」




 カクゴを決めたうさ丸は、

 キッティのマネをすることにした!


 赤いグローブを、お腹の前で重ね……、

 小気味よい、お辞儀を実行する!




「にょ……。にょにょにょにょや、

 にょんにょん、にょきっとなぁぁ……!(ぺこり)」

「……」




 もし、"にょきっとマスター"が起動していたなら。

 "この度は、誠に申し訳ございませんでした!"、と、

 空中に表示されていたであろう!


 てかオメー、字ィ書けんだから、

 それ使えよ……!!

 と、思わなくもない状況である!




「にょ、………にょきっとぅ……?」

「………………………」




 うさ丸は、チラっ。

 と、覗き見た。


 マザー・レイズは、相も変わらず、ガン見である。

 ずぅっと、頬杖をついている。

 たれたウサ耳が、顔に近い。

 

 うさ丸は、久しぶりにどうしていいか、

 分からなくなった。。。

 あれ、そういやカンクルとか何処いった。

 頼むから、誰か助けてくれ。

 



「じ〜〜〜〜〜〜〜〜……」

「……にょ、にょんやぁ……」




 うさ丸は誠心誠意を込めて謝ったつもりだが、

 当のマザー・レイズは、かったるそうに、

 机の上のうさ丸を観察しているだけである。


 夜は、まだ深い。

 月明かりの下で、

 仮面の女性にガン見され続ける。 

 たとえ聖樹の勇者・うさ丸とて、

 不安になると言うものである。




「にょ、にょきっと……?」

「………………」




 ──やがて。


 マザー・レイズは腕を動かす。


 うさ丸は、ビクっとしたが、

 その場から動かないことにする。




「にょ、にょ……」

「 ── 」



 す──……っ、と。


 マザー・レイズは、手を流す。

 言うならば──それは、"手刀"である。


 うさ丸は、チョップされるのかと、

 ドキドキしたが、何とか動かず、

 プルプルと耐え──。


 マザーの手は、トン、と。

 うさ丸の、ぶっとい耳に接触した。



 ────次の瞬間。





「──ぶしゅううううううううう!!(声)」

「  ( ゜д゜)  」




 案ずることなかれ。

 声だけである。


 マザーは、うさ丸の耳を斬るジェスチャーをし、

 謎の効果音を口から発声する。


 手刀は、撫でるように、うさ丸の耳を通り抜け、

 その白く輝くお耳さんが、傷つくはずがない。


 ──だが、しかし。



「──ぶしゅぅうううううううう・・・!!(声)」

「 に ょ ・・・( ゜д゜) 」




 二回目である。


 マザーは、名状しがたい効果音を口ずさみながら、

 うさ丸の耳を、スラッシュするジェスチャーを、

 もう一回やった。


 教会関係者が見たら、

 「何やってんですか、マザーさん……」

 と突っ込みたくなる現場である。

 そんな命知らずは中々、少ないが。


 謎のスラッシュ音を出すマザーの口は、

 何ともいえないトンガリようである。

 誰かにチューする瞬間に似ている。

 ホントに何やってんだ、この人。


 もう分かるように、悪ふざけである。

 だが、妄想の中では──。


 うさ丸のお耳は、

 もっくそ、小気味よい輪切りにされていた──!!



「ズッパーン!!

 きゅいー……! ペリリリリリリ……!!」

「 ( ゜д゜) 」



 今夜のマザーは、止まらない・・・!

 さらに、ジェスチャーを継続する・・・!


 うさ丸は、妄想の中の世界を、

 全ての感覚器官を以て、垣間見る……!

 こ、こいつ……!

 毛皮を剥いでやがる……!


 耳の輪切りから、ペリペリと、

 毛が生えた所を、剥がしていやがるのか……!?

 何故か、マザーの熟練されたジェスチャーは、

 そのシーンを、ウサギの勇者にすら理解させた。




「ぐーりぐり、ぐーりぐり!

 ガンガンガンガンガンガン・・・!!

