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やり過ぎましたね、魔王さん。さーしーえー

魔王回です(*´ω`*)




 よく、考えなくちゃいけない。


 ピエロちゃんが私を先行させたのは、

 シゼツを振るう者がいないからだ。


 数を。稼がなくてはならない。

 でも……彼女から離れすぎたら、

 暴走するかもという、懸念もあった。



『 ……ガルガル、ガルガルゥー! 』

{{ ……! ええ、そぅね── }}



 お守りの"歯車"は、

 ちゃんとひとつ、拝借して、

 尻尾に(くく)りつけてある。


 大丈夫よ……心配ない。

 私は、絵本のような魔王に、

 なったりしない──。



{{ 久しぶりに、サイスを使う。ガルン、力を貸して……!! }}

『 ガルロオォオオオオオンンン──!!! 』



 ──ジャキィイ・・・ン・・・!


 文字通り、生涯を共にしている十字架を携え。

 黒炎は吹き上がり、やがて死神の鎌のように、

 押し固められる。


 ──ゴォォオオッッ・・・!

 ──すらぁぁぁぁぁ──……!


 ガルンの仮面は、とても便利だ。

 離れた魔物の位置が、直感でわかる。


 いや……それとも、

 これは、ガルンによって引き出された、

 私、本来の感覚なのか──?


 敵の集団は、全く、

 こちらに気付いていない。

 闇に紛れし黒い鎧に、

 悪魔の翼が生まれ出す──。


 ……ベキベキ、べきべきべきィ──……!



挿絵(By みてみん)


{{ では─ ─ ──参りましょうか }}

『 ガルゥっ!!! 』



 この(とげ)(とげ)しい翼は、

 まるで、風の魔素なんて(とら)えやしない。

 尖った部分が木の幹に突き刺さり、

 物理的に身体を持ち上げ、

 投げ飛ばす──。



  ブ  ォ  、  オ  ン  。



 呑気に行進する魔物たちの、

 真ん中に、瞬時に降り立った。


 気合いを練る──。



{{ ──ぃイ }}



 まぁるく円を狩る、サイスの軌道は、

 5匹ほどを、木々と一緒に薙ぎ払う。



 ──ずずず……。

 ──ズズズ……ズドォオオオンン・・・!


 ──べちゅぅああ──・・・!



 ──PON!



 目の前に、"あまり森を破壊しないでね"、と、

 猫の長男からのチャットが入った。



{{ はいはい。そうだったわね }}



 いけない。いけない。

 私は、好きな人達は大切だが、

 基本的に、他の人間は、

 どうにでもなれとも、思っている。


 ピエロちゃん達は、

 あの猿共の故郷を、守りたいのだ。


 うん、そうよね……。

 私も故郷が無くなった身だ。

 それは……よくわかる、よくわかる、わ。



{{ ……── }}



 ……──大丈夫……。まだ、共感できる。

 これでも、服屋の店員さんよ?

 本音と建前は……わきまえている──。



『 ……ガルガル? 』

{{ ……! ふふ……。それとも、もしかしたら、ピエロちゃんから離れている影響が、少しは……出ているのかしら──? }}



 少し、こめかみを、押さえて。

 しかし……まだ、理性的のように思う。

 あの、ゴミのような弟に、

 なるはずもない。



{{ ……は、いいわ。冷静なうちに、数を削り取ろう }}

『 ガァールガルぅ!! 』



 そして──殲滅(せんめつ)が、始まった。


 素直に言ってしまうのなら、

 私は……考え事をしながら、

 カニ共の数を減らした。


 どうしても……簡単な作業に過ぎない戦闘。

 この程度の殻など、

 この鎌で、十二分に裂け散らせる。


 断末魔さえ、生まれやしない。

 ……ピエロちゃん達が万全なら、

 このくらい、余裕だっただろう。



{{ 中身の方が、やわらかいな……重力球を使ってみる? }}

『 ガルガル♪ 』



 ──ぶぅぁううん・・・──



  ●

        ●

               ●…

           

      …●

                    ●

 黒い鎌とは別に、

 周囲に、真っ黒な球体を作り出す。

 唸るように浮くソレを、      ●…

 カニ共の口へと、ねじりこませ、

 内部で、爆破させる。



         ➤➤➤

 ➤➤➤


      ➤➤➤



 ──シュン!



