魔王サマー作戦
コミックス第一巻、
よろしくお願いいたします<(_ _*)>.*・゜
ズズぅんん・・・ゴゴゴ・・・!!
熊神:「……ああ?」
その音は、誰かが大物を倒した、
そうだとばかり、最初は思った。
違う。
倒れた音じゃねぇ。
地響きが、しやがる。
熊神:「──ユユユ!! 高ぇ所に登れ!! 見ろ!! 音のほうだ──!!」
白童:「──いやー!!! イヤな予感しか、しませんねぇ──!!!」
ああ、同感だ、ド畜生。
とっとと、ふてぇ枝を見つけ、
掴み、しならせ、上に跳ねる。
木ってのは、すげぇ。
俺の体重でも、跳ね飛ばすバネがありやがる──。
──ず・ぅ・おお・おんん・ん!!!
──ガン! ガササッ……!!
木の、上の方の枝に、無理やり立つ。
そして、見た。
──けったいな事に。
その音は、雷のように、
遅れてきやがる。
そう、今こそ──。
遠くで、何かが──、
土から、はい出やがる、ところだった──・・・!
──ズ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・!!!
熊神:「でけぇ」
白童:「たくさんいますよ」
あれは……カニか?
あれは……もう、厄災そのものなんじゃねーのか?
猫三:『C3:あぅわわわ・・・! 分析できましたみゃ……! クラス、"ギガンティック"級……!! " エベレスト・イーター "、合計、7体みゃ……!』
猫亖:『C4:にゃー。一体、ぜんちょう100メルトルテくらいあるにゃー』
……ふざけんなよ。
未曾有の危機じゃねーか。
姉乳:「くま、見てる?」
熊神:「ああ、見てるよ、こんちきしょー」
銃侍:「アレは……たまらんでござるな」
萌殺:「マジ、なんなんだよ……こんなの、バカじゃね?」
白童:「脚が……多いですね。アレは倒すのに苦労しそうだ」
猫三:『C3:>>>新しく出現した敵対勢力の腹部に、巨大な砲身を確認! 飛翔体を射出する個体であると予測されますみゃ……!』
……いま、なんつった。
猫亖:『C4:あれはまずいにゃー。たぶん、形状からして、実弾系じゃなくて、ビーム系にゃー』
猫三:『C3:──そっ、その通りですみゃ! 荷電粒子砲かもしれないみゃ……! そ、そんなのってないみゃ……』
熊神:「……へい、ヘィ、猫ちゃん達よォ。世間知らずなクマさんに、教えてくれよ。かでんりゅうしほう、ってのは……なんだよ?」
猫三:『C3:えと……』
猫亖:『C4:かみなりみたいな、すごい電気のチカラを、まっすぐ長時間とばす兵器にゃー』
こいつ……説明うまいぜ。
お陰で、胃に穴が空きそうだ──。
萌殺:「そんなの……マジ、まずいぜ……。砲身、っつったよな……。あのデカさ、マジ見ろよ……」
銃侍:「歩く、巨大な砲台、といった所でござるか」
白童:「ははは──!!! クソみたいなクエストですねぇー!!!」
……。
悪いが、ユユユに心から同意だぜ……。
こんなもん、近隣の国が全部隊を引っさげて、
対応しなきゃなんねぇ事柄だ……。
おれ達数人で、対処できるモンじゃねぇー……。
熊神:「おま、勘弁しろよ……魔王でも、復活してんじゃねぇのか……?」
思わず、グチもいいたくなるってもんだ。
驚いたのは、本人から返答があった事だ。
魔王:{{ ──あら、私のせいにしないでほしいわね? }}
──うぉっ!?
知らない……女の声──!?
会話の記録の欄につく……信じがたい、名称表記……!
魔王:{{ 仮に私が、ニンゲンを滅ぼすと決めたとしても──あんな悪趣味な場所に砲台をつけた魔物なんて使わないわ? }}
萌殺:「ひ、ひぃぃ……!」
銃侍:「マジカ殿……よもや、その杖──」
熊神:「ははは……おいおい。誰だアンタ? おれの見てる会話記録には、"魔王"って出るんだけどよ」
魔王:{{ はぁい、こんばんは。一応、千年生きてる魔王さんよ♪ }}
はははは……冗談、カンベンしてくれよ。
魔王と名乗った女は、淡々としゃべりやがる。
魔王:{{ あの、マタに巨大な砲台がついてるカニさん共を……よく見なさいな。魔法障壁色が、ピンクと藍色の間だわ、あれは……厄介よ }}
なんだと……?
