ばくちばくちち
活動報告でタレをいっぱいくれた皆さん。
有難うございまデロロロ。
<(_ _*)>.*・゜
その日の事は、よう覚えておる。
ワシが王都からトンズラして、
やっとこさ東の街で夢じゃった薬屋を開いて。
間もなく、この地の薬草が枯渇し始めよった。
王都一の魔法薬剤師と言えど、
材料無くては、お手上げ万歳。
王都でバカたれ達に使われたポーションの、
一割もあれば笑顔になる人がおるというのに……。
キトメ屋という店の名は、"生富屋"と書く。
が、今の店は、店として機能しておらぬ。
閑古鳥が鳴くとは、この事じゃろう。
昔から"ナトリかぶれ"じゃったワシは、
明るい髪にそぐわぬ着物を着込み、
天然木で仕上がったカウンタに座り、
ニュースペーパーを読んで、不貞腐れておった。
「むぅ、郵送配達職が、薬草を運び込みよったか……! どうして中々、有難い話じゃ。こちらの店にも配給があれば良いが……」
すると、店の扉の鳴り鈴が、
カランカランと鳴りよる。
ワシはニュースペーパーから目を離さず、
ここいら最近、くり返し言っている言霊を吐く。
「……お客さーん、今はポーションは品切れじゃよ。次の入荷まで、お手上げじゃーい」
すると、凛とした女の声が、
返ってきよったのだ。
「──リスク・イゴス氏とお見受けします」
「むぬ……?」
やっとこさ顔を上げたワシは、
その者たちの姿に驚く。
深いフードを被った神官が二人、
──すくりと、立っておったのだ。
「──……!!」
ワシは、即座に思考する。
(……!? 王都の"礼装服"……! よもや、"聖兵"か……?)
随分と小柄な神官じゃ……。
男か女かは、分からぬ。
むむっ、この礼装服の意匠……。
──……!
よ、よもや、あの方の……!?
「このような恰好で、失礼いたします」
「お願いがあって、参りました」
「……、……」
王都から、ワシの元に聖兵が送りこまれてきよるとは……。
ワシは何とか落ち着きを取り繕い、
老眼鏡ごしに、小さな神官たちを見た。
ワシは……言わねばならぬ。
「……ワシはまだ、王都へ帰るわけにはいかぬ。この街で、まだワシができる事が、あるはずなのじゃ。一度目にオシハが来た時、それは話しておる……。お目逃し願いたい」
もし、この者たちが真に聖兵ならば、
ワシの戯言など、揉み潰されるが道理である。
が、ダメ元で唸ったワシの願いに、
二人の小さな神官は、気遣うように言いよった。
「オシハ様が、リスク殿を連れ戻そうとしていた事は存じております。が──」
「──私たちのお願いは、王都への帰還を望むものではありません」
むむ……?
ふむ……もしこの者たちが、あの方の聖兵ならば。
オシハやヒキハの後続という事になろうはず。
やはり、オシハと面識があるようじゃ。
が、何故このような場所に……?
この老心には、意図が読めぬわ。
「はて……。この老いぼれに、何用か……?」
二人の神官は、互いを気にし、うなずく。
そして、小さな瓶に入った液体を、
トン……と、カウンタの上に置いたのじゃ。
「──こちらの薬の希釈を、お願いしたいのです」
「……!? 希釈、じゃと?」
希釈……?
つまり……"薄める"という事かの?
見たところ、回復系統の薬であろうが……。
?? 薄める? 何故に……?
「ふむむ……?」
ワシが、パッとせぬ表情を作っておると、
神官の一人が、続けよった。
「これは恐らく、この世で最も強力な回復アイテムです」
「……!」
ワシは流れるように、
薬品専用の鑑定モノクルを片目にかざした。
レンズ越しに見える色は……。
「な、なんじゃこれは……!」
こ、これではダメじゃ……!
