- THREE〔Four〕MINITTU/COOKING( ✧﹃✧) - さーしーえー
挿し絵を二枚追加。(๑^u^๑)b.*・゜
──くまったもんだ。
どうやら、おれは気絶していたらしい。
気づくと、オシハが横で、
おれの脇を抱えていた。
パーティの盾役が気を失うなんざ、
この世とサヨナラ、まったナシだ。
ゾッとして、そばのオシハの顔を見た。
ポカンと、明後日の方向を向いている。
皆、集まっていた。
姉とそっくりの、おっぱい剣士。
浮遊腕を装備した、騒音エルフ。
燃える髪を持つ、両手が銃の侍。
どちらさんか、わかんねぇ魔女。
ライオンさんに、ウサギさんに、キツネさん。
たくさんのネコに、
審議官さまと、聖女さまも、オマケつきだ。
そうだ──思い出した。
巨大うさ丸に乗ったエコに注意しようとして、
弾丸のように飛んできた敵の攻撃を、
とっさに防いだんだ……!
この、最強の盾を使っちまった。
もう、使用限界なのか?
寝起きで、混乱したおれは、
仲間の視線を、無作為に追う。
ほうけていた。立ち尽くして。
みんな、同じほうを向いて。
つられるように、そっちを見た。
金娘:「 もぅ、だいじょぶだから 」
はじめ、それが誰か、わからなかった。
仮面が……ズレていたのだ。
首元にある。
その女の、まぶしい装甲は。
規則正しく、ひび割れたかのように展開し、
内側には、赤い筋肉のすじが走り、
その隙間から、
乙女の柔肌が──露出しまくっている。
その、けっこう……キワドイ恰好だ。
あと、こいつは、すげえ美人になる顔だ。
髪は……サラサラと、夜風の魔素に流れている。
肌、髪、筋肉のインナー、装甲。瞳。
その全てには、
光の川みたいな模様が複雑に流れていて、
発光していた。
……黄金の瞳、頭髪、装甲……?
コイツが天使なら、
輪っかがついているであろう所に、
赤い宝石のついた王冠が、
くるくると、していやがる。
そこでやっと──おれは、気づいた。
熊神:「おま……」
おれがバカづら構えてる合間に、
すぐそばの木の後ろで、
カニの雑兵が……止まっていた。
トゲだらけの手足には、
無数の金の輪が、まとわりつく。
──回っていた。
音で、削り取っているのだと分かる。
あっけなくバラバラになるカニは、
黄金の輪の中に、吸い込まれていく。
跡形も無くなっていく。
舞台の上から、役者が次々、退場するように。
敵を屠った金の輪たちは、
何事もなかったかのように浮かび、
小さな、はぐるまとなる。
気づけば、そこらじゅうに、
はぐるまは、飛んでいた。
風に舞う、ホタルみてぇだ。
100とか……そんなチンケな数じゃねえ。
森の闇は、金色に染まっている。
輪投げの景品のように、
カニどもに、たくさんの輪がかかった。
おれ達の苦戦は……何だったのかと。
思えるくらい、アッサリと。
敵は、細切れになって、
どこか、知らない世界に消える。
きれいだった。
これが、本来の……能力なのか?
銃侍:「空間使い……」
萌殺:「マジ勇者の力じゃねぇか……」
これは後で聞いた話だが、
おれが気絶した直後に焦ったマジカは、
エネルギーが溜まる前に狙撃して、
あのデカブツを止めようとしてくれたらしい。
不完全なチャージの弾丸は、巨大なカニの、
向かって右側の脚・二本を砕くに終わった。
マジカは、ちっとばかし、
メンタル弱ぇートコ、あっかんなぁ……。
ま、圧倒的に、
へばってた、おれがワリィ。
見ろ……最悪だ。
生き残ったデカいカニは、
巨大な光の砲身を、
まるで……剣のように、構えていたのだ──。
金娘:「あれさァ……どーする気だと思ぅ?」
日神:『────解。やはり:振り下ろす可能性が高いかと。』
金娘:「ぁー、せやんなぁー……」
ドニオス訛りで、呑気にしゃべる、
半裸の義賊と、日の神サマ。
おれ達は……言葉がでないぜ。
だってよォ……。
天を突くような、
巨大な光のソードを持った化けガニが、
今にも──おれらを、
たたっ斬ろうとしているんだぜ……?