どういうこった?
魔王:{{ はぁ……。現代の冒険者は、相手の魔法障壁の色も見れないの? まったく……あのデカブツは、魔法への抵抗値が滅茶苦茶に高いって事よ。物理か、無属性系の魔法しか効かないわ }}
萌殺:「──む、無属性魔法……!? ま、マジで言ってんですか、魔王様よォ……!?」
おいおいおい、マジカさんよぉ。
その魔王サマ、ホントに信じていいクチかぁ……?
萌殺:「無属性系統の魔法なんて、マジ衰退してるのもいいトコなんだぜ……? ウチも、初歩的な重力魔法しか使えねぇし……!」
魔王:{{ あら、あなた適性があるのね? それはいいわ……。今、私はインテリジェンス・ウェポンの状態ですもの。杖の使い手がいるのは好都合 }}
姉乳:「ねぇー、ちょっと……話が見えないんだけど?」
妹乳:「ぉ……お姉ちゃん……! ぁ、アレ……! 歩き出してる」
・・・ズズン。
・・・ズズン。
・・・ズズン。
熊神:「……神さまは、何であんなの作ったんだ?」
魔王:{{ 後で聞いといてあげるわ。全員、よく聞きなさい? }}
その女は、有無を言わさず続けてくる。
おれ達は、こちらに歩いてくる、
でっけえ山みたいなバケ者共を見ながら、
耳を傾けた。
魔王:{{ あんな奴らを物理で片付けようとしたら、国がひとつか2つはいるわ。でも、アレを7体とも倒せれば、あの二人が復帰する可能性は高まる }}
妹乳:「──!! あ、あなた……! アンティの……?」
魔王:{{ いいから聞きなさい。今から増援を待とうなんて、そんな都合のいいコト言えないって事は、貴方たちも分かってるでしょう? 私たちだけで対応するのよ。あのバケガニ共をね── }}
熊神:「──はは……。じゃ、ナンだ。おれ達、ひとり、一体、ってか……? ぉま、魔王さんよォ……。わりぃんだけどよ、アレは……流石にクマさんでも、自信がないぜェ……」
姉乳:「……頑張って、口の中とかに入っちゃえば、何とか──」
妹乳:「ぉ、お姉ちゃん……!」
珍しく弱音っぽいモンを吐くと、
魔王サマは、まーた、ため息をしなさる。
魔王:{{ はぁ……。貴方たち、まだ、たくさん残ってるザコの事、忘れてない? まぁ、残り250まで減らしたのは、偉いと思うわよ……? でも、アレが数体でも街に、たどり着けば……死人は確実に出るわ }}
熊神:「……!! クソッタレ、ンな事は分かってんだよぉおお……!!」
表示された魔物のカウンターには、
きっちりと生き残っている、
ブレイン・イーターの数が表示されていやがる……!!
魔王:{{ ──怒らないの。作戦があるわ }}
──は、作戦だと……?
熊神:「魔王様とやらの素敵な作戦があるなら、ぜひ聞いてみたいもんだぜ……」
少々、皮肉が効いちまったが、
許してほしいもんだぜ……。
100メルトルテもある未知の魔物と、
超硬ぇ250体のカニ、全部だぞ……?
おれ達数人で、どうしろってんだ……!
魔王:{{ そうね……大丈夫だと思うわ。全員の協力が必要だけど、クマくんと魔女さん、貴方たちが要だわ── }}
熊神:「え、おれ……?」
萌殺:「う、ウチかよ……?」
魔王:{{ 弱気にならないの。あの二人が起きるまでに、あのくらいの脅威は消し飛ばしなさい }}
熊神:「──! な、なぁ、アンタ……。魔王とか言ってっけど、やっぱり、アンティとマイスナの──」
魔王:{{ クマくんは、あの巨大なカニの放つ荷電粒子砲を、何としても防いで。攻撃はしなくていいわ }}
────……いま、何と仰いやがった?
魔王:{{ 残り250のザコ共は、それ以外の人たちに任せるわ。敵の場所が地図で分かるんだもの、余裕シャクシャクでしょ? }}
熊神:「ヲィヲィヲィヲィヲィ……魔王さんよォ。ちょっと聞き捨てならねェ。あのデカい山ガニの攻撃って……めちゃ、やべぇ雷の魔法なんだろ……ッ!?」
魔王:{{ 荷電粒子砲ね。まぁ、そういう事ね }}
いやっ……おい……!! あんたなぁァァァァ!!!