カウンタの引き出しから、
査定用の回復測量の魔法陣が描かれた紙を取り出し、
その中央に、そっ……と小瓶を置き、
術式を発動させる。
「お、お……」
「「──」」
ワシの目の前で、魔法陣の描かれた紙は、
輝く光を放ち、灰と化した。
「なんと、いうことじゃ……!!」
驚愕のひと言に尽きる。
「お、お前たち……こ、これが何か、わかっておるのか……!?」
「「……」」
「こ、これは……"神の嗜好品"レベルの万能薬じゃ……ッ! ま、間違いないっ……! し……神話の中で、勇者が魔王討伐に使うような──そんな、代物じゃぞ……ッッ!?」
「流石、リスク殿」
「お見事でございます」
こ、こんな物が……この世に存在したか……ッッ!
王に、献上せねばならぬようなアイテムじゃぞ……!?
神々しき奇跡の逸品……!!
どのような死病も跳ね除け、
穢れた大地に使えば全ての邪気を祓うじゃろうて……!
「ワシにこれを……薄めろと言うか!」
「街に、使っていただきたいのです──」
「時間をかけて、徐々に、ゆっくりと──」
「な、んと──……!」
突然の神官の来訪。意図は理解したが……、
何と罰当たりな、しかし魅力的な提案か!
神のアイテムに……水を混ぜろと言う!
「正直に申しあげましょう。私共は、このアイテムをどこまで希釈すれば良いか、判断しかねるのです」
「大量のポーションを継続的に、どのようなタイミングで街に卸していくかも見当がつきません」
「うむむぅ……!」
それはそうじゃ……!
これは、このまま飲むと、毒となろうぞ……!!
この威力なら……ハイポーション、一万本はかたい!!
いや、それ以上やもしれぬ……。
なんと恐ろしいモノを、老体に晒してくれる……!
小さな神官たちに、ワシは聞いてみる事とした!
「……お主らは、ワシがこれを悪用するとは思わぬのか。言わずもがな、コレは恐ろしい価値を産む薬じゃ。ヘタをすれば、この街の薬屋は全て潰れ、ワシは巨万の富を得ることとなる──……」
「貴方様が、王都からこちらにいで向かれた経緯は、僭越ながら聞き及んでおります」
「安易にポーションを浪費する事に心を痛められる想い……悪くは転ばないかと」
「う、む……」
あの、バカ剣士集団どもが、
魔物討伐祭なんぞやりよった事は、
記憶に新しい。
つまり……そこまでもを、
オシハから聞いておるという事か……?
──!
良いタイミングで、
二階の方から人影が降りてきよった。
足音は、完膚無きまでに殺されておる。
目の前の神官たちは、
まるで気づいておらぬじゃろう。
「……問おう。このような有難き物、どなたがワシへと届けた。バルドアックス国王陛下か? それとも──」
「「 お答えできませぬ 」」
「──! ……。聖女は知っておるのか?」
「「 存じあげませぬ 」」
なんと……。
聖女にさえ知らされぬ計画か……。
「……秘密裏にこの街を助け、なんとする。そなた達の後ろに、影が見えぬ」
「他意はありません」
「この街の安寧を願います」
「……」
美味い話が、過ぎる。
年寄りにもなると、疑り深くもなろう……。
よもや盗品、
もしくは何らかの中毒性などあるまいな……。
街の皆に、行き渡る事となる。
ワシは神官たちの背後を気にしながら、
カマをかけてみることにした。
「……オシハやヒキハは、お主らの行いを把握しておるのか?」
「「 ! 」」
「近しいのであろう?」
「「……」」
この店に入ってから、
一番、神官たちの歯切れが悪くなる。
「あの方たちは、この件に関与はしておりません……」
「どうか、御内密に……」
ふむ……。
よく分からぬ。
よく分からぬが……。
まぁ、頃合いじゃろう。
ワシは、謎の神官たちの、
背後に迫った者たちに、声をかけた──。
「 ──だ、そうじゃぞ。オシハ、ヒキハ。
こやつらは、おヌシたちの後輩かぇ? 」
「「 ──…… っ 」」
──バッ……!
振り向く、小さな神官たち。
「はっ。いいえぇ? 私たちの後釜さん達と会うのは──」
「これが初めてのはずで、ございますわねぇ──?」
── ば る る ん っ 。
" 羊雲姉妹 "の、
張り裂けそうな笑みと、
張り裂けそうな乳が、
── 威 圧 し た っ ・・・!!
でたぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
(((((((;゜Д゜))))))).*・゜










