この子ら何者? さーしーえー
今回も、ゆっくりのんびり(●´ω`●).*・゜
二階の客室に入ってきたエコープルは、
何やら涙目になっていた。
「うっ、うっ、ゅ、ユーくんっ……! 今、うさ丸……階段で落としちゃったんだけど……だっ、だいじょうぶかなぁ……!」
「にょきっとなー」
「かんかーん!」
「おやぁ!!! やぁやぁ!!! これはこれは!!! しゃべるぬいぐるみくんじゃあ、あーりませんか!!! お久しぶりですねぇー!!!」
「あっ!! おま……ソイツは! クルルカンの嬢ちゃんと一緒に居た、世界一丸いウサギじゃねえか!」
「にょきっと♪ にょきっと♪」
え、階段から落っことしたのか?
おま……大丈夫かよ。
そのボディだと、
下までノンストップだったろ……。
「いつ見てもマジで丸いな。転がして遊ぼうぜ」
「だ、だめーっ! そんな事したら可哀想だよ、マジカお姉ちゃん!」
「にょきにょき……」
うさ丸を心配するエコープルをよそに、
オシハとヒキハのふたりは、
完全に気絶している神官のお二人を、
同じベッドの上に降ろす所だ。
「よいしょっと……ヒキハ、そっちに下ろせる?」
「も……もう少し、そちらに寄せれませんか?」
「お、おい。おま……説明してくれんだろーな?」
たっ、たっ、たっ、たっ、たっ──。
「──くゆっ!」
「──うおっ」
足元に、見慣れない小動物が来た。
な、なんだ、このワンコは……。
フサフサした尻尾を振って、
こちらを見上げている。
「筆みたいな顔だな……」
「ほぅ……どれ、失敬」
「──くゆっ!?」
後ろからヒナワが、さっと抱きかかえ。
ひざの上に持っていった。
「からから♪ これはめんこいキツネでござるな♪」
「くゆゆゆゆゅゅ、くゅゅゅゆゆゆ」
……フォックスか? それ。
花の耳飾り、ついてるぜ。
「しかし、肉食であるならば……子狐とは言えど、少々危険でござるかな? ふむ……」
「くゆぅー?」
しげしげとワンコを見るヒナワに、
ヒキハが声をかける。
「あ……それは、恐らく大丈夫でございますわ。カンクルは──……その子は、体から生えた花と水しか食しませんから……」
「──! 草食なのでござるか?」
「お、なんだよヒキハ? このワンコのこと、知ってんのか?」
「そ、それは……。……」
何故か、ユユユの方を見る、ヒキハ。
騒音エルフも、ワンコが気になっているようだぜ。
「……へぇ。すごいな」
「ゅ、ユーくん……? はやく、うさ丸のこと見てあげて……!」
「……! ──え!? あはは!!! そうですね!!! これは……うん、大丈夫ですよ!!! なんか元気そうですし!!!」
「にょきっと! にょんにょん!」
……?
ユユユのやつ、いま一瞬……?
「つまり、フォレストウルフの変種か何か、という事でござるか? ふむ……──おお! 確かに歯の形が独特でござるな!」
「くふぁ……っ!? く、くゆーっ!!」
若様に、口を少し強引に拡げられたワンコは、
しゅたっ! っと、
ヒナワの腕の中を飛び出してしまった。
──たたた……とんっ!
「──くゆーっ!!」
「──ぷぁわー!?」
あっ。
エコープルの顔に、
跳びつきやがった。
(ひ、ヒキハ……? あれ、大丈夫か……?)
(こ、コクコク……)
危険な魔物ではない、のか……?
し、信じるぞ?
慌てているエコープルの後ろから、
誰かが階段を駆け上がってくる音がする。
ドタドタドタ……!
「──こ、これ、オシハ! ワシにも、ちゃーんと説明せんか!!」
階段を登ってきた、リスク爺さんの手には。
氷の魔石が握られていた。
あざ──っす!!!