       ✺       ✹

  ✹

            ✺ 

       ✹

                ✹


    ✹    


                 

 ──ドパュァアゥ・・・──!



『 ガルガルッ!! ガルガルぅー!! 』

{{ ……え? ウニみたいだね! ……って? えっと……ウニって、なーに? }}



 あんなトゲトゲの生き物が、

 海にいるの?

 へぇ……その魔物も、胃袋から外側に、

 トゲが貫通しているのかしら──。


 ──おっと、後ろに一匹いる。

 鋭い爪だろうけど、お父様の剣の速さと、

 くらべるまでもないトロさだ。

 視線をくれてやる必要は無い。

 関節に刺し、先まで斬り開いた。


 ああ……お父様、元気かなぁ。

 この前会ったけど、やっぱり会いたい日はある。


 また、後ろから襲われて、

 つい、考え無しで反撃する。


 ──ドゴッん。


 あ、いけね、杖で殴り倒しちゃった……。

 おおおぅ、杖……ヒビとか、入ってないわよね?

 いま、ガルンの力で、強化されてるもんね……?



{{ ほっ……。よし、かなり余裕があるわね。油断するつもりはないけれど── }}

『 ガルガルガルゥ──!!! 』

{{ ──蹴散らせるなら、(のが)さない }}



 違う群れを見つけ、中央に移動する。



{{ ── }}

『『 ガ ル ォ ォ オ ── 』』



 腰の黒翼の片方が、

 ガルンの巨大な鉤爪に変わり、

 目に見える範囲の全ての敵を、

 振り抜くように斬り裂いた。


 おお……! お見事!

 ガルンの腕は、黒炎になって消える。

 凄いわ。木は、ちゃんと透過してたし。

 動いてるものだけ、やっつけたわね。

 よしよし。

 あなた、やっぱり優しいわね。

 斬り裂かれたカニは、断面が黒く燃えている。



『 がるぅ♪ ガルンガルーンっ♪♪♪ 』

{{ うん。流石、魔王チーム……と言った所かな? }}



 あはは、ザコばかりだ。

 ただ、これは……神様の作ったレイドクエスト。

 後で……大物が出てくるかもしれない。

 そんなものが出てきたなら……、

 真っ先に、殺さなくては。



{{ レイドボス……。お父様が狩ったような、あの── }}



 ピエロちゃんの着る、

 黄金のドラゴンを思い出す。

 我が育ての父が倒した、神秘の魔物──。


 それに、あの、地下の宮殿の、土の化け物。

 空から響いたという、羽根鯨の声──。 



{{ ……──。あの、"新しい神様"なら……。何か、知っているかもしれない── }}



 流路が黒く変色した、十字架は。

 最も正しい行いで祈りを捧げる。


 斬る。斬る。潰す。斬る──。


 敵を、殺しながら、

 やはり、考える。


 たぶん……仮面くんは、

 とっても……あの"新しい神様"に、

 聞きたいことが、あるはずだわ。


 でも、戦闘中だから、我慢して……。

 ふふふ、奥さんがダウンして、

 イライラしてるのに、偉いわ。



{{ いいなぁー……。私にもイイ人、できないかしら? }}

『 ガルゥー! 』



 カニを八つ裂きにしながら、

 そんなこと、思う。

 それと、やはり──、

 

 ────サイスは、楽しい。



{{ 〜〜♪ 〜♪♪ 〜〜♪ }}



              / /

             / /

            / /

 ──ズシャアアアアア  アア──……!!!

 ──ドゴォオオオオ  オオオ──……!!!

 ──ぷしゃあああ  ああああ──……!!!

 ──パァァァァ  アんんんん──……!!!

 ──ぶしゃぁ  ああああああ──……!!!

     / /

    / /

   / /




 ──はっ!!!

 い、いけない、いけないわ!!

 な、何を鼻歌まじりに、

 私は戦っているのよ!?


 十字杖のサイスとか、

 今、片手で振り回してたわ!!

 な、なるほど!! "片手間"って、

 こういう事なのね──!?