 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ・・・!!」

「 ( ゜д゜) 」




 あっ、肉叩きである。


 アンティ・クルルの調理を、

 よく観察していたうさ丸は、

 今、自分の耳肉が金属の器具でぶっ叩かれ、

 胡椒がブッかけられた場面を、

 想像することができた。


 もちろん、これは現実ではない。

 ウサギさんの目の前には、

 パントマイムぶっこく仮面の女がいるだけである。


 ああ、月の魔力か。


 ヤンチャぶっこき続けるお茶目なマザーを、

 いったい、誰が止めることができようか・・・!




「じゅーぅうううう〜〜〜〜!!

 じゅばぁぁぁああああ〜〜〜〜ぶぶぶ!!

 ──カァーン! ぶっひゅ──っ・・・!!」

「 ( ゜д゜) 」




 ──うさ丸の想像力が、正しいのならば。


 今、バターがとけたフライパンに、

 自分の耳の輪切りが、

 もっくそブチ込まれた。




挿絵(By みてみん)


「じゅぅぁううううう〜〜〜〜!!

 じゃばぁあああああ〜〜〜〜!!

 ひゅうびゃあああああああ・・・!!」

「 ( ゜д゜) 」




 マザー・レイズの行う、

 フライパンを振る左腕のジェスチャーは、

 妙に様になっていて、想像力を掻き立てられる。

 右手の形からして、

 たぶん、透明のフライ返しも持っているのだろう……。



挿絵(By みてみん)


 うさ丸は、口は半開きで、無言である。


 高いウサ知能で、

 何をやっているのかは……想像できるのだが。

 何故、それをやられているかは……理解しがたい。


 行動が、すべて理論だったものとは限らない。

 なるほど──真理である。




「──ゴロンゴロン、ぶっひゅぷ──っ!!

 たぴゅあぁお────っ!」

「 ( ゜д゜) 」




 たぶん、野菜かなんかと合わせられた。

 マザーは、脳汁ドバドバである。

 おそらく、肉野菜炒めかなんかに違いない。


 水分でフライパンの温度が下がる音と、

 分厚いお肉が破裂する音まで、

 我らが大司教は、聖なるお声で再現なされた──。



「じゅぅぅううわああああ──

 ──きゅ、ぶっしゅ──わわわ──!」

「 ( ゜д゜) 」



 赤ワインですね。



「きゅっ、きゅっ! カポッ!」

「 ( ゜д゜) 」



 岩塩ふって、フタした。



「──かパッ! じゅぅぅううわああああ……!!!」

「 ( ゜д゜) 」





 嗚呼……!


 フライパンのフタを開けた瞬間に……!


 蒸発したバターの成分と共に舞う……!


 塩胡椒とワインに引き立てられた……!


 肉の旨みを含んだ、(こう)ばしい香り……!




 もう一度……言っておくが。

 これは、妄想の中での話である。




「ぎゅぅぁうう、じゅぅぅううわああああ……!!

 こんこん、カンカンカン!」

「 ( ゜д゜) 」




 マザーは、フライパンの横から、

 余分な水分を飛ばす音まで再現している。

 おちゃめな大司教さんである。


 うさ丸は、

 皿に盛り付けられる自分のステーキを想像した。

 マザー・レイズは、

 やってはならない一線を超えまくっている。




「へぃぉまち。今日のオススメ定食よ」

「 ( ゜д゜) 」





 これほど声にならない、おママごとがあろうか。


 うさ丸は、悲しくなった。







「にょんにょんやぁ……」


「……ごめんって。ちょっとした悪ふざけじゃない」






 勇者は、大司教のひざの上で。

 丸くなって、ふて寝することにした。






(●´ω`●)うん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
アンティとの血筋を感じる ソーラさんもこんなお茶目な?一面あるのかな
[一言] 俺、マザーとウサ勇のコンビ好きよ(*'▽') バター。。。俺、醤油だったりの和風調味料派の料理する人だからなぁ・・・バター醤油にするか( ̄д ̄)
[一言] おばあちゃん何やってんすか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