旧き聖なる街
小分けでごめぬよ。
今日もな……! 思いつきしか書かんぞっ……!?
(((´Д`)))
街は、動揺に包まれている。
「なにが……起こっているんだ!?」
「さっきから続く、地響きは何なの……!?」
「おとうさん、こわいよぅ……」
「──聞いてきたぞ!! やっぱりプレミオムズの全員が、南東の森の方へ向かったそうだ!!」
「じゃあ……彼らは、この事態を察知してたっていう事……!?」
「戦って、いるのかな……」
「──見ろ! また空が、光った……!!」
「うわあああ……!? 勘弁してくれよ……!」
「小さく……ずっと地面が揺れてる……」
「おいっ!! あの聖女様も森へ入ったってのは、本当なのかッ!?」
「冒険者たちは、まだ戻ってこないのかね!?」
「くそ、こんな時、どうすれば……?」
「え……聖女って、13歳のギルマスなんだろ!? そんな年端もいかねぇ女の子が……大丈夫なのかよ」
「……! また、光ったわ……!!」
「──うわ! この音、聞こえる……!?」
「ええ……。風の魔素を、裂くような音……!」
「いや、やべぇだろ……」
「──ギルドから連絡が来た! 最低限の荷物を運べるように、まとめとけってよ──!!」
「それって……!! 街から、出なくちゃならないかも、って事……!?」
「わ、わからねぇ! 俺も人づてに聞いたたけで……!」
「リオン、こっちに来なさい……!」
「うえぇ……」
「どうなってしまうの……」
街は、眠る事を、やめた。
誰もが同じ彼方を見上げ。
闇の神は、夜のやすらぎを与えはしない。
今、この場所に残る戦士は居ない。
何も知り得ぬ民たちが、
街の壁の空に、怯えていた。
だが、彼らも木偶ではない。
夜鳴き、飛び立つ鳥たち。
一様に吼える、飼い犬の群れ。
もう──" 足音 "だと、
気づき始めている────。
ズ
ズ
ぅ
ん
・ ズ
・ ズ
・ ぅ
ズ ゜ ん
ズ ・
ぅ ・
ん ・
・ ゜
・
・
゜
「あるいて、くるんだ……」
「バカ……、言ってんじゃねぇよ……」
彼らの、危機を捉える感覚が、心に囁く。
この場所に、得体の知れぬ何かが、やってくると。
未曾有の恐怖。
目には見えぬ災厄。
逃げるか否かの決意。
不安は、絡みつくように、育っていく──。
「逃げたほうが、いいのかな……」
「でも……!? それじゃ、オレ達の街は……!!」
ぜったいに、ここにいては、いけない。
だれもが、おもっている。
焦燥。
鈍い熱さ。
心を炙る血流。
私たちは?
逃げてよいのか?
あれは、脅威なのか?
この場所は、危ないのか?
全てを、捨てなければならないか?
今から行う判断は、本当に、正しいのか──?
異様な空を見上げ、不安にかられる人々よ。
──しかし、だが、恐れるなかれ・・・!
その " 奇跡 " は。
まるで " 約束 " のように、成された。
"街"に住む人々を勇気づけたのは、
"街"、そのものだったのである──。
「みろ……」
東の王凱都市、ホールエルは、
大きな片側砦を持つ、坂道の街である。
街は、包まれている。
まるで、夜明けのような光。
だが、そして月のような。
「光の、おしろ?」
──すべての者が、呆気にとられた。
街を乗せた坂の上。
要塞砦は輝き、
夜空へと伸びた光の柱が、
聖なる陣を展開したのだ。
── ゥ ・ ぉ ・ ぉ ・ ぉ ・ あ ── !
城壁。
幾重にも重なる、城壁。
光の城壁だ。
突如として現れた、
天を突くような聖なる巨城に、皆が驚く。
「なんだ、アレは……!?」
「すごい……!」
街のすぐ横に、突如として出現した、
光の城。
住民のひとりが、
ポツリ、と、つぶやいた──。
「 ── " ルミナリオ " だ 」
──ばか、な。
と、喉に上がる言の葉。
しかし、まさに目の前にある、その尊厳さに、
ついぞ、出ることは無い。
「ママー! あの光のお城、なにー?」
「……」
言葉がしびれた母の代わりに、
父が答えた。
「父さんが……お前の歳ぐらいの頃に、ばあちゃんに話してもらった事がある……。この街は……"移動王都"が腰を下ろしてから、最初に出来た街なんだ……。北や東から来る"邪悪な者"から、王都を護るためにできた、"護り"の街。この街は──"最初の城壁"なんだ、と──」
熱に浮かされるように見上げながら、
彼は続ける。
亡き祖母が、かつて語った、
古き、物語を──。
「"──この街に、"脅威となりし試練"が迫る時、街の地下に眠る"精霊王の落としもの"たちは目を覚まし、全てを護る光の城壁を成すだろう──"」
街は、その"語り"に答えるように。
隠されし、真の姿を、見せつける。
「 " 光の城 " が──……!! 」
北東の、砦の上のみの光の城が、
ゆっ、、、くりと。
街の外周を、スライドしていく。
右へ、右へ、トケイマワリに。
そのひかりを、のこしながら──。
「──かかさまの言っていたことは、本当だったんだねェ。こどもたちや。この老いぼれの代わりに、よく見ておくんだよ」
「ばあちゃ。あれ、なんなの?」
「あれはネ──」
"ホールエル"という呼び名は、
現代の、街の呼び名である。
かつての真名を。
そこにいる皆が、知っていた。
「 " 旧き聖なる街の光の城壁 " 」
街の半分は、
夜を忘れる発光せし城に、包まれている。
「すげぇ……!! 街の東半分を、覆っちまった……!」
「きれい……」
──幻想である。
絵物語のような話であった。
だが、現実である。
彼らは、確信した。
「……──間違いなく、"何か"が、ここへ迫ってるんだ。だから街は昔の姿を取り戻し、オレ達を……護ろうとしてるっ!!」
ひとりが言い、皆、耳を傾けた。
「オレ達がやる事は……戦うことじゃない。見ろよ! あの光の護りを……! オレ達が、この街にできる恩返しは──たぶん、誰も死なないことさ──……!!」
それは、知ったようなクチだった。
わかったような、セリフだった。
だが──真理だ。
真理なのである。
「──西側に……逃げよう! 集まるんだ、手を貸してくれ! 今からなら、まだ間に合うさ……!!」
「そう……そうよ!! あんな素晴らしい城壁がある街の命が……ひとつだって奪われてはならないわ!」
「こちらの地区はホールエルギルドが先導します!! 皆さん、ご自身で動けない方を優先的に!!」
住民も。商人も。各ギルドの職員も。
一団となって、動き出す。
それは、臆病か?
生命への、あがきか?
──そうでは、ないだろう。
ホールエルの民の目には。
未来へと灯す挑戦が、輝いている。
((o(。>ω<。)o))