{{ はぁ……。これやっぱ、アレよね……? ピエロちゃんから離れると、魔王としての影響、受けやすくなってるわよねぇ…… }}

『 ガルーぅ? ガルガルぅー 』



 サイスを二回、振り抜き、

 カニさんは、四つになる。




 \

   \ 

    \       /

     \     /

      \   /

       \ /

       / \

      /   \

     /     \

    /       \

             \




{{ ……。私、まぁまぁ──強いわね…… }}

『 ガル 』



 わ、サイスの刃の形が変わってたのね。

 わー、魔王っぽい!!

 ガルンの体、便利だわー。



{{ はぁ……でも、戦うの、つまんない。店長のお店、手伝いたぃ…… }}

『 ガルゥ♪ 』



 ──ぷぷぷぷぷぷぷ。


  ➤ ➤       ➤ ➤     ✖

       ➤ ➤       ➤ ➤  ✖


 手から、黒い針みたいなの撃ち出してみた。

 たくさん、カニさんに刺さる。


     ➤ ➤     ➤ ➤   ✖

 ➤ ➤     ➤ ➤     ✖



{{ ……! あそこに居るの、大きいわね! }}

『 ガルルルルルルロロロロロォォ……!! 』



 ピエロちゃんを追いかけてきたヤツと、

 同じくらいの大きさのを見つける。

 おっきい。

 間違いなく、ひとつの小隊の長だろう。



{{ あの大きさが、何体も出てくるなら面倒だわ──! ガルン、手足を強化して!! }}

『 ガルルオ!!! 』



 真っ黒な騎士の鎧は、揺らめきに満ちている。

 光を吸い込むような黒の筋肉に覆われ、

 もはや、その流線美は異質極まる。



{{ ──は、悪魔らしいこと! }}

『 ガルガル♪ 』



 流れる景色は──"はやおくり"。


 大きなカニの脚の、

 "ひざっこぞう"を足場に跳び、

 怪物たる口の中めがけて、

 槍状に伸ばした十字杖で刺す。


 ピエロちゃんが、言っていた。

 魚ってのは、針でシメるらしい。


 ナトリの受付嬢さんから、聞いたんだって。



{{ 脳に届いた? }}

『 ガッルゥ──っ♪ 』



 敵さんが倒れる前に、

 引き抜き、跳び離れる。



{{ やっぱり斬るか、不安だわ }}



 斬り裂いた。




                 ◢

                 ■

       ザン。      ■■

               ■■◤

              ■■■

             ■■◤

           ■■■◤

         ■■■◤

       ■■■◤

     ■■■◤

 ◢■■■◤

      








 ────ドッ・・・シャァァアアアアアアアンンン・・・!!



 真っ二つに割れた小隊長カニの巨体。

 森に投げ出され、土砂を撒き散らす。


 あ……ごめん……、ピエロちゃん。

 これくらいの自然破壊は、許してね。



{{ こういう時、今の人間は……"ぺろてへ"って言うんですって }}

『 ガルルン? ──ガールるンっ(ノ≧ڡ≦)☆ 』



 あ、そうそう。

 かわいい。


 あ、ぷにガルンが、

 肩の装甲に引っ込んだ。



 ──PON!


 " 何してるの…… "、と、

 猫の長男からチャットが入る。



{{ ……、……コホン。次はどこ!? かなり順調に、潰せていますよ!! }}

『 ガルガルオー!! 』



 ──PON!


 " やれやれ "と、猫の長男様から……。

 わ、私は、ちゃんとやれてますよ!

 ね!? ニャッチくん……!?


 どの道、この程度の流れ作業なら、

 今の私たちの障害には……ならないわ。

 むしろ、移動する方が(わずら)わしい。

 こんなにも、移動速度が遅いだなんて。


 そりゃ、人間よりかは速いだろうけど──、

 私は……ピエロちゃん達の配達時の、

 MAXのスピードを知っている。


 あれは……速い。

 もはや……美しくすらある。


 どう言ったらいいだろう。

 森の横に、落ちていくように、飛ぶ。

 身体の向きが、クルクルまある。


 前とか、後ろとかは──関係ないのだ。


 ──そう、

 あの子たちは──"流れ星"──。



{{ 森で目撃されたら、そろそろ、伝説の生き物と思われるんじゃないかしら? }}

『 ガルガルぅー♪ 』



 ん? それは、今の私達も同じだ、って……?

