ゴート・スリーパーズ さーしーえー
ニコニコ静画の第2話も更新されてましたね!
((o(。>ω<。)o))
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「なんであんな事をしたの」
「……」
「……」
「正直に言いなさい」
「……いやだ」
「うぅ……」
「あなた達の血の事を、誰かにバカにされたの?」
「っ……、」
「……、……」
「だからって、突き飛ばすのはダメだわ」
「……」
「……ごめんなさい」
「あら、ヒキハは素直ね」
「……。ねぇ、マザー」
「……」
「なに? オシハ」
「赤ん坊の私たちを、教会に連れてきたのは……"魔物"だって、ホント?」
「っ! うっぅ……」
「……。なるほど。よく分かったわ」
「ねぇ、マザー。ホントなの?」
「ほ、ホント、ですか……? わっ、私たちの、そんな……!」
「……。……本当よ」
「っ!!」
「っ!!」
「でも、心配ないわ。その魔物は、とっても弱い魔物だったの」
「じ、じゃあ……! やっぱり、私たちの本当の親、は……」
「う、うぅ……!」
「……。よく、聞きなさい……。私はね? アンタ達に、優しいウソを言って慰めるつもりはないの。どんな綺麗事を並べても、世の中の半分は、クソみたいなヤツで埋まってるわ。うぅん……どんな素晴らしい人にだって、悪魔みたいな心は、必ずある。アンタ達は、これからも……色んな人にバカにされる。必ずね──」
「……」
「……、……」
「──それでも。私はアンタ達のお母さんの代わりに……なれたらって、本気で思ってる」
「!」
「! マザー……」
「ホラ……とっとと立ちなさい。いつまで二人で、しゃがんでるつもり?」
「……それ、信じていいの……?」
「っ! ぉ、お姉ちゃん……!」
「──きっひひ、バカねぇ。そんな簡単に、信じていいわけ、ないでしょう」
「っ!」
「ええっ……!?」
「だから、私たちは……長い時間をかけて、共にいる事が大切なのよ。ほら……はやく。オシハ、ヒキハ、立ちなさい?」
「……、ぅ……」
「ぉ、お姉ちゃん……」
「そら、いくわよ! 言ったヤツの所に案内しなさい!」
「……! は……、はぃ……」
「……謝りに、いくんですよね?」
「え? なんで?」
「……えっ?」
「あの、え……? だ、だって、突き飛ばしたりしたから……」
「バカねぇ! 突き飛ばすくらいじゃダメよ! 追加でボコって、川に沈めるに決まってるでしょう!」
「ああぁぁああ、あなた! 本当に大司教なの!?」
「うわーん!!」
「るんるんるんるるぅ〜〜ん♪♪♪」
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「今回の治療はどうだった?」
「別にー。滞りなかったわ」
「ずいぶんと気遣われました」
「きひひ……ま、私の養女だからね。目まいは?」
「うん。もう、日光の下では、ほとんど大丈夫」
「ええ。肌がピリピリする感覚は、もうありません」
「あら、すごい。それはアオカに、お礼をしなきゃいけないわね?」
「……」
「……」
「ん? あによ」
「あー……うん」
「おっ、お姉ちゃん、ヒヨらないで……!」
「なんだなんだ。このマザー・レイズに、ドンと聞きなさい!」
「……。じ、じゃあ、聞くけど……」
「ご、ごくり……」
「はぁい。なぁに?」
「──さっ、先に言っておくけどねっ!? 私たちは、今さらアナタに噛み付く気はないからね! そっその、育ててくれた事は感謝してるっつーか!? 色々と裏の仕事はさせられるけど、それもまぁアリっちゃ、アリっつーか!?」
「──うんうんうんうんうんうん!!」
「 は よ 言 え 」
「うっ……。じゃ、言うけど……。私たちを教会に捨てた魔物が……」
「……まだ、生きてるって、ホントですか?」
「……………………………………」
「ご、ごきゅっ……!」
「ま、マザー……?」
「……アオカ。次回遭遇時、スリーパーホールド決行」
「ぃ、いや……。確かに、アオカから聞いたけどさ……」
「あ、あの方も、悪気は無かったといいますか……?」
「"しまった!" ……って顔してたでしょう?」
「……すごいしてた」
「……してましたね」
「うん、やっぱ電気アンマだな」
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「昨日襲撃した、あの横領ボケ貴族の資産、回収終わったわ。ご苦労さま」
「あ、うん。まー、昨日のは楽だったわ」
「あの後、あの方はどうなったのですか?」
「ん? 地元の漁師さんに引き渡したわよ? 今頃、海の上」
「あーららぁ……。貴族から、一本釣り漁へ強制参加、か……」
「あはは……自業自得とはいえ、何とも数奇な運命ですわね……」
「バカねぇー。守るべき民のお金、あんだけチョロまかしてたのよ? ケッ、命があるだけ感謝してほしいくらいだわ?」
「それを本気で思ってるから……」
「マザー・レイズは恐ろしい……」
「いやいや、私、世界一優しい大司教。きらっ☆」
「……昔、いじめっ子を川に沈めてたわよ?」
「"貴族殺し"って呼ばれてたような……。で、その手の本と……布?? そちらは日記帳か何かですか?」
「あーぁ! そうそぅ。アンタたち、コレあげるわ!」
「えっ……ナニコレ。……っ! この服……軽装鎧……?」
「──あっ! これ、あの貴族の寝室に飾ってあった!」
「ええ──。何でも、伸縮力の非常に高いヨロイらしいのよ。オッパイがメロンサイズでも大丈夫! こちらの貴族のクソ日記によると……『 かかかかか……! ワシはやっと、KKシリーズ、" ゴート・スリーパー "を手に入れたぞ……!! しかもふたつだ! ワシ、超勝ち組!! 世界最強……!! 』と、あるわねぇ」
「か、勝ち組……。いまや、漁師さんの下っぱなのに……」
「ご、"黒山羊悪魔の眠り"とは? いや……"史上最高の影の者"、かな……?」
「ま! ちょうど、双子装備みたいだから、アンタ達にピッタリだわ! どうやら悪魔系の魔物の素材が多用されてるみたいね……。しっかし、なんだか……見たことがある造形のような──……」
「いやいやっ、マザー……!? コレ、あの成金ジジィが収集してた、鎧コレクションの中の、ふたつなんでしょ……!?」
「あの……勝手に持ち出して、いいんですか?」
「大丈夫よ。母は強し」
「あっ、コレ……何人か殴ってるわ……」
「殴ってますわね……」
「ええから着てみぃ」
「──うわっ! 何コレ!? ほとんどボディ・スーツじゃん!? 乳! 乳がコレだめ! ピッタリふぃっと!?」
「こっ、これは……体のラインが、モロ見えですわ!」
「はぁ……ホントに世界の終わりみたいなオッパイねぇ……。まったく、何食べさせて育てたっけか……」
「はーい、マザー。この鎧、エロ過ぎまーっす!!」
「こんなの、剣士仲間の前で着れませんわ!」
「せやな。ま、それだけ薄地の装甲なら、普通の鎧の下に着込めるでしょう。セットのヘッドギアもあるわよ。ホレ、御丁寧に、巻き角の意匠」
「あ、それは可愛い」
「えぇ〜〜、そうかなぁ〜〜……?」
「アンタ達、それ、卒業祝いよ。今日から聖兵、やめなさい」
「「──えええええええええええ!?」」
「おっぱいの大きな子は、隠密に向きませんっ。しばらくは剣士に集中なさい! おっぱいスラーッシュ!!」
「「こ、このマザー……!」」
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▼▲▼▲▼ クエスト情報 ▼▲▼▲▼
残 852 / 1000
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姉妹は、舞っていた。
大振りのアイアンソード。
砕ける、魔物の外甲。
そして、彼女たち自身の、纏う、鎧。
あらゆる破片が、夜に沈む。
吸血鬼の呪われた血を宿す彼女たちにとって、
剣は、使い捨ての道具に過ぎない。
ミスリル銀の剣は、彼女たちの力を殺し、
やむをえず使う、鉄の剣は。
血の腕力に耐えきれず、欠損する。
なんとか、なんとか剣を壊さぬように。
チカラを込めて、敵を薙ぐ……!
が、超人的な肉体は、
鎧ですら、内から壊した──。
「は……。見た目だけなら、ボロ雑巾ねぇ……?」
「く……! お気に入りの、ドレスの裾が……!」
敵の攻撃ではなく、
自身たちの過剰なチカラが、
羊たちのヨロイを、崩壊させていく──。
── 敵は、待ってはくれなかった。
[ GYBA・BAAAAAAAAAA──!!! ]
「「──ふっ!!」」
──カァィインン──・・・!!!
傷だらけのアイアンソードが、
重なり、巨大なハサミを止める。
「「だっらァァァぁああああああ──ッッッ!!!」」
──ズシャァァアアアアア──・・・!!!
カニモドキは、四つになった。
そして────。
──ベギャギ……。
「「 あっ…… 」」
剣の音ではない。
鎧の音だ。
ふたりの姉妹の装甲が、限界を迎える。
「この、紙切れが……!」
「姉さま、お口が悪くってよ……?」
ビギキ、バキキ、と。
鎧を伝う亀裂は、止まらない。
装甲は裂け、ベルトは千切れ、
編み込まれた革と鋲は、
グズ鉄へと成り下がっていく────。
「あ、ムリだわ、胸んトコ」
「なんて事なの、ヒップが……」
──バルるンっっ──・・・!
姉妹の豊満な胸と腰のプレッシャーが……!
ヒビだらけの、ゆで卵のカラのような鎧を!
弾け、飛ばしていく────……!
──ぼぉぉおおおおおおおんんん──……!!!
それは、爆発に似ていた。
──破片、舞い散る中。
羊の姉妹は、踊り立つ────。
「まさか、これで戦う日が、来ようとはねぇ……」
「ああ! 誰かに見られたら……死にたくなりますわ!」
────" ゴート・スリーパー "──……!!
Aランクの魔物……!
" バフォメット "の素材で組まれし、
全てが謎に包まれた、漆黒の姉妹ヨロイ──!!
「これ……外側に着てた鎧が、アレだけ砕けたのに……まるで綻びがないんだけど」
「ホント……。こんな薄い布地に見えますのに……どうなっているんですの?」
それは、黒いピッチリとした、ボディ・スーツ──!
表面に重なり合う、幾重もの、しなやかな装甲・・・!
豊かな、女性特有の、ボディ・シルエットには!
美しい筋組織に沿い、
紅いラインが走り流れている・・・!
姉妹、おそろいの巻き角のヘッドギアは!
まるで、魔族のような印象を、
見た者に……鮮烈に与えるだろう────!!
「……なんか、娼館のプレイで、そーゆーのありそー」
「わっ、わたくしを見て言わないでくださいまし! お姉ちゃんも、おんなじ見た目ですからねっ!?」
手に握られた、
傷だらけのアイアン・ソードとは対照的に、
謎の漆黒のヨロイは、黒い輝きすら放っている……!
「はん、いくわよっ! ヒキハ!」
「──!! はいっ!!」
剣士の姉妹は、走り出す──!
月夜の森を、
漆黒の乙女たちが、駆け抜ける──!!
「──ぁ、あれっ? 私……これ、あの紅い肌着、つけてるわよね? まるで……裸みたいに、抵抗が無いんだけど……」
「──えっ、そのハズですわ。本当ですわね……。何故か、この真っ赤なランジェリーと、この鎧……? やたらと、馴染みが良いような……?」
駆ける──!
駆ける──!
駆ける──!
奇しくも、全てを活かす鎧姿となって!
羊雲姉妹は、風になる!
まだ、血のチカラの全ては、使っていない!
──が、通り過ぎた残り香は。
"血風"を、孕んでいた────!
「──……ヒキハ。二手に別れましょう!」
「──!! お姉ちゃん、それは──……」
「──ダメよ。どうやら、この鎧は大丈夫そうだけれど……剣が持たないわ」
「……!! ……」
「見なさい。ボロボロよ……。ストックも合わせても、そのうち"贄の剣"を使わなけりゃいけなくなる」
「……はい」
「私達なら、すこし離れていても、血の気配で合流できるわ。私もクルルカンちゃん達を見つけたら、アンタを探すから──」
「──わかりましたわ!」
森、駆ける中、
姉妹は少しの間、無言で見つめ合い──。
「──ご武運を!」
「──は、互いにね!」
────ダンっ・・!!
────トォオオンッ・・!
黒き魔の姿の姉妹は、
活路を見い出すのだ!
(((;゜Д゜)))……け、KKシリーズ……?
ま、まさか、KIRA-KIR……