〜〜〜 氷の魔石・設置中 〜〜〜
「なな、なんと……!?」
リスクの爺さんが、驚いている。
オシハ達が連れ込んだ、謎の二人の神官たち。
深く、顔を隠していたフードは、
今……おっぱい姉妹によって、外されている。
出てきたのは──、
──顔の上半分が隠れる、金と、銀の、仮面。
……二人の少女の、穏やかな寝顔だ。
「やっぱり、ね……。お察しの通りよ、リスクの爺さん」
「──で、では……! この二人が、大量の薬草の提供をしてくれたのだな……っ!? し、しまったわぃ……! この街の大恩人に、ワシは、なんというバチ当たりな事を……」
おれも、金の仮面の方には、
ガッツリと見覚えがあった。
は、忘れるわけがねぇ。
「──と、とにかく! ワシは睡眠のジェムの解除薬を作ってみるわぃ! そっ、その方たちを頼んだぞ! おヌシらの知り合いなのじゃろう!? こ、こうしちゃおれん──……!!」
「あ! ちょと待てよ、爺さ──……!」
──ドダダダダ……。
おれの制止を聞く間もなく。
リスクの爺さんは、
一階の薬屋に降りていってしまった。
「にょきっとなー」
「かんくゅー」
「やれやれ……知り合いっつっても、片方は知らねぇんだけどな……」
今……たくさんの頭数が、この部屋にいる。
皆、ベッドに横たわる、仮面の神官たちを見ていた。
オシハ。
ヒキハ。
ユユユ。
ヒナワ。
マジカ。
おれ。
そして──エコープル。
「く、クルルカンの、お姉ちゃん、だよね……? なんで聖兵のカッコ、してるんだろう……。それに──」
エコープルは、おれ達を見て、言った。
「この、銀色の仮面の、お姉ちゃん……だぁれ……?」
「すぅ──……、すぅ──……」
「くぅ──……、くぅ──……」
改めて、ベッドの上の二人を見る。
金髪の方は……間違いないよな。
髪は後ろで束ねてあるが、
おれに蹴りをお届けして、
美味い飯をおごってくれた。
あの……"アンティ・クルル"、その人だ。
"黄金の義賊"の隣にいる、"白銀"の仮面。
てことは……普通に連想したなら──。
「……マジ、間違いねぇな。こっちの狂銀の仮面してんのは、マイスナってやつだ」
「「 ──!! 」」
まさかの、マジカからの情報。
オシハとヒキハが……特に驚いているように見えた。
ん……" マイスナ "……?
その響き、アレ……?
どっかで聞いた事があったような……。
お、エコープルが──、
子供らしく怯え出している。
「きょ……! こ、この人……き……狂銀、なの……?」
「マジ間違いねぇ。ウチが前に見かけた時は、この二人……あっ、やべ……。ウチ、マジ口止めされてたわ。メンゴメンゴ」
「ええっ……」
寸胴魔女、口を押さえる。
「──ぅおおおおおおおおおいいい!!! おま、そりゃねぇぜ、マジカちゃんよぉおおー!!!」
「まっ、マジ、知らーん!」(ぷいっ)
ぷいっ、じゃねぇよ、おま……。
ガンガン、気になるじゃねぇか……。
「……その名前には、聞き覚えがあるでござるな。件の生誕祭に王家から名指しで招かれ、話題となっている御二人──。おひとりは……"アンティ・クルル"。そして、もうひとりは──"マイスナ・オクセン"。そうであろう?」
「あ──っ!! そうか!! どおりで、おれも聞いた事がある名のはずだぜ……!!」
オルシャンティア王女に招待された、
二人の"郵送配達職"……!
その二人目が……コイツなのか!
相棒まで、絵本の役者の格好なのかよ?
……だが、今の、この服は──……。
「いやぁー!!! でも……中々、まずい格好やっちゃってますよねぇー……!!!」
ユユユが明るく、皆が言いにくい話題を、
話の流れに戻しやがる。
──……そう。けっこう、ヤバい。
フード付きの神官服ってのは、つまり。
王都の大神官直属の部下の、
礼装服っだってことを示す。
しかも、だ。
ど──っかで見たことある意匠だと思ったら!
この礼装服ってよぉ──……。
「……無断で"聖兵"の名を騙るのは、それなりの罪に問われたはずでござる」
「っ! ……だよ、なぁ」
なんで……コイツらは。
んな格好して、街の薬屋に、
エリクサーなんか届けやがったんだ……?
