おれたちゃなかま さーしーえー
モン回です。@(∂ᄎ∂)@+
「 ッ 、 キ ィ ィ …… !! 」
バールモンキーが" 森の守護者たち "と、
呼ばれる所以は諸説ある。
彼らは自分たちの森を害なす者に、
容赦はしない。が──、
森に迷い込んだ商人の妻と娘に、
バナナを分け与えたという記録も残っている。
頻繁に子供たちの童話の中や諺、
本の題名などに引用される理由は、
その誠実さや愛着からくるものという事は──、
想像に、難くないだろう。
家族を守るための勇気や、
困った者を思いやる知恵は、
ながく──人々に親しまれてきたのである。
「バールの……!」
「アニキさん……!」
目の前で隆起する傷だらけのサルの背中を見て、
地面に半分めり込む義賊と狂銀も、
その勇気と知恵を、目の当たりにした。
いくら脚がへし割れたとはいえ、
小山のようなカニのバケモノが振り上げた大鋏を、てめぇの尻尾に生えたバールだけで受け止める勇気が、そんじょそこらの冒険者に果たしてあろうか。
甲殻の凶器と、猿の魂──、
──ハサミとバールに、火花が咲いた──……!!
[ GE・ZE・BBAAAAAAAAAA──・・・!!! ]
「 ゥッきぃぃイイイイ──・・・ッッッ!!! 」
──バチバチ・・ギギガっ・・!!
拮抗するサルとカニの力に、
ボスを救わんとすサルの兄弟たちが、
はるか高き木の上から、強襲する──……!
「 ウッキィッッ!! 」
「 ウッキャッ、キャッ!! 」
ホールエル南東部の森には、
蔓形の植物が数多く生息する。
その木々に巻きついたツタを用い、
モンキーたちは空を飛ぶのだ──!
「「 ──ウッキャ──!!! 」」
「「 ──ウッキキィイ──!!! 」」
──ぴゅぅぅ──ぅんん──!!!
大自然の織り成すサルの振り子たちは、
カニの大鋏の上へと着地した!
その後の手並みは、
鮮やかの一言である──!
バールモンキーの生まれ持っている"バール"は、
当然、L字型をしているが、
サルたちは着地の勢いで、それらを突き刺し!
カニの関節部に、"テコの原理"を使うのだ。
「 ウッ・・・キッキィイ……!!! 」
「 ウキャ──!!! 」
──ガ、コォォオオンン!!
もう一方のサルが、
"ボンバ草"という植物を重ねた物を、
木の杭で打ち込み、関節部に叩き込む!
もちろん、杭を打つのもバールである。
「「 ウッキィ・・・!! 」」
「「 ウッキャッキャ・・・!! 」」
勇敢なサルの強襲部隊が、
即座にツルを手繰り寄せ、
カニのハサミの上から、離脱する……!
"ボンバ草"とは、衝撃を与えると、
数秒後に火の魔素を放出する植物だ。
夜の森に、灼熱は迸った──……!!!
──バァ・・ゴォァァアアアンンンン──!!!
[ ZEEU・・GSHHYYaaaaAAAA──AAAAA!!??? ]
両のハサミは、裂け割れ、とぶ。
それは、きたねぇ花火である。
「「……!!」」
「ウッキャー♪♪♪」
『>>>か、関節を──爆破しやがった……っ!!』
〘#……なんという、勇敢なサルたちか……!!〙
脚も鋏も失ったカニは、
もやは、ガタガタと動く、
大きな岩でしかない。
「 キ…… 」
巨大なバールを引っさげたサルのアニキは、
カニバサミを払い除け、
──下からエグるように、殴りかかった!!
「 ──ッ・キィィィィィィイイッッ!!! 」
──ガゴギ、と。
カニの上顎が持ち上がると共に、
ブラザー・バールは、
その口の中へと叩き込まれる……!
その速さは、まるで。
二撃が、一挙動に見えるが如く、
必殺の手並みである。
「 ゥ・・・キッッッ──!!! 」
──グリンッッッ・・・!!
──ガ・パ・・・ッ!!
カニの口に突き刺されたバールを、
サルのアニキは、ねじり込む──。
──ザ、キ …………!!
[ GE・DE・GEeeeee・・・── ─ ! ]
── ズ、ズ、ゥゥンン・・・!