 ふふふ。

 そういう事も、あるかな。



{{ 次は……あっち側に、いっぱい居そうね! よし……全部で残り、350体を切った──……! }}



 これだけ倒しているんだ。

 "残数カウンター"を見る限り、

 他の、"現代の冒険者"たちも、

 それなりに順調に倒している様だし──。


{{ そろそろ──ピエロちゃん達のレベル、いくらか、上がったんじゃない!? }}



 私たち、けっこう働いてるわよー?

 消耗は……してないわよね?



{{ ガルン、疲れてない? }}

『 ガルガル!!! 』



 うん、いける。

 私の精神の暴走も少ない。

 と……思う。


 前は……あの雪山では、

 思いっきり、我を忘れてしまったが。



{{ でも……今は── }}

『 ガルゥ? 』



 私はピエロちゃんの力で、

 たぶん、精神の暴走を、抑えられていて──。


 ──アレ?

 でも、今……あの子のスキルの力自体は、

 弱まっているはず。


 なんで……私は自我を、

 保っていられるんだろう──?



 そんな事を思いながら、

 私は、戦いの最中の騎士としては、

 あまり、褒められた状態では、

 無かっただろう。


 敵は、確かに弱い。

 実に、作業的に討伐を続ける。


 考え事がメインで……、

 討伐が、オマケにみたいになっている。


 だからこそ──、妙に素直な仮説が、

 ほろりと、口から出た──。



{{ ……、……。"神様"が身内に増えた事で……ピエロちゃんのチカラが、強くなってる──? }}




 私は──これから、どうすべきか。

 もちろん、好ましい者達から、

 離れるつもりは無い。


 でも──予感がした。



{{ ……私たちは、もう、とっくに……"当事者"に、なっている── }}

『 ガ? ガルぅ……? 』


 


 ……やはり、一度、あの"神様"の、

 "心の色"を、覗くべきか──?



『 ──ガルン!! 』

{{ わかってる }}



 横から振り下ろされた、ハサミを避け。

 十字架を、突き立てる。




 命が平等な時など──。


 千年前から、あるものか────。




 グラァ・・・、ズシャドォオオオンン・・・!!



{{ もうすぐ……残数、300……! いけるわ!! このままトコトン減らしましょう! たまには……いいトコ見せないとね!! }}

『 ガルガルるぅううううううンンン──!!! 』




 ──PON……!



 ──うん!?

 なに!? また、ニャッチ君!?

 今は、私なにも変なこと言ってないでしょう!?

 も、もう、あんまり過保護だと、

 お姉さん、怒りますよ──!?


 ────あれ……?





────────────────────


     ◤◢ 運営通知 ◤◢


  ・あなた様のアカウントは、

   以下の理由により、

   レイドクエストに不適切なため、

   クエスト終了まで弱体化されます。


  ▼理由▼


 【 魔王による過剰なクエスト補助 】


  ▽対応▽


 〖 魔人化の一時停止/クエスト終了まで 〗



 ・強制的に、装備モードへ移行します。


  

  

      Σ●▼●; げっ……


────────────────────

 


 


{{ ──は……? }}




 ────バボんっっ……!!




 ──は?




 ──グサー。



{{ …… }}

『 がるっ!? 』



 地面に、落ちぃた。

 ささる。


 ……なんか……。

 いきなり杖に……なっちゃったんですけど?





{{ ……な…………、………。なん、でぇ……? }}


『 がががっ!? がるーん!? がががるぅぅぅうんん!?!?!? 』




 ガルンも、杖になった私の上で、

 ぷにぷにしている……。


 あれっ……う、動けにゃい。


 ちょっと……、

 これ、、、え……?




{{ あっりぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ──ッッッ!?!?!?!? }}





(´・ω・`)推奨レベル超えちゃダメよぅ……

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『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
[一言] まあ正直魔王イニィさん出てきたとき これもうプレミオムズ居なくてもなんとかなるんじゃね感あったから 制限掛かるのは仕方ないよね
[一言] どこの黒ガウナ
[一言] 運営ェ……それ弱体化やなくて無力化や……(行動不能だし) あのままほっといたら魔王様がどっかの無双ゲーよろしく「私こそが真のさんごk(略)」とか言い出しかねませんでしたね。1000体ですし
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