夜明けはまだ遠い空 しゃーしーんー
方角まちがってた……修正しました(笑)
眠るは、黄金と白銀の乙女。
見つめるは、贄の姉妹たち。
──集いつつ、あった。
「すぅ……すぅ……」
「むにゃ……」
「……」
「……ヒキハ、寝かしといてやりなさい」
「にょきっとなー?」
「ご、ごめんね、ヒキハちゃん。レベルダウンの事、言おうとした時には、もう寝ちゃってて……」
「くゆくゆっ!」
「ぃ、いえ……エコープル殿が悪いわけでは……」
「……」
「あー……マジねみぃー……。さっき、ユユユのヤツと回復系の魔法、あらかた試してみたんだけどよ……マジ徒労のひと言だったわ。術の効果が、マジで見えねぇ」
「マジカ殿……。ユユユ殿は、どちらに?」
「少し調べたい事があるってよ。ま、マジ寝してる奴らがいんだ。マジ静かな分には、マジ越したことねぇー」
「……そう、ですか」
「……。ね、マジカ。この子らがガッツリ眠ってるのって……やっぱり、レベルダウンと関係あると思う?」
「……! お姉ちゃん……」
「……さぁな。ユユユがさっき、マジな顔で診察してたけどよ……マジな衰弱してるよぅには見えねぇってよ……? ただ、マジ注意はしといた方がいいって言ってやがったぜ」
「そう、ですか……」
「……回復魔法が効かないってのは、確か?」
「マジヤバいくれーな。この義賊と狂銀の姉ちゃんには、マジで体力回復も魔力回復もマジで意味がねぇ。ポーション系で体力は回復できるとして、魔力の回復の方は、マジどうすんのか……。なのに、全身の流路束は、マジハンパねぇ密度で発達しまくってるっときてらぁ……。あんな真面目な騒音エルフの顔は、マジマジ見たことなかったぜ?」
「にょ、にょきっと……」
「クルルカンのお姉ちゃん達……大丈夫、だよね……?」
「くゆゅ」
「ふぅん……魔力も、体力も推し量れない、ステータス、か……」
「……」
「なぁ……ヒキハよぉ。マジな話、もう……だいたい全員、察してんだぜ……? そいつら……" 魔無し "、ってヤツなんだろう?」
「──っ! そッ、れは……っ!」
「マジカ……やっぱアンタ、前から、わかってたのね?」
「え……えっと……? オッシー? ヒキハちゃん……?」
「にょきっとな……!?」
「くゆーっ」
──カン、カララン──。
「おぅ──わり、遅くなったわ。お……? ちゃんと絵本の主人公がそろってんじゃねぇか!」
「おや……どうやらおネムのようでござるな?」
「……くま、ヒナワ。そっち、どうだった?」
「どうもこうもねぇよ。あんまり新しい情報は得られなかったぜ。ただ、ギルドはポーションを手に入れたヤツらを、簡単なクエストに誘導してる」
「? 簡単なクエスト?」
「ああ……。納品クエストだ。どうやら王都の方で、メタル系素材の買取額が上がってるらしい。この街の西寄りの丘には、小さなメタルゴーレムが良く出るらしくってよ」
「……聖女が動いているのね?」
「左様。この街の聖女兼・ギルマス殿は、中々のやり手でござる。危険度が低く、ほどよい小遣い稼ぎをできるクエストを斡旋し、尚且つ……問題が起きているであろう南東から人払いをしておる故に」
「他にめぼしい情報はねぇな……。オシハ、騒音エルフはいないのか?」
「……。マジカ、ユユユの調べ事って?」
「んぁ。ここの地下室で……たぶん"魔無し"について調べてやがる。リスクのジィ様の昔の資料が、マジで、たんまーり所蔵してあるかんな」
「……ユユユ殿も、既に、"魔無し"について……」
「やれやれ。概ね、バレバレだったってワケねぇ……?」
「おっ、なんだよ。"魔無し"関連ってのは、やっぱ合ってんのか?」
「ほほーぅ。ヒキハ殿が隠したそうにしておった故、あまり追求はしなかったのでござるがな」
「……! ……っ、……」
「……ヒキハ、あきらめなさい。コイツら普段はああだけど……私と同じくらいには、勘がいい方なのよ」
「……」
「いや、今んとこ他言はしねぇつもりだ! 安心しろって……。しっかし……レイズさんは、なーんで、この嬢ちゃん達のアレコレを隠そうとすんだかなぁー?」
「さぁね、でも……。私とヒキハの前で、あの人ったら……この子たちの事、"娘のようなもの"、とまで言ったのよ……? はは、信じられる?」
「っ! はっ……! そりゃー確かに……お前とヒキハからすりゃー寝耳にアクアブレイクだわなァー?」
「ふーむ……わからんなぁ。マザー・レイズ殿にとって、オシハ殿とヒキハ殿こそが、娘のような存在でござろうて?」
「……」
「……ま、自慢ではないけど、自負はしているのよ。育ての母に、どえらーぁい秘密を、ずっと隠され続ける娘のキモチ……わかってくれて?」
「はん、くまった話だぜ……」
「心中、お察しするでござる」
「くぅ──……、くぅ──……」
「すぅ──……、すぅ──……」
「……アンティが"能力おろし"を受けたのは、ほんの数ヶ月前なのです」
「──っ!! ヒキハ……! あんた……」
「……ほぅ? おま、やっぱり、何か……」
「……"能力おろし"、でござるか?」
「……それを何処かで知ったマザーは、即座に圧力をかけ……アンティのスキルを教会記録から揉み消し、能力おろしを担当した神官に脅しをかけました」
「わぁー……お……。お姉ちゃん、ソレ、初耳ぃー……」
「にょわーぃ……」
「だ、大司教であるマザーがっ、教会の記録を……消したのっ!? あわわ……そ、それはダメだよ……! だって、そんな事したら……大問題だよぅ……!?」
「くゆゆーっ?」
「ソレよォ……マジ、洒落になんねぇ話じゃね? 容赦がねぇっつーか……ブルブルブル」
「穏やかではありませぬなぁー。独断の極みであろうて」
「そこまですっか……。レイズさん、よォ……」
「……私と王太妃様、そしてオルシャンティア王女殿下は、アンティに窮地を救われた事があります」
「……!! ヒキハ……」
「おま、そりゃ……」
「マジ、重大情報じゃね?」
「──! それは……よもや以前、ナトリ方面から帰られる時の馬車では……あらせられませぬか?」
「ヒナワ殿の、お察しの通りですわ。あの時、私は初めてアンティに会いました」
「……。で? 二代目クルルカンは……つよかったの?」
「レッドハイオークを、一撃で屠るほどです。私は最初、自身の死を覚悟したほどでした……」
「ははは……何それ、ホントに?」
「……マジか。すぐには信じらんねぇ」
「おま……それがホントならよォ?」
「うむ。恐らく……Bランク以上の実力はあるはずでござる」
「うっ、うさ丸……!? なんか、すごい話になってきたね……っ!?」
「にょきっとなぁー……」
「くゆくゆくゆくゆくゆくゆ!」
「後ほどの調査で……秘密裏に王女殿下の護衛に手を回していたのは、ヒゲイド・ザッパーだということがわかりました」
「──!! あは……それもお姉ちゃん、超・初耳……」
「おま!! ヒゲイドっつったら……あの、"西の荒くれ巨人"……のか!?」
「……ギルドマスタークラスが、絡んでいるのでござるな?」
「マジもう聞きたくねぇ。たぶん、マジ危ねぇ話だ……」
「ヒゲイド・ザッパーは、秘密裏に腕の立つ者を集め、少数精鋭の組織を作り上げています。私が知るのは、アンティ・クルルと……謎の、漆黒の男……」
「あのよぉ……マジ、休暇中に聞く話の重さじゃねーんだけど」
「それな……。まったく……くまったもんだぜ……」
「ひ、ヒゲイドさんって、ドニオスの街のギルドマスターだよね……? すっごく、背が高くて、大きい……」
「にょやーっ!」
「くゆっくゆくゆゆー♪」
「ヒキハ、あんたねぇ……。早めに私に相談しなさいよって……! マザーに引っ付いて、なんか色々やってたんでしょう?」
「ぅ……。わ、私は……。マザーの動きに合わせ、アンティの立場や、ヒゲイド・ザッパーの思惑を探りたいと思っています。ですが……この、マイスナという少女のことは、まったく感知しておりませんでした……。彼女もまた……その組織に属しているのかどうか……」
「……ふぅん。マザーと、ヒゲイド・ザッパーには、何か繋がりがあるのかしら?」
「そもそもよォ、その……少数精鋭の組織ってのは、何なんだよォ? クマ耳的にも、ギルドマスターが個人的に保有する部隊ってのは、かんなり初耳だぜェ……?」
「マイスナ殿も、アンティ殿と同じく、レッドハイオークを倒せるほどの手練なのでござろうか……?」
「わ、わかりません。ただ、私は……」
「……何にせよ、マザーはね。この二人を……私たちと同じくらいに大切にしているように感じるのよ……あの人はたぶん、この子たちのためなら、何でもするわ……」
「おま……"娘の勘"、ってやつかよ?」
「なによクマ……文句ある?」
「すぅ……ぅ、ん……」
「むにゃー……」
「……ちっ、マジしゃーねーな……。その二人はよぅ……。北で、いっかい、マジ・ガチンコ勝負してやがんぜ……?」
「──え……っ?」
「……マジカ?」
「ケンカとか……生易しいもんじゃねぇ。たぶん……マジで一度、互いを潰す勢いで、ヤり合ってる」
「な……!!」
「……確かなの?」
「マジ相打ちして、ボロ切れみたいになって……マジぶっ倒れてるコイツらを助けたのは……ゴウガのやつだ。ウチはそん時に回復魔法やってっから、そいつらが魔無しなんじゃねえかって、マジ予想がついてたっつーか……」
「おいおいおいおぃ……! おま、あのっ、ライオン野郎ぉお……! そんな事、おれ達には、ひと言も……!」
「ふぅむ……ドニオス陣営の朧気な背景が、ぼんやりと見えてきたでござるな……」
「おま、まさか……。"引き入れた"……ってことかよ……?」
「ウチにマジな顔して口止めしたのは、ブレイクのジジィだ。そん時にな……ジジィはクルルカンが、"狂銀を助けた"……って言ってやがった」
「……! アンティが、この子を……助けた……?」
「……。マザーは、その辺の事情も知っているの?」
「それはマジ知らん! ウチが知ってんのは、そん二人がマジ・ガチンコバトル、やらかしたって話だけやし……!」
「ふーむ。やれやれな話でござるな。これで、この件には……最低でもギルドマスターが二人、関わっていることになるでござるよ……」
「いや、それだけじゃねーだろ。マザーの他に、エルミナイシア王太妃様とオルシャンティア王女殿下まで、一枚、噛んでるんだぜ……?」
「……ええ。しかも、その王女ちゃんのパーティに名指しで招待されて、あーんな誕生日プレゼントまでお届けしてるワケだし……下手すりゃ……。どーするヒキハ? この街の件が終わったら……マザーの前に、とっつきやすそうな西の巨人から、改めて洗ってみる?」
「……。そうです、わね……」
「ぷ、ぷしゅー……。え、エコープル、何も聞いてにゃいよ……?」
「にょきっと──!?」
「かんかーん!」
──たん、たん、たん──!
「こらこら皆さーん!!! 早計ですよぉー!!!」
「……! ユユユ殿……そこが地下の書庫の入り口なのですね……」
「……ったく、あんたは夜でも、元気ねぇー!」
「きたな、マジ騒音エルフ。マジなんかわかったかよ?」
「ダメですねぇー!!! "能力おろし"を受けた人の記録はあるんですが……このお二人のような身体構造と類似する記録は、まぁーるで見つかりませんでしたぁー!!! はっははー!!!」
「はっ、さよか。くまったくまった……くまった香りがすんなぁー!! まったくまぁぁああー!!!」
「どの道、レベルダウンの件は、早急に話さねばなるまいて。その時に本人たちに聞いてみれば如何でござるか? 特にヒキハ殿とアンティ殿は、何なら親しいご様子……」
「でも、マジ寝してんぞ? マジ叩き起こすか?」
「……ヒキハ?」
「……アンティ達が起きたら、私から伝えますわ」
「それが、いーと思います!!! 今の所、健康状態は良好だと思いますよ!!! こっちからも、ちゃんと話して!!! そっちからも、ちゃんと話してもらいましょー!!!」
「ま、マジうるせぇな、夜の騒音エルフ……」
「……じゃ、そん時は付き合うぜ。朝んなったら、起こしてくれ。クマのお兄さんは、夏の眠りにつくとするぜ……」
「うむ。某も、立ち会うでござるよ。皆で聞いた方が良さそうでござるしな?」
「あー、じゃあ、ウチも寝るかぁ……エコっち、風呂入っけ? ウチがマジお背中流してやんよ」
「え、えっと、じゃ、じゃあ私も……うさ丸たちも一緒に、お風呂入ってくるね! おっ……おやすみなさい! オッシー、ヒキハちゃん! ユーくんも!」
「にょきっとな!」
「くゆーっ!!」
「ええ、お休みね……」
「……」
たたたたたた……。
「……オシハさん??? ヒキハさん???」
「……ん、なによ」
「……? なんですか、ユユユ殿?」
「まだ、何か……。彼女たちのことで、隠していること──ありますよね???」
「──! ……、」
「……はん、ユユユ。アンタ……悪い顔に、なってるわよ?」
「やだなぁー……。ボクはただ、知識欲が有り余ってるだけですよぉー!」
「……」
「……」
「ボクが、彼女たちの身を案じているのは、本当です! できれば、包み隠さず、話していただきたいのですが……?」
「……」
「……。あんた、前から思ってたんだけど……」
「はーい???」
「なんで、アオカ・ブルーレッドと、仲がいいの……?」
「……」
「……。ボクの血に、あなた達と同じ要素が入っている、では、説明不足ですか?」
「ユユユ、殿……?」
「──……。ヘィ、坊や……。アンタにも、人には言えない秘密、幾つかは……あるでしょう?」
「………………。ははは、一応ボクは、あなた方よりは……歳上なんですけどねぇー???」
「……」
「……」
「……彼女たちの身を案じているのは、本当ですよ。何かあったら……すぐ呼んでください? 今日のポーション、何本か……くすねていますので! では──おやすみなさい!!!」
タンタンタンタンタン……。
「……っ。はぁ……。アイツも、わっかんないヤツよねぇー……。いろんな意味で、27歳には見えないったら……。耳は、人にゼッタイ見せないし……。エルフや吸血鬼の街を作りたいとか言ってるし……それに……、ヒキハ?」
「……」
「すぅ──、すぅ──……Zzz」
「ふにゃふにゃぁ──……Zzz」
「……アンタも、もう寝なさい。そんなじっと見てて、どうすんのよぅ」
「……。私は、もう少し……ここに居ます。お姉ちゃんは、どうぞ、お先に……お休みになって──……」
「……バカね。毛布、とってきてあげるわ」
「……。……ありがとう、お姉ちゃん……」
────月夜は、街と森に、降り注ぐ──。
「ウッキー! ウッキッキ……!?」
「ウキャー!! ウキャー……!?」
「キッキキキー!! ウキー!! ウキーッ!!」
「ウキャッ、ウキャーキッキッキ……!!」
[ FSHIYYYYULUUU…… ]
[ GIBA! GIBA! BAA……! ]
[ GUNN……GUNN・GUNN・GUNN・GUNN……! ]
[ GLLLLOOBUAAAAAAA────……!!!!! ]
ゾゾゾ、
ゾゾゾゾゾ──。
──チョギン……ッ!!
「ゥ、ウキィ……」
「 ……──ウキ……! 」
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レイドクエストが 発生しました!
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せっ説明モトム!?щ(゜Д゜;щ)