「……キ」
──ぶぉんぶぉんぶおん・・・!
──がしぃ・・・ん・・・!
大カニの胴からは、完全に力が抜け。
アニキは、バールを肩へと担ぐ。
知恵と勇気の、勝利である──。
「ウッキャーッッッ♪♪」
「す、すごい……」
「みんなで、倒しちゃった……」
『C2:た、対象は完全に沈黙! やりましたみゃ!』
『C7:しゅ、周囲120メルトルテに敵影ありませんにゃ!』
『>>>……は。ぼく達の助けなんて、彼らにいるのかぃ?』
〘#……爆発物まで使うとはな……畏れ入る!〙
サル達の連携に、感嘆するも束の間。
いまだ仰向けアンティとマイスナの身体を、
持ち上げる者たちがいる。
──ぐぐっ……!!
「ウッキャー?」
「……わっ!?」
「なにを……っ」
「ウッキキ……」
「ウッキャ、ウッキャ!」
「ウッキウ、キッキャ!」
「キッキー!」
サルの群勢は二人を持ち上げ、
それなりに大きな木の幹に、座らせる。
──キィン……。
──ギィン……。
「ぐ、……」
「ぅ、……」
まだ、あまり力の入らない二人の前に、
雄々しいバールを背に担いだサルが、
近づいてくる。
「っ……」
「く……」
一悶着あるかと思いきや、
サルのアニキは、クローザルと、
アンティ達を運んだサル達と、
言い争いのような事をする。
「……キ」
「──ウッキャ!?」
「ゥ、ウッキッキャー!?」
「ゥ……ウッキキ!!?」
「キッキャ、キッキャー!?」
「キキキキキ……」
(……? アニキ分のサルが命令して、他のおサルさんが食い下がってる感じだわ)
(ケンカ……してるのかな)
『C2:ドン、オク様……関係ないのかもしれないにゃけど……ドン達を運んだのは、みんな……メスと子どもみたいにゃ!』
(( っ……! ))
ニャーナが言い終わると同時に、
バールのアニキは、地面を殴る──。
──ズドン!!
「「「「 ……キ! 」」」」
「……」
「「「「 キ…… 」」」」
「ゥ、ゥキキ……!」
((……、……))
この時、アンティとマイスナの脳裏では、
ホールエルの街で聞いた噂が、
よく思い出されていた。
森に侵入した冒険者たちは、
よく、足元の地面を、
長い武器で殴られていた、と。
そう、今のように────。
(……女子どもを、逃がす気だわ)
(たぶん、みんな戦いたいんだね)
サルの女衆たちは、
しばらくアニキザルを見つめていたが──、
やがて、その真摯な眼光に負け、
奥の森へと消えていく。
アニキザルの後ろには、
先ほどカニの鋏を爆破したサル達が、
決意を胸に、こちらを見ていた。
(は……戦うのは、男の仕事、ってか……?)
(……お嫁さん、なのかな)
「ゥ、ウッキャ、キャー!」
クローを持つ小さなサルだけは、
何故か、アンティとマイスナのそばに、
残るようである。
バールのアニキは、
じっと、見つめている──。
「……」
「「……」」
──やがて。
バールのアニキが立ち去ろうとする時。
「待ちな」
「……!」
アンティ・クルルは、聞いてみる事にした。
「何故……私たちを助けるの」
「 ── 」
アンティ・クルルは、言葉で聞いた。
単語は……サルには分からないかもしれない。
──が、アンティには、妙な確信があった。
コイツは、ただの魔物じゃない。
なにか……誇り高き知性のようなものを、
感じるのだ。
「……」
そして、それは。正しく──。
アニキは、義賊に返礼する。
「 ……ウッキウキ 」
ニャーナの起動した翻訳ソフトが、
彼の意思を、表示し。
そして、アンティ達は────……、
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サ ル の よ し み だ
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「「 ──……!! 」」
彼等が──真の"森の守護者"だと、
知るのである。
『>>>……まさか』
〘#……人も、守っているのか……?〙
「 ──キ 」
「「ぁ……」」
── ダンっ ──・・・!
デカいバールを担いだアニキは、
夏夜の森へと、消えてった。
バルニキっけぇー!!(((;゜Д゜))).*・゜