ううむ……。
「しっかし、よっく出来てやがる。その……おれも何度か礼装服は見たことがあるけどよ。クマの目から見ても……こりゃーモノホンとクリソツだぜ?」
「……──当然よ、くま。だって、この礼装服……本物だもの」
……。
……なんだと?
「お、おい、おま……それって、どういう意味だ!?」
「どうって……言葉通りの意味よ」
「ええ……。マザー・レイズが、この二人に……直接、譲ったようなのです」
「──!? レイズさん、本人から、か……!?」
オシハとヒキハの言葉に、
場の雰囲気が波を打つ。
そうだ……この礼装服の意匠は。
大司教マザー・レイズの聖兵のヤツに、間違いねぇ。
「おいおい……。じゃあ、この二人は。マジモンの"聖兵"──だってことかよ?」
「え……っ! そ、そんな話……私、いま初めて聞いたよ! 新しい人が決まったら、私や聖女様には連絡がくると思うん、だけどな……?」
「にょきっと」
「くゆくゆくゅー」
エコープルも、まったく知らない事だったようだ。
うーん、くまったなぁ……。
なんか、おれら……複雑な領域に、
ズッポシ、足突っ込んでるんじゃないか……?
ギリリ、と音がして。
オシハが……こぶしを握っている事に気づく。
……。
「……おい、オシハ。とりあえず、座んな──」
「……! ……、──、 」
横の椅子に、どか──っ! と座る。
でっかい乳が、悲鳴をあげた。
──ぶるるんっ。
──たよたん……。
剣の長は、語り出す。
「……ふぅ。何故かは、まったくわからないの。マザー・レイズは……この子たちを、とても気にかけている。この子たちの幾つかの秘密を、マザーは全力で揉み消してるわ」
「──ぉ、お姉ちゃんっ!!」
「私とヒキハは……出来たらそれを、調べたい」
「……くま的にも、初耳だな……」
「"揉み消している"……で、ござるか?」
「にょきっとな……」
「……くゆぅ?」
普段、ふざけているオシハが、
真面目な顔していやがると、その場を飲みやがる。
……んぁー! シーンとして、いけねぇぜ。
フォロー、入れとくべきか。
「あー……。まぁ、なんだ。この礼装服をコイツらが持っているって、レイズさんは知ってんだろう?」
「──! そりゃあ……まぁ、ね」
「だ、そうだ。ヒナワ……ユユユも。大司教サマが認知してんなら、この二人が罪人って訳じゃあねぇんだろう」
「ふむ……、──然り。そうでござるな。いやはや、杞憂でござるなら何より」
「いやぁー!!! 想像以上に、秘密の多そうなお話ですねぇー!!!」
「は、ほんとにな……」
この前、おれに放った蹴りの威力といい。
仮面で顔を隠してることといい……。
なーんか、ポテンシャルやら立場やら、
ハイスペックなんだよなぁー、義賊二代目……。
オマケに、敵役まで色々と秘密が多そうなこって。
「おらっ、ちょっとこの子たち仮面はずれないかしら」
「お、お姉ちゃん!? そ、そんなムリヤリ指つっこんじゃ……」
「む、むぐぅ──……Zzz」
「ふ、ふみゅ──……Zzz」
オシハが、何とか仮面を外せないか、
奮闘しだした。
おま、やめてやれよ……。
あ、簡単には外せねぇんだな。
礼装服、乱れてんぞ……。
……ん?
「……んん?」
「顔にへばりついてるぅ……ん、ベア? どうしたの?」
「──! い、いや、大した事じゃないんだけどな?」
オシハが遠慮なしにやって、
礼装服の首元が見えたのだ。
「ほれ……そっちの銀髪の──マイスナっつったか?」
「うん。みたいね」
「そいつも、プレミオム・アーツを着けてねぇか?」
「──……!」
エコープルが、寝ている銀の仮面に近づき、
首元を覗く。
「あ、ホントだーっ!!」
「にょきっと……!」
「くゆーっ!!」
んで、全員で覗きこむ事となる。
「……"銀色"の、プレミオム・アーツ?」
複製バレた!((((;゜Д゜))))