いくら至高の盾っつっても、
限度がなぁァァァァァアアア・・・!?
銃侍:「その……魔王殿よ。ザコ狩りは百歩譲って引き受けると致しましても……あの、巨大な七体の化け蟹たちは、どうするのでござろうか?」
白童:「やっぱり、ベアさんが防ぎながら、先にザコを減らすんですかねぇー!!?」
そ、そうだよ……!
さっき、おれに攻撃は、
すんなって言いやがったよな……?
仮にザコを一掃できたとしても……、
あんな歩いてくる山みたいなの、
放っておけるかよ……!?
魔王:{{ あら、だれも放っておくなんて言っていないでしょ }}
萌殺:「で、でもっ……ウチらがマジ必死こいてザコ掃除してたら、あのデカブツ共、マジ接近してくん──」
魔王:{{ ──あ、ごめん。魔女子ちゃんは、別行動よ }}
萌殺:「へ──?」
マヌケな寸胴魔女の声が聞こえる。
──……ん? でも、なーんか、
いつものマジカの声より、
ちーっと、かん高いような──……?
魔王:{{ ──あの巨大な砲台カニ7体は、魔女子ちゃんに全部、殺ってもらいます }}
────……。
────お?
萌殺:「……──は?」
魔王:{{ がんばってね。貴女が作戦の要よ──? }}
おぉ………。
ハードワークだなぁ……。
萌殺:「──むっ……………。むーりむりむりマジ無理無理無理無理無理無理無理マジ無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理──……」
魔王:{{ できるできる♪ よっゆーよゆーぅ♪ }}
萌殺:「まっ………………魔王様ァァァァァぁぁぁぁああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?!?!?!?!?!?!?」
確か……あのでっけーカニ、
魔法耐性、めっちゃ高ぇとか言ってなかったっけ……?
あの、魔王サマよぉ……。
そいつ……、一応、魔女っ子なんだけどよ……。
魔王:{{ ──さぁ!! こうしてるウチにも、カニさん共は近づいてきてるわよぉー! あ、みんなマジカちゃんは命がけで守ってね。この子の場所までザコが来たら、全部パァだから }}
姉乳:「あの……ごめん、どゆことなの?」
銃侍:「某……今、マジカ殿のすぐ隣にいるのでござるが……」
魔王:{{ あ、クマくんは一番前に出てね? クマくんが防ぎきれないと、たぶん詰むから♪ }}
熊神:「ぇ、あの、ちょ、胃が痛いんだが……」
魔王:{{ さぁー♪ 楽しい楽しいレイドクエストよーっ♪ みんな、張り切ってー♪ }}
黒鰐:『 がるがるーっ♪ 』
ん……ンだ今の!?
変な鳴き声、はいったぞ……?
萌殺:「あ、あのっ……魔王さま……? ウチが…………、マジデカ7体、全部ヤるなんて……あの、マジ……冗談っすよね……?」
魔王:{{ へ? いや、マジだけど? なんで? }}
萌殺:「マァァァァァァァじぃぃぃぃいいいいい、かァァァァァァァァァァァァあああああああ────ッッッ!?!?!?!?!?!?」
響き渡る、寸胴魔女の声。
何やら……いつもより女の子っぽく聞こえやがる。
姉乳:「くま…………頑張ってね」
熊神:「あ、あぁ……」
いや、あの……。
おれも、このままだと、
焼き熊になりそうなんだけど。
魔王:{{ 地図上に指定されたポイントに移動して、はやく──!! 畜生共は、待ってくれないわよ!? }}
萌殺:「ま、まうぉうさみゃァァァァ……! マジ、考えなおしてくだひゃいよぉぉおおおぅ〜〜……っ!?」
……哀れ、マジカよ。
いや、おれもか……。
光る地図に、進行方向を示すであろう、
光の矢印が点滅している。
熊神:「うお……本当におれ、イチバン前じゃねぇか……」
白童:「いやー、なんか大役そうで、お疲れ様ですー♪♪♪」
しばくぞ、ユユユ……。
おれの移動するべきポイントの表示に、
"荷電粒子砲予測軌道"という表示が、
バッチリ重なっていた。
( ⸝⸝⸝ ᐢ ᵕ ᐢ ⸝⸝⸝ ).*・゜