こりゃあ、ムリだろ。
さすがに思う。
敵の光の剣は、
ゆっくりと天に、
持ち上げられつつある。
金娘:「ベアさん、ちょっとフライパン、借りますよ」
いや、おめーのだろ。
ものすごいプレッシャーの中で、
黄金の少女は言う。
金娘:「おらッ、どけぇいッ! ニョロニョロすんなっ!」
画幽:『──にょろふんっっ!?♡』
金娘:「蹴られて喜ぶなっ!」
フライパンを持った義賊は、
あっけらかんと魔女に言う。
金娘:「マジカさん? その手に持ってるフォーク、貸してもらえます?」
萌殺:「ぁ、ぃゃ、ぇ……」
黒鰐:『 がるがるーん♪♪♪ 』
呆然としたマジカ(仮)の手から、
紫のフォークを受け取った彼女。
向き直る。
キン、と、鳴った。
光剣を構える巨怪を見上げ、
彼女は。
金娘:「ねぇ、サキ。私……今も、あなたを使いたくない。でも──……」
鬼姫:【 ──かか! みなまで言ぃな。俺っちも……いつも蚊帳の外では、穏やかにあらはん。それにや、安嬢── 】
黒と、金の包丁が。
素顔を晒すクルルカンの、
頭上に──浮いている。
鬼姫:【 ──蟹や! 食ったら……"料理"やぇ? 】
金娘:「──!! きひひっ・・・!」
何処かで聞いたような、笑い声。
トライアングルをつくる、三種の神器。
──空気が。
変わった、気がした。
金娘:「──やんな、クラウン」
日神:『────レディ。胸部装甲:展開。』
おれたちは、刮目する。
日神:『────"ヨトギドライブ"。』
唸り声をあげる、黒と金の旋回。
それは、刃物だったもの。
日神:『────ダイオルドライブ。』
金切り声をあげる、白と金の旋回。
それは、器だったもの。
日神:『────カウントドライブ。』
叫び声をあげる、紫と金の旋回。
それは、十字架だったもの。
三ツの、" はぐるま " である。
熊神:「こっ、この、寒気は……なんなんだッ……!」
まるで、死神に睨まれたかのような……!
夏の気が、消し飛ぶような、悪寒……!!
金娘:「あれっ、カウントドライブなんて、言ってたっけ?」
日神:『────バージョンアップ後に:こういう事は:よくありますので。』
クルルカンの胸当てから、
何かが、中身の構造が、展開している。
くそ……光量で、よく見えねぇ……。
あれは……カートリッジか?
円盤みてぇなのが……収まりそうな。
円柱状の、引き出し、と言えばいいのか──。
そして、三ツの回転は。
まるで止まることは無く──……!!
────ガチャアアアアアアン!
────ギュオオオオオオオッ!
────グゥオオオオオオオン!
日神:『────装填完了。』
キィィイイイイイイイインンン・・・!!
クルルカンの嬢ちゃんが、
乳を両手で寄せ叩くと、
その装甲は、小気味よい音を出し、
飲み込んだ。
乳の装甲の内に、
全てのギアは、内包されている──……!!
──構え。
クルルカンは、
構 え た の だ 。
金娘:「 き な 。 ワ ル ガ キ 」
日神:『────は、ぐ、る、ま、ど、ら、い、ぶ。
────シ ゼ ツ ソ ウ ル :
────ク ラ ウ ニ ン グ 。』
それは、"歪の大刃"であった。
火神:『
蟹
死
鍋
を
ぞ
ぐ
煮 蟹
つ
込 鍋
ぐ
ん ぞ
つ
で
と
し
ま
え
・
・
・
!
』
──ッッ!?
さっきまでの、悪寒は何処に……ッ!?
今度は、心が──燃えてるみてぇだ!!
なんだ!? この、内から湧き上がるような、
炎のイメージは……っ!?
火神:『『──きひはははははははははははははは!!!! きははははははは!!!! きゃははははは!!!! きひゃひはははははははははははははははははっっっっ!!!!』』
姉乳:「……なっ!!」
妹乳:「このっ、笑い方っ……!?」
狂ったような。
薄ら寒さすら感じる、灼熱の笑い声。
ゆっくりと……その"大剣"は空より舞い降り。
両手をあげた、嬢ちゃんの手へと握られる。
ほんの一瞬、
剣と、指とが、触れた時。
白いナトリ服を着た、
女の幼子の幽霊が、背後に見えた。
金娘:「るっせぇぞ、クソガキぃ」
日神:『────まったくです。』
火神:『『あーっ!!? 久しぶりの登場なのに、やさしくないんだーっ!!?』』
銃侍:「っ!! 火の……神、とな……。ょ、もや……"死の化身"……?」
ヒナワが、
なんかシャレにならん事をほざく。
アホか。
それ上位神の伝説だろ。
旧水:〘++++++抜刀属性を緩和しておいたわ。プログラム的には・私の優先度が強かったので〙
火神:『『 げっ・・・!? きゅ、キューちゃん……ッッ!? 』』
旧水:〘++++++その呼び方・懐かしいわね〙
金娘:「クラウン?」
日神:『────抜刀術を使わなくても:威力が上がるのでしょう。』
金娘:「なるほど! じゃ、防御は任せっか!」
金神:『>>>はは。やぁやぁ、お嬢さん方? やるなら早くしな? あと数十秒で、振り下ろされるよ──』
神サマが、ごった返した会話の通り、
デカい蟹は、光剣の構えを終えようとしている。
もう、おれ達の狙撃も、防御も間に合わねぇ。
義賊の嬢ちゃんは、
肌が露出した装甲のまま、
右の手と、左の手で、
刀身を抜いた。
ゆっくりと・・・手を、バンザイから、
横に、ひらいていく。
──右手には、黄金の大剣が。
──左手には、白銀の大鞘が。
大蟹、迎え討つ、
黄金の、戦乙女。
そんな、光景だろう。
日神:『────魔刃シゼツ・陽式/陰式。正常に分離。』
金神:『>>>鞘を盾に変えるよ。ほら、はやく』
金娘:「ね、シゼツ。あれくらい、いけるわよね?」
火神:『『 あなたは私の直系だもん。チカラの格が違うんだから! 』』
金娘:「きひひっ、信じんわよ──?」
驚いた。
左の鞘が、銀の大盾になったのもそうだが、
それを──嬢ちゃんは、上に投げたのだ。
────────なん、でッッ・・・!?
銀娘:「 たべものごときが、なまいきだ 」
蟹が振り下ろした光の巨大な柱。
空にいた、何かが──受け止める。
熊神:「天使……?」
いや……角が、ふたつある。
ああ、なんてこった。
銀の装甲の隙間から見える、
翡翠色の、筋の肉。
光り、露出している肌。
首元にスライドした、銀の面……!
全身に、流れが輝く。
発光する、もうひとりの、戦乙女……!
あれは──"狂銀"の嬢ちゃんか・・・!!?
銀娘:「ローザ。あいつ、うんこになるんだよ」
月神:〘------うっへへ;身もフタもないのんなぁ──☆.*・゜〙
水神:〘#……これッ、よさんか! 食う前だぞ?〙
玉兎:『『 にょッ、おぉぉぅ…… 』』
花狼:『『 ク──ル──…… 』』
幼官:「す、すごい……」
聖女:「受け止めているっ……!!」
六枚の銀の翼で飛行する半裸の敵役は、
空で、デッカい光の剣を受け止める……!!
なんでっ……!? あの盾……!?
おれが使ってた時よりも、ずっと……!!
画幽:『 ニョ、ニョロニョロガーン!!! 』
金娘:「どいてな、ニョロ助。あぶないわ」
──ギィィイイヤアアアアアアンンン!!!
銀の天使の盾が、
蟹の一撃を、弾き返した・・・!!
す、すげぇ……!!
パリィを、取りやがったのか……!?
脚が二本ない、巨大な蟹は、
グラりと揺れ──・・・、
完全に、バランスを失っている──……!!
銀娘:「 まないたに うちつけよう ── 」
銀の鎖が、地面より貫く。
黄金の歯車が飛び交う間を。
地面を、銀の粉が、海のように流れている。
これは……金属の粒子なのか……?
地面に含まれる鉱石が、
土の上に吸い寄せられ、
おれ達の足元を、流れている──……!
鎖は、下から飛び出すように、形成された。
ただの鎖じゃねぇ。
先に、杭が付いてやがる。
撃ち込まれているんだ。
はは、あれは痛いなんてもんじゃねぇ。
だって……ひとつひとつが、
" 勇者の最強の剣 "、なんだぜ──?
" ぎぐあおおおおおおんんん・・・ "
大きな蟹の、叫びが響いた。
無数の鎖が、アレを縫い付けている。
獣王:「ガ、ォ……」
銃侍:「……"まな板の、鯉"」
白童:「ははは……アレ、蟹ですよ」
クルルカンの嬢ちゃんの黄金剣が。
握りが・・・持ち手が伸びてやがる!
野生のスレイプニル等の馬の魔物の、
脚を止めるための、大刃の装備があるが……、
それに似ている。
もはや……大きな、槍斧のようだ。
アンティ・クルルは、かまえている。
金娘:「やっぱ、上と──下よね?」
日神:『────中身は:こぼれにくいと予測。』
金神:『>>>あーほ言ってないで、はやくしな?』
抜刀の、かまえ。
わざの、名なのだろうか──。
金娘:「 ざ ん ぜ つ 」
──────────────────────
【 魔刃シゼツ・ 斬 絶 / 効 果 】
●陰式・・・鞘が変化した白銀の大盾
・斬撃属性の攻撃を絶対に防御する▼
※能力は使用者の業に依存する▼
●陽式・・・抜き身の伸縮する黄金の大剣
・視界に見える対象を絶対に斬り裂く▼
※能力は使用者の業に依存する▼
●▼≦.*・゜
──────────────────────
妹乳:「見えな、かった……」
振り抜かれた大剣を、
ブォン! と義賊が回した刹那。
ギィィイイイイイインンン!!!
と、お空の狂銀が、着地する。
いま……すげぇ鎧の筋肉、盛り上がってた。
聖女:「ドニオスしんじらんなぃ……」
幼官:「ぉっ、おねえちゃん達、きれーい!」
金と、銀の、主人公たち。
おぉ、やっぱり……半裸だぜ。
首元の、仮面は誰もが知る造形。
いや、しっかし、こいつら……くそ美人だな。
なんか光ってるし。
画幽:『 ニ ョ ロ リ ア 〜〜 ン ……♡』
銀娘:「アンティ、決めゼリフ言って」
金娘:「え"っ、なんでやねんな!?」
さぁ──蟹は、どうなったのか?
金娘:「ぁ、ぁー……。……かっ、カニさんが、食堂娘にケンカ売ってんじゃねーわ! ば、ばーか!」
ドパン、と。
ふたつに、わかれた。
金神:『>>>ちょっと待てぇいいいっ!? けっきょく、タテに斬ってるじゃないかーっ!?』
水神:〘#……。締まらんなァ……〙
日神:『────旨み成分:流出していますね……。』
月神:〘------汁;漏れとるのんな──!!☆〙
火神:『『 えっ、私のチャットログだけ、カッコ、四つあるの……!? うわ、なんかダサくない? ねぇ? ねぇー!! 』』
旧水:〘++++++……いいけど、貴女たち。そろそろ自動追撃、解除したらいかがなの? 蟹だけじゃなくて、他の魔物も自動的に狩り尽くすわよ……〙
金娘:「えっ、そうなの。何それ超こわいじゃん……」
銀娘:「えーっ。楽なのにねー」
浮遊する歯車と、銀の波が消え。
展開した彼女たちの装甲が、
ガチャ、キぃン。
ガチャ、ギィン。
と、隙間を無くす。
姉乳:「私たちって……クソ雑魚なのね……」
妹乳:「ええ……」
銀娘:「蟹汁のお風呂ができるね」
金娘:「やんないかんな」
おま……。
あの、いっこ、言っていい?
きみ達を郵送配達職にしたヤツは、
なにを考えてんの?
2話前にも挿し絵を追加!ヽ(•̀ω•́ )ゝ